児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 [email protected])

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

弁護士奥村徹(大阪弁護士会) 事務所での面談相談・電話・メール・skype・zoom等で対応しています。

実績についてはこちらを参照してください。
www.courts.go.jp


通常態勢
平日は通常態勢
事務所は平日09:30〜17:30です。
それ以外は弁護士が下記の電話で対応します。
必要があれば、事務所で対応します。

弁護士への連絡は、
通常
   TEL 050-5861-8888(弁護士直通)
   FAX 06-6363-2161(外出先でも読んでいます)

   メール [email protected](携帯でチェックしています。パソコンからのメールを受信できるようにしてください。)
   Skype okumura_law

緊急相談用
   050-5861-8888
   [email protected](携帯でチェックしています。パソコンからのメールを受信できるようにしてください。)
となっています。

地図
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児童ポルノ単純所持罪の対応~女子高生TikToker(tiktok TikTok チックトック チックトッカー)の動画をダウンロードとか販売した人の対応 AiiPeep(アイイピープ)とか動画シェアとか、パンコレとか、アルバムコレクション等も

五月雨式に相談がくるので、まとめておきます

1 ダウンロード者

児童ポルノ単純所持罪が検討される。

7条1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する

 完全削除(できれば物理的破壊)で、刑事責任は回避できる。この罪だけでは逮捕はない。

 捜索を受けた時に備えて、
  ①間違ってダウンロードした場合は、「自己の性的好奇心を満たす目的」に欠けるという弁解
  ②ダウンロード元の情報として、児童(「15歳」とか「17歳」とか)と表示されていない場合には、「児童と知らなかった」という弁解
を用意しておく。弁護士に相談して、最寄り警察に相談しておけば捜索の危険はかなり下がる。

 被害者対応は、警察相談と併行して。
 あちらからの流出経緯・こちらの入手状況・児童性の認識の程度によっては、不法行為責任は小さくなる可能性。
 撮影した者は製造罪になる。出演児童も共犯になりうるという裁判例もある。

リベンジポルノ罪については、普通、画像上はわからないので、そう弁解する。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。
(私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

 捜索はあるかないかわからないし、破棄してあれば捜索は空振りに終わるので、捜索を甘受するという選択肢もあるという説明をします。
 どうしても、捜索を回避したい(士業・医師・歯科医・教授・教員・就職活動中の学生等)の場合には、弁護士が対応します。
 弁護士費用としては
  相談料は22000円(確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
  対応する場合の費用は、220000円程度(士業・教員・公務員は330000円 他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合、報酬金はなし。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。
 県警によっては、「捜索差押しない・刑事処分ない」という回答をもらえることがある。


2 販売者・アップロード者
 わいせつ電磁的記録頒布罪・公然陳列罪
 児童ポルノ提供罪・公然陳列罪・提供目的製造罪
 リベンジポルノ公表罪
などが検討されるので、弁護士に相談して、逮捕を回避したい。

7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 弁護士費用は、逮捕危険があるので、応相談としています。分割払は可能。
 中心的な弁護士費用としては
  相談料は22000円
  対応する場合の費用は、
   着手金330000円程度(他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
   報酬金220000円程度(逮捕されなかった場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。


追記2021/08/27
 ダウンロード・購入者の捜索回避の警察相談は各地に数件かかりました。
 いずれはどこかの警察(被害者の住所など)に集中するんじゃないでしょうか。

追記2021/09/17
 児童ポルノ製造罪・提供罪・単純所持罪について捜査している警察(A都道府県警察のB警察署)は判明し、連絡が取れました。
 購入者は地元警察・B警察署へ相談。
 販売者は、B警察署へ。(B警察署名は教えられません。例えば大阪市西天満に済む花子さん(17歳)が、「はなちゃん」という芸名で活動していて、その裸体画像が流出した場合に、「はなちゃんさんが天満警察署に相談した」と公表してしまうと、はなちゃんの児童ポルノであること・天満警察管内に住所があることがバレてしまい、被害者が特定されてしまうからです。)


 所持罪の捜索があったという知恵袋の書き込みがありましたが削除されました。 
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12249473407
推知報道禁止と思われます。

 第一三条(記事等の掲載等の禁止)
 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌ぼう等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

追記 2022/01/01
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたので、
埼玉県警からの情報提供を受けて各地の警察が捜査しているものと思います(全国協働方式)

追記 2022/03/31
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたが、
破棄して警察相談した人は捜索は受けず
捜索を受けて現認された人は、ほぼ罰金という処理になっています。

法務省刑事局付丸山真理子検事「児童に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同法7条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても、なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立するとして、同罪で公訴が提起された場合、裁判所は同項を適用することができるとした事例」警察公論80巻1号p83

法務省刑事局付丸山真理子検事「児童に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同法7条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても、なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立するとして、同罪で公訴が提起された場合、裁判所は同項を適用することができるとした事例」警察公論80巻1号p83
 重い性犯罪に並行して製造行為をやっていて姿態を取らせたことが明らかな事案で、「前二項に規定するもののほか、」っていうんだから、4項でも5項でもいいという解釈なんてあり得ないよね。4項に決まっていて、5項を適用した事件は法文見てないだけだよ。

児童ポルノ・児童買春法7条
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

丸山検事によれば
島戸純検事「「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」について」警論57巻8号97頁
坪井麻友美検事「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する一部を改正する法律について」法時66巻11号55頁
は間違ってるとされるのに注意

本判決の意義等
本判決の原審は、5項製造罪が新設された趣旨について、盗撮によって行われる児童ポルノ製造行為の悪質性等を踏まえ、従前の規制対象に加え、処罰範囲を拡大するものであると解した上で、大阪高裁判決の結論を前提とした場合に、5項製造罪の該当性を判断するに当たって他の製造罪に該当しないことについて厳密な証拠判断を要することとなるという実質論も考慮しつつ、本法7条5項の「前二項に規定するもののほか」の意味するところについては、大阪高裁判決とは異なり、「3項製造罪又は4項製造罪として処罰されるものを除く」という解釈をとった。
その上で、東京高裁判決と同様に、4項製造罪と5項製造罪の適用関係については、検察官の訴追裁量の問題と捉えている。
本判決は、5項製造罪の立法趣旨について、従前の規制対象に加え、処罰範囲を拡大したものと解釈した上で、3項製造罪及び4項製造罪も含めた各児童ポルノ製造罪の保護法益、法定刑に照らし、児童に姿態をとらせ、これをひそかに撮影するなどして児童ポルノを製造したという事実について、当該行為が同条4項の児童ポルノ製造罪にも該当するとしても、なお同条5項の児童ポルノ製造罪が成立し、同罪で公訴が提起された場合、裁判所は、同項を適用できる旨判示した。
さらに、最高裁は、このように解さなければ、事案によっては、5項製造罪該当性を判断する前提として、検察官は他の製造罪の不成立を、被告人側が成立の反証をするといった「不自然な訴訟活動」を行わせることになりかねないという実質論に踏み込んで結論を導いていることにも注目される。
その上で、最高裁は、本法7条5項の「前二項に規定するもののほか」の文言について、その解釈を明示せず、この「文言は、以上の解釈を妨げるものではない」と判示した。

単純所持罪(7条1項)は、長年経過しても、捜索差押令状が出ていると思われる事例

 報道を総合すると、起訴されていない被害者の所持の起点はh24~25(2012~13)らしいので、すぐ破棄されると公訴時効(3年)は2016になるが、起訴されていない被害者の事件で2022.11に捜査が始まり、2023.9には捜索差押えを受けて現認され、2023.9.11に単純所持罪で逮捕された。ということで、単純所持罪の捜索差押というのは、3年以上経過しても出るのだということがわかります。
 裁判所の意識としては、所持犯は所持し続けるものと考えられること、破棄されたことがわからないことからだろうと思います。
 単純所持罪は押収物の解析から未発覚の性犯罪の突破口となることがあるので、空振り覚悟で捜索されることが多くなっています。



中学元校長 懲役9年 生徒に性的暴行 「上下関係が背景」 東京地裁判決
2024.12.10  読売新聞
判決によると、被告は中学校で学年主任などを務めていた2010年6月、女子生徒(当時14歳)に校舎内で性的暴行を加えてけがを負わせた。校長だった23年9月には、女子生徒らへのわいせつ行為を記録した映像を校長室で所持した。

児童ポルノ容疑 中学校長を逮捕
2023.09.11 読売新聞
 発表によると、容疑者は10日、同校の校長室で、女子中学生の裸の画像を記録したデジタルカメラ1台を所持した疑い。被害者は容疑者が過去に勤務した学校の生徒で、調べに容疑を認めている。都教育委員会の窓口に昨年11月、「過去にわいせつ行為を受けた」と匿名の通報があり、警視庁が捜査していた。

