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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

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2014.01
21
CM:9
TB:0
12:00
Category : 有職故実
 安重根に対してテロリスト云々は、言うだけ揉める話ではないか?

 官房長官は安重根を『わが国の初代首相を殺害し、死刑判決を受けたテロリストだ』と述べたという。
菅義偉官房長官は20日午前の記者会見で、伊藤博文元首相を暗殺した朝鮮独立運動家・安重根の記念館が中国東北部のハルビン駅に開設されたことについて「極めて遺憾だ」と不快感を表明した。[中略]菅長官は、安重根について「わが国の初代首相を殺害し、死刑判決を受けたテロリストだ」と指摘。
「菅長官『極めて遺憾』=安重根記念館、中韓に抗議」『時事ドットコム』(時事通信,2014.1.20)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014012000307


 しかし、韓国からすれば救国のために戦った英雄を、テロリストと呼んでいい事はあるのだろうか? 菅長官の言っていることは、フィリピンのホセ・リサールや、インドネシアのスカルノ、ベトナムのホーチミンをテロリストと呼ぶようなものだ。

 第三国の立場に立って見てみれば、余計な一言以外には見えない。例えば、スペインの内閣が、フィリピンに対してホセ・リサールをフィリピン独立を企んでいたテロリストと呼んだ。オランダの内閣がインドネシアに対してスカルノを内乱を起こしたテロリストと呼んだ。フランスの内閣がベトナムに向かってホーチミンをベトコンとして蜂起したテロリストと呼んだ。そのように考えて見ればよい。余計な一言以外の何物でもないことがわかるだろう。思っていても言うべきではない言葉はあるものだ。

 テロルについても、今の眼で見てはならない部分もある。

 まず、侵略され併合された国で、実力での独立運動を起こすということは必然的にテロルになるという問題がある。併合した側は、併合国から独立のための戦いの権利を奪う。そこで抵抗運動を行い、それが侵略国によってテロルとしただけの話ではないか。

 そして韓国は独立を果たし、日本も国交を結んている。独立を認めた以上、独立運動に関連する諸要素にグチグチ文句を言うべきではない。抵抗権と同じである。国家転覆罪に既遂犯はないようなものだ。革命が成就すれば、国家転覆罪は適用されないのである。

 また、当時は独立運動としてのテロルが流行った時代である。19世紀後半から20世紀前半は、独立運動はテロル=暗殺であり、一国で民族主義者による暗殺が起きると、それが新聞報道等により、世界中に流行していた時代であった。ナショナリズムの勃興と、近世帝国の崩壊の過程、電信や新聞の発達は同時である。民族主義者による暗殺がおきると、世界中の植民地で模倣される。その中で安重根を見れば、民族主義者として独立運動に殉じたとしか言えない。

 だいたい、独立運動家が暗殺しまくったのは、日本も同じである。薩長ほかの討幕運動は暗殺しまくりであるが、彼らはテロリストとは呼ばない。革命戦士として靖国神社に祀られている。革命が成就した後で、あるいは独立したあとでは、テロリストと呼ぶべきではない。

 このような事情を見れば、官房長官の発言は穏当ではない。日韓関係についてもそうだが、日本による植民地支配の頭のままで昔を見ているようにしか見えないのである。

 なんにしても、世の中には思っていても言わないほうがいいことがあるというものだ。