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2011-06-13

【トルコ】総選挙でイスラム保守与党勝利、共和人民党及ばず

12日、トルコで大国民議会(一院制議会・定数550、10%阻止条項つき比例代表制)の総選挙が行われた。今回の総選挙はトルコでは34年ぶりの任期満了に伴う選挙となった。その結果、エルドアン首相が率いるイスラム系の中道保守与党・公正発展党(AKP)が過半数を上回る議席を獲得し勝利。クルチュダロール党首が率いる社会主義インター加盟政党の共和人民党(CHP)は及ばなかった。ただ公正発展党は単独で憲法改正できる3分の2、および憲法改正を国民投票で提起できる5分の3には及ばず、得票率では前回より伸ばしたものの議席を微減させた。このためエルドアン政権・公正発展党がめざしていた議院内閣制からフランス型半大統領制への変更、および政教分離規定の緩和などを織り込んだ新憲法の制定もしくは憲法改正には、他党との協議が必要となる。

トルコでは「国父」ケマル・アタチュルク以来の国是である政教分離をめぐってここ十数年来、国を二分する論争が続いているが、エルドアン首相率いる公正発展党はそのなかでイスラム色が強い保守政党とされ、政教分離の守護者を自認する軍部からは反発も出ていた。いっぽう、エルドアン政権は新自由主義的な経済政策を導入し、欧州連合(EU)加盟をめざす姿勢をみせていた。党の性格についても元々はエルバカン元首相が率いていたイスラム主義政党・国民秩序党、救国党、福祉党(繁栄党とも)および美徳党の流れを組むが、2001年の美徳党非合法化を機に党の勢力は分裂、イスラム保守色の強い至福党(幸福党とも)と、より中道寄り穏健改革派の公正発展党に分かれた経緯を持つ。このため公正発展党はヨーロッパを中心とするキリスト教民主主義を強く意識しており、現在も保守系政党を軸とする国際組織「欧州人民党」に加わるなど欧州型中道右派・保守政党に似せたアピールに余念がなく、過去には「キリスト教民主主義と似た性格の『イスラム民主主義』政党」と主張したこともあり、選挙戦では宗教的な社会政策ではなく、外資誘致の推進や新運河構想といった大型公共事業など経済政策の実績や計画を中心に具体的に訴えて支持を広げていた。そうしたなかでの今回の議席の微減は意外に受け止められており、エルドアン首相の長期政権化への有権者の飽きや、ジャーナリストを拘束するなどの権威主義的政治姿勢への懸念の表れとする報道もみられる(直接には地方農村部への議席配分が減らされたことにも原因がある)。欧州安全保障協力機構(OSCE)は複数政党制民主主義の定着を評価するいっぽう、言論・表現の自由への規制や10%条項について批判する見解を表明した。

今回敗れた共和人民党は党の「永遠の指導者」ともされるケマル・アタチュルクが創設して以来の、トルコ現代史そのものを象徴する政党で、民主社会主義・世俗主義を軸としながら軍部や官僚とも近い関係にあり、トルコ民族主義色も強いなど、他国とは違う様相を見せている(共和人民党の6大原則「6本の矢」はアタチュルク期の1927年以来「共和主義」「民族主義」「人民主義」「国家資本主義」「世俗主義」「革命主義」)。第二次世界大戦終結後までは一党独裁政党だった過去も持つ。しかし1980年のクーデター以降は党勢が落ち込み、それ以来は連立政権で主導権を握ったことはない。昨年は92年以来党首の座にあったバイカル氏が不倫疑惑で辞任を余儀なくされ、今回は「庶民派」とされるクルチュダロール新党首の下で党勢回復を図ってエルドアン首相および公正発展党に挑んだが、得票率・議席とも伸ばしたものの及ばなかった。

