2007-02-23
【オランダ】バルケネンデ中道左派政権が成立
昨年11月の総選挙で有権者の分散化傾向が強まったオランダで22日、ベアトリクス女王はバルケネンデ首相を再任。首相の所属するキリスト教民主アピール(CDA)に労働党(PvdA、中道左派・社会主義インター加盟)、キリスト教連合(CU、プロテスタント。道徳保守・経済左派)の3党から成る中道左派連立政権が発足した。3党の合計議席は79議席と下院(正式名称は第二院、定数150)の過半数を占めることとなる。またボス労働党党首が副首相兼財務相に、ルボエCU党首が副首相兼青年家庭相に就任した。
連立政権が常態となっているオランダでは連立形成のシステムも発達しており、選挙結果を受けて国王(現在はベアトリクス女王)は、まず(主に)ベテラン政治家を「インフォルマトゥール」に指名。これにより政権形成ができる連立枠組みを模索し合意に至ったのち、予定される首相候補が国王の指名で「フォルマトゥール」となり与党となる政党のあいだの政策合意(しばしば連立協定や連立政権合意書の形をとる)を作ったうえで(連立の)政権を樹立する。
今回も2名のベテラン政治家が「インフォルマトゥール」として各党の意向を探り交渉を仲介しつつ、福祉社会政策を重視する政党の躍進が目立った 11月の選挙結果を受けCDA、労働党、CUの3党による連立形成が適切だという合意に至った模様だ。交渉段階では議席を3倍増し躍進した強硬左翼・社会党(SP)の政権参加も検討されたが中道保守・CDAとの連立を互いに拒み、環境政党グリーンレフトも政権参加を拒んだため、第1党のCDAと第2党の労働党に小政党でキリスト教かつ福祉派のCUが加わる、大方の予想と違わない大連立に近い形の連立が形成されることとなった。
今後は価値観の多様性と合意を追及するオランダ政治社会の伝統を踏まえつつ、福祉重視の政権運営が期待される。
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日本で民主社会主義や社会民主主義に関心を持つ方の多くは、このような連立形成のプロセスにも興味を強く持つのではないでしょうか? インフォルマトゥールは「情報交換役」、フォルマトゥールは「形成役」といったあたりが直訳語になるのでしょうが、オランダ政治独自の用語であり日本語訳しないほうが適切だと思います。こうした何重もの連立交渉システムは「さすが価値観の多様性を重視するオランダ」というところで、そのなかから保守・左派の双方に配慮した穏当な連立の組み合わせが出てくるのが興味深いところです。
もっとも「インフォルマトゥール」の人選が連立組み合わせを模索する際のバイアスになる可能性もありますし、その結果として戦後のほとんどの期間にわたってCDAが与党の一角を占め、連立ながらも永久与党化していると考えることもできます。が、日本なら首相よりも議長に推されるような交渉術に長けたベテラン政治家の力量や識見による判断が、それだけ信頼されているということなのでしょう。多様な価値観や主義主張と同時に寛容さを守る個々人の責任や交渉する姿勢、他者の尊重を重視するオランダ市民社会(あるいは全市民社会?)のあり方が、ここに現れているとみることができます。実際、数字の上では労働党を軸とする左派・福祉派連立や逆に労働党を排除する右派連立の可能性もありましたが、今回の得票が分散した選挙結果のうえでは安定せず無理があると判断されたのか今回、インフォルマトゥールによる交渉の段階で枠組みにのぼりませんでした。
他者への不寛容が左右を問わず広がる日本の風潮のなかで、こうしたオランダ政治の特徴から学ぶところは大きいように思います。それは民主社会主義や社会民主主義の精神とも、どこかつながりがあるように思うのです…と、ちょっとコメントが長くなってしまいました。
連立政権が常態となっているオランダでは連立形成のシステムも発達しており、選挙結果を受けて国王(現在はベアトリクス女王)は、まず(主に)ベテラン政治家を「インフォルマトゥール」に指名。これにより政権形成ができる連立枠組みを模索し合意に至ったのち、予定される首相候補が国王の指名で「フォルマトゥール」となり与党となる政党のあいだの政策合意(しばしば連立協定や連立政権合意書の形をとる)を作ったうえで(連立の)政権を樹立する。
今回も2名のベテラン政治家が「インフォルマトゥール」として各党の意向を探り交渉を仲介しつつ、福祉社会政策を重視する政党の躍進が目立った 11月の選挙結果を受けCDA、労働党、CUの3党による連立形成が適切だという合意に至った模様だ。交渉段階では議席を3倍増し躍進した強硬左翼・社会党(SP)の政権参加も検討されたが中道保守・CDAとの連立を互いに拒み、環境政党グリーンレフトも政権参加を拒んだため、第1党のCDAと第2党の労働党に小政党でキリスト教かつ福祉派のCUが加わる、大方の予想と違わない大連立に近い形の連立が形成されることとなった。
今後は価値観の多様性と合意を追及するオランダ政治社会の伝統を踏まえつつ、福祉重視の政権運営が期待される。
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日本で民主社会主義や社会民主主義に関心を持つ方の多くは、このような連立形成のプロセスにも興味を強く持つのではないでしょうか? インフォルマトゥールは「情報交換役」、フォルマトゥールは「形成役」といったあたりが直訳語になるのでしょうが、オランダ政治独自の用語であり日本語訳しないほうが適切だと思います。こうした何重もの連立交渉システムは「さすが価値観の多様性を重視するオランダ」というところで、そのなかから保守・左派の双方に配慮した穏当な連立の組み合わせが出てくるのが興味深いところです。
もっとも「インフォルマトゥール」の人選が連立組み合わせを模索する際のバイアスになる可能性もありますし、その結果として戦後のほとんどの期間にわたってCDAが与党の一角を占め、連立ながらも永久与党化していると考えることもできます。が、日本なら首相よりも議長に推されるような交渉術に長けたベテラン政治家の力量や識見による判断が、それだけ信頼されているということなのでしょう。多様な価値観や主義主張と同時に寛容さを守る個々人の責任や交渉する姿勢、他者の尊重を重視するオランダ市民社会(あるいは全市民社会?)のあり方が、ここに現れているとみることができます。実際、数字の上では労働党を軸とする左派・福祉派連立や逆に労働党を排除する右派連立の可能性もありましたが、今回の得票が分散した選挙結果のうえでは安定せず無理があると判断されたのか今回、インフォルマトゥールによる交渉の段階で枠組みにのぼりませんでした。
他者への不寛容が左右を問わず広がる日本の風潮のなかで、こうしたオランダ政治の特徴から学ぶところは大きいように思います。それは民主社会主義や社会民主主義の精神とも、どこかつながりがあるように思うのです…と、ちょっとコメントが長くなってしまいました。
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