中学生に性加害 あす判決 校長の非道…時効の壁 教え子2人、告発の行方は
2024.12.08 産経
 準強姦罪の公訴時効(発生から起訴ができるまでの期間)は10年、けがを伴う準強姦致傷罪の公訴時効は15年となる。

 検察側は、被害申告した女性が24~25年に受けた性被害については時効の可能性などを考慮し起訴しなかったが、22年の性的行為に対する準強姦致傷と、当時少女だった2人の女性の映像を所持した児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で、被告を起訴した。

 今年11月20日の初公判。検察側は冒頭陳述で、被告が22年6月、マッサージ名目で当時中学3年だった被害女性を呼び出して性的行為をし、その際に体の一部にけがをさせたと主張。進路指導の主任や部活動の顧問だった被告との関係悪化を恐れ、女性が「抵抗できなかった」とした。

 被告は、2人の女性の映像を所持した罪については認めた上で、準強姦致傷罪については無罪を主張した。弁護側は、性的行為をしたことは認めつつ、女性は別の機会に誘いを断るなどしており、今回も拒むことができたとして「準強姦には当たらない」と反論。さらに、けがには診断書がなく、準強姦致傷罪は成立しないとも訴えた。

 準強姦致傷罪で被告が追起訴されたのは、事案発生から13年8カ月後の令和6年2月。準強姦致傷罪であれば時効前だが、準強姦罪なら時効で、起訴が無効とされる「免訴」となる。

 被害申告した女性への性的行為が起訴されていない以上、もう一人の女性への行為が免訴となれば、被告が認定されるのは児童ポルノ所持罪のみ。無期懲役の可能性もある準強姦致傷罪に対し、児童ポルノ所持罪の上限は懲役1年、罰金100万円に過ぎない。

女性と偽って、陰部画像を送らせた行為を、人違いの不同意わいせつ罪(176条2項)で逮捕した事例

 女性と偽って、陰部画像を送らせた行為を、人違いの不同意わいせつ罪で逮捕した事例

 176条2項人違い類型での逮捕事例です。

(不同意わいせつ)
第百七十六条
2行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

「メッセージや電話でやりとりをしていました。その間、男は女性を装って対応していて、男性はそれに気づきませんでした。このやり取りの中で、男性は求めに応じて、自身のわいせつ画像を男に送ってしまったということです。」だと「行為者の同一性は正しく認識した上で、その属性に関する誤信をしているにすぎない場合」じゃないかなあ。

逐条説明
3 各条の第2項
性的行為が行われるに当たって、その相手方に何らかの錯誤が生じている類型については、同意の前提となる事実の認識を欠くものの、当該行為を行うこと自体について外形的には同意が存在するという特殊性があり、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態」にあったかどうかで犯罪の成否を区別することとした場合には、犯罪の成否をめぐる評価・判断のばらつきを生じさせることとなりかねないことから、第1項に含めるのではなく、別途規定することとするものである。
その上で、相手方に錯誤が生じている類型の中には、その錯誤があることによっておよそ自由意思決定が妨げられる性質のものと、そうでないものが混在するため、それらを区別せずに包括的な形で規定した場合には、強制わいせつ罪・強制性交等罪として処罰すべきとはいえないものが処罰対象に含まれることとなり、相当でない。
そこで、強制わいせつ罪及び強制性交等罪の保護法益である性的自由・性的自己決定権が侵害されたといえる場合、すなわち、自由意思決定が妨げられたと一般に評価できる錯誤のみが処罰対象となることを明確にする観点から、第2項においては、
○その誤信があれば、自由意思決定が妨げられたといえる類型、すなわち、
・行為がわいせつなものではないとの誤信がある場合(注6)
・行為をする者について人違いがある場合(注7)
を限定的に列挙し、
○「その他これらに類する行為により同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ」又は「その他これらに類する事由によりその状態にあることに乗じて」との包括的要件を設けないこととしている。
なお第176条第2項及び第177条第2項の行為はいずれも行為者が行い又は行おうとしているわいせつな行為又は性交等、すなわち、実行行為を指すものである。
(注6)行為がわいせつなものでないとの誤信があった場合には、被害者は「行為」には、同意しているものの、それが「性的」なものであるとすれば、そのような「性的行為」には同意していないのであるから、その意味で「性的行為をするかどうか」についての自由意思決定があったとはいえず、その誤信を利用して性的行為を行った場合、一般に性的自由・性的自己決定権の侵害が存するといえる。
(注7)行為をする者について人違いがある場合には、被害者は、その相手方との性的行為には同意していないのであるから、その意味で「誰と性的行為をするか」についての自由意思決定があったとはいえず、その誤信を利用して性的行為を行った場合、一般に性的自由・性的自己決定権の侵害が存するといえる。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律について法曹時報 第76巻01号
2)各要件の意義
「行為がわいせつなものではないとの誤信」とは、現に行われようとしている行為(実行行為)が、わいせつなものではないとの錯誤があることを意味するものであり、例えば、
○真実はわいせつな行為であるのに、医療行為であると誤信している場合
などがこれに該当する。
「行為をする者について人違い」とは、行為者の同一性について錯誤があることを意味するものであり、例えば、
○真実は夫とは別の人物であるのに、暗闇の中で、行為者を夫と勘違いした場合
などがこれに該当する。
これに対し、行為者の同一性は正しく認識した上で、その属性に関する誤信をしているにすぎない場合には、本項の「人違い」には該当し(注24)ない。


(注24) 例えば、
○真実は無職であるのに金持ちの社長であると偽られ、そのように誤信した場合
○真実は既婚者であるのに、未婚者であると偽られ、そのように誤信した場合
については、相手方の職業、資力や婚姻関係の有無という属性に関する誤信があるにすぎないことから、いずれも、「行為をする者について人違い」をしている場合には該当しない。
このように、本項において、行為の相手方の社会的地位等といった属性について誤信があるにすぎない場合を処罰の対象としていないのは、このような誤信は、言わば、性的行為をする動機に関する誤信であり、現時点において、そのような誤信があることのみをもって処罰対象とすべきであるとまでは必ずしもいえないと考えられることによるものである。

https://news.yahoo.co.jp/articles/835d20394e6772dae5f3fc12b820419a6d067706
オンラインゲームで知り合った女性に求められ男性が自分の“わいせつ画像”送信→「拡散するぞ」脅迫され数万円要求も→警察に相談→なんと相手は女性を装う神奈川県の25歳男→警察がアプリ解析で逮捕へ 北海道
男は6月11日から12日にかけて、アプリのメッセージ機能で男性のわいせつな画像を本人に送信して「画像を拡散するぞ」と脅迫し、数万円を支払うように要求した疑いがもたれています。
警察によりますと、2人は2024年に入ってからオンラインゲームで知り合い、メッセージや電話でやりとりをしていました。その間、男は女性を装って対応していて、男性はそれに気づきませんでした。
このやり取りの中で、男性は求めに応じて、自身のわいせつ画像を男に送ってしまったということです。
男からの脅迫後、男性はすぐに警察に相談。警察が2人が使っていたアプリを解析し、約5か月後に男を逮捕しました。
調べに男は「間違いないです」と容疑を認めています。

児童ポルノ製造罪(7条4項)の罪数は、撮影回数で決まる(名古屋高裁)のか、媒体の数で決まる(東京高裁)のか

 児童ポルノ製造罪(7条4項)の罪数は、撮影回数で決まる(名古屋高裁)のか、媒体の数で決まる(東京高裁)のか
 撮影自体が性的虐待だし、データの段階で流布の危険が現実化するから、媒体数によるのはおかしいと思いますね。

名古屋高裁H22.3.4
論旨は,原判示第2の2,第3の2, 第6の2' 第7の2及び第8の2の各事実について,児童ポルノ製造罪の罪数は生成された物の個数で決まるところ,これらの所為による画像は1個のSDカードに記録されているから,包括一罪であるのに,上記各児童ポルノ製造罪を併合罪(5罪)とした原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,児童に児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写をした時点で既遂に達するものであり,たとえ同一の記録媒体に児童の姿態が写った複数の画像が記録されたとしても,機会を異にして上記の描写をすれば,各別に児童ポルノ製造罪が成立すると解すべきである。原判決が認定した事実関係によれば,原判示第2の2,第3の2, 第6の2,第7の2及び第8の2はそれぞれ別機会の児童ポルノの製造と認められるから,上記各所為は包括一罪ではなく,併合罪の関係にあるというべき
である。これと同旨の原判決の法令適用に誤りはなく,論旨は理由がない。

