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2014-12-23

【チュニジア】大統領選決選で世俗派のセブシ元首相が勝利

21日、「ジャスミン革命」を起こし「アラブの春」の発信源となったチュニジアで、民主化の総仕上げとなる大統領選挙の決選投票が行われた。その結果、世俗派「ニダチュニス」(チュニジアの呼びかけ)のセブシ元首相(カイドセブシ元首相と報じられることが多い)がマルズーキ大統領を破り勝利。「アラブの春」が諸国で次々と挫折するなか、唯一の「革命」の成功例となった。ただセブシ元首相は88歳と高齢で、任期5年を全うできるか早くも危ぶまれている。

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勝利を宣言するセブシ元首相

今回の決選投票は世俗派だが革命以前のベン=アリ旧体制の色も濃い「ニダチュニス」のセブシ元首相と、自身は中道左派世俗派の「共和国のための会議」に所属しながらも穏健イスラム主義の「アンナハダ」と提携してきたマルズーキ大統領が対決する図式となった。しかし有権者はイスラム主義による混乱を嫌い、より世俗色が強いセブシ元首相を選ぶこととなった。

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ニダチュニス支持者

セブシ元首相は旧体制下で国会議長、外相などを歴任したベテラン政治家で、ジャスミン革命後にも暫定政権を首相として率いた。しかし革命後、大統領・首相・議会の権力分立を定めた新憲法下で世俗派とはいえ旧体制派が大統領と議会を握ることへの懸念も強く、マルズーキ大統領が優勢だった南部では群衆の抗議行動が治安部隊と衝突するなどしている。今後はニダチュニスとしてアンナハダと大連立を組むか、それとも世俗派のみでの政権を組むかが注目され、特に残る首相ポストをアンナハダに譲るかどうかが焦点。
なお投票率は約60%で、第1回投票の約65%より低下した。

ニダチュニス 公式サイト(アラビア語・フランス語)
http://nidaatounes.org/
2014-12-12

【モーリシャス】総選挙でジュグノート元首相(前大統領)が首相返り咲き

10日、インド洋に浮かぶモーリシャスで総選挙(公選定数62、三人区完全連記制が基本)が行われ、80年代から90年代にかけ、および21世紀初頭にモーリシャスを首相として統治したジュグノート元首相(モーリシャス社会主義運動)が返り咲きを果たすこととなった。

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ジュグノート新首相(84歳)

モーリシャスは3大政治勢力がいずれも民主社会主義政党で、今回は他の2党、労働党とモーリシャス闘争運動(この2党は社会主義インター加盟政党。後者は進歩同盟にも加盟している)が連合を組んでいたが、ジュグノート元首相は保守系のモーリシャス社会民主党と提携を組み、両党を破った。
ジュグノート元首相は80年代には観光産業だけでなく軽工業とくに繊維産業の振興にはげみ、またインド洋上の孤島でありながら100万以上の人口を抱えるモーリシャスを自由貿易地域として「経済発展の奇跡」を起こした人物。

いっぽう労働党はモーリシャス独立の父として尊敬される故シヴサガル・ラングーラム元首相の息子、ナヴィン・ラングーラム首相が率いる名門政党だが、今回は支持を失い、下野することとなった。モーリシャスで初めて労働党を破りジュグノート首相を初めて政権に就けたモーリシャス闘争運動(インド系の多いモーリシャスで史上初の非ヒンズー教徒首相であるベレンガー首相を輩出した)も、これまでジュグノート首相が自ら離党して設立した社会主義運動と組むことが多かったが、今回は労働党と組み敗北、下野することとなった。

詳しい選挙結果は次のとおり(前回比は政党間連携の大規模な組み換えのため掲載しない)。

人民同盟 47
・モーリシャス社会主義運動 35
・モーリシャス社会民主党 7   
・解放運動 5
モーリシャス闘争運動 9
労働党 4
ロドリゲス人民機構 2(ロドリゲス島の地域政党)

#ほかに追加議席8が今回の選挙結果に基づき、主に次点となった候補からマイノリティに配慮しつつ選挙委員会によって指名される。

モーリシャス社会主義運動 公式サイト(クレオール英語)
http://www.msmparty.com/
労働党 公式サイト(フランス語)
http://www.labourparty.mu/fr/

#モーリシャスでは旧英領だった経緯から公用語は英語だが、一般市民や報道・メディアのレベルではフランス語系のモーリシャス・クレオール語がもっとも幅広く使われ、フランス語が浸透している。
2014-12-11

