村野瀬玲奈の秘書課広報室

本当はブログを更新してすぐにコメントを送ればよかったのですが、色々あってタイミングを逸してしまいました。古い話題を蒸し返すようで恐縮ですが、お許しください。

高橋はこの関連のツイートで、この「さざ波」という表現は木村さんの受け売りだ、という趣旨の釈明をしています。この「木村さん」とは、元厚生労働省医系技官・木村盛世のことです。
この人物は、2009年の新型インフルエンザ蔓延の際にも、当該ウイルスは弱毒性だから封じ込め政策は馬鹿げていると軽視していた過去があり、今回の新型コロナウイルスについても当初から軽視していました。
昨年2月にはフジテレビの「グッディ！」という番組に出演し、終始不機嫌そうな顔で『こんなの防ぎようがない！どうせ入ってくるんだから、対策なんて無駄ですよ！』などと吐き捨て、その言動の酷さから炎上して一時は行き場を失いました。
しかし、この“コロナ軽視”の姿勢が小林よしのりや花田紀凱といった極右の目に留まり、彼らに活躍の場を与えられたのです。
前述の高橋とこの木村は、大阪・朝日放送の「正義のミカタ」という番組の常連コメンテーターで、今ではこちらに出演するタレント（主に吉本芸人）らも木村にでたらめを吹き込まれたのか、同様にコロナ軽視をし始めました。
同番組司会の東野幸治はツイッター上で高橋を擁護し、報道機関を「マスゴミ」呼ばわりする有様です。

「さざなみ」と言えば，昔必殺シリーズで舞踊家兼歌手の西崎みどりさんが「さざなみ」という歌を歌っていたのを思い出しました。

　それはさておき，学識経験者として大きな影響をもつ藤岡信勝を無視することはできません。藤岡は「自由主義観研究会」を立ち上げ，「新しい歴史教科書をつくる会」の副会長に就任しました。

　藤岡は「東京裁判史観」と「大東亜戦争肯定観」とは異なる第三の歴史観「自由主義主観」を主張しました。「自由主義史観」のカテゴリーに入るものとして司馬遼太郎の「司馬史観」をあげ，ナショナルなものを全面否定するのではなく，左右両翼のイデオロギーに惑わされない合理主義をもって，昭和軍国主義のような官僚主義を受け入れないとしています。
　具体的には南京大虐殺はなかった，虐殺されたのは少数だった，従軍慰安婦はなかった，という主張で実は特定のイデオロギーに則ったものでした。

　藤岡は言いました。「『南京大虐殺三十万』という嘘で世界に類のない残虐民族だという烙印を押しただけでなく，こんどは世界に類のない好色，淫乱，愚劣な民族だという烙印を押すことになるのです」「要するに子どもたちに植え付けられたのは，東京裁判そのものというべき一方的な自虐史観である。一歩的な証拠だけで日本を断罪する結果になっているという点でも，東京裁判と同じである。反日イデオロギーの注入の教育と言われても抗弁できない構造をもっている」
　「日本全体にくまなく配置された学校は，実際は国民全体を反日思想に染め上げ，マインド・コントロールをかける場になっている。そのための決め手になる，最も効果的な科目は，ほかならぬ『歴史』である」「学校は反日思想注入のサティアンである。日本は，その全体が空間的に拡大された巨大な上九一色村なのである」と。

　粟屋憲太郎氏は「『東京裁判史観』という用語は一定の政治的スローガンにすぎず，虚偽にもとづくものである」「孫引きを得意とする藤岡氏が東京裁判の判決をしっかり読んでいないことは明白であり，このような政治的スローガンを安易に教育現場に導入しようとする彼の教育学者としての志の低劣さに唖然とするばかりである。・・・藤岡氏をはじめ『東京裁判史観』批判を語る者は，かならずといっていいほど東京裁判の基本的事実さえ正確に把握していない」と批判しました。

