Category : ミリタリー
台湾が新型艦、あるいは新造艦を買う方法はあるのだろうか。
■ 台湾は軍艦が手に入らない
台湾は、軍艦調達に苦慮している。台湾には、大型艦を建造できる造船業がない。海外から軍艦を買うにしても、中国が機嫌を悪くするので売る国もない。アメリカだけが、現在でも台湾に艦艇を輸出しているが、やはり対中配慮もあるので旧式艦がメインとなっている。
台湾には造船業がない。台湾は高度な艦艇整備が可能であるが、造船能力がない。台湾には、旧大戦型駆逐艦にFRAM相当を施せるような、高度な整備設備・技術はある。だが、船体を作り、主機を据え付けるような造船業はない。これは、台湾に大規模な製鋼業がないためである。造船業には背後に製鋼業が必要である。それがなければ、船体を作るための種々の鋼板や、プロペラシャフトを柔軟に供給することができない。その製鋼業が台湾にはない。
台湾には、新型新造艦を売ってくれる国がない。世界中でどこの国をみても、台湾よりも中国が大事である。台湾問題ごときで、重要な対中関係に影響をあたえることは許されない。このため、どこの国も台湾には艦艇を売らない。フランスがフリゲートを、オランダが潜水艦を、ドイツが掃討艇を売ったことがある。だが、中国の抗議と、対中関係の重要性から、全てはスポット的な取引で終わっている。
唯一売ってくれる米国も、最新艦艇は供与しない。唯一、台湾への武器売却を行っている米国も、米国も対中関係を重視する。中国の意向も汲んで供与武器は選んでいる。米中ともに「防衛用武器」に限るというルールを尊重している。そこに、最新鋭の大型水上艦は含めることができない。できるのは、ノックス級、ペリー級の売却であり、最新でも退役したキッド級でなければ売ることはできない。
このため、台湾は海軍力強化に困っている。台湾にしても、海軍力を強化したい。
台湾にしても「新中国が攻めてくる」と、すべてを対上陸戦に備える時代は終わっている。もちろん、中国による侵攻対処は日本よりも重視はしているが、かつてほどではない。政治的・経済的にデタントの段階に入っており、両岸関係の安定は長続きする見込みにある。金門・馬祖などを見ればわかるように、対上陸戦にはかつて程の比重は置かれない。
台湾は、むしろ海軍力を強化したい。その志向も、外洋に向かっている。台湾の繁栄は自由貿易に依存しており、自由貿易は航海の自由に依存している。また、領土問題や海上領域問題もある。台湾は、南沙諸島分割でのプレイヤーであり、重要な島嶼を実効支配している。また、尖閣も自国領土と主張している。その南沙や尖閣ほかで、漁業での対立問題も抱えており、フィリピンとは険悪な関係にある。これらの問題は、陸戦力では解決不能で、海軍力を建設しなければならない。
ただし、既述したとおり、台湾には新型軍艦を売ってくれる国はない。そのため、台湾の海軍力増強はブレーキが掛けられている状態である。
■ 中国から買えばいいのではないか
しかし、艦艇問題は、中国から軍艦を購入することで解決するのではないか。
中国は、台湾への武器売却でフリーハンドを持っている。中国が台湾に武器を売却すると言って、文句をつける国はない。
政治的にも、台湾への武器売却は全く不可能という話でもない。台湾は、すでに大陸反攻を放棄している。台湾は武器を欲しがっているが、その武器は台湾の現体制を維持するためだけに使われる。台湾軍は、中国本土への直接的な脅威にはならない。また、中国も、現状では強いて台湾を武力回収するつもりもないので、台湾軍が多少強くなっても、当座の問題はない。
艦艇の取引は、新中国と台湾にとって悪いものではない。
台湾は、念願の新型艦艇を手に入れることができる。新中国から購入には、サイズや、新造であるかどうか、数量的な制限はない。台湾が台湾の事情に合致した艦艇を購入することができる。今までのように、台湾の都合に必ずしも一致しない大型艦や、逆に小さく古過ぎる小型艦があてがわれることもない。
