4.2ミニ学習会「二本松市周辺はなぜ甲状腺がんが多いのか」詳報

放射線被ばくを学習する会の新ホームページはこちら

 

 放射線被ばくを学習する会は2015年4月2日、ミニ学習会「二本松市周辺はなぜ甲状腺がんが多いのか」を開催しました。皆さんの関心が高く、超満員の盛況でした。

 1.甲状腺評価部会「中間取りまとめ」について:田島直樹
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    動画

        資料:最近の動き(概要)、今後の予定 「2015.4.2 ミニ学習会・前座資料 3.pdf」をダウンロード

            福島甲状腺検査評価部会 「2015.4.2 ミニ学習会・福島県評価部会.pdf」をダウンロード

 2.「福島の地形と風向きから考える」:菊池京子

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  動画

当日の資料はこちら  

動画で見る立体地図

立体地図で知る福島の地形と風

SPEEDIで見るヨウ素131の拡散状況(2011年3月15日) (PDF画像を順送りすると風向きの変化がよく分かります)

WSPEEDI-Ⅱによるシミュレーション(リンク文書記載の2項目)
 動画は、線量分布の空間的広がりをカラーの面塗りで、放射性物質の動きを大気中濃度(Bq/m3)の等値面(白色、灰色:高濃度)で示している。 日時は国際標準時(日本時間は9時間加算)で上部に表示されている。

 南東方向から見た3D-動画(MPEG形式:約13MB)

 真上から見た3D-動画(MPEG形式:約13MB)

3.「二本松市のヨウ素濃度は高かった」:温品惇一(ぬくしな じゅんいち)

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 動画

 資料はこちら

4.質疑応答、今後の予定など

 動画

(アース)

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政府・「専門家」は甲状腺がん多発を認め、早急に住民の健康対策を強化すべきです ~8.17 政府広報の誤りを正す~

温品惇一(ぬくしな じゅんいち 放射線被ばくを学習する会・共同代表)さんが書かれた文書を、許可を得て転載します。

PDFはこちら。「20140915.pdf」をダウンロード

甲状腺がん・疑い104人は異常な多さ

 福島の子ども約30万人の甲状腺をスクリーニング検査した結果、甲状腺がんあるいはその疑いが104人、平均年齢は17.1歳と発表されています(8月24日)。10万人あたり35人に達します。

 福島原発の事故前、子どもの甲状腺がんは非常に少なく、15~19歳の子どもが甲状腺がんと診断されるのは1年間に10万人当たり0.5人でした(がんセンター統計1975年~2010年の平均)。

 事故後の福島ではなぜこんなに増えているのでしょうか。

 スクリーニング検査なので早めに見つけてしまい、数が多くなる「スクリーニング効果」なのでしょうか?

 スクリーニング検査で発見されるようになっても、症状が出て病院で診断されるまでに時間がかかります。 

 甲状腺がんと診断されるまでに、長めにみて3年かかるとしても、スクリーニング検査で見つかるのは1年間に10万人当たり0.5×3=1.5人です。 

 福島の甲状腺がんはこの23倍に達しています。

 しかも、福島で見つかっている甲状腺がんの直径は平均1.4センチ。1センチ未満の微小がんではないのです。 

 鈴木眞一・福島県立医大教授の学会発表によれば、見つかった甲状腺がん・疑いの少なくとも半分は手術が必要と判断されています(3頁参照)。

地域差も「スクリーニング効果」を否定している

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 上の地図は、福島県の甲状腺がんの発見割合を各地域別に示したものです。

 10万人当たり20人台の地域から60人台の二本松市周辺まで、発見率はバラバラです(相馬市、新地町は人数が少ないのでゼロ)。

 「スクリーニング効果」なら、発見率は同じはずです。

 福島第一原発に近い二本松市周辺が、遠い会津地方の約2倍も甲状腺がんが多いことから、放射能の影響が疑われます。

 放射能の拡散に県境はありません。

 福島近県や関東のホットスポットなども甲状腺がん検診が必要です。

甲状腺被ばく線量算出の誤り

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 8.17政府広報で中川准教授は「福島では、(甲状腺の被ばく量は)最大でも約35ミリシーベルト未満といわれており」といますが、これは誤りです。

 福島の子どもの甲状腺被ばくを調べたのは、1,080人の甲状腺放射線量スクリーニング検査(上の写真)が中心です。

 この検査は簡単なスクリーニングなので、写真のように、空間線量を計るシンチレーション・サーベイメーターを使っています。

 喉にメーターを当てて計っても、甲状腺の放射線だけを計るわけではなく、部屋の空間線量も一緒に計ります(下の図)。

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 喉にメーターを当てて計った時の放射線量から、部屋の空間線量を引き算すれば、甲状腺の放射線量(に近い値)が求められます。

 ところが2011年3月当時に実際に行われたのは、部屋の空間線量の代わりに、放射能で汚染されていた衣服にメーターを当てて計った放射線量を引き算していたのです!

 放射線の強さは距離の二乗に反比例するので、衣服についた放射能は喉を計るときにはほとんど影響 しません。

 それなのに衣服を計った時の放射線量を差し引いてしまえば、甲状腺の放射線量を非常に小さく計算する結果になってしまいます。

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 上のグラフは、公開されている223人のデータを示しています。

 赤棒は部屋の空間線量を引き算した場合で、甲状腺の線量は平均毎時0.02μSvです。

 衣服の測定値を引き算した青棒では、平均毎時0.00μSvになってしまいます。

 これでは大変な過小評価になります。

 この過小評価したデータを元に甲状腺被ばく線量を計算し、「最大でも35ミリシーベルト未満」などと言っているのです。

 「100ミリシーベルト以下の被ばく量ではがんの増加は確認されていないことから、甲状腺がんは増えないと考えられます」(8.17政府広報)というのも誤りです。

 2012年1月12日の原子力安全委員会の部会資料に、甲状腺がんの発生に「しきい値はない」ことが示されています。

とんでもない「過剰診断」論

 福島県民健康(管理)調査は「原発事故に係る県民の不安の解消、長期にわたる県民の健康管理による安全・安心の確保」のために始められました(第2回県民健康調査検討委員会の結果)。

