2024年10月03日
「核持ち込みなし」の核共有を! 石破茂自民新総裁の無理な主張
9月27日の自民党総裁選挙で新総裁に選出された石破茂氏は、9月16日、総裁選ネット討論会で、次のように「核持ち込みなし」の核共有についての検討を提唱して話題を呼んだ。
核共有っていうのは意思決定の過程を共有しましょうってことですから、非核三原則に触れるものでも基本的にはないということで。この話はもう少し真面目にしなきゃいかんですよ。核攻撃を受けた国であるだけに。
2024年09月20日
世界の核兵器の情報2024年(6月更新版)に追記のお知らせ
米国科学者連合(FAS)のデータ(原文:Status of World Nuclear Forces - Federation of American Scientists)に、追加情報を<追記>の形で掲載しましたのでお知らせします。2023年版との増減を示した核情報作成の表や、2024年7月20日に米国が公表した過去3年間の保有核数に基づく新たな情報などです。ご活用いただければ幸いです。
2024年07月01日
日本、「プルトニウム保有量削減」の約束反故に?
経産省:「一時的に微増することも」
6月5日、経産省資源エネルギー庁担当者は、市民グループ主催の会合での質問に対し、「日本のプルトニウムの保有量は一時的に微増することもあり得る…ただし、将来的には減少する見通しが示されることが重要」との見解を示しました。
2024年06月21日
世界の核兵器の状況 2024 2024年6月更新版掲載のお知らせ
核情報で継続して訳出している米国科学者連合(FAS)のデータ(原文:Status of World Nuclear Forces - Federation of American Scientists)が6月に更新されたので、訳出して紹介します。SIPRI年鑑2024年(2024年6月17日発刊))の第7章「世界の核戦力」(pdf)はFASのデータの主著者らよるもので、同章のエッセンスが日本語で読めます。
2024年06月03日
先制不使用反対の日本の核政策の実態を海外に発信
──2021年8月、豪政府に米の先制不使用宣言支持を要請した同国反核運動
日本は、米国が先には核を使わないとの先制不使用宣言をすることに反対して来ています。日本のこの核政策についての情報を日本の国内外に広め、議論を深めておかないと、「唯一の被爆国日本」という曖昧なイメージに基づいた議論が繰り返されることになります。また、米国の核の傘の下にある国々の反核運動の間での情報交換は効果的な運動を進める上で重要です。以下、日本の核政策の本質についての情報を広めようとする試みの成功と失敗について、オーストラリアを例にとって見てみましょう。
2024年05月28日
世界の核兵器の状況 2024
核情報で継続して訳出している米国科学者連合(FAS)のデータ(原文:Status of World Nuclear Forces - Federation of American Scientists)が3月に更新されたので、訳出して紹介します。
2024年05月19日
今年9月までに六ヶ所再処理工場が完成し、来年再処理開始?
──だが、国際公約で需要に合わせて運転するからプルトニウム保有量は増えない?
2024年4月現在、日本は、青森県の六ヶ所再処理工場を2024年度上半期に完成させる計画です。計画通りだと、翌年度には実際の再処理を始め、31年度から年間約7トンのプルトニウムを分離することになります(一発当たりプルトニウム8キログラムという国際原子力機関(IAEA)の数え方で1000発分弱です)。日本は、2022年末現在、45トン以上のプルトニウム(5600発分以上)を保有しています。一方、プルトニウムを消費できる運転中の原子炉はわずかに4基のみです。その平均年間消費可能量は合計して約2トンに過ぎません。再処理工場が順調に運転されれば、核兵器に利用可能なプルトニウムが急増することは必至です。
2024年03月31日
核禁条約、米国を恐れず「勇気」出して参加を ICAN事務局長
──米国の先制不使用宣言に反対する日本が?
元オーストラリア国際開発相で、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長が、日本が核兵器禁止条約に参加していないのは、対米関係悪化を過度に恐れているためで、「勇気とリーダーシップを欠いている」と指摘し、日本に条約参加を促したと共同通信(2024年1月23日)が報じました。しかし、日米間にあるのは、「早期核廃絶を願う日本が、米国の反応を恐れて条約に参加できないでいる」という関係ではありません。
2024年03月30日
資料 新アジェンダ連合決議案と日本の投票──田窪雅文(現 核情報主宰)1999年11月16日付けメモ
1999年11月12日に開かれた社民党の外交防衛部会で外務省の佐野利男軍備管理軍縮課長(当時)らが「新アジェンダ連合の国連決議案への対応について」説明を行った際、同席し質問する機会を得ました。その際のやり取りのまとめを資料として掲載します。
2024年03月29日
日本と「核の傘」、そして米国の核兵器使用政策
──軍縮問題資料 2000年1月号 (1999年発行) 再掲
トーマス・グレアム・ジュニア 軍備管理・核不拡散・軍縮問題担当米国大統領特別代表 (1994~97年)
1999年8月2~3日に広島で開かれた国際会議に招かれながら出席できなかったトーマス・グレアム氏が、会議のために送ってきた原稿が訳者(現 核情報主宰)の依頼で『軍縮問題資料』2000年1月号に掲載されました。資料として、再掲します。
2024年03月21日
MOX燃料輸送・装荷・保管まとめ」更新のお知らせ
日本のプルトニウム保有量のMOX燃料輸送・装荷・保管まとめに2023年12月の情報を追加したのでお知らせします。
12月初旬に高浜3号にMOX燃料16体(プルトニウム含有量631㎏)が装荷され、同炉が12月22日起動というものです。これで、1999年に英仏からのMOX燃料の輸送が始まって以来の装荷(照射)合計は、5,935kgとなりました。MOX利用(プルサーマル)によるプルトニウムの年間平均消費量は約237㎏です。
なお電気事業連合会が2024年2月16日に発表した「プルトニウム利用計画」(pdf)では、2024年度と2025年度の利用量はゼロとなっています。
参考
2023年11月24日
核を先には使わないと米国が宣言するのを嫌がる日本が橋渡し?