なお今回の選挙では他に極右とされる民族主義者行動党(MHP)と、クルド系政党・平和民主党(BDP、非合法化された民主社会党の後継政党で、社会主義インター加盟政党)が擁立した無所属候補が当選した(無所属候補は10%阻止条項の適用を受けない)。いっぽう、前回は共和人民党と選挙協力した別の民主社会主義政党・民主左翼党(DSP)は今回は独自に立候補したが、0.3%にも満たない得票率で全議席を失った。第4位となった至福党もわずか1.1%、前回は5%以上を獲得した民主党(かつての2大政党・正道党の後継政党)も0.7%にとどまるなど、10%を超え議席を獲得した3党に全投票の89%が集中、10%阻止条項の威力を見せつける結果ともなった。また投票率は87%弱だった。

詳しい選挙結果は次の通り(カッコ内は前回比)。
公正発展党 326(-15)
共和人民党 135(+23)
民族主義者行動党 53(-18)
無所属 36(クルド系が中心)

共和人民党 公式サイト(トルコ語)
http://www.chp.org.tr/

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2011-06-07

【ペルー】大統領選決選で「反米左派」ウマラ氏勝利、ケイコ氏敗北

南米ペルーで5日、大統領選挙の決選投票が行われた。開票の結果「反米左派」とされる「民族主義党」のウマラ元中佐が、フジモリ元大統領の長女で右派のケイコ・フジモリ(藤森恵子)国会議員を僅差でかわし、勝利を確実にした。得票率は、開票率98%時点で、ウマラ元中佐51.6%、ケイコ国会議員 48.4%となっている。ウマラ元中佐は勝利を宣言、いっぽうケイコ国会議員は敗北を認めた。

4月10日に行われた大統領選挙の第1回投票では有力5氏により五つ巴の大激戦が展開されたが、中道右派のクチンスキ元首相、中道から中道左派の傾向を持つトレド元大統領、フジモリ派出身の保守だがやや穏健派のカスタニェダ前リマ市長の中道左右の各候補者が3位以下となり脱落。有力候補者のなかで最左派のウマラ元中佐と、最右派のケイコ国会議員による決選投票となっていた。両者とも貧困層に熱狂的な支持基盤を持つ、ペルーのエリート層、中産・エスタブリッシュメント層からは距離のある候補者で、決選投票の選挙戦は在任中の治安回復作戦を権力乱用や人権侵害・殺人に問われて収監中のフジモリ元大統領の評価や、ウマラ元中佐が同じ中南米の急進反米左派として知られるチャベス・ベネズエラ大統領との親交があること、またウマラ元中佐の過去の経済「国営化」志向などを論点とする激戦となった。いっぽう、ペルーのエリート層からは「どちらでも最悪」といった声も出ていた。
このため両候補とも中間派の取り込みを図るため路線を穏健・中道寄りに修正せざるを得ず、ウマラ元中佐は経済政策で「同じ左派でもべネスエラのような急進的な政策ではなく、ブラジルのルラおよびルセフ政権のような政策を採る」とし、またケイコ国会議員は「父であるフジモリ元大統領の恩赦はしない」と明言することを余儀なくされていた。経済政策面ではウマラ元中佐はペルー経済の成長を支える豊富な天然ガスなどの資源を「輸出でなく国内消費に回し、値下げを図る」などの政策を打ち出し、ケイコ国会議員は新自由主義的な発展策による経済の底上げやフジモリ元大統領時代のハイパーインフレ終息と救貧政策の両立を挙げて、両者とも貧困層へのアピールにも余念がなかった。世論調査での支持率も、ウマラ元中佐とケイコ国会議員で拮抗していた。

結果としてはペルー世論が分断されるなかでウマラ元中佐が僅差で勝利したものの、その主な支持基盤は農村やアンデス山岳部に偏り、首都リマなど都市部ではケイコ国会議員にリードを許した。また、3位以下の候補者をみても4位のトレド元大統領はウマラ元中佐を、3位のクチンスキ元首相と5位のカスタニェダ前リマ市長はケイコ国会議員を、それぞれ支持したものの、ウマラ元中佐とトレド元大統領のあいだには早くも距離が伝えられ、またケイコ国会議員陣営でもクチンスキ元首相を支持した政党の一部に造反がみられるなど、さまざまな動きが伝えられている。「国営化」を懸念する経済界もウマラ元中佐の勝利に拒否感を示しており、6日のペルー株式市場は株価急落により一時取引停止に追い込まれた。