東京高裁R06.11.19
3 原判決の罪数判断の当否等(法令適用の誤りの論旨について)
(1)前記のとおり、原判決は、原判示第2の1について、前記別表1の番号ごとに15個の児童ポルノ製造罪が成立し、これらが併合罪となるとの判断をしたものと解される。
しかし、児童ポルノ製造罪が成立するためには、児童ポルノの製造行為として、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写する行為が必要であるところ、記録媒体等に描写する行為が一つなのであれば、そこに成立する児童ポルノ製造罪の罪数は、一罪と考えるのが相当である。原判示第2の1における記録媒体等に描写する行為は、-前記のとおり、最終的にハードディスクに保存するまでの一連の行為一つであるから、この場合に成立する児童ポルノ製造罪は一罪である。
したがって、原判示第2の1に係る原判決の罪数判断及び法令の適用には誤りがあるといわざるを得ない
別表1
番号
1 R6.4.3 7:29
2 R6.4.3 9:26
3 R6.4.3 9:32
4 R6.4.4 11:25
5 R6.4.5 0:07
6 R6.4.5 0:13
7 R6.4.5 4:01
8 R6.4.5 4:04
9 R6.4.5 10:12
10 R6.4.5 10:21
11 R6.4.6 1:22
12 R6.4.6 1:32
13 R6.4.6 1:35
14 R6.4.6 4:33
15 R6.4.6 10:58

児童に裸画像を送らせる行為について、16歳未満の者に対する映像送信要求+不同意わいせつ+性的姿態等撮影+児童ポルノ製造罪が科刑上一罪になるとした事例(東京地裁r6.11.29)

児童に裸画像を送らせる行為について、16歳未満の者に対する映像送信要求+不同意わいせつ+性的姿態等撮影+児童ポルノ製造罪が科刑上一罪になるとした事例(東京地裁r6.11.29)
不同意わいせつ+性的姿態等撮影+児童ポルノ製造罪が科刑上一罪となって
それらと16歳未満の者に対する映像送信要求が牽連犯になるという判断でした。

  送信要求罪は不同意わいせつ罪に吸収されない
  「送信させ」もわいせつ行為
などの判示もあります。

被告人は、A(当時13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らがA の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、正当な理由がないのに、令和6年11月30日午前10時18分頃、被告人方において、アプリケーションソフト「LINE」のメッセージ機能を利用して、A に対し、「陰部を見せて」と記載したメッセージを送信して、その頃、同人にこれを閲読させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信するよう要求し、同日午前10時18分頃から同日午前10時22分頃までの間に、大阪府内の同人方居室において、同人に陰茎を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する携帯電話機で撮影させた上、その静止画データ11点を同携帯電話機から前記「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に宛てて送信させ、その頃、当時のLINE株式会社が日本国内に設置して管理している電磁的記録媒体であるサーバコンピュータ内に記録させて保存し、もってわいせつな行為をするとともに、性的姿態等を撮影し、衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである。
罪名及び罰条
16歳未満の者に対する映像送信要求、
不同意わいせつ、
性的姿態等撮影、
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
刑法182条3項2号、176条3項、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号、1号イ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2条3項3号

科刑上一罪の処理
刑法54条1項前段、後段、10条(不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノ製造は、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合であり、16歳未満の者に対する映像送信要求と、不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノ製造は、手段結果の関係があるので、結局以上を一罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)
なお、弁護人は、被害者に、性的姿態を撮影した画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させる行為が、わいせつ行為には当たらないことを前提に、判示第2の各罪は併合罪の関係に立つ旨主張するが、同行為もわいせつ行為に当たることは、(争点に対する判断)4において説示したとおりである。そうすると、本件の不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノの製造には重なり合いが認められ、これれらは、社会的見解上1個の行為といえるから、観念的競合の関係に立ち、これらの手段として行われた16歳未満の者に対する映像送信要求とは、牽連犯の関係に立つというべきである。

画像要求罪・不同意わいせつ罪(3項)・性的姿態撮影罪・児童ポルノ製造罪(4項)は観念的競合になるのか?

 画像要求罪・不同意わいせつ罪(3項)・性的姿態撮影罪・児童ポルノ製造罪(4項)が、観念的競合で処理された起訴状・判決書を見掛けますが、観念的競合でしょうか?

公訴事実例
被告人は、A(13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが前記Aの生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら
正当な理由がないのに、
令和6年11月26日午前10時02分ころ大阪府大阪市北区の被告人方において、前記Aに対し、自己が使用する携帯電話機のアプリケーションゾフ卜「LINE」のメッセージ機能を利用し、「陰茎見せてよ」などと記載しメッセージを送信し、その頃、同人にこれらを閲覧させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求し、
同日午前11時20分頃、同人に、その陰茎を露出した姿態をとらせ、
これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影させ、
同日午前11時27分頃、その画像データ12点を同携帯電話機から前記「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同画像データ12点を株式会社が管理する日本国内に設置されたサーバコンピュータ内に記録、保存させ、
もって16歳未満の者に対じ、わいせつな行為をし、13歳以上16歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影する行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。

 

公訴事実例 画像要求罪 不同意わいせつ罪 性的姿態撮影罪 児童ポルノ製造
被告人は、A(13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが前記Aの生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら        
正当な理由がないのに、        
令和6年11月26日午前10時02分ころ大阪府大阪市北区の被告人方において、前記Aに対し、自己が使用する携帯電話機のアプリケーションゾフ卜「LINE」のメッセージ機能を利用し、「陰茎見せてよ」などと記載しメッセージを送信し、その頃、同人にこれらを閲覧させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求し、 要求罪の着手と既遂     4項製造罪の構成要件要素「姿態をとらせ」
同日午前11時20分頃、同人に、その陰茎を露出した姿態をとらせ、   不同意わいせつ罪の着手   4項製造罪の構成要件要素「姿態をとらせ」
これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影させ、   不同意わいせつ罪既遂 性的姿態撮影罪の着手と既遂 製造行為
同日午前11時27分頃、その画像データ12点を同携帯電話機から前記「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同画像データ12点を株式会社が管理する日本国内に設置されたサーバコンピュータ内に記録、保存させ、   送信させ・記録はわいせつ行為ではない   記録行為(以後の複製行為も製造行為と評価される)
もって16歳未満の者に対じ、わいせつな行為をし、13歳以上16歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影する行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。        

 

 まず、「送信させ・記録保存し」はわいせつ行為ではないとされています。

          東京高裁平成28年2月19日宣告
          判    決
           そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。
           以上のとおり,原判決が認定した事実は,強制わいせつ罪の成立要件を欠くものである上,わいせつな行為に当たらず強要行為に該当するとみるほかない行為をも含む事実で構成されており,強制わいせつ罪に包摂されて別途強要罪が成立しないというような関係にはないから,法条競合により強要罪は成立しないとの弁護人の主張は失当である。
          (2)公訴棄却にすべきとの主張について
           以上のとおり,本件は,強要罪に該当するとみるほかない事実につき公訴提起され,そのとおり認定されたもので,強制わいせつ罪に包摂される事実が強要罪として公訴提起され,認定されたものではない。
           また,原判決の認定に係る事実は,前記(1)のとおり,強制わいせつ罪の構成要件を充足しないものである上,被害者撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機で受信・記録するというわいせつな行為に当たらない行為を含んだものとして構成され,これにより3項製造罪の犯罪構成要件を充足しているもので,強制わいせつ罪に包摂されるとはいえないし,実質的に同罪に当たるともいえない。
          
          広島高裁岡山支部H22.12.15
           そして,強制わいせつ罪が個人の性的自由を保護法益とするのに対し,児童ポルノ法7条3項,1項,2条3項3号に該当する罪(以下「3項製造罪」という。)は,当該児童の人格権を第一次的な保護法益としつつ,抽象的な児童の人格権をも保護法益としており,両者が一致するものではない。しかも,原判示各事実は,前記のとおり,原判示第1及び第2の各事実については,各被害者に児童ポルノ法2条3項3号所定の姿態をとらせるに際し,脅迫又は暴行によった旨認定していないし,上記各事実と同旨の各公訴事実も同様に脅迫又は暴行によった旨訴因として掲げていない上,原判示各事実及びこれらと同旨の各公訴事実についても,それぞれ,各被害者をして撮影させた画像データを被告人の使用するパーソナルコンピューターに送信させてこれらを受信し,さらに,上記コンピューターに内蔵されたハードディスクに記録して蔵置した各行為を含んでいるところ,上記各行為はいずれも3項製造罪の実行行為(原の事実については強要罪の実行行為の一部でもある。)であって,強制わいせつ罪の構成要件該当事実には含まれない事実である。
          

