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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

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2018.01
05
CM:15
TB:0
03:45
Category : 未分類
 「非常時だけ原発を動かす」意見に「『スイッチひとつで簡単発電』じゃねえんだ」と文句をつける御仁がいらっしゃる。

もりちゃん(CV:毒蝮三太夫)‏ @mollichane
話題になってたのでちょっと覗いたけど酷いねこれ。どうやったらここまでポンコツのエネルギー政策を作れるのか。オチの部分は「非常時だけ原発を動かす」のクダリ。「ほらスイッチ一つで簡単発電」じゃねえんだよ。
【全原発、速やかに廃止 立民の原発ゼロ法案の骨子判明】
https://twitter.com/mollichane/status/948829231517061121


 これは「非常時でも原発は即時に動かなくてもよい」ことを理解していない。長期的なエネルギー飢饉が見込まれても1ヶ月位かけてゆっくり動かせばよい。それがわからないのだろう。

■ 非常時も火発で賄える

 なぜならエネルギー資源が買えなくなるような非常時でも当座は火発で賄えるからだ。

 日本には1-2ヶ月を凌ぐための足りるエネルギーストックがある。まず石油、石炭はストックされている。石油は国家備蓄がある。燃料用石炭のパイルがあるし製鉄用の原料炭を混用転用してもよい。LNGも同じようなものだ。日本に向けて航海しているLNGタンカー搭載分もストックとみなしてよい。

 「『スイッチひとつで簡単発電』じゃねえんだ」は、そのあたりを理解していない。スイッチひとつで簡単発電できなくともかまわないのである。


■ LNGと石炭は入手できる

 それ以前に、非常時となるほどのエネルギー飢饉はあり得るかも疑問だ。

 なぜなら一切エネルギーが入らないほどの事態は考えがたいからだ。多少のことがあっても日本はLNGと石炭を入手できる。

 石炭はいくらでも余っており、主として豪州から買うため海上輸送の隘路はない。山元での石炭不足はないし、ホルムズ湾やマラッカ、南シナ海での海上輸送途絶といったシナリオを考える必要もない。

 LNGはもっと容易だ。余っていることは石炭同様だが、その上にどこからでも買えるからだ。中東が大混乱となっても豪州、米国、ロシアのサハリン2、ナイジェリア、インドネシアから購入できるので問題はない。LNG取引はスポット的なのでどこからでも買える。供給過多なので将来的に不足する可能性はない。


■ 高価な原発電力は要らない

 まずは非常時に電力不足となる可能性もないということだ。

 そもそも電力需要は落ちる一方である。人口減少があること。空調等での省電力機器が普及したこと。製造業からサービス業へのシフトといった産業構造そのものの変化で経済単位あたりの電力消費も減ること。さらにいえば家庭での太陽光発電により電力会社からの購入量が減っていることも足してよい。

 それは真夏にも節電要請がないことで実感できる。昔のように電力需給はカツカツではない。

 この状況では平時・非常時とも原発を動かす必要はない。

 安価で燃料入手が容易かつ環境負荷が小さいLNG火力で対応すればよい。

 「非常時にLNG供給が足りるか?」も気にする必要はない。LNG価格が上がればLNG供給は爆発的に増える。リードタイムが短い米国のシェールガス採掘は極短期間で盛んになる。長期的にもヤマルのようなガス田の新規開発も増える。あるいは戦略予備ともいわれる中国新疆ウイグル自治区の天然ガス採掘が始まるため必要なLNGは入手できるようになる。

 別に原子力に頼る必要もない。そういうことだ。


■ 平時・有事とも再稼働の必要はない

 その点からすれば、原発再稼働が必要である、即時発電の必要があると憤るのは誤りだということだ。

もりちゃん(CV:毒蝮三太夫)‏ @mollichane
立憲民主党のエネルギー政策を見ると、彼らは「原発再稼働」をこう言うものだと思ってるらしい。電力が不足して困ったらこれをポチッとすれば良いじゃんと言うレベル。右だろうが左だろうがこれを批判出来ない人はイチから勉強した方がいいです
https://twitter.com/mollichane/status/948938609880477696