 当初は「子どもの甲状腺がんは100万人に一人」だから甲状腺がんは増えないことを検査で実証すれば安心すると考えていたのでしょう。

 ところが検査してみると、年々甲状腺がんが多発、ついに104人に達してしまいました。

 慌てて開始されたのが「過剰診断」キャンペーンです。

 いかにも現在の甲状腺検査が無駄で有害な検査であるかのごとく主張していますが、根拠はまったくありません。

 そもそもあれだけの大事故で大量の放射能が飛散し、33万人以上(2011.12)が避難する事態になったのですから、放射能の影響を十二分に検査するのは当然のことです。

 「過剰診療」は問題ですが、「過剰検査」などと称して検査自体をやめさせようとするのは、実にひどい話です。

 日本の医学界・厚労省は「早期発見・早期治療」と称してがん検診を推進してきました。

 それが福島県のことになると突然、掌を返して「がん検診にも不利益がある」などと言い出すのは、一体どういうことでしょうか?

 甲状腺の異常が見つからなかった人でも、死後に解剖してみると1 センチ以下の甲状腺微小がんが見つかります。

 大人の甲状腺微小がんは成長が遅いので手術しないで経過観察することが認められています。

 ところが、子どもの甲状腺がんは進行が早く、「成人の場合よりも診断時に既に進行している例が多い。

 肺転移の割合も成人1~2%に対し,小児では6~33%と高くなる(「術後に低用量の治療を行っている5歳女児肺転移合併甲状腺癌の1症例」長井美樹、日本甲状腺学会雑誌 3巻 46頁(2012))」とされています。

 福島の子どもたちの甲状腺がん手術の大部分を担当した福島県立医大の鈴木眞一教授は、54例中52例は手術が必要なケースだったと発表しています(下の囲み参照)。

福島県立医大の手術 54例
(8.27 鈴木眞一教授 日本癌治療学会発表)
45人は診断基準では手術するレベル
 腫瘍の大きさが10ミリ超 あるいは、 リンパ節や他の臓器への転移など、あり
 2人が肺にがんが転移
9人は腫瘍が10ミリ以下で転移などなし
 7人:「腫瘍が気管に近接しているなど、手術は妥当だった」。
 2人:経過観察でもよいと判断されたが、本人や家族の意向で手術
9割は甲状腺の半分だけ摘出 
(8.28日経新聞による)

 進行の早い子どもの甲状腺がんを、進行の遅い大人の甲状腺微小がんと一緒くたにするなど、とんでもないことです!

「福 島では小児甲状腺がん患者が80名ほど出ているという報道がありますが大規模な検査をすることで発見が増えるのは当然です。韓国では、最近乳がん検診と一 緒に甲状腺のエコー検査をするようになったことで、甲状腺がんの発見が激増しています」(中川准教授・817政府広報より)。

  よくまぁ、こんないい加減なことを!

 10万人当たり35人という発見率の異常な高さが問題になっているのです。

 大規模に検査しても、率はほとんど変わらないはずです。

 韓国で甲状腺がん発見が増えたのは、大人の女性の話です。

 それがどうしたんでしょう?

 あたかも福島の子どもの甲状腺がんにも通用するような、いい加減な話に税金を使わないでください。

4.5ミリシーベルト被ばくでがんが増える

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上のグラフはオーストラリアの20歳未満の子どもへの、CTスキャンによる発がん影響を調べたものです。

 CTの回数が増えると、CTを受けていない子に比べて発がん率が増えています。

 1回のCTで平均4.5mSv被ばくし、発がん率が16%増えることが明らかになりました。

 この研究ではCTを受けたことのない子ども約1,100万人とCTを受けた68万人もの子どもを比較しているので、被ばく影響がはっきり分かります。

 平均63.2歳の急性心筋梗塞患者8万人余りについて調べたカナダの研究では、10mSvの医療被ばくで発がん率が3%増えると報告されています。

 子どもは放射線感受性が高いことを示しているように思われます。

 100mSv以下の被ばくで発がん率が増加することを明らかにした論文は、この他にも多数あります。

被ばくでがん以外の病気も増える
移住など健康対策を強化すべきです
 

 4.5mSvで子どものがんが16%増えるという時の4.5mSvは、年間4.5mSvではなく、累積4.5mSvです。
 
 福島の子どもたちは日々被ばくしています。

 しかも、被ばくの影響はがんだけではありません。

 広島・長崎の被爆者調査で、被ばくにより高血圧、心疾患、脳卒中、呼吸器疾患、消化器疾患、子宮筋腫、甲状腺疾患、慢性肝疾患、白内障などが増えることが知られています。

 今からでも、早急に移住など健康対策を強化すべきです。少なくとも希望者が移住できるよう、援助する態勢を作るべきです。

 8.17政府広報で中川准教授は「東京と同じようにチェルノブイリにも心臓病の方はいますが、福島やチェルノブイリだと放射線によるものだと誤解されてしまうのです」などと話しています。

 放射線科の准教授なのに、被ばくによって心臓病が増えるという認識もないのでしょうか。

 中川准教授は「わずかな被ばくを恐れることで、運動不足などにより、生活習慣が悪化し、かえって発がんリスクが高まるようなことは避けなければなりません」とも言い、外に出て被ばくするよう推奨しています。

8.17政府広報の誤りを認め、被ばく防止策をとるべきです

 「国際的にも100ミリシーベルト以下の被ばく量では、がんの増加は確認されていない」という中川恵一・東大教授の話が、8.17政府広報の根本的な誤りを端的に表しています。

 子どものがんはわずか4.5mSvの被ばくで16%も増えるのです。

 政府は6,000万円とも噂される税金を使って、こんな誤った主張を広報し、住民の警戒心を解除しようとしています。

 汚染地域に住民を帰還させ、原発再稼働に協力しようと政府広報を発行した復興庁、内閣官房、外務省、環境省、そして中川恵一・東大教授は、誤りを認め、被ばく防止策に全力で取り組むべきです。