また、送らせる行為(要求行為)と、児童ポルノ製造罪は、別個の行為なので、併合罪の関係になります。

      東京高裁平成28年2月19日
       なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとしたが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪の関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につき懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記のとおり法令の適用に誤りがあるが,この誤りによる処断刑の相違の程度,原判決の量刑が懲役2年,執行猶予付きにとどまることを踏まえれば,上記誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。
          
      広島高裁岡山支部H22.12.15
       原判決が,原判示第3の事実を認定判示した上,児童ポルノ製造の点が3項製造罪に該当し,強要の点が強要罪に該当するが観念的競合であるとして科刑上一罪の処理をするに当たり,犯情の重い3項製造罪の刑で処断する適条をしたことは所論が指摘するとおりである。
       そこで検討するに,強要罪は,脅迫し又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせる行為をしたことを構成要件とし,3項製造罪は,児童に児童ポルノ法2条3項3号に掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録にかかる記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童にかかる児童ポルノを製造したことを構成要件とするものであって,被害児童に衣服の全部又は一部を着けない姿態をとらせて撮影し,その画像データを送信させてハードディスクに記録して蔵置することをもって児童ポルノを製造した場合に,強要罪に該当する行為と3項製造罪に該当する行為とは,一部重なる点があるものの,3項製造罪において,上記のとおり姿態をとらせる際,脅迫又は暴行によることが要件となるものとは解されず,また,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるので,両罪は,観念的競合の関係にはなく,また,上記説示に照らせば,両罪は,通常手段結果の関係にあるともいえないから,牽連犯の関係にもないというべきである。
       また,強要罪は個人の行動の自由を保護法益とし,3項製造罪は,当該児童の人格権とともに抽象的な児童の人格権をも保護法益としており,保護法益の一個性ないし同一性も認められないことをも考慮すれば,両罪は,混合的包括一罪ともいえず,最高裁判所平成19年(あ)第619号同21年10月21日第1小法廷決定・刑集63巻8号1070頁の趣旨に徴し,刑法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。
       そうすると,控訴理由第2の点について判断するまでもなく,両罪を観念的競合として処断刑を導いた原判決には法令適用の誤りがあるといわざるを得ない。



常習性の証拠が足りない(高松高裁r6.5.30)

常習性の証拠が足りない(高松高裁r6.5,30)
常習盗撮と、性的姿態撮影罪は混合的包括一罪になっています。


【判例番号】 L07920261
       性的姿態等撮影(変更後の訴因 性的姿態等撮影、香川県迷惑行為等防止条例違反、性的姿態等撮影未遂)被告事件
【事件番号】 高松高等裁判所判決/令和6年(う)第16号
【判決日付】 令和6年5月30日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 原判決を破棄する。
 被告人を懲役8月に処する。
 原審における未決勾留日数中10日をその刑に算入する。

       理   由

 本件控訴の趣意は、量刑不当の主張であり、論旨は、被告人を懲役8月に処し、執行猶予を付さなかった原判決の量刑は重過ぎて不当であるというものである。
 論旨に対する判断に先立ち、職権により調査すると、原判決は、罪となるべき事実として、被告人が、令和5年8月22日に正当な理由がないのに性的姿態等を撮影するとともに、常習として、人の性的羞恥心を害し、かつ、人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所にいる人の衣服で覆われている下着等を撮影し(原判示1)、同月27日に正当な理由がないのに常習として、人の性的羞恥心を害し、かつ、人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所にいる人の衣服で覆われている下着等を撮影するために写真機等を向けたが、人の性的な部位又は人が身に着けている下着のうち、現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分を撮影するに至らず、その目的を遂げなかった(原判示2)という性的姿態等撮影、同未遂及び香川県迷惑行為等防止条例違反の事実を認定して被告人を有罪にしたが、原判決の挙示する証拠のうち、被告人の常習性を認定し得る証拠は、被告人の公判廷における自白及び捜査段階における自白調書のみであり(原判決は、常習性を含む原判示全部の事実に係る証拠として、捜査報告書2点(原審甲8号証、同9号証)も挙示しているが、捜査報告書(原審甲8号証)には、被告人の使用車両から押収したスマートフォンのカメラアプリの使用履歴を精査した結果、本件各犯行時に使用された履歴が認められた旨記載され、捜査報告書(原審甲9号証)には、被告人を立会人としてその指示説明に基づいて本件各犯行の状況を再現した旨記載されているにとどまり、常習性に関する被告人の自白を補強するに足りない。)、原審で取り調べられた捜査報告書(原審甲10号証)、調書判決謄本(原審乙9号証)及び判決書抄本(原審乙10号証)を総合すれば、被告人が盗撮行為を反復累行する習癖を有し、原判示の上記条例違反の罪を常習として犯したものであると認められ、上記各証拠は、被告人の常習性に関する自白の補強証拠たり得るものであるが、原判決はこれらを挙示していない。そうすると、原判決は、刑訴法319条2項に違反し、特段の補強証拠を挙示することなく、自白のみによって原判示の事実を認定した違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反というべきである。原判決は、この点において破棄を免れない。
 よって、論旨に対する判断を省略し、刑訴法397条1項、379条により原判決を破棄し、同法400条ただし書に従い、当裁判所において更に次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
 原判決記載のとおりである。
(証拠の標目)(括弧内の甲乙の番号は、原審証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号を示す。)
判示全事実について(常習性を含む。)
 原審第1回公判期日調書中の被告人供述部分
 被告人の検察官調書(乙5)及び警察官調書(乙3、4、6)
 捜査報告書(甲8ないし10)
 調書判決謄本(乙9)
 判決書抄本(乙10)
判示1事実について
 捜査報告書(甲1ないし4)
判示2事実について
 被害届(甲5)
 写真撮影報告書(甲6)
 捜査報告書(甲7)
(法令の適用)
罰条          判示1及び2のうち
             性的姿態等撮影の点(判示1)
             性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影等処罰法」という。)2条1項1号イ、同法附則2条
             常習として盗撮した点(判示1及び2)
             香川県迷惑行為等防止条例12条2項、1項、3条1項2号、4項
             性的姿態等撮影未遂の点(判示2)
             性的姿態撮影等処罰法2条2項、1項1号イ、同法附則2条
科刑上-罪の処理     判示1の性的姿態等撮影及び判示2の同未遂の各罪と判示1及び2の常習盗撮の罪はそれぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条により結局判示1及び2の罪を1罪として刑及び犯情の最も重い判示1の性的姿態等撮影の罪で処断する。
刑種の選択        懲役刑を選択
未決勾留日数の算入    刑法21条
(量刑の理由)
 被告人は、平成26年3月に常習盗撮の罪で、懲役6月、4年間執行猶予に処せられ、その執行猶予期間中に同種の犯行に及んで同年10月に常習盗撮の罪で懲役5月に処せられた上、上記執行猶予を取り消されて、上記各刑の執行を受け、平成28年2月にその刑の執行を終えたにもかかわらず、それから5年足らずのうちに、自己が従事していた農業の先行きへの不安等を紛らわせるため盗撮を再開して、同種の犯行を繰り返す中で、動画撮影状態にしたスマートフォンをサンダルに隠し入れて女性のスカート内の性的姿態等を撮影し、あるいはスカート内に差し向けたものの、その撮影には至らなかったものであり、その犯行に至る経緯に酌むべき点はなく、計画的な犯行であって顕著な常習性が認められる。
 そうすると、原判示2の被害者に60万円を支払って示談が成立したこと、被告人が本件犯行を認めて反省の弁を述べるとともに、今後はカウンセリングの回数を増やし、性犯罪者のグループミーティングへ参加して家族以外の者と交流して再犯への歯止めとし、また、所持するスマートフォンのカメラ機能を壊し、姉がGPSで所在を確認するといった再犯防止のために家族とした約束を守るなどと述べ、現にカウンセリングを継続していること、被告人のカウンセリングを担当している臨床心理士や被告人の姉が原審公判廷において上記の再犯防止策への協力や被告人の監督を証言したことといった被告人に有利な事情を最大限に考慮しても、執行猶予を付すのは相当ではなく、主文程度の実刑に処するのが相当である。
(原審における求刑 懲役1年)
  令和6年5月30日
    高松高等裁判所第1部
        裁判長裁判官  佐藤正信
           裁判官  田中良武
           裁判官  荒井智也

【判例番号】 L07950424
       性的姿態等撮影、同未遂、香川県迷惑行為等防止条例違反被告事件
【事件番号】 高松地方裁判所観音寺支部判決/令和5年(わ)第33号
【判決日付】 令和6年1月11日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 被告人を懲役8月に処する。
 未決勾留日数中10日をその刑に算入する。