 平時有事とも電力不足が起きる見込みがない。それなのに「電力が不足して困るから普段から原発を動かせ」と主張しているほうが「イチから勉強した方がいい」。


■ オマケ

 LNGと石炭が入手できればガソリンも軽油もCTLやGTLで確保できるよねえ。原材料と合成コストがリッター100円でも大丈夫でしょ。ガソリン価格は10年ほど前に一時180円まで高騰したが経済活動が止まることはなかった。仮に中東がだめになってもシェールオイルやオイルサンド、今は政情不安定だけどオリノコヘビータールの改質油と足せば国民生活を維持するくらいはどうにかなるでしょ。

Comment

非公開コメント

No title

>オマケ
人造石油は100年前から緊急時の実績がありますからねぇ。
戦時中って事はありますが。

昔と比べて倍は高いし、今でもガソリン税ぼったくってますから、
価格統制して税金免除すればトータルでも今とあんまり変わらないのかなと。

No title

仮に太平洋戦争みたいな状況ですべての燃料が入ってこなくなることがあり得たとして、その時ウランだけは輸入できるという想定もまた非現実的ですね。

No title

有名な短絡バカですな。

あの非常時って単純に戦争のことだったのですね。それなら御説の通りです。

私はまた地震津波のような災害だと思っていました。例えば、東海地震で太平洋岸の火発が止まったから若狭の原発を緊急的に再稼動すると言うような。

立憲民主党も、本音では共産党みたく即時脱原発と訴えたいんでしょうが、電力会社労組への義理で「非常時には原発再稼働する可能性があるよ」と書いたんじゃないですか?(笑)
ま、文谷さんの御指摘通り、現実には、原発再稼働する前に別の方策で電力不足は回避されるわけですが(笑)

Re: タイトルなし

「どうせ再稼働なんかしない」し「運転させる気もない」けど「即時全廃を言い出す必要もない」くらいの判断だと思います
新しくて地盤もいいところの原発はストックしておくという発想自体は別に悪いとはおもいませんけど

> 立憲民主党も、本音では共産党みたく即時脱原発と訴えたいんでしょうが、電力会社労組への義理で「非常時には原発再稼働する可能性があるよ」と書いたんじゃないですか?(笑)
> ま、文谷さんの御指摘通り、現実には、原発再稼働する前に別の方策で電力不足は回避されるわけですが(笑)

No title

え?非常時だから、製鉄用石炭も使うとか、社会経済全部止めて飢え死にしろというの?
すごいですね。さすが、インフラにただ乗りする働いてない人はうらやましい。

Re: No title

経済統制しないで「非常時」が乗り切れると考えられるあたりが羨ましいです
あの銭ゲバ資本主義のスイスでも第二次世界大戦では社会や経済を全部止めないため餓死しないために統制しましたよね

> え?非常時だから、製鉄用石炭も使うとか、社会経済全部止めて飢え死にしろというの?
> すごいですね。さすが、インフラにただ乗りする働いてない人はうらやましい。

Re: No title

というかさ、535年の大噴火みたいな事態になれば普通に食料法は食管法なみに運用されるよね
花卉栽培や蔬菜生産は抑止あるいは禁止されて全部カロリー作物に転用されるよ
「製鉄用石炭も使うとか」ってそのときに「商品作物をやめろというのか」というようなもんだ

> え?非常時だから、製鉄用石炭も使うとか、社会経済全部止めて飢え死にしろというの?
> すごいですね。さすが、インフラにただ乗りする働いてない人はうらやましい。

No title

> 仮に太平洋戦争みたいな状況ですべての燃料が入ってこなくなることがあり得たとして、その時ウランだけは輸入できるという想定もまた非現実的ですね。

原発擁護派の方々は「だからこそ核燃料サイクルが必要なんだ!」と言い出しそうですけども、高速増殖炉もんじゅの廃炉で核燃料サイクルは風前の灯火なんですよね。

もんじゅ、22年度までに燃料取り出し 廃炉計画を提出
https://www.asahi.com/articles/ASKD60C1KKD5ULBJ01M.html