(アース)

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新刊書紹介

東日本大震災とそれに伴う東電福島第1原発の事故から3年、原子力推進側は、国民を、放射能(したがって原発)と共存することを許容するように、様々な仕方で、洗脳しようと、懸命なようです。そうした側は、カネも権力もあり、「低線量は安全、安全、安全。。。。」を繰り返し、そうした声しか国民の耳に届かなければ、国民自身が、真実を知ろうと努力しない限り、洗脳されてしまいます。

そこで、真実を知らせようとして書いたのが、拙著、英文の「Hiroshima to Fukushima: Biohazards of Radiation」(Springer Verlag, 2013)でした。そこでのテーマは、「放射能とは本来(たとえ低線量でも)生命と相容れない」というものでした。そこで、日本の皆さんにも読んでもらおうと、その日本版(翻訳ではない)を書きました。講談社のブルーバックスでこの3月20日に発売されます。皆さんにも読んでいただいて、日本中の多くの方々にもお知らせいただけたら幸いです。下にその目次を添えます。第1部は、放射能の基本的な問題を、あまりテクニカルではなく、わかりやすくと思って書いた、概説です。第2部では、放射能とその生命への影響の科学的理論(核物理、化学、生物化学、分子生物、細胞学レベル)を、第3部では、これまでに得られたデータの主要なものを概観しました。スペースの制限もあるため、充分に議論を尽くせない部分も、また、自分の知識や能力の欠如で、間違った部分もあるものと思いますが、基本的なテーマ「低線量でも健康への影響はある」ことが、科学的に納得いく形で議論されているかどうか、皆さんのご批判もお聞かせいただけたら、幸いです。そして、これが本当とするならば、多くの国民にそのことを知らせてほしいものです。なお、3月11日を期して、「まえがき」と「第1章」は、先行版として、講談社ブルーバックスのウェッブサイトからダウンロードできますので、ご覧ください。

落合栄一郎


落合栄一郎著:

「放射能と人体—細胞・分子レベルからみた放射線被曝」

ブルーバックス(講談社、定価1080円(税別))

まえがき

第1部 放射能とは?

第1章  放射能はなぜ怖いのか

第2部 放射線とその健康への影響についての原理

第2章  原子力、放射線、そして化学物質

第3章  化学世界:化学物質とその生体系での挙動

第4章  放射線と化学世界・生命との相互作用

第5章  放射線の生体系への影響−外部被曝対内部被曝

第6章  細胞活動のコントロールと放射線に対する防御・修復

第3部 放射能の健康傷害:今までに得られたデータの概要

第7章  原爆の影響

第8章  原爆実験、原発からの漏洩:正常運転下、スリーマイル島原発事故

第9章  チェルノブイリ原発事故

第10章  福島原発事故

第11章  劣化ウラン弾

第12章  ガン発症の歴史的変遷

あとがき 

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食品の放射能汚染はいまどうなっているの?(その3:魚、肉)

放射線被ばくを学習する会の新ホームページはこちら

(その1)~(その3)全体のPDF(食品汚染2013-2.pdf)はこちらから
リンクをクリックして開く下記ページの左上からダウンロードできます。

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危ないサカナくんたち

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魚のセシウム汚染グラフは農水省ホームページより作図

 すずきは海の深さで言うと中層にすんでいる魚ですが、高レベルにセシウム汚染されています。上の左図の縦軸は1,200まであります。△の福島県沖で採れたすずきからは政府の食品基準・100ベクレル/キロをはるかに超えるものがどんどん見つかっています。

 

右図は、左図の100ベクレル以下だけを示しています。宮城県、茨城県沖のすずきからも20ベクレル/キロ前後がたくさん検出されています。千葉県沖では日が経つにつれ、汚染が進行しているように見えます。

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底層にすむヒラメ、カレイも危ない魚の代表格です。

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マコガレイのほか、マガレイ、ババガレイ、アカガレイ、ヌマガレイなど、カレイと名の付くものは危ないようです。2013_17

 

マダラもヒラメ、カレイと同様底層の魚で、汚染レベルが高いです。

北海道沖でも10ベクレル/キロ台のマダラが見つかるので、国産のマダラは危ないです。

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アジも底層の魚で、福島県沖では24ベクレル/キロが検出されています。

東日本沖のアジは避けた方が良さそうです。

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サバ、ブリ、カツオ、マグロはいずれも大型の回遊魚です。アジ、タラなどに比べても汚染土は低いようです。5年くらいは生きて回遊するので、西日本で採れたからといって安心はできません。

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サンマは汚染度が低いようで、検出限界1ベクレル/キロでも検出報告はありません。

 

魚のストロンチウム

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水産庁資料より

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水産庁資料より作成

 

ストロンチウムはカルシウムと似ているので、主に骨に吸収されます。骨髄が放射性ストロンチウムで照射されると白血病になるおそれがあります。

魚料理では骨も食べる可能性があるので、魚のストロンチウム測定は特に重要です。

ストロンチウムを測定するには化学的な操作に慣れた技術者が必要ですが、日本には非常に少なくなり、政府が計りたがらないこととあいまって、測定が遅れていました。

最近ようやく上記の47件の測定結果が公表されました。魚からストロンチウムが検出されたのは、右表の5件だけとしています。左図にあるように、いずれも福島県沖です。

ストロンチウム90の量はセシウム1371,000分の1程度から100分の1程度まであります。

 

肉類の検査は検出限界が高すぎる!