       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は、正当な理由がないのに
1 令和5年8月22日午後6時13分頃、香川県三豊市■■■において、ひそかに、後方から氏名不詳の女性に近づき、右足のサンダルに隠し入れた動画撮影機能付きスマートフォンを同人が着用していたスカートの下方に差し入れ、同人が身に着けているショーツの臀部を覆っている部分を同スマートフォンで動画撮影し、もって、性的姿態等を撮影するとともに、常習として、人の性的羞恥心を著しく害し、かつ、人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所にいる人の衣服で覆われている下着等を撮影し(令和5年10月20日付け訴因変更請求書記載の公訴事実1)、
2 スカート内の下着等を撮影する目的で、同月27日午前11時24分頃、同所において、ひそかに、後方から■■■(当時37歳)に近づき、右足のサンダルに隠し入れた動画撮影機能付きスマートフォンを同人が着用していたスカートの下方に差し入れ、同人が身に着けているショーツの臀部を覆っている部分を同スマートフォンで動画撮影しようとし、もって、常習として、人の性的羞恥心を著しく害し、かつ、人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所にいる人の衣服で覆われている下着等を撮影するために写真機等を向けたが、人の性的な部位又は人が身に着けている下着のうち、現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分を撮影するに至らず、その目的を遂げなかった(同公訴事実2)。(証拠の標目)(括弧内の甲乙の数字は、証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号をそれぞれ示す。)
判示全事実について(常習性を含む。)
・被告人の公判供述
・被告人の検察官調書(乙5)、警察官調書(乙3、4、6)
・捜査報告書(甲8、9)
判示1事実について
・捜査報告書(甲1ないし4)
判示2事実について
・被害届(甲5)
・写真撮影報告書(甲6)、捜査報告書(甲7)
(法令の適用)
適用罰条
 判示1
  性的姿態等撮影の点  性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下、「性的姿態撮影等処罰法」という。)2条1項1号イ、同法附則第2条
  香川県迷惑行為等防止条例(以下「本件条例」という。)違反の点
              同条例12条2項、1項、3条1項2号
 判示2
  性的姿態等撮影未遂の点
              性的姿態撮影等処罰法2条2項、1項1号イ、同法附則第2条
  本件条例違反の点    同条例12条2項、1項、3条4項、1項2号
混合包括一罪の処理    判示1及び2は、それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合(刑法54条1項前段)である上、本件条例違反の部分は常習としてなされたものであるから、包括して、刑法10条により一罪として刑及び犯情の最も重い性的姿態等撮影の罪の刑で処断
刑種の選択        懲役刑を選択
未決勾留日数の算入    刑法21条
(量刑の事情)
(求刑:懲役1年の実刑)
  令和6年1月11日
    高松地方裁判所観音寺支部
           裁判官  上田 瞳

画像送信要求罪と、撮影・送信させる行為(不同意わいせつ・児童ポルノ製造罪・性的姿態撮影罪)は牽連犯・観念的競合か

 画像送信要求罪(182条3項)というのができて

刑法 第一八二条(十六歳未満の者に対する面会要求等)
3十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。

要求した結果、画像が撮影・送信されると不同意わいせつとか製造罪とか性的姿態撮影罪になって、牽連犯になるというのです。

記載例
被告人は、A(当時13歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らがA の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、正当な理由がないのに、令和5年7月6日ころ室被告人方において、アプリケーションソフト「」のメッセージ機能を利用して、A に対し、「女性器を見せろ」と記載したメッセージを送信して、その頃、同人にこれを閲読させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信するよう要求し、
同日大阪府内の同人方居室において、同人に陰部を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する携帯電話機で撮影させた上、その静止画データ10点を同携帯電話機から前記「」を利用して被告人が使用する携帯電話機に宛てて送信させ、
その頃、当時の株式会社が日本国内に設置して管理している電磁的記録媒体であるサーバコンピュータ内に記録させて保存し、もってわいせつな行為をするとともに、
性的姿態等を撮影し、
衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである。
罪名
16歳未満の者に対する映像送信要求、
不同意わいせつ、
性的姿態等撮影、
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反

10-2訂版刑法特別法犯罪事実記載例集士本武司著岡本貴幸改訂増補p123
面会要求の結果として面会した場合、面会要求罪は面会罪の前提であることから、面会要求罪(1項)は面会罪(2項)に吸収される。
面会をしてわいせつ行為(性交等)に及んだ場合、面会罪は性的保護状態を保護するものである一方、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は性的自由・性的自己決定権を保護するものであり、両者は異なる罪質であることから、面会罪と不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が成立し、両者は牽連犯となることが多いと思われる。
性的行為をさせてその姿態をとらせてその映像を送信させた場合、本罪は性的保護状態を保護するものである一方、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は性的自由・性的自己決定権を保護するものであり、両者は異なる罪質であることから、本罪と不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が成立し、両者は牽連犯となることが多いと思われる。

 法務省の説明では、観念的競合か牽連犯だとされています。
 脅迫して要求すると、不同意わいせつの着手時期が脅迫行為になって、画像要求罪とかぶるので、観念的競合もあり得るということでしょう。

法務省逐条説明
本条第3項の罪に当たる行為が行われた後に、強制わいせつ罪に当たる行為が行われた場合、
〇本条第3項の罪は、性的自由・性的自己決定権を保護法益とする強制わいせつ罪の予備罪としてではなく、16歳未満の者が性被害に遭う危険性のない状態、すなわち、性被害に遭わない環境にある状態という性的保護状態を保護法益とする趣旨で設けるものであることから、本条第3項の罪と強制わいせつ罪の両罪が成立するものと考えられる。
その上で、社会的見解上の行為が一個と評価される場合には、観念的競合となる一方、一個の行為と評価されない場合には、本条第3項の罪と強制わいせつ罪は、罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があることから、具体的に行為者がそのような関係において両罪を実行したのであれば、牽連犯になると考えられる。


 ところが、脅迫して撮影送信させた場合、高裁岡山支部h22.12.15と東京高裁h28.2.19は、送信させる行為をわいせつ行為ではない、脅して撮影送信させる強要罪と製造罪は別個の行為だとしています。

速報番号平成23年1号
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,強要被告事件
広島高等裁判所岡山支部平成22年12月15日判決控訴棄却
平成22年12月22日上告
〔控訴申立人〕弁護人
〔検察官〕見越正秋
〔第一審〕岡山地方裁判所
判示事項
児重ポルノ製造罪と強要罪は併合罪の関係にあるとして,両罪を観念的競合であるとした原判決に法令適用の誤りがあるとした事例

判例タイムズ1432号
強要罪と平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
対象事件|
平成28年2月19日判決
東京高等裁判所第5刑事部
平成27年(う)第1766号
強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果|
控訴棄却,上告
原審|
新潟地方裁判所高田支部平成27年(わ)第35号平成27年8月25日判決
 判    決
 被告人に対する強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官濱本康直,弁護人(私選)奥村徹各出席の上審理し,次のとおり判決する。
                理    由
(罪となるべき事実)
 被告人は,インターネットアプリケーション「」において「氏」という名前を使用している甲(当時13歳。以下「被害者」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら,年月20日頃から同月28日までの間,多数回にわたり,県内又はその周辺において,被告人使用の携帯電話機から,市内にいた同児童に対し,前記「」を使用し,同児童が使用するタブレット端末に,「写メ送れ 殺すぞ」などの文言を送信し,いずれもその頃,同児童に閲読させ,同児童に対し,その乳房,性器等を撮影してその画像データを前記「」を使用して送信するよう要求し,もし,その要求に応じなければ同児童の名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同児童を畏怖させ,よって,同月22日から同月28日までの間,同児童に,その乳房,性器等を前記タブレット端末で撮影させた上,前記「」を使用して,その画像データ110点を前記被告人使用の携帯電話機に送信させて受信・記録し,もって同児童に義務のないことを行わせるとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した同児童の児童ポルノを製造したものである。

 高裁判例によれば、脅迫による送信要求と撮影・送信させる行為とは、2個の行為とされています。とすると、画像要求罪と、不同意わいせつ・製造・性的姿態撮影罪も併合罪になるのではないか

迷惑条例の盗撮罪と児童ポルノひそかに製造罪は併合罪(第1と第2、第5と第6)、強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ姿態をとらせて製造罪は観念的競合(第4)、性的姿態撮影罪とひそかに製造罪は併合罪(第5と第6)、不同意わいせつ(176条3項)と性的姿態撮影罪と姿態をとらせて製造罪は併合罪(第7と第8と第9)(佐渡支部R6.3.21)