で、たまりにたまったプルトニウムをMOX燃料として活用しようとすると莫大な金がかかり、かつ膨大な核のゴミが出るという…

MOX燃料価格ウランの燃料の9倍と朝日新聞
これまでの核情報のデータに付合
http://kakujoho.net/mox/mox9xU.html

プルサーマル計画の現状と問題点
http://www.cnic.jp/files/lec/20080529ban.pdf

労多くして益少なしー不必要な「プルサーマル」
https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/3989.pdf

で、仮にプルサーマルが上手くいったとしても、生み出せるのは電気だけ。石油その他は生み出せない。

それとも、自動車やバイク、船舶、列車、航空機、ロケット、ミサイル等を全て電動にしますか?(苦笑)

No title

>>新しくて地盤もいいところの原発はストックしておくという発想自体は別に悪いとはおもいませんけど

非常用に数基だけ残し、かつ警備体制を厳重にしましょう。

>>花卉栽培や蔬菜生産は抑止あるいは禁止されて全部カロリー作物に転用されるよ

電力不足が現実のものになったら「オール電化住宅禁止令」や「屋根や屋上、空き地等に太陽光発電パネル設置命令」とか出たりして。

No title

第一次オイルショックの際は、日本に移動中のタンカーが持っている石油を勘定に入れてどこまで持つか試算したのですよね。

まぁ、あそこまで極端な不意打ちの場合、統制経済への移行は困難だと悲鳴を上げたのも事実の一端ではありますがね。確か『証言 石油危機』にそんな話も載っていた筈です。

後年『東電帝国の失敗』を著した朝日志村嘉一郎記者が参加しているので、電力業界による偏向はあれでも信頼に値する記述かなと思っています。

とは言え、騒いでる輩は何時もの連中ですし、備蓄や供給ルート、依存度の話等を振っても無駄かなぁとも思います。聞かれたら「お前から飢え死にさせるいい機会だからこれから死ぬ奴が将来の心配なんかするんじゃない!」と答えたら面白いですw

Re: No title

石油ショックにしても「石油がタダではなくなる」だけの話で「石油飢饉」ではなかったですからねえ。
それで資金繰りが怪しくなったあたりが混乱と衝撃の原因で

だから、計画経済風の影響が強い時代でありながらも本質的には統制までは必要なかったのではないでしょうか
価格メカニズムで調整できたとも言えるわけで

> 第一次オイルショックの際は、日本に移動中のタンカーが持っている石油を勘定に入れてどこまで持つか試算したのですよね。
>
> まぁ、あそこまで極端な不意打ちの場合、統制経済への移行は困難だと悲鳴を上げたのも事実の一端ではありますがね。確か『証言 石油危機』にそんな話も載っていた筈です。
>
> 後年『東電帝国の失敗』を著した朝日志村嘉一郎記者が参加しているので、電力業界による偏向はあれでも信頼に値する記述かなと思っています。
>
> とは言え、騒いでる輩は何時もの連中ですし、備蓄や供給ルート、依存度の話等を振っても無駄かなぁとも思います。聞かれたら「お前から飢え死にさせるいい機会だからこれから死ぬ奴が将来の心配なんかするんじゃない!」と答えたら面白いですw

No title

>本質的には統制までは必要なかったのでは

ちょっと記憶がうろ覚えですが、第一次の時、OPECは「アラブの友好国にしか売らない」と宣言し、
対米追従の都合上イスラエルと友好関係にあった日本はてんてこ舞いになったという話ではなかったでしたっけ。
結局高値出せば買えることになるんですが、買えないと言われた話や、エコノミックアニマルとの後ろ指に対する自覚があったり、その頃田中角栄の資源外交がインドネシアの反日暴動(太平洋戦争時代の反感)を引き起こしたりと、アラブ以外の産油国の感情も決してよくは無かった。一方でソ連からは買いたくないと。それがトラウマとして記憶に残り、あるいは利用されたのでしょう。