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牛肉は「食品中の放射性物質検査データ」より
豚肉は農水省ホームページより
鶏肉も農水省ホームページより

牛肉は2011年に汚染が発覚したので今も膨大な数の測定データがありますが、圧倒的大部分は検出限界が25ベクレル/キロなので、安心できません。豚肉、鶏肉も似たようなものです。

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その中でも検出限界を上回った例が上図のように報告されています。

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豚肉の場合、福島県では40ベクレル/キロ以上が報告されているのに対し、栃木・岩手などの汚染は非常に低く、不思議に感じます。神奈川県で36ベクレル/キロが報告されているのを見ると、汚染された餌が一部に出回っているのでしょうか。豚肉は要注意のようです。

 鶏肉では、20124月以降の760件のうち、1Bq/kg未満だった鶏肉71%)だけ。検出限界を超えた報告は、福島県(川俣町)産の6.6ベクレル/キロ(2012.5.21採取)だけです。

自分の体は自分で守るしかない

政府の食品基準は高すぎるし、産地偽装のおそれもあります。外食では産地を確認することも容易ではありません。缶詰をはじめ加工食品になってしまえば産地確認も困難です。

それでもできるだけ内部被ばくを少なくするよう、食品を選ぶ際にこの情報が少しでもお役に立てば幸いです。

内部被ばくを避ける人が増えることが、食品基準改正の力にもなります。

その1
基礎、米
その2
野菜、タケノコ、キノコ、果実
その3
魚、肉
(アース)

 1月20日被ばく学習会「国連科学委の安全論は正しいか?」

1月の学習会は「国連科学委の安全論は正しいか?」です。

昨年10月、国連科学委員会は福島原発事故について、一般公衆の被ばく線量は低いので はっきりした健康影響は出ないだろうとする報告書を国連総会に提出し、1月中にも安全論を国際的に大々的に拡散しようとしています。

しかし、福島の子どもたちに甲状腺がんが多発しています。国連科学委の安全論は本当なのでしょうか?

 市民団体の声明を主導されたヒューマンライツナウの伊藤和子さん、科学的記述を点検された瀬川嘉之さんのお話を伺って考えたいと思います。

「国連科学委 相関図」田島直樹(放射線被ばくを学習する会)

「市民が送った声明と国連科学委報告書」 伊藤和子さん

  (ヒューマンライツナウ・副理事長、弁護士)

「科学的記述の問題点」 瀬川嘉之さん

  (高木学校、放射線被ばくを学習する会)

1月20日(月) 午後6時15分~9時20分

アカデミー湯島・視聴覚室

 地下鉄千代田線「湯島」駅から徒歩6分、

 丸の内線・大江戸線「本郷三丁目」駅から7~9分

 「湯島天神入口」交差点近く

 文京区湯島2-28-14

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団体名は「安全な環境を考える会」です。

参加費(資料代込み):700円

資料準備のため、参加される方は
 [email protected] へご連絡ください。 

主催:放射線被ばくを学習する会 


 

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食品の放射能汚染はいまどうなっているの?(その2:野菜、タケノコ、キノコ、果実)

放射線被ばくを学習する会の新ホームページはこちら

(その1)~(その3)全体のPDF(食品汚染2013-2.pdf)はこちらから
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葉菜類はほうれん草、小松菜に注意

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農水省ホームページより作図

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農水省ホームページより作図

玄米と同様、野菜の放射能測定も検出限界が高い場合が多く、信頼度の低いデータが大部分です。上の2つの図は検出限界を超えた、数少ないデータを示します。

葉物野菜の中で、ほうれん草、小松菜は福島県で520とか150ベクレル/キロが検出されています。 

 茨城県のほうれん草で4.5、神奈川県の小松菜で2.7ベクレル/キロなどの報告があり、首都圏産でも警戒が必要です。

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農水省ホームページ農水省ホームページより作図

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農水省ホームページより作図

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農水省ホームページ農水省ホームページより作図

キャベツ、白菜、レタスは、ほうれん草・小松菜に比べると福島県での検出値が低いようですが、茨城県のレタスで3.6、神奈川県のレタスで0.53ベクレル/キロが報告されているので、首都圏産も安心できません。

さつまいもが危ない

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農水省ホームページより作図

 根菜類では、さつまいもがセシウムを取り込みやすいようです。福島県産のものでは10ベクレル/キロ以上のものが多く見つかっています。茨城県、埼玉県産も数ベクレル/キロ検出されています。

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農水省ホームページより作図

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農水省ホームページより作図

果菜類はきゅうりにご注意

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農水省ホームページより作図 

ナス科のトマト、ピーマン、なすはセシウムを吸収しにくいようです(「食べる? 食品セシウム測定データ745」)が、2013年に宮城県のなすから1012ベクレル/キロ検出されています。

きゅうり(ウリ科)も2013年に入ってから検出されるようになり、埼玉県産でも2.9ベクレル/キロが測定されているので、要注意です。

タケノコは危ないです!

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タケノコは汚染度が非常に高いので、検出限界を超えたデータが膨大にあります。産地毎にその平均値を出してグラフにすると、妙ですねぇ。岩手、宮城、福島と、土壌の汚染度が高くなるほどタケノコの汚染度は逆に下がっています。

東京都は1検体、静岡は2検体だけですが、それぞれ5ベクレル/キロ、2ベクレル/キロ検出されているので、少なくとも東日本のタケノコは避けた方がいいと思います。

キノコも、とても危ない!

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桃、梨、キウイにご注意を!

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 福島桃は確実に汚染されています。

 山梨県産は
検出限界未満ばかりで、汚染度を判断できません。

 ピーチジュースも注意が必要です。

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梨の東の主要産地は福島、茨城、千葉です(食べる? 食品セシウム測定データ745」)。福島の梨はもちろん、千葉県産の梨からも2ベクレル/キロ台、茨城県産からも1ベクレル未満が検出されています(上図左端)。

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 一般に流通しているキウイは、「夏は外国産が多く、秋から冬にかけては西日本産が中心となります。なので、スーパーで買う場合には、あまり心配いらないでしょう。とはいえ、関東・東北南部でも栽培されており」(食べる? 食品セシウム測定データ745」)産地に注意が必要です。

ミカンなどの柑橘類、りんごなども福島県産は汚染度が高いです。愛媛県産のミカンや青森・長野のりんごなどは汚染度が低いと期待されますが、測定報告があっても「検出限界未満」ばかりで、確認できないのが現状です。

その1
基礎、米
その2
野菜、タケノコ、キノコ、果実
その3
魚、肉
(アース)

 1月20日被ばく学習会「国連科学委の安全論は正しいか?」

1月の学習会は「国連科学委の安全論は正しいか?」です。

昨年10月、国連科学委員会は福島原発事故について、一般公衆の被ばく線量は低いので はっきりした健康影響は出ないだろうとする報告書を国連総会に提出し、1月中にも安全論を国際的に大々的に拡散しようとしています。

しかし、福島の子どもたちに甲状腺がんが多発しています。国連科学委の安全論は本当なのでしょうか?