迷惑条例の盗撮罪と児童ポルノひそかに製造罪は併合罪(第1と第2、第5と第6)、強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ姿態をとらせて製造罪は観念的競合(第4)、性的姿態撮影罪とひそかに製造罪は併合罪(第5と第6)、不同意わいせつ(176条3項)と性的姿態撮影罪と姿態をとらせて製造罪は併合罪(第7と第8と第9)(佐渡支部R6.3.21)
 罪数処理の基準を決めていないので罪数処理がマチマチです。分からないのなら全部併合罪にしておけばいいと思います。
 
 これを観念的競合にすると、「その動画データ2点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、」みたいな対人的行為ではないものをわいせつ行為と評価してしまうことになります。

第4(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第3)
 C(当時10歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和5年7月4日午後2時7分頃から同日午後2時9分頃までの間、前記公共施設において、Cに対し、その上衣をめくり上げて胸部を露出させた姿態をとらせ、これを自己の携帯電話機で動画撮影し、その動画データ2点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。

新潟地裁佐渡支部令和 6年 3月21日
 新潟県迷惑行為等防止条例違反、不同意わいせつ、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ被告事件
文献番号  2024WLJPCA03216004
出典Westlaw Japan
 (罪となるべき事実)
 被告人は、
第1(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 正当な理由がないのに、令和5年6月5日午後1時1分頃から同日午後1時30分頃までの間に、新潟県佐渡市所在の公共施設の女子トイレ個室内において、同所に設置した携帯電話機を使用して、A(当時9歳)の下着及び身体を動画撮影し、もって便所にいる人に対して、不安を覚えさせ、かつ、羞恥させるような行為であって、人が通常衣服等で隠している下着又は身体を無断で撮影した。
第2(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第2)
 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第1記載の日時場所において、ひそかに、Aの性器付近が露出された姿態を自己の携帯電話機で動画撮影した上、その頃から同日午後2時46分頃までの間に、前記公共施設において、その動画データを編集して作成した動画データ1点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第3(令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 正当な理由がないのに、令和5年6月21日午前9時14分頃、前記公共施設の女子トイレにおいて、同トイレ個室内にいたB(当時17歳)に対し、同個室仕切り板の下部から携帯電話機を差し入れて設置し、Bの下着及び身体を動画撮影し、もって便所にいる人に対して、不安を覚えさせ、かつ、羞恥させるような行為であって、人が通常衣服等で隠している下着又は身体を無断で撮影した。
第4(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第3)
 C(当時10歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和5年7月4日午後2時7分頃から同日午後2時9分頃までの間、前記公共施設において、Cに対し、その上衣をめくり上げて胸部を露出させた姿態をとらせ、これを自己の携帯電話機で動画撮影し、その動画データ2点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第5(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第4)
 正当な理由がないのに、令和5年9月29日午前9時44分頃から同日午前9時49分頃までの間に、前記公共施設の女子トイレ個室内において、ひそかに、同所に設置した携帯電話機を使用して、D(当時16歳)の性器付近を撮影した。
第6(令和6年2月2日付け追起訴状記載の公訴事実第5)
 Dが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第5記載の日時場所において、ひそかに、Dの性器付近が露出された姿態を自己の携帯電話機で動画撮影した上、その頃から同日午後3時14分頃までの間に、前記公共施設において、その動画データを編集して作成した動画データ1点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第7(令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 E(当時9歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和5年10月20日午前10時47分頃から同日午前10時48分頃までの間、前記公共施設のトイレ内において、Eに対し、Eが重度の知的障害を有していることにより同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じ、そのズボン及びショーツを引き下ろし、臀部を直接左手で触るなどし、もってわいせつな行為をした。
第8(令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第3)
 正当な理由がないのに、Eが13歳未満の者であることを知りながら、前記第7記載の日時場所において、Eが前記第7記載の状態にあることに乗じ、右手に持った携帯電話機を使用して、被告人がEの臀部を直接左手で触るなどのわいせつな行為がされている間におけるEの姿態を撮影した。
第9(令和6年1月12日付け訴因変更請求書による訴因変更後の令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第4)
 Eが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第7記載の日時場所において、Eに対し、その陰部、臀部及び胸部を露出させた姿態並びに被告人がその臀部を直接左手で触る姿態をとらせ、これらを自己の携帯電話機で動画撮影した上、その頃から同日午前10時52分頃までの間に、同所において、その動画データを編集して作成した動画データ1点を同携帯電話機の内臓記録装置に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第10(令和6年1月12日付け訴因変更請求書による訴因変更後の令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第5)
 正当な理由がないのに、令和5年10月24日午前8時26分頃から同日午前8時39分頃までの間に、前記公共施設の更衣室において、ひそかに、同所出入口上部に設置した携帯電話機を使用して、F(当時17歳)が身に着けているショーツの性器付近を覆っている部分を撮影した。
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1、第3の各行為 いずれも、新潟県迷惑行為等防止条例14条1項、2条3項、1項2号
 判示第2、第6の各行為 いずれも、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条5項(2条3項3号)、7条2項
 判示第4の行為
 わいせつ行為の点 令和5年法律第66号による改正前の刑法176条後段
 児童ポルノ製造の点 児童ポルノ法7条4項(2条3項3号)、7条2項
 判示第5、第10の各行為 いずれも、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影等処罰法」という。)2条1項1号イ、附則2条
 判示第7の行為 刑法176条3項、1項2号、令和5年法律第66号附則3条
 判示第8の行為 性的姿態撮影等処罰法2条1項4号、2号(刑法176条1項2号)、附則2条
 判示第9の行為 児童ポルノ法7条4項(2条3項3号)、7条2項
 科刑上一罪の処理
 判示第4 刑法54条1項前段、10条(重い強制わいせつ罪の刑で処断)
 刑種の選択
 判示第1~第3、第5、第6、第8~第10の各罪いずれも懲役刑
 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第7の罪の刑に加重)
 宣告刑の決定 懲役3年
 刑の全部の執行猶予 刑法25条1項(5年間)
 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
 (量刑の理由)
 本件は、公共施設の職員であった被告人が、女性の身体への性的な興味関心から、約5か月の間に、同施設の中で、2名の女児に対して、性的な部位を露出させるなどのわいせつ行為をしてその様子を動画撮影し、4名の女児に対して、トイレ内や着替え中の様子をひそかに動画撮影したほか、うち4名の動画に関して児童ポルノの製造が認められるという事案である。

児童ポルノ製造罪と不同意わいせつ罪・強制わいせつ罪を観念的競合にするときの落とし穴

児童ポルノ製造罪と不同意わいせつ罪・強制わいせつ罪を観念的競合にするときの落とし穴
 判決速報令和3年17号で、観念的競合にした事案(大阪高裁r3.7.14)が紹介されたので、起訴検察官に観念的競合が流行っています。

令和3年17号
強制わいせつ,児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
上訴放棄確定
令和3年(う)第287号 令和3年7月14日
大阪高裁第6刑事部判決 控訴棄却
(検察官氏名) 太田 玲子
(第 一 審) 京都地方裁判所
○ 判 示 事 項
 被告人が,アプリケーションソフトのダイレクトメッセージ機能を使用して,遠隔地にいた被害者(当時9歳)に対し,その裸体をいわゆる自撮りした画像を被告人に送信するよう要求し、被害者に、その陰部及び乳房を露出した姿態をとらせ、自撮りさせた行為(以下,「本件行為」という。)の「わいせつな行為」(刑法176条)該当性が争われた事案について(なお,被害者は自撮り後,引き続き,被告人に画像を送信し被告人に閲覧させているが,送信・閲覧行為は強制わいせつ罪として起訴されていない。),平成29年11月29日最高裁大法廷判決の判断基準を適用し,本件は行為そのものから直ちに「わいせつな行為」とまで評価できないものの,一定の性的性質を備えていて、「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものであることに加え,本件行為の行われた際の具体的状況等をも考慮すると,性的な意味合いが相当強いものといえるから、「わいせつな行為」に当たるとして、強制わいせつ罪の成立を認めた事案
○ 参 考 事 項
1 前記最高裁判決で示された判断基準を,本件のような非接触型・非対面型わいせつ事案に当てはめて強制わいせつ罪の成立を認めた高裁判決はまれであり、その詳細な理由付けを含め,先例としての価値は大きい。