【ドミニカ国】総選挙で労働党が勝利

カリブ海に浮かぶ英連邦のミニ国家ドミニカ国(ドミニカ共和国とは別)で8日、議会総選挙(公選定数21、小選挙区制)が行われ、スカーリット首相率いるドミニカ労働党(社会主義インター加盟政党)が野党・統一労働者党を破り勝利を収めた。

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スカーリット首相(42歳。就任当初は31歳で、世界最年少の首相だった)

ドミニカはフランス領グアドループとフランス領マルティニークの両フランス海外県にはさまれた人口7万人程度のミニ国家で、実質的には自治体程度の規模しかないが、社会主義インターに加盟する労働党と中道系の統一労働者党の2大政党が存在し、7万名の人口を21に区切った小選挙区をめぐって激しい選挙戦が展開された。その結果、労働党は首都ロゾーで後退するなどしたものの、厚い支持基盤を守りきった。

同国議会は他に9議席が大統領によって任命される(Senator、ただし同国の同職は21議席の公選議員によって指名されたものを名誉職の大統領が任命するシステムで、独自の上院を構成しない)。同国はこうした小国でありながら(総督を置かず)共和制であり、かつ英国にならったウェストミンスターシステムを忠実に採用していることが注目される。

詳しい選挙結果は次のとおり(カッコ内は前回比)。

ドミニカ労働党 15(-3)
統一労働者党 6(+3)

ドミニカ労働党 公式サイト(英語)
http://www.dominicalabourparty.com/
2014-12-03

【オーストラリア】ヴィクトリア州議会上下両院選で労働党が勝利し州政権奪還

11月29日、オーストラリア南部のヴィクトリア州(州都メルボルン)で州議会上下両院議員選挙(下院:定数88・小選挙区移譲式、上院:定数40・中選挙区移譲式比例代表制)が行われた。オーストラリアで多用される複雑な移譲式選挙制度のため開票作業に時間を要したが、州首相を選出する州議会下院では労働党(社会主義インター・進歩同盟加盟政党)が48議席と過半数を獲得した。これによりアンドリュース労働党州代表が次期州首相となることが確定した。

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アンドリュース・ヴィクトリア州新州首相(42歳)

オーストラリアでは最近、連邦レベルでも州レベルでも労働党の敗退が続いていたが、これを食い止める結果となった。もっともベイルー前州首相から引き継いだナプタイン州首相(保守系の自由党=国民党連合)の政権は評判が悪く、世論調査でも労働党の優位を許していた。ベイルー、ナプタインの2人の州首相を出した保守連合州政権は1期で政権を去ることとなる。

なお州上院の選挙制度は州下院にもまして複雑であるため、まだ確定していないが、両院で10%以上を獲得した緑の党が小選挙区制に阻まれる州下院と比べ、州上院では議席を獲得してくることが予想される。

オーストラリア労働党 公式サイト(英語)
http://www.alp.org.au/
2014-12-03

【モルドヴァ】議会選で親欧米派勝利も手詰まり継続の見通し

11月30日、東欧の旧ソ連諸国のひとつモルドヴァで議会選挙(定数101、比例代表制)が行われた。結果は親欧米派の辛勝に終わったが、政党別では鮮明な親ロシア路線を前面に打ち出して共産党から事実上、分岐した社会党が第1党となり、政治的手詰まりが続く見通しとなっている。

親欧米派は中道左右3党の連合で、自由民主党、モルドヴァ民主党(社会主義インター・進歩同盟加盟政党)、自由党の提携となっている。いっぽう親ロシア派は共産党と社会党のほか「祖国」などの政党があったが、「祖国」は選挙戦終盤に「外国から資金を受け取っていた」として立候補を取り消され、その票が社会党に流入したとみられる。同国では共産党が過去に選挙で政権を獲得した際、外交安全保障政策においてプラグマティックな共産党(実態は中道右派との評価さえある)政権が欧米への接近を図ったことがあり、これらに批判的なグループが現在の社会党を形成した。世論調査では社会党は小政党にとどまる見通しだったが、終盤に急浮上した。

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選挙後、民主党の党章を背に記者会見に応じるルプ民主党党首(前暫定大統領)

モルドヴァでは議会の過半数で首相を選出できるが、最重要ポストである大統領は議会の5分の3にあたる61議席の支持を得なければ選出できない。このため過去10年、議会での幅広い合意が形成しえずに大統領を選出できず、暫定大統領となったことがたびたびあった。今回の選挙結果でも過半数を獲得した親欧米派3党は5分の3に達せず、強硬な親ロシア路線を採る社会党の躍進とともに、同国の政治的行き詰まり状況が続くことが懸念される。