 市民団体の声明を主導されたヒューマンライツナウの伊藤和子さん、科学的記述を点検された瀬川嘉之さんのお話を伺って考えたいと思います。

「国連科学委 相関図」田島直樹(放射線被ばくを学習する会)

「市民が送った声明と国連科学委報告書」 伊藤和子さん

  (ヒューマンライツナウ・副理事長、弁護士)

「科学的記述の問題点」 瀬川嘉之さん

  (高木学校、放射線被ばくを学習する会)

1月20日(月) 午後6時15分~9時20分

アカデミー湯島・視聴覚室

 地下鉄千代田線「湯島」駅から徒歩6分、

 丸の内線・大江戸線「本郷三丁目」駅から7~9分

 「湯島天神入口」交差点近く

 文京区湯島2-28-14

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団体名は「安全な環境を考える会」です。

参加費(資料代込み):700円

資料準備のため、参加される方は
 [email protected] へご連絡ください。 

主催:放射線被ばくを学習する会 



 

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食品の放射能汚染はいまどうなっているの?(その1:基礎、米)

放射線被ばくを学習する会の新ホームページはこちら

(その1)~(その3)全体のPDF(食品汚染2013-2.pdf)はこちらから
リンクをクリックして開く下記ページの左上からダウンロードできます。

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「安全な放射線量」はありません

現在、日本の食品基準は基本的に放射性セシウム(134+137)100ベクレル/キログラムです。

311以前、100ベクレル/キログラムを超える廃棄物は「放射性廃棄物」として処理されてきました。ごみとして廃棄するに際して100ベクレル/キログラムを超えるようではヒトに害を与える可能性があります。今はその100ベクレル/キログラムが、食べて内部被ばくしてもいいかどうかの基準になっているのです。

では、何ベクレル/キログラム以下の食べ物なら、安全なのでしょうか?

この問いに答えることは不可能です。

たびたび申し上げてきたように(例えば「100ミリシーベルト以下でも危ないです!」)、どんなに低線量の被ばくでも、被ばく量に比例してがんが増えると考えられています。これはICRP(国際放射線防護委員会)も認めていることです。

被ばく線量が低くなればなるほどがんになる率は小さくなりますが、決してゼロにはなりません。放射能に「安全な量」はないのです。

チェルノブイリ原発事故により、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアをはじめヨーロッパ各国の国土が、311後の東日本と同様、放射性物質でひどく汚染されました。特に汚染のひどかったウクライナ、ベラルーシなどでは、食品の放射能規制は行われていますが、今でも「地産地消」で放射能汚染された食材が使われ、住民が内部被ばくしています。

セシウム13711ベクレル/体重キログラムで心電図異常

ベラルーシの研究者・バンダジェフスキーは、子どもたちの放射能汚染度を調べ、体重1キログラム当たり11ベクレルを超えるセシウム137を蓄積した子どもでは、心電図異常のない子どもが半減していることを明らかにしています。

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セシウム137を毎日10ベクレル食べると・・・・

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 上の図2の基本はICRP(国際放射線防護委員会)がPublication 111で示しているものです。

例えば1,000ベクレルのセシウム137を含む食品を食べた場合(図2の緑の線)、最初の数日はセシウム137がどんどん体外に排出され、体内のセシウム137は急激に減っていきます。

その後は110日で半分にしか減らないので、600日経っても少しは体内に残っています。

他方、10ベクレルのセシウム137を含む食品を毎日食べた場合(図2の青線)、体内のセシウム137はどんどん蓄積していきます。体内のセシウム137が増えると排出される量も増えるので、大体1,400ベクレルで蓄積する量と排出される量が釣り合い、一定になります。

体重70キロの想定なので、体重1キロ当たり20ベクレルのセシウム137がたまることになります。毎日10ベクレルで20ベクレル/キロたまるわけです。

図2は成人の場合の計算です。子どもの場合はセシウムを排出する速度が早いので一定になるレベルは低いのですが、体重が少ないので、やはりほぼ20ベクレル/キロたまります。

図1では11ベクレル/キロで心電図異常が増えています。毎日6ベクレル食べると12ベクレル/キロになります。

1日に2キロ食べるとすると、3ベクレル/キロの食品を毎日食べると、心電図異常が出るレベルという計算になります。

 

日本全国の汚染状況

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文科省の航空機モニタリング結果より

  上の図から分かるように、少なくとも岩手、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、千葉、埼玉、長野の各県、東京都、の一部は明らかに放射性セシウム で汚染されています。従って、例えば福島県産の玄米が汚染されていれば、他の各汚染都県産も大なり小なり、汚染されていると考えるべきでしょう。

食品の汚染状況(目安)

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  各食品の汚染状況は以下の頁にありますが、最初におおまかな汚染度分類を載せておきます。

ここでは、2012年産以降の食品が40ベクレル/キロ以上が報告されているものは「汚染度高」と表示しています。40という数字はタケノコの汚染度に基づいています。

検出限界が1ベクレル/キロ未満でも放射性セシウムが検出されないものを「汚染度低」とし、「高」と「低」の間を「中」としました。

以上の説明からもお分かりいただけると思いますが、この汚染度分類はあくまでも目安です。

汚染度が高、中のものは東日本産を避け、せめて西日本産、あるいは外国産のものを選ぶことをお勧めします。但し、これはあくまでも問題を放射性セシウムに限定しての議論です。

また、カツオ、マグロ、ブリ、サバなどの大型の回遊魚は5年くらい生きるそうですから、西日本で採れたものでも安心できないでしょう。

食品の汚染具合を調べるには・・・

下記の農水省のホームページ厚労省のホームページから食品の放射能検査結果が分かります。

Photo_3

お米の汚染は?