 全国の検察官は、この観念的競合にした判決(大阪高裁r3.7.14)だけを見て、観念的競合で起訴されるようになりました。
 例えば、大津地裁R5.10.26。
 あたかも「(脅迫して)Aに対し、乳房及び性器を露出した姿態を撮影し、被告人が使用する携帯電話機に同静止画を送信するよう要求し、同日、滋賀県内のA方において、Aに乳房及び性器を露出させる姿態をとらせ、これをA使用の撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、同画像データ2点を、アプリケーションソフト「B」を使用して同携帯電話機から被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同データ2点をそれぞれB株式会社が管理する日本国内設置の電磁的記録媒体であるサーバコンピューター内に記録して保存し、」が、強制わいせつ罪にも児童ポルノ製造罪にも該当するかのような認定になっています。

â– 28313641
大津地方裁判所
令和05年10月26日
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1〔訴因変更後の令和5年6月5日付け起訴状記載の公訴事実関係〕
  A(氏名は別紙記載のとおり。以下「A」という。当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和4年7月22日頃から同年8月12日頃までの間、東京都内又はその周辺において、複数の架空人を装い、Aに対し、SNSアプリケーションを用いて多数のメッセージを送信して、Aの写真が人身売買の情報を掲載するインターネット上のサイトに掲載されており、Aが人身売買を逃れるには、架空人の要求に従う必要がある旨申し向け、Aにその旨誤信及び畏怖させ、その要求を拒絶することができない抗拒不能の状態にあることに乗じてAにわいせつな行為をしようと考え、同日、東京都内又はその周辺において、Aに対し、乳房及び性器を露出した姿態を撮影し、被告人が使用する携帯電話機に同静止画を送信するよう要求し、同日、滋賀県内のA方において、Aに乳房及び性器を露出させる姿態をとらせ、これをA使用の撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、同画像データ2点を、アプリケーションソフト「B」を使用して同携帯電話機から被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同データ2点をそれぞれB株式会社が管理する日本国内設置の電磁的記録媒体であるサーバコンピューター内に記録して保存し、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をするとともに、衣服の全部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、

しかし、撮影させはわいせつ行為とされる可能性がありますが、「送信させ」、「記録保存し」は高裁判例上わいせつ行為ではないと思われます

広島高裁岡山支部h22.12.15
しかも,原判示各事実は,前記のとおり,原判示第1及び第2の各事実については,各被害者に児童ポルノ法2条3項3号所定の姿態をとらせるに際し,脅迫又は暴行によった旨認定していないし,上記各事実と同旨の各公訴事実も同様に脅迫又は暴行によった旨訴因として掲げていない上,原判示各事実及びこれらと同旨の各公訴事実についても,それぞれ,各被害者をして撮影させた画像データを被告人の使用するパーソナルコンピューターに送信させてこれらを受信し,さらに,上記コンピューターに内蔵されたハードディスクに記録して蔵置した各行為を含んでいるところ,上記各行為はいずれも3項製造罪の実行行為(原判示第3の事実については強要罪の実行行為の一部でもある。)であって,強制わいせつ罪の構成要件該当事実には含まれない事実である。
・・・・・・・・・・
東京高裁h28.2.19
(1)強要罪が成立しないとの主張について
記録によれば,原判決は,公訴事実と同旨の事実を認定したが,その要旨は,被害者が18歳に満たない児童であることを知りながら,同女に対し,要求に応じなければその名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して,乳房,性器等を撮影してその画像データをインターネットアプリケーション「LINE」を使用して送信するよう要求し,畏怖した被害者にその撮影をさせた上,「LINE」を使用して画像データの送信をさせ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録し,もって被害者に義務のないことを行わせるとともに,児童ポルノを製造した,というものである。
すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。

 そうすると、大津地裁R5がわいせつ行為とした「同画像データ2点を、アプリケーションソフト「B」を使用して同携帯電話機から被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同データ2点をそれぞれB株式会社が管理する日本国内設置の電磁的記録媒体であるサーバコンピューター内に記録して保存し、」の部分は、わいせつ行為ではないのに、強制わいせつ罪とされていることになって、法令適用の誤りがあることになります。
 弁護人は、観念的競合の起訴状を見たら、そこを突っ込んでください。

数回の性的影像記録提供は包括一罪(東京地裁r6.3.26)

数回の性的影像記録提供は包括一罪(東京地裁r6.3.26)
 併合罪かと思ってました

D1-Law.com判例体系
令和6年3月26日/東京地方裁判所/刑事第7部公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反、性的姿態等撮影、性的影像記録提供等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、個人情報の保護に関する法律違反被告事件
第4(令和5年12月14日付追起訴状記載の公訴事実)
  個人情報取扱事業者である株式会社Oの従業者として同社が運営する学習塾O・Z校舎で講師として勤務し、同校舎に所属する生徒の氏名、生年月日等の個人情報を含む情報の集合体であって、特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成した個人情報データベースである業務システムへのアクセス権限を付与されていたものであるが、ソーシャルネットワーキングサービス「Q」でやり取りをしている小児性愛者らとの間で、同校舎に所属する生徒らの個人情報を共有することで自己又は同小児性愛者らの性的欲求を満たすなどの目的で、別表2記載のとおり、同月11日午前11時17分頃から同年8月7日午前7時37分頃までの間に、14回にわたり、東京都内のZ校舎において、被告人に貸与されたパーソナルコンピューターを用いて前記業務システムにアクセスし、同校舎に所属する生徒であるAほか13名の個人情報である同人らの氏名、生年月日、住所、電話番号、在籍校情報等を検索し、その検索結果を、自己が使用する携帯電話機を用いて、前記「Q」の自己アカウントに送信、保存するなどした上、同年6月3日午前9時7分頃から同年8月8日午後0時48分頃までの間に、9回にわたり、東京都内又はその周辺において、同携帯電話機を用いて、前記「Q」の利用者らに対し、Aほか5名の個人情報を送信し、もって業務に関して取り扱った個人情報データベース等を自己又は第三者の不正な利益を図る目的で盗用し

第7(令和5年11月30日付追起訴状記載の公訴事実第3)
  株式会社O・Z校舎等で勤務していたものであるが、正当な理由がないのに、別表4記載のとおり、同校舎の生徒であるK(当時9歳)ほか1名が13歳に満たない者であることを知りながら、同年7月23日午前10時34分頃から同年8月3日午後2時54分頃までの間に、2回にわたり、同校舎教室において、同人らに対し、ひそかに、自己の着衣の胸ポケットに入れた動画撮影機能付き携帯電話機を使用して、同人らが身につけているショーツの陰部等を覆っている部分を撮影し

第8(令和5年11月30日付追起訴状記載の公訴事実第4)
  株式会社O・Z校舎等で勤務していたものであるが、同日午後10時17分頃から同日午後10時50分頃までの間に、2回にわたり、東京都内において、同校舎で勤務していたRに対し、前記第7別表4番号2の行為により生成された動画データの一部を複写して生成された性的影像記録である画像データであって、L(当時8歳)が身に着けているショーツの臀部を覆っている部分を撮影したものを自己の携帯電話機のアプリケーションソフト「S」を用いて送信し、その頃、Rにこれを受信させて提供し

法令の適用
判示第4の行為
  別表2の番号ごとに個人情報の保護に関する法律179条

判示第8の行為
  包括して性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律3条1項(2条1項4号、1号イ)、令和5年法律第67号附則2条

風呂場盗撮・脱衣場盗撮・教室着替え盗撮と「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」

 撮影対象が16歳以上の場合に適用される法2条1項イには「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの」という除外要件がある。
 撮影を許諾していなくても、「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」であれば、性的姿態撮影罪は不成立となる。
 「人が通常衣服を着けている場所」というのは場所の属性であって、状態ではない。
 風呂場・脱衣場は、脱ぐ場所だから、「人が通常衣服を着けている場所」に当たらないから、性的姿態撮影罪が適用される。
 教室とか会議室とか食堂で臨時に更衣する場合は、場所の属性としては、「人が通常衣服を着けている場所」に当たるから、性的姿態撮影罪が適用されない可能性がある。そういう更衣につかう実態があるとか言って、「人が通常衣服を着けている場所」に当たらないというしかないが、それだと「通常」という字句が無意味になる。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的姿態等撮影)
第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

浅沼雄介ほか「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律について(1)」法曹時報76巻2号(2024年2月号)52頁
【イ 露出等による撮影対象からの除外
(ア) 撮影行為の対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら性的な姿態を露出するなどした場合については、保護法益を放棄したと評価できると考えられる。
そこで、本項第 1号から第 3号までにおいては、「性的姿態等」から「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」を除いた「対象性的姿態等」が処罰対象となる撮影行為の客体とされている】