なお4月10日に行われた国会議員選挙(定数130・非拘束名簿式比例代表制)の結果も、次のように確定している。

「勝つペルー」47(ウマラ元中佐の民族主義党を基軸に、社会党、共産党など左派政党連合)
フエルザ2011(2011勢力)37(ケイコ・フジモリ国会議員を支持する政治連合)
「可能なペルー」選挙同盟 21(トレド元大統領を支持する中道系政党連合)
大変革同盟 12(クチンスキ元首相を支持する中道右派政党連合)
国民連帯同盟 9(カスタニェダ前リマ市長を支持する政党連合で、旧フジモリ派の主流を引いている)
アメリカ革命人民同盟(アプラ党)4(社会主義インター加盟政党、ガルシア現大統領派)

国会の過半数を得た政党・勢力はなく、ウマラ派はトレド派と連携することでの政権運営を企図している。またこの選挙ではケイコ国会議員の弟、ケンジ・フジモリ氏も首都リマで圧倒的な得票を挙げて当選を果たし、主にリマの貧困層を基盤とするフジモリ派の支持の厚さをみせた。

また同じ4月10日に行われた国家間地域協力機関「アンデス共同体」議会のペルー選出議員選挙(選出数5、比例代表制)の結果は次の通り。

「勝つペルー」2
フエルザ2011 1
「可能なペルー」選挙連合 1
大変革同盟 1

=============
ペルーについては、今回大統領選挙では自前の候補者を擁立しなかったガルシア現大統領(まだ現職)の「アメリカ革命人民同盟(APRA、アプラ党としても知られる)」が社会主義インターの加盟政党なのですが、ケイコ氏の父・フジモリ氏が大統領になる前から、その「ポピュリズム・大衆迎合」的な傾向や、ペルーの寡頭支配層との談合がささやかれたりもしていました。今回も、アプラ党はそんな振る舞いをしたかのように感じます(大統領選挙では第1回投票では中道右派のクチンスキ元首相と組んでいたとのこと)。ガルシア政権は「死刑復活」を公言したりしていましたしね。

ペルーでは、80年代後半にはそんな(第一次)ガルシア政権の経済無策ぶりや極左毛沢東主義武装組織「センデロ・ルミノソ」などによるテロリズムの横行ぶりへの批判から、続けてフジモリ氏に支持が集まった面がありました。実際、ペルーの民主社会主義を掲げるグループや一部知識人には、決して大勢ではないものの、封建的な寡頭・エリート層、エスタブリッシュメント層が支配するペルーの構造改革を期待して、フジモリ支持に回ったグループもあったと聞いています。今回、そんな動きから都市部貧困層のあいだでカリスマ的支持を誇ったケイコ氏に流れたグループがいても、そう不思議はありません(特に情報をキャッチしてはいませんが)。

さて、ウマラ次期大統領がそんなペルーの構造改革を成し遂げられますかどうか。注目点です。

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2011-06-07

【マケドニア】総選挙で社会民主同盟及ばず

5日、バルカン半島にある旧ユーゴスラビアを構成していた共和国のひとつマケドニアで、議会の総選挙(定数123、比例代表制。定数のうち3は今回から設けられた在外選挙人枠)が行われた。開票の結果、グルエフスキ首相率いる与党で民族主義的・キリスト教民主主義的な保守系の「内部マケドニア革命組織・マケドニア国家統一民主党」(VMRO–DPMNE)が前回より議席を減らしたものの56議席を獲得。引き続き第1党として連立与党を主導することとなった。旧ユーゴ時代の共産党組織を継承したマケドニア社会民主同盟(SDSM、現在は社会主義インター加盟政党)もツルヴェンコフスキ前大統領を首相候補に猛追し、一時は世論調査でも拮抗するほどだったが、最終的に及ばなかった。
マケドニアでは昨年秋から政治的混乱が続き、野党がデモを組織したり、議会をボイコットするなどしていた。この事態を打開・解決するため議会が解散され、今回の総選挙となった。
しかし選挙結果は前議会の与党だった VMRO–DPMNE と民主統合連合(DUI、アルバニア系)の両党が過半数を占める結果となった。野党側がこの結果を受け入れるのか、受け入れずに政治的混乱が続くのか、あるいは可能性は高くないが第1党の VMRO–DPMNE を外した連立の組み換えがあるのか、などが注目される。