　岩井忠熊氏は「『東京裁判史観』を批判する人たち（＝藤岡氏ら『見直し論』者）が，東京裁判が昭和天皇の戦争責任を免責した事実に触れようとしないのはフェアではない」と批判しました。
　天皇の戦争責任に関しては，山田明朗氏が「昭和天皇は，日本陸海軍の総司令官＝大元帥としてプロフェッショナルな軍人としての軍事知識と能力を持っていたし，作戦もしばしば積極的に関与していた」として，「天皇には政策の決定権すらなかった」という藤岡氏の主張は「戦後の政府・宮内庁・昭和天皇自身とその側近たちが行なってきた『プロパガンダそのまま』の天皇像による」と批判しています。

　藤岡が司馬遼太郎の小説から「自由主義史観」を説明することに批判があります。藤原彰氏は「歴史研究の成果を無視し，小説家の作品で歴史を解釈するのは，歴史観という名に値するものではない」「小説はフィクションであって歴史の事実ではない。事実でない基礎の上に組み立てられた歴史観は，歴史の事実を誤り伝える危険があるというほかはないのである」といいました。高野邦夫氏も，「歴史学と歴史小説の違いという根本問題が無視されている」と指摘しました。

　以上の内容は，「『近代史の教育』論争」（塩野谷斉・東京大学大学院教育学研究科教育行政学研究室紀要　第16巻　1997年）から一部引用しました。

　藤岡信勝は，声だけが大きくて，その内実は不勉強で特定の政治イデオロギーを擁護する御用学者であることを認識する必要があると思います。

　大澤昇平・元東京大学大学院特任准教授が，伊藤詩織を通名とする外国人と見られる人が破産宣告を受けた官報公告の画像を添付，「＃性行為強要」などのハッシュタグを添え，伊藤詩織は外国人じゃやねーかとツイッターに投稿しました。

　東京地裁は大澤被告に33万円の損害賠償とツイートの削除を命令しました。

　大学教員という学識経験者の劣化が著しいと感じます。藤岡信勝も東京大学名誉教授ですし，髪の長い百田尚樹と言われる国際政治学者の三浦瑠麗も東京大学卒業でしたね。

　沖縄戦「集団自決」名誉毀損・出版差止請求訴訟は，2005年8月5日に原告梅澤裕（沖縄戦において座間味島駐留第32軍海上挺身隊第一戦隊長だった），赤松秀一（第32軍海上挺身隊第三戦隊長だった故赤松嘉次の弟），被告大江健三郎及び岩波書店として大阪地方裁判所に提起されたものでした。原告の代理人は稲田朋美をはじめとする総勢40人の大弁護団でした。

　原告は「沖縄ノート」には，氏名が明記されていないものの，守備隊長が住民に自決せよと命令した記載があり，兄である故赤松嘉次大尉が集団自決を命じたとする記述につき、敬愛追慕の情侵害に基づく損害賠償請求と謝罪広告及び出版差止の請求を行いました。

　原審の口頭弁論終結後，突如として被控訴人梅澤裕の伝令要員を務めていたという人物が「梅澤が自決してはならないと厳命した」旨の新証言が飛び出しました。
　大阪高裁は詳細な事実認定を行い，「新証言」は「明らかに虚言であると断じざるを得ず，上記関連証拠を含めて到底援用できない」と断定したうえ，自由主義史観研究会代表の藤岡信勝教授の「新証言」の信憑性を強調した意見書をはじめ原告側学識経験者の意見書等を証拠価値がないと断定しました。

　2008年10月31日，大阪高等裁判所は控訴棄却，2011年4月21日最高裁は上告棄却の判決を言い渡しました。
　これは日本軍による「集団自決」の強制性を認め，日本の国家責任を認定した歴史的判決と言われています。

　裁判所は自決命令捏造説は虚言であると断定したわけですが，そのような虚言を補強するために意見書を書いた藤岡信勝の悪辣さぶりを忘れてはいけないと思います。

　内容は，「法廷で裁かれる日本の戦争責任」（瑞慶山茂・宇都宮軍縮研究室/
高文館）から一部引用しました。

　1937年12月13日，日本軍により，同居していた家族9人のうち祖父母，両親，姉2人，妹１人の7人が殺害され，自身も三箇所銃剣で刺された夏淑琴さんについては，マギーのフィルム，マギーのフィルム解説文，ラーベ日記，国際安全委員会の報告などに記載されていました。