まず、主食の米を調べてみます。

上記の農水省のホームページから、「農産物に含まれる放射性セシウム濃度の検査結果」→「品目別、都県別の検査結果」→「平成25年度の検査結果」→「品目別の検査結果」→「米」→「米(福島県)」と進むと、福島県のホームページに移動、2013年産の福島米の検査結果が分かります。

Photo_4

https://fukumegu.org/ok/kome/

残念ながら、福島県の米は「ベルトコンベア式放射性セシウム濃度検査器」でスクリーニング検査されているので、測定限界が25ベクレルです。

3ベクレル/キロを問題にしているのに、これでは話になりません。

福島県の米の取引が低迷している(20131226日 朝日新聞朝刊・福島版31面)のは当然でしょう。

20131226am31

 

福島以外の米は?

1
農水省ホームページから作図

農水省のサイトから食品の検査データをダウンロードすると上のようなエクセルの表で表示されます。膨大なデータが載っています。例えば栃木県のお米のデータを知りたい時はフィルターを使います。

Photo_5

上の図のがフィルターです。例えば産地欄の都道府県セルにあるフィルターをクリックすると、下の図のように、初期設定ではすべての都道府県にチェックが入っています。

Photo_6

下の図のように「すべて選択」のチェックをはずし、「栃木県」だけをチェックすると、栃木県のデータだけを見ることができます。「すべて選択」をチェックすれば、また全部のデータを見られます。

Photo_7

万一、フィルターが表示されない時は、エクセルで「データ」→フィルターをクリックします。

このようにして各県別に集計すると、下のグラフのようになりました。

2013

栃木県のデータを見ると、例えばキロ当たり7ベクレル以上・8ベクレル未満の玄米は91件ありました。11ベクレル以上のデータは例えば11.5ベクレル/キロというように測定値が出ていますが、大部分は検出限界(○.○ベクレル/キロ)未満という表示です。

不思議なことに栃木県のデータは8ベクレル未満を中心に両側にほぼ同様に分布しています。まるで、例えば7.5ベクレルと測定されたデータを8ベクレル未満と表示しているかのようです。

2013_2

上の図は検出限界以上の玄米の結果です。宮城県でも50ベクレル/キロ近いものもあります。

「米どころ」新潟県産の米についても、検出限界の高いデータが大部分です。

新潟県産玄米(Bq/kg)
新潟県発表 農水省発表
2011年 <20 なし
2012年 <7.7 <1.0 1検体
2013年 <6.1 <5.7~<8.6 72検体

農研機構の発表(下図)によると、精米により放射性セシウムは約4割にまで減ります。

6

その1
基礎、米
その2
野菜、タケノコ、キノコ、果実
その3
魚、肉
(アース)

 


 1月20日被ばく学習会「国連科学委の安全論は正しいか?」

1月の学習会は「国連科学委の安全論は正しいか?」です。

昨年10月、国連科学委員会は福島原発事故について、一般公衆の被ばく線量は低いので はっきりした健康影響は出ないだろうとする報告書を国連総会に提出し、1月中にも安全論を国際的に大々的に拡散しようとしています。

しかし、福島の子どもたちに甲状腺がんが多発しています。国連科学委の安全論は本当なのでしょうか?

 市民団体の声明を主導されたヒューマンライツナウの伊藤和子さん、科学的記述を点検された瀬川嘉之さんのお話を伺って考えたいと思います。

「国連科学委 相関図」田島直樹(放射線被ばくを学習する会)

「市民が送った声明と国連科学委報告書」 伊藤和子さん

  (ヒューマンライツナウ・副理事長、弁護士)

「科学的記述の問題点」 瀬川嘉之さん

  (高木学校、放射線被ばくを学習する会)

1月20日(月) 午後6時15分~9時20分

アカデミー湯島・視聴覚室

 地下鉄千代田線「湯島」駅から徒歩6分、

 丸の内線・大江戸線「本郷三丁目」駅から7~9分

 「湯島天神入口」交差点近く

 文京区湯島2-28-14

Photo

団体名は「安全な環境を考える会」です。

参加費(資料代込み):700円

資料準備のため、参加される方は
 [email protected] へご連絡ください。 

主催:放射線被ばくを学習する会 

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1月20日被ばく学習会「国連科学委の安全論は正しいか?」

皆さま、今年こそ、原発ゼロへ飛躍の年にしたいと思います。

1月の学習会は「国連科学委の安全論は正しいか?」です。

昨年10月、国連科学委員会は福島原発事故について、一般公衆の被ばく線量は低いので はっきりした健康影響は出ないだろうとする報告書を国連総会に提出しました。

他方、福島の子どもたちに甲状腺がんが多発しています。国連科学委の安全論は本当なのでしょうか?

 市民団体の声明を主導されたヒューマンライツナウの伊藤和子さん、科学的記述を点検された瀬川嘉之さんのお話を伺って考えたいと思います。

「国連科学委 相関図」田島直樹(放射線被ばくを学習する会)

「市民が送った声明と国連科学委報告書」 伊藤和子さん

  (ヒューマンライツナウ・副理事長、弁護士)

「科学的記述の問題点」 瀬川嘉之さん

  (高木学校、放射線被ばくを学習する会)

1月20日(月) 午後6時15分~9時20分

アカデミー湯島・視聴覚室

 地下鉄千代田線「湯島」駅から徒歩6分、

 丸の内線・大江戸線「本郷三丁目」駅から7~9分

 「湯島天神入口」交差点近く

 文京区湯島2-28-14

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団体名は「安全な環境を考える会」です。

参加費(資料代込み):700円

資料準備のため、参加される方は
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主催:放射線被ばくを学習する会 

(アース)

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食品の放射能汚染状況は?(2013年)

 放射線被ばくを学習する会の第6回学習会「なんでも質問会」で、最近の食品の放射能汚染状況について報告しました。

 動画中央の矢印をクリックしてください。

 私の話は24分55秒からです。

(アース)

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原子力規制委員会はICRP勧告111を改ざんして 「帰還基準20ミリシーベルト」を打ち出した!