新中国は、台湾への西欧武器輸出を邪魔することができる。欧米が台湾に武器を売却するということは、政治的にはその欧米の国が台湾に肩入れすることである。政治的な後盾という錯覚は、新中国が最も危惧する台湾独立を勢いづける要素になる。だが、新中国が台湾に武器を売却することにより、武器購入で気を大きくした台湾人が、独立論をぶつことを妨害できるのである。
また、両国ともに、武器取引によって、両国の関係安定を宣伝できる効果が得られる。すでに両岸関係は安定しているが、その安定が一層進んだ印象を、それぞれの地域内や国際社会に与えることができる。そして、両岸は平和裏な併存が保てるといった印象は、両国軍事費の削減や、海外からの投資そのほかで有利な要素にもなる。
実際には、新中国には米国製に慣れた台湾海軍のメガネに適う艦艇はない。台湾海軍は、フランス製のラファイエット級は使えないとまで評するほど贅沢な海軍である。新中国製は、フランス製以下と評されるだろう。
しかし、船体だけを作らせて、あとは台湾で艤装すれば問題は解決する。新中国に計画段階から噛ませることで、外国製武器システムの輸入に伴う問題は解決する。新中国も関与した計画段階から、アメリカ製の戦闘システム、ガスタービン・エンジンを搭載するとしておけば、後の購入で文句を言われることもない。両岸合意の上となれば、やる気になれば、日本製の補機や舵機、給排水系統や、計装すら購入できるだろう。潜水艦であれば、今の新中国製、元級も似たようなものだ。船殻だけ国産で、エンジンやソナー、多分システムもは独仏製を使っている。台湾向けに売ったところで大差はない。
中国による、船体だけの輸出例もある。1990年代、タイ王国海軍に輸出したフリゲートがそれであった。中国製の船殻とエンジンに、欧米系の武器システムを装備したものである。船体はそれほど悪くないらしい。1980年代に輸出された中国艦、チャオプラーヤ級については、タイ海軍は酷評しているが、90年代に建造されたナレースアンにはその悪評がない。
■ 台湾は軍艦が手に入らない
台湾は、軍艦調達に苦慮している。台湾には、大型艦を建造できる造船業がない。海外から軍艦を買うにしても、中国が機嫌を悪くするので売る国もない。アメリカだけが、現在でも台湾に艦艇を輸出しているが、やはり対中配慮もあるので旧式艦がメインとなっている。
台湾には造船業がない。台湾は高度な艦艇整備が可能であるが、造船能力がない。台湾には、旧大戦型駆逐艦にFRAM相当を施せるような、高度な整備設備・技術はある。だが、船体を作り、主機を据え付けるような造船業はない。これは、台湾に大規模な製鋼業がないためである。造船業には背後に製鋼業が必要である。それがなければ、船体を作るための種々の鋼板や、プロペラシャフトを柔軟に供給することができない。その製鋼業が台湾にはない。
台湾には、新型新造艦を売ってくれる国がない。世界中でどこの国をみても、台湾よりも中国が大事である。台湾問題ごときで、重要な対中関係に影響をあたえることは許されない。このため、どこの国も台湾には艦艇を売らない。フランスがフリゲートを、オランダが潜水艦を、ドイツが掃討艇を売ったことがある。だが、中国の抗議と、対中関係の重要性から、全てはスポット的な取引で終わっている。
唯一売ってくれる米国も、最新艦艇は供与しない。唯一、台湾への武器売却を行っている米国も、米国も対中関係を重視する。中国の意向も汲んで供与武器は選んでいる。米中ともに「防衛用武器」に限るというルールを尊重している。そこに、最新鋭の大型水上艦は含めることができない。できるのは、ノックス級、ペリー級の売却であり、最新でも退役したキッド級でなければ売ることはできない。
このため、台湾は海軍力強化に困っている。台湾にしても、海軍力を強化したい。