　南京大虐殺否定派の東中野修道は「『南京虐殺』の徹底検証」で夏淑琴さんをニセの被害者であると書き，彼女の名誉を毀損しました。
　いわく，
　①　（この資料に登場する生き残った）「『八歳の少女』と夏淑琴は別人と判
　　断される」
　②　「『八歳の少女（夏淑琴）』は事実を語るべきであり，事実をありのまま
　　に語っているのであれば，証言に食い違いが起こるはずもなかった」
　③　「さらに驚いたことには，夏淑琴は日本に来日し証言もしているのであ
　　る」
　と。

　夏淑琴さんは名誉を傷つけられたとして南京市の裁判所に提訴し，原告勝訴の判決を勝ち取りました。東中野と出版社は2005年1月東京地方裁判所に名誉毀損行為は行なっていない旨債務不存在確認訴訟を起こしました。夏淑琴さんは2006年5月，名誉毀損に基づく損害賠償請求を日本で行いました。
　2007年11月2日，東京地方裁判所は夏淑琴さんに対する名誉毀損及び人格権侵害を認め，夏淑琴さん勝訴の判決を言い渡しました。

　「普通の注意と読み方をする一般の読者であれば，本件記述から「原告が生き残った『八歳の少女』ではないのに『八歳の少女』として虚偽の証言をしている」と理解することは明らかであるから，本件記述は「原告が『八歳の少女』ではないのに『八歳の少女』として虚偽の発言をしている」との事実を適示するものと見るのが相当である。そして，原告はいわゆる南京事件の生存被害者として広く知られた人物であるから，上記事実の適示は原告の名誉を毀損するものであり，また原告の名誉感情を著しく侵害するものである」

　として名誉毀損と人格侵害を認め，真実性についても「原告は『八歳の少女』
ではないという事実は立証されず，真実性の証明がない」としました。

　問題になったのはマギーフィルム解説文にあったbayonetedの訳でした。
bayonetには「銃剣で突き殺す」という意味と「銃剣で突き刺す」の二義があり，後者の訳であれば，マギーの解説文の直後に記載されている銃剣で突きさされた少女（夏淑琴さん）が母親のもとに這っていったという文章とも矛盾なく理解されるところです。
　ところが東中野は「突き殺した」と誤訳し，フィルム解説文の文章を不明にしたうえ，夏淑琴さんをニセの被害者と書きました。
　定冠詞のtheの用法やフィルム解説文の前後の文脈を見れば「銃剣で刺した」と訳すべきものであることは中学生程度の英語力があれば容易に理解されうるものでした。
　判決は次のように言いました。
　「通常の研究者であれば『突き殺した』と解釈したことから生じる上記不自然・不都合さを認識し，その不自然さの原因を探求すべくそれまでの解釈過程を再検討して，当然に『七，八歳になる妹』と『八歳の少女が同一人である可能性に思い至るはずである」
　
　「以上二点だけからしても，被告東中野の原資料の解釈はおよそ妥当なものとは言い難く，学問研究の成果というに値しないと言って過言ではない」

　控訴審では控訴棄却，上告審では最高裁が2009年2月5日に上告棄却を言い渡し，東中野修道の敗訴が確定しました。

　南京大虐殺否定派は，日本の過去の過ちを絶対に認めず，南京事件の存在を否定するという主観的結論が大前提であることから，自己の主観的結論を導きだすために資料の歪曲，不都合な資料の無視，資料の誤訳まで平気で行うことになるのです。

　以上の内容は，「法廷で裁かれる日本の戦争責任」（瑞慶山茂・宇都宮軍縮研究室/高文研）から一部引用しました。

　御用学者，歴史修正主義の学識経験者はこのように学問研究のレベルが極めて低いことに注意すべきだと思います。