PDFファイルはこちらからダウンロードできます。

 2013年11月20日、原子力規制委員会は「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」がまとめた「基本的考え方(案)」を基本的に了承しました。

 その要点は以下のとおりです。



.「100ミリシーベルト以下では健康リスクの明らかな増加を証明することは難しいと国際的に認識されている。」

.事故後は公衆の線量限度・年間1ミリシーベルトを適用しない。

.原発事故後の収束過程では長期的な目標として1~20mSvの下方部分から選択すべきとされており、20mSv未満は必須である。

.空間線量でなく、個人線量を重視する。

 この4項目はすべておかしなことだらけです。

10ミリシーベルトでもがんが0.3%増加する

10sv  

図1 M.J.Eisenberg et.al. Canadian Medical Association Journal 183 430-436(2011)

 以前のブログ記事にも書きましたが、上の図に見られるように、カナダの病院に入院した心筋梗塞患者の調査によると、検査・治療で医療被曝を受けた患者さんは、医療被曝を受けなかった患者さんに比べ、10ミリシーベルト被ばくでがんが3%増えることが明らかになっています。

原爆では34ミリシーベルトでがん死増

Pnas20032

図2 D.J.Brenner 他 Proc.N.A.S. 100 13761-13766(2003) を改変

 放射線被ばくによる発がん・がん死増加のデータで一番信頼度が高いとされているのがヒロシマ・ナガサキの被爆者データです。

 平均20ミリシーベルト(5~50ミリシーベルト)、平均29ミリシーベルト(5~100ミリシーベルト)被ばくの場合もがん死亡率が増えていますが、誤差範囲です。

 しかし平均34ミリシーベルト(5~125ミリシーベルト)以上では誤差範囲を超えて、間違いなくがん死亡率が増えています。

 原爆被爆者でも、100ミリシーベルト以下、34ミリシーベルトでがん死亡率がふえることが明らかになっているのです。

しきい値はない

Lss14  

 原爆被爆者の調査は米国・ABCC(原爆傷害調査委員会)を引き継いだ放射線影響研究所(放影研)によって行われてきました。放影研は「原子力ムラ」の中枢に位置する研究機関です。

 その放影研が昨年発表した「寿命調査14報」では、上のグラフのように、線量に比例してがん死亡率が増加すること、被ばくしてもがん死亡率が増えない「しきい値」はゼロであり、「しきい値」はないことが明らかになっています。

 また、0~200ミリシーベルトの被爆者では間違いなくがん死亡率が増えていると報告されています。これは図2の「平均47ミリシーベルト」被爆群を意味すると思われます。

放影研が論文要約を偽造し、「100ミリシーベルト安全論」を擁護! 
著者による日本語の要約

 全固形がんについて過剰相対危険度が有意となる最小推定線量範囲は0–0.2 Gyであり、定型的な線量閾値解析では閾値は示されず、ゼロ線量が最良の閾値推定値であった。
放影研の要約

 総固形がん死亡の過剰相対リスクは被曝放射線量に対して直線の線量反応関係を示し、その最も適合するモデル直線の閾値はゼロであるが、リスクが有意となる線量域は0.20 Gy以上であった。

 上の表は図3が掲載された「寿命調査14報」の日本語要約です。どちらも放影研のホームページに掲載されています。

 左側は「寿命調査14報」著者が論文要約を日本語に翻訳したものです。

 右側は著者とは別に、放影研が書いた「要約」です。「リスクが有意となる線量域は0.2Gy(=200ミリシーベルト:ブログ著者の註)以上であった」としています。実際は先に触れたように、平均47ミリシーベルトです。

 放影研は論文要約の偽造まで行う組織なのです。

原発労働者でも13.3ミリシーベルトでがん死3.5%増

Photo_2

 このブログの記事「放射線によるがん死は『推定』の10倍だった!」で述べたように、日本の原発労働者についても、平均累積13.3ミリシーベルトでがん死が3.5%増えることが分かっています。これは累積100ミリシーベルトも被ばくしたらがん死が26%増えるということです。

 「帰還の安全・安心対策に関する基本的考え方(案)」の第1項は「100ミリシーベルト以下では健康リスクの明らかな増加を証明することは難しいと国際的に認識されている」とうたっていますが、これはまったく誤りです。

事故後は線量限度・1ミリシーベルトを放棄

 「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づく告示」により、原発の
「周辺監視区域(=敷地境界)」外の線量限度は、実効線量について1年間につき1ミリシーベルトと決められています。

 これはICRP(国際放射線防護協会)の勧告に基づいて、公衆の線量限度を年1ミリシーベルトと決め、敷地境界外では年1ミリシーベルト以上の追加被ばくをさせないという条件で原発の建設・運転を認めているのです。

 ところが実際は過酷事故などまったく想定しないズサン審査で原発は建設・運転され、福島原発事故を起こしてしまい、東日本をはじめ非常に広範囲の国土で1ミリシーベルトの線量限度をオーバーする事態になりました。

 これは東電・政府の責任であり、線量限度を守れるように措置しなければなりません。

 ところが政府は福島原発事故発生と同時に原発労働者の「線量限度」を引き上げ、一般公衆の線量限度は事実上放棄しました。

 その根拠とされているのがICRP勧告103(2007年)などです。

”大量被ばくしても諦めなさい”-ICRP勧告

 1986年のチェルノブイリ事故後、ヨーロッパの広範な国土が汚染され、1ミリシーベルトの線量限度を守れなくなりました。

 そこでICRPは、原発事故後は「線量限度」を適用しないこととし、原発事故後直後は年間100ミリシーベルト以下、事故後の回復過程では20ミリシーベルト以下の「参考レベル」を設定すればいい、と勧告したのです(2007年 Publication 103)。