詳しい議会選挙結果は次のとおり(カッコ内は前回比)。
モルドヴァ共和国社会党 25(前回は共産党名簿に参加)
モルドヴァ自由民主党 23(-9)
モルドヴァ共和国共産党 21(-21)
モルドヴァ民主党 19(+4)
自由党 13(+1)

モルドヴァ民主党 公式サイト(ルーマニア語。英語版、ロシア語版あり)
http://www.pdm.md/
2014-12-02

【ウルグアイ】ヴァスケス前大統領が返り咲き

11月30日、ウルグアイで大統領選挙の決選投票が行われ、左派・拡大戦線(FA、社会主義インター・進歩同盟加盟政党)のヴァスケス前大統領が勝利を決めた。対抗馬となったポウ下院議員(国民党(ブランコ党))は公式結果の発表を待たずして敗北を認めた。

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勝利集会でのヴァスケス前大統領(左)。右はセンディック次期副大統領。

ヴァスケス前大統領は74歳。ウルグアイでは大統領の連続再選を認めていないため、1期5年を同じ拡大戦線のムヒカ現大統領に譲っての今回の立候補となった。前回は就任時に経済好況にも支えられ、退任時には支持率70%にも達しており、今回もムヒカ政権を通じてその流れを呼び寄せることに成功した。これにより拡大戦線は3期15年にわたって政権を担うこととなる。

ウルグアイは昨年から大麻の合法化に取り組むなど「第三の道」的な寛容な社会政策を推進しており、ポウ下院議員はこうした政策の見直しも掲げたが、有権者は寛容なウルグアイを選ぶこととなった。

なお先月28日に大統領選挙第1回投票と同時に行われた議会上下両院選(下院・定数99、上院・定数30プラス副大統領、ともに比例代表制)の結果も、次のとおり出ている(カッコ内は前回比)。

拡大戦線 下院:50(±0)、上院:15(-1)
国民党 下院:32(+2)、上院:10(+1)#中道保守
コロラド党 下院:13(-4)、上院:4(-1)#中道
独立党 下院:3(+1)、上院:1(+1)#キリスト教社会主義が近い
人民会議 下院:1(+1)#極左

拡大戦線はそれ自体が政党であると同時に政党連合でもあり、社会党、「新空間」といった参加政党が社会主義インターに加盟しているほか、人民参加運動、キリスト教左翼、共産党などが参加している。今回、拡大戦線は自動的に上院入りする副大統領を加えて両院で過半数を確保した。

拡大戦線 公式サイト(スペイン語)
http://www.frenteamplio.org.uy/
2014-12-02

【ナミビア】大統領・議会選で南西アフリカ人民機構が圧勝へ

11月28日、南部アフリカのナミビアで大統領選挙および議会選挙(公選議席72、比例代表制)が行われた。その結果、ナミビアの南アフリカ旧アパルトヘイト政権からの独立を冷戦終結まで指導してきた南西アフリカ人民機構(SWAPO、社会主義インター加盟政党)が大統領選、議会選とも圧勝の勢いとなっている。

大統領選では現職のポハンバ大統領が2期10年を上限とする憲法の規定により立候補せず、代わってガインコブ首相が立候補した。同首相は4分の3以上の票を集め圧勝の勢い。また議会選もSWAPOの圧倒的優勢となっている。白人と黒人保守派による民主ターンハーレ同盟(DTA)や別の中道左派・民主進歩集会は5%以下となっている。

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第3代大統領に就任するガインコブ首相

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ナミビア独立戦争を指導したヌジョマ初代大統領

なお今回、アフリカで初めて電子投票が行われた。しかし野党は「選挙不正の検証ができない」と批判的姿勢と伝えられている。なおナミビアは独立以来大統領・首相とも全てをSWAPOが占めており、議会の過半数も割ったことが無いどころか、近年は3分の2を確保しつつある。このためナミビアではSWAPOが事実上、ガリバー的な一党優位政党となっており、SWAPO内の派閥や出身部族をめぐる論争がナミビア政界の多くを決定づけている。

南西アフリカ人民機構(スワポ党とも) 公式サイト(英語)
http://www.swapoparty.org/
プロフィール

西形公一

Author:西形公一
もと「民社ゆーす」(旧民社党全国青年部系)事務局長。昔は漫画と法律のことなどをやっていましたが、その後にインド・ネパール・タイなど熱帯アジアの国ぐにとパシュミナを軸とする小口貿易やNPO、研究活動など人とのつながりなどの縁ができて、今に至っています。写真は夕刻のゴア(インド)にて。

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