詳しい選挙結果は次の通り(カッコ内は前回比)
内部マケドニア革命組織・マケドニア国家統一民主党(VMRO–DPMNE)56(-6)
マケドニア社会民主同盟(SDSM)42(+15)
民主統合連合(DUI)15(-3、アルバニア系)
アルバニア人民主党(DPA)8(-3、アルバニア系)
国民民主再生(ND)2(新党、アルバニア系)
#アルバニア系以外の多くの中小政党は VMRO–DPMNE、SDSM のどちらかと政党連合を組んだ。

マケドニア社会民主同盟 公式サイト(マケドニア語)
http://www.sdsm.org.mk/

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2011-06-07

【ポルトガル】総選挙で与党・社会党が敗退

ポルトガルで5日、財政再建案が議会で否決されたことに端を発し解散された議会の総選挙(定数230、比例代表制)が行われた。その結果、ソクラテス首相率いる与党・社会党(PS、社会主義インター加盟政党)が敗退。保守中道野党・社会民主党(PSD)が勝利し、社会党は下野することとなった。

今回の選挙はリーマン・ショック以降の経済危機がポルトガルに波及したことが遠因で、この危機によってポルトガルは財政赤字が増大。失業率も高まり、ソクラテス首相と社会党政権への批判が高まっていた。これに対処するための財政再建案が3月に議会で否決され、議会は解散。その後、財政危機から脱却するために欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)から「年金凍結」など、さらなる緊縮財政策を突きつけられ、社会党は「ポルトガルを守れ」を標語に選挙を戦ったが、及ばなかった。EUからの経済支援をめぐる政権交代は、ヨーロッパではアイルランドに次いで2例目となる。

この結果を受けて社会民主党のコエリョ党首が新首相に就任する見通し。コエリョ氏の社会民主党は今回の総選挙で公務員削減、労働市場自由化などの経済リベラリズムによって経済の流動化を図る新自由主義的な政策を掲げていた。しかし社会民主党は単独では議会の過半数に達しなかったため、第3党となった、より保守色の強い民主社会中道・人民党(CDS-PP、日本の報道では「民衆党」とも)と連立を組むとみられる。

なおポルトガルにおいては「社会民主党」は現在では保守中道政党だが、過去には中道的な社会民主主義・民主社会主義を掲げ、社会主義インターへの加盟を模索したこともある。その後、自由主義インターナショナルに加盟していた時期もあったが、現在はキリスト教民主主義系政党を中心とする国際政党組織に参加している。

国内投票分(226議席)の選挙結果は次の通り(他に在外選挙人の4議席があるが、結果は未定。カッコ内は前回比)。
社会民主党 105(+24)
社会党 73(-24)
民主社会中道・人民党 24(+3)
民主統一連合 16(+1、共産党と緑の党)
左翼ブロック 8(-8、新左翼など)

社会党 公式サイト(ポルトガル語)
http://www.ps.pt/

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プロフィール

西形公一

Author:西形公一
もと「民社ゆーす」(旧民社党全国青年部系)事務局長。昔は漫画と法律のことなどをやっていましたが、その後にインド・ネパール・タイなど熱帯アジアの国ぐにとパシュミナを軸とする小口貿易やNPO、研究活動など人とのつながりなどの縁ができて、今に至っています。写真は夕刻のゴア(インド)にて。

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