 要するに、原発事故で汚染されてしまったのだから、1ミリシーベルトをはるかに超えるほど被ばくしても諦めなさい、ということです。

 ICRPは事故後の回復過程を「現存被ばく状況」と表現しています。まさに「汚染されちゃったんだからしょうがないじゃん!」ということです。

ICRPの勧告を改ざんした規制委

 ところが原子力規制委員会は、このICRP勧告さえもねじ曲げ、改ざんして年間20ミリシーベルトを強要しています。

ICRP勧告111(2008年) 原子力規制委員会・帰還の基本的考え方
1~20mSvのバンドの下方部分から選択すべき 長期的な目標として・・・下方部分から選択・・
過去の経験は、長期の事故後の状況における最適化プロセスを拘束するために用いられる代表的な値が1mSv/年であることを示している」 過去の経験から、この目標は、長期の事故後では年間1mSvが適切であるとしている
(事故後の最初から1mSv/年) (何年も後に1mSv/年にすればいい)

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 ICRP勧告111は主に原発事故後の長期汚染地域に住む住民の健康を守るため、年間1ミリシーベルトの「参考レベル」を推奨しています。実際、 これまでの例を見ても、上の表「長期汚染地帯の規制値」にあるように、事故後、あるいは事故1年後から年間1ミリシーベルトで規制している例が圧倒的で す。

 ところが原子力規制委員会の「基本的考え方」は、上の表に見られるように、この勧告の文章を少しずつ書き換え、「何年もたってから1ミリシーベル トにすれば当面20ミリシーベルトで構わない」とICRPが勧告しているように偽造し、「長期目標として、帰還後に個人が受ける追加被ばく線量が年間1ミ リシーベルト以下になるよう目指すこと」を条件に、20ミリシーベルトを打ち出しています

ガラスバッジ測定値はあまりにも低すぎる

 「基本的考え方」の決定に際して原子力規制委員会が参考にした資料の37頁に、空間線量から計算した被ばく線量と、ガラスバッジで測定した個人被ばく線量の比較表が載っています。その結果をグラフにしました。

Photo  

 上のグラフの縦棒一本一本は、福島県内の各地で測定された住民72人~52,000人余りのデータの平均値です。

 「計算値」は航空機モニタリングのデータから計算しているので放射性セシウムによる追加被ばく線量です。屋外8時間、屋内16時間で、屋内での線量は屋外の4割として計算しているので、空間線量の6割になります。

 24時間屋内にいても空間線量の4割なので、ガラスバッジ測定値は「計算値」の3分の2

にしかならないはずです。

 ところが実際のガラスバッジ測定値は「計算値」の0.11~0.38で、あまりにも低すぎます。

 福島県浜通りの中学生以下438人の平均で、ガラスバッジ測定値が年間0ミリシーベルトという例さえ載っています。

 ガラスバッジ測定値はなんでこんなに低いのでしょうか?

ガラスバッジのブラックボックス

Photo_3 もともとガラスバッジは、原発労働者や医療従事者などの職業被ばくを測定するために使われてきました。職業被ばくのない場所に置いたガラスバッジ(コントロール・バッジ)の線量を差し引いて、職業被ばくによる線量を測定します。

 福島原発事故後のように広範囲に汚染されてしまうと、コントロール・バッジをどこに置くかが問題になります。

 日本でガラスバッジを扱っているのは、千代田テクノル(株)と長瀬ランダウア(株)です。

 おしどりマコ・ケンの調査によると、最大手の千代田テクノル(株)はつくば(茨城県)の事業所にコントロール・バッジを置いているそうですが、そこの線量は分かりません。

 長瀬ランダウア(株)は「市によっては市役所の建物の中だとか、教育関係の建物の中にコントロールバッジを置いて」いるとのことです。これだとコントロール・バッジの線量が高くなってしまいます。

 多くの自治体では、コントロール・バッジの線量を公開していないようです。このようにガラスバッジにはブラックボックスがあります。

 ガラスバッジの最大の問題点は、住民が自分で線量を確認できないことです。

 累積被ばく線量を随時デジタル表示する線量計もありますが、ガラスバッジは1ヶ月とか3ヶ月ごとに回収して業者が測定した結果を信じるしかないのです。それこそブラックボックスです。

 ブラックボックスを信じて線量を「自己管理」せよなどというのは、土台無理な話です。

ICRP勧告111の改ざんに基づく
「帰還基準20ミリシーベルト」を撤回させよう!

 11月20日の原子力規制委員会では、提案された「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(案)」に対し、更田委員がいみじくも”安全 を確保する前に住民の「不安解消」に必死になっているイメージだ”という旨の発言をし、田中委員長が「低線量被ばくに関して、安全ということを科学的に言 える状況にはないわけで、だからこそ不安があるわけです(議事録15頁)。」 と認める場面もありました。

 結局、「基本的考え方(案)」は基本的に了承され、原子力災害対策本部(原災本部)に提出されることとなりました。

 原災本部で了承されれば、20ミリシーベルト未満の地域の避難指示が解除され、東電の賠償金支払いを停止し、帰還促進の圧力が急激に高められるでしょう。

 年間20ミリシーベルトで帰還なんて、とんでもないことです! 5年いるだけで100ミリシーベルトです。しかも被ばくによる発がん増加はICRP推定の約10倍です

 20ミリシーベルト帰還基準がICRP勧告111の改ざんに基づくことを多くの人々に知らせ、20ミリ基準を撤回させよう!

(アース)

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11月21日(木)夜、おしどりマコ・ケンを迎えて学習会!

第5回 被ばく学習会

11月21日(木) 午後6時15分~9時20分

 Photo_3  「福島の健康問題・3年」
おしどりマコ・ケン

 

「11.12 福島県県民健康管理調査検討委員会 傍聴報告」 田島直樹

団体名は「安全な環境を考える会」です。

参加費(資料代込み):700円

資料準備のため、参加される方は [email protected]へご連絡ください。

文京区男女平等センター 研修室B
地下鉄丸の内線、大江戸線 「本郷三丁目」駅下車 徒歩5分
都営地下鉄「春日」駅7分 TEL 03-3814-6159
文京区本郷4-8-3 本郷真砂(まさご)アーバンハイツ1

Photo_4

放射線被ばくを学習する会 http://www57.atwiki.jp/20030810/  

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«前略、田中一郎です。引っ越しました。