台湾にしても「新中国が攻めてくる」と、すべてを対上陸戦に備える時代は終わっている。もちろん、中国による侵攻対処は日本よりも重視はしているが、かつてほどではない。政治的・経済的にデタントの段階に入っており、両岸関係の安定は長続きする見込みにある。金門・馬祖などを見ればわかるように、対上陸戦にはかつて程の比重は置かれない。
台湾は、むしろ海軍力を強化したい。その志向も、外洋に向かっている。台湾の繁栄は自由貿易に依存しており、自由貿易は航海の自由に依存している。また、領土問題や海上領域問題もある。台湾は、南沙諸島分割でのプレイヤーであり、重要な島嶼を実効支配している。また、尖閣も自国領土と主張している。その南沙や尖閣ほかで、漁業での対立問題も抱えており、フィリピンとは険悪な関係にある。これらの問題は、陸戦力では解決不能で、海軍力を建設しなければならない。
ただし、既述したとおり、台湾には新型軍艦を売ってくれる国はない。そのため、台湾の海軍力増強はブレーキが掛けられている状態である。
■ 中国から買えばいいのではないか
しかし、艦艇問題は、中国から軍艦を購入することで解決するのではないか。
中国は、台湾への武器売却でフリーハンドを持っている。中国が台湾に武器を売却すると言って、文句をつける国はない。
政治的にも、台湾への武器売却は全く不可能という話でもない。台湾は、すでに大陸反攻を放棄している。台湾は武器を欲しがっているが、その武器は台湾の現体制を維持するためだけに使われる。台湾軍は、中国本土への直接的な脅威にはならない。また、中国も、現状では強いて台湾を武力回収するつもりもないので、台湾軍が多少強くなっても、当座の問題はない。
艦艇の取引は、新中国と台湾にとって悪いものではない。
台湾は、念願の新型艦艇を手に入れることができる。新中国から購入には、サイズや、新造であるかどうか、数量的な制限はない。台湾が台湾の事情に合致した艦艇を購入することができる。今までのように、台湾の都合に必ずしも一致しない大型艦や、逆に小さく古過ぎる小型艦があてがわれることもない。
新中国は、台湾への西欧武器輸出を邪魔することができる。欧米が台湾に武器を売却するということは、政治的にはその欧米の国が台湾に肩入れすることである。政治的な後盾という錯覚は、新中国が最も危惧する台湾独立を勢いづける要素になる。だが、新中国が台湾に武器を売却することにより、武器購入で気を大きくした台湾人が、独立論をぶつことを妨害できるのである。
また、両国ともに、武器取引によって、両国の関係安定を宣伝できる効果が得られる。すでに両岸関係は安定しているが、その安定が一層進んだ印象を、それぞれの地域内や国際社会に与えることができる。そして、両岸は平和裏な併存が保てるといった印象は、両国軍事費の削減や、海外からの投資そのほかで有利な要素にもなる。
実際には、新中国には米国製に慣れた台湾海軍のメガネに適う艦艇はない。台湾海軍は、フランス製のラファイエット級は使えないとまで評するほど贅沢な海軍である。新中国製は、フランス製以下と評されるだろう。
しかし、船体だけを作らせて、あとは台湾で艤装すれば問題は解決する。新中国に計画段階から噛ませることで、外国製武器システムの輸入に伴う問題は解決する。新中国も関与した計画段階から、アメリカ製の戦闘システム、ガスタービン・エンジンを搭載するとしておけば、後の購入で文句を言われることもない。両岸合意の上となれば、やる気になれば、日本製の補機や舵機、給排水系統や、計装すら購入できるだろう。潜水艦であれば、今の新中国製、元級も似たようなものだ。船殻だけ国産で、エンジンやソナー、多分システムもは独仏製を使っている。台湾向けに売ったところで大差はない。
中国による、船体だけの輸出例もある。1990年代、タイ王国海軍に輸出したフリゲートがそれであった。中国製の船殻とエンジンに、欧米系の武器システムを装備したものである。船体はそれほど悪くないらしい。1980年代に輸出された中国艦、チャオプラーヤ級については、タイ海軍は酷評しているが、90年代に建造されたナレースアンにはその悪評がない。