ただ、価格メカニズム~統制不要論も当時から言われてましたね。金を出せば買えることが分かっていた第二次の時は特にそうだった。

藤島泰輔がポールボネ名義で書いてたエッセイで「日本は1バレル50ドルになっても買える国。ギリシャみたいに車のナンバーの奇数偶数で給油できる日を指定する必要もない」と指摘していたのは覚えてます。

オイルショックをネタに発言力を増そうと画策したのは原発の連中と(申し訳ないが)国防セクターの一部で、後者は米国の戦略物資備蓄やらの話を色々紹介する動きを見せてました。まぁ、その全てを否定するつもりはありませんが。

Re: No title

石油戦略は全くそのとおりなのですけど
もともと日本はさほど親イスラエルの自覚はなかったですからね
その反對の親/反アラブの自覚もない
そもそもアラブは10-20年前まで植民地で弁務官による支配にあったから親しいも反抗もないという

ちなみに、そのころ平気でソ連から石炭とか鉄鉱石とか木材とか買ってましたし鉄鋼冶金技術も買ってました
日本も繊維や生産設備や輸送機械を平気で売ってました、別にソ連から買うのが嫌ということもないですが
極東ソ連からの購入は開発権をもらって半分を設定価格で買うみたいな話で当座の役に全く立たないから、まあ駄目と

> ちょっと記憶がうろ覚えですが、第一次の時、OPECは「アラブの友好国にしか売らない」と宣言し、
> 対米追従の都合上イスラエルと友好関係にあった日本はてんてこ舞いになったという話ではなかったでしたっけ。
> 結局高値出せば買えることになるんですが、買えないと言われた話や、エコノミックアニマルとの後ろ指に対する自覚があったり、その頃田中角栄の資源外交がインドネシアの反日暴動(太平洋戦争時代の反感)を引き起こしたりと、アラブ以外の産油国の感情も決してよくは無かった。一方でソ連からは買いたくないと。それがトラウマとして記憶に残り、あるいは利用されたのでしょう。
>
> ただ、価格メカニズム~統制不要論も当時から言われてましたね。金を出せば買えることが分かっていた第二次の時は特にそうだった。
>
> 藤島泰輔がポールボネ名義で書いてたエッセイで「日本は1バレル50ドルになっても買える国。ギリシャみたいに車のナンバーの奇数偶数で給油できる日を指定する必要もない」と指摘していたのは覚えてます。
>
> オイルショックをネタに発言力を増そうと画策したのは原発の連中と(申し訳ないが)国防セクターの一部で、後者は米国の戦略物資備蓄やらの話を色々紹介する動きを見せてました。まぁ、その全てを否定するつもりはありませんが。

かつて江畑氏の本で

お邪魔します。

 かつて江畑氏の本に原子力艦は使う当てが無くなると保存される事無く解体処分されたといった事が書いてありました。通常艦なら燃料の抜き取りは容易でしょうけど、原子力艦の場合は燃料棒をどうこうするのは大変で(だからバージニア級原潜は原子炉を長寿命化し、艦と原子炉を”一緒に”使い捨てるようにしたとか)、かつ入れっぱなしにしていたのでは停止状態でも劣化が避けられないからではないかと推測されます。となれば原発の場合は燃料棒の交換等は軍艦程困難ではなく、冷却保存用のプールも敷地内にあったりしますから、長期に渡って停止するならそちらで保管するというのもありかと思います。

 「スイッチ一つ」と「新しく作った方がマシ」の間には幾つかの段階というか「右肩上がりのコストがメリットを追い越す点」がありますが、それを「ゼロか一か」でしか無いように考えているのではないかと思われます。

 後「定常運転云々」は「一日の中で電力消費量に応じて行う出力調整運転」と一緒にされているのではないかと思われます。確かに「出力調整運転」は元々原子炉が一定の出力での運転を前提に作られていますし、燃料そのものの供給ではなく中性子の吸収量等で制御しているため制御がそれだけやり難いという事があるでしょうが。