法務省逐条説明
他方、性的姿態等のうち、撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れる状況にあることを認識しながら自ら露出し又はとっているものについては、
○衣服を着けるなどしていれば見られないにもかかわらず、あえて自ら露出し又はとったものである以上、当該撮影対象者が、保護法益を放棄している場合があると考えられること
○性的姿態等が不特定又は多数の者の目に触れる状況であることを認識しながら自ら露出し又はとっている者が、撮影行為までも許容する意思なのか、その場で見られることだけしか許容しない意思なのかは、外形的・客観的に区別が困難であり、撮影対象者の内心で区別するほかないが、そのような内心のみで犯罪の成否が分かれることとすると、処罰の外延が不明確になると考えられること
から、一律に撮影対象から除外することとしている(注1 。
注1)本条第1項第4号に掲げる撮影行為については、性的な姿態の撮影行為に応じるかどうかについて有効に自由な意思決定をする能力が備わっていないと考えられる若年者を対象とするものであり、撮影対象者による保護法益の放棄を観念することができず、こうした者を対象とする撮影行為は、その者の自由な意思決定に基づくものとはいえず、保護法益を侵害すると考えられることから、撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れる状況にあることを認識しながら自ら露出し又はとっているものも撮影対象から除外しないこととしている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fae43191ff35a42d253ee4b55fa94fe200d07af3?page=1
児童買春・児童ポルノ法違反や性的姿態等撮影などの罪に問われたのは、事件当時・大学助教の男(41)です。
判決によりますと、男は23年、当時理事を務めていた団体の研修中に訪れた、広島県江田島市の宿泊施設で、女性浴場に侵入し、脱衣所のロッカーに設置した携帯電話で撮影、さらに広島市内の宿泊施設でも女性浴場にカメラを設置し女性の体を撮影するなどしました。

13歳未満の児童に裸画像を要求して、撮影送信させ保存した場合の、不同意わいせつ罪(176条3項)    児童ポルノ製造罪(7条4項)    面会要求罪(182条3項2号)    性的姿態撮影罪(2条1項4号)の重なり合い。

13歳未満の児童に裸画像を要求して、撮影送信させ保存した場合の、不同意わいせつ罪(176条3項)    児童ポルノ製造罪(7条4項)    面会要求罪(182条3項2号)    性的姿態撮影罪(2条1項4号)の重なり合い。

 要求罪と、他罪は牽連犯になるかな。

 不同意わいせつ罪(176条3項)    児童ポルノ製造罪(7条4項)   性的姿態撮影罪(2条1項4号)は観念的競合になるかな

 

  不同意わいせつ罪(176条3項) 児童ポルノ製造罪(7条4項) 面会要求罪(182条3項2号) 性的姿態撮影罪(2条1項4号
別紙記載の被害者(当時●歲)13歳未満の者であることを知りながら、 年齢と年齢知情

対象年齢は他罪と必ずしも重ならない
年齢と年齢知情

対象年齢は他罪と必ずしも重ならない
年齢と年齢知情

対象年齢は他罪と必ずしも重ならない
年齢と年齢知情

対象年齢は他罪と必ずしも重ならない
正当な理由がないのに       正当な理由がないのに
日付、市内の被告人方において、被告人が使用するスマー卜フォンのアプリケーションソフト「××」の通話機能を利用して、前記被害者に対し、 犯行日時場所 犯行日時場所 犯行日時場所 犯行日時場所
前記被害者に対し、「おっぱい見せて マンコ見せて」などと申し向け、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信するよう要求し   (児童ポルノ法2条3項3号所定の)姿態をとらせて(実行行為) 児童ポルノ法に比べると、下着で足りる・姿態をとらせなくていい・「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の要件は不要の点で、対象は広い
一性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
 
その頃、大阪府内の同人方において、同人に乳房又は陰部が露出した姿態   要求行為で既遂になるから、これ以降は関係ない 「性欲を興奮させ又は刺激するもの」などの要件がなく、児童ポルノ製造より広い。かならずしも

イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)
上記の姿態をとらせ わいせつ行為(実行の着手) 製造罪の実行行為    
、これをそれぞれ同人のスマートフォンの写真撮影機能を利用して撮影させた上、 わいせつ行為 法文は「製造した」となっている。「撮影させた」場合も含むのか 間接正犯の主張・立証が必要   撮影した時点で着手があり、既遂となる

法文は「撮影した」となっている。「撮影させた」場合も含むのか 間接正犯の主張・立証が必要
その画像データ52点を、同スマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに前記「××」を利用して送信させ、 わいせつ行為ではない 姿態をとらせて製造罪に関係があるのか。
撮影により提供目的製造をさせ、送信により提供させているから、社会見解上2個になっている
  性的姿態撮影罪は撮影で既遂になっているから、この部分は関係ない

(日時)被告人方において、受信した前記画像データ52点を被告人が使用する別のスマートフォンに送信して

わいせつ行為ではない 記録は製造罪の実行行為    
同スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し、 わいせつ行為ではない 記録は製造罪の実行行為    

 

 

※最決h21.10.21の罪数判断の手法(児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪とは併合罪)は、別の罪名の場合にも及ぶ
   最決h21.10.21は、児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪の関係とを併合罪とした判例である。
      最決h21.10.21
      所論は,上記両罪は併合罪の関係にあるから,児童ポルノ法違反の事実については,平成20年法律第71号による改正前の少年法37条によれば,上記家庭裁判所支部は管轄を有しない旨主張する。
      そこで,検討するに,児童福祉法34条1項6号違反の罪は,児童に淫行をさせる行為をしたことを構成要件とするものであり,他方,児童ポルノ法7条3項の罪は,児童に同法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造したことを構成要件とするものである。本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,
      一部重なる点はあるものの,
      両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,
      両行為の性質等にかんがみると,
      それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえる
から(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。

      判例タイムズ1326号134頁 最高裁判所第1小法廷 平成19年(あ)第619号 児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件 平成21年10月21日
      匿名解説
             4 刑法54条1項前段の観念的競合の要件である「一個の行為」に関しては,最大判昭49.5.29刑集28巻4号114頁,判タ309号234頁が,「一個の行為とは,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価をうける場合をいう」としているが,具体的な当てはめについては,必ずしも容易でなかった面もあったように思われる。数個の罪名に触れる行為が完全に重なっていれば,これを「一個の行為」と解すベきことについては異論はないであろうし,行為の重なり合いが「一個の行為」性の判断において重要な要素であることも間違いないと思われる。しかし,上記大法廷判決に関しても,行為の重なり合いは「一個の行為」であるための必須の要件とは解されていなかったと指摘されていたのであり(本吉邦夫・昭49最判解説(刑)113頁,金築誠志・昭58最判解説(刑)322頁等参照),同判例における酒酔い運転と業務上過失致死のように,継続犯とその一時点で成立する他の罪については,行為に重なり合いがあるともいえるものの,「一個の行為」ではないとされるのが通常である。また,最一小判昭58.9.29刑集37巻7号1110頁,判タ509号88頁においては,覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の無許可輸入罪について,それぞれの実行行為は重ならないと考えられるのに,「一個の行為」であることを認めている(同様の関係は,戸別訪問の罪とその機会に行われた各種違法選挙運動の罪が観念的競合とされていることについても存在するとの指摘もある。)。
        本件で問題となった3項製造罪については,「姿態をとらせ」の要件の意義をどう理解するかによって,同罪と児童淫行罪等との行為の重なり合いの判断も異なってくる可能性もあるが,本決定は,「被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの」としており,行為の重なり合いがあること自体は認めている(本決定が「姿態をとらせ」を構成要件として規定された行為ととらえていることは明らかである。)。その上で,
      「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
      「両行為の性質等」
      を挙げて,結論として両罪は併合罪であるとの判断をしており,「一個の行為」であるかの判断における考慮要素として,興味深い判示であるように思われる。実際に生じ得る事例を考えてみても,前記最三小決平成18年によれば複製行為についても3項製造罪を構成し得ることになるから,児童淫行罪等と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠けることがあり,一事不再理効の及ぶ範囲等を考えても,併合罪説の方が妥当な結論を導くことができるように思われる。

 

最高裁判例解説刑事篇平成21年度496頁 平成19年(あ)第619号

 

菅原暁 最新・判例解説(第3回)児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例[最高裁判所第一小法廷平成21.10.21決定] 捜査研究720号78頁


  これは観念的競合の判例(最判s49)の解釈であるから、その判旨は、類推なんかではなく、当然に他の罪名の場合にも及ぶ。
   後述するように
     行為の重なり合いの程度
     「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
     「両行為の性質等」
     一事不再理効の及ぶ範囲
  の各点は、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪とを併合罪とする高裁判決の理由付けに頻出しており、実際にも最決h21.10.21が観念的競合か併合罪かの重要な要素となっている。

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