──ロシアによるウクライナ侵攻を背景に高まる核使用についての懸念
11月27日から12月1日までニューヨーク国連本部で開かれる核兵器禁止条約の第2回締約国会議に関し、日本はオブザーバー参加して「核保有国と非保有国の橋渡し役」を果たすべきだという声が上がっている。8月5日に広島で開かれた核廃絶問題に関する与野党討論会でも、与党公明党の山口那津男代表と国民民主党の玉木雄一郎代表が同趣旨の主張をした。
だが、核を先には使わないと米国が宣言するのを嫌がる「唯一の被爆国日本」は果たして「橋渡し役」を担える立場にあるのだろうか。
2023年11月02日
高まる核の脅威と、物理学者が危険を減らすためにできること:ブレガー名誉教授の発言原稿原文(英文)追加のお知らせ
高まる核の脅威と、物理学者が危険を減らすためにできること(2023.10.16)に、ブレガー名誉教授の発言原稿原文(英文)を追加しましたのでお知らせします。
海外の方々にお知らせいただくなど、御活用・拡散、よろしくお願いします。
2023年10月31日
電事連2023年「プルトニウム利用計画」発表 3年で合計わずか2.1トンに<追記>のお知らせ
電事連2023年「プルトニウム利用計画」発表 3年で合計わずか2.1トン──その後は絵に描いた餅(2023. 3. 8)に、<追記>六ヶ所再処理工場スケジュールを挿入しましたのでお知らせします。以下の2件の情報の詳細です。
- 日本原燃が2022年12月26日に発表した 「2024年度上期のできるだけ早期」竣工(完成)
- 関西電力が2023年10月10日に発表した「使用済燃料ロードマップ」にある再処理工場運転計画[関電の使用済み燃料搬出・敷地内貯蔵計画も含む]
2023年10月16日
高まる核の脅威と、物理学者が危険を減らすためにできること
ステュワート・プレガー プリンストン大名誉教授
米国「核脅威削減のための物理学者連合(The Physicists Coalition for Nuclear Threat Reduction)」は、7月に公開された映画『オッペンハイマー』によって高まっている核問題への関心を活用して、核の現状について理解を深めるための活動を展開しています。ここで紹介するのは、その一つ、『オッペンハイマー:科学者、核兵器、そして今日的意味合い』(2023年7月21日:ズーム方式)におけるステュワート・プレガー天文物理学名誉教授(プリンストン大学)の発言です。
2023年10月04日
高浜1・2号稼働で再稼働炉12基に──プルトニウム消費炉は4基のまま
関西電力の高浜1号及び2号が、それぞれ7月28日と9月15日に起動し、2011年の福島第一原子力発電所事故後の再稼働炉が12基になりました(発電再開は、それぞれ、8月2日と9月20日)。再稼働炉は、関電(計7基:高浜1~4号、大飯3・4号、美浜3号)、九州電力(計4基:玄海3・4号、仙台1・2号)、四国電力(1基:伊方3号)です。
このうち、プルトニウム・ウラン「混合酸化物MOX」燃料の使用許可を得ているのは、高浜3・4号、玄海3号、伊方3号の計4基です。これら4基のプルトニウムの使用可能量は、合計で平均約2トン/年です。
2023年09月13日
六ヶ所再処理工場のトリチウム年間放出量(福島全量の10倍ー20倍):追記のお知らせ
公式な放出量の数字が二つある理由についての理解を助けるため、 以下の記事に、日本原燃が2018年4月16日に規制委に提出したトリチウム等「放出管理目標」変更申請の際の新旧の表と、変更についての社長の説明を追加しました。
また、六ヶ所再処理工場からの年間放出量は福島第一原発のタンク内総量の20倍との経産省の説明を、国会議事録から抜粋・掲載しました。
- 六ヶ所再処理工場からのトリチウム年間放出量は福島全量の20倍?10倍?5倍? 規制委審査過程を振り返って 2020. 6.11〜
- 再処理工場からの年間トリチウム海洋放出量は福島全量の20倍と経産省──「フル稼働になるわけではない」ので管理目標値を下回ると規制委更田委員長
2023年09月04日
広島G7サミットに失望?──米国の先制不使用宣言に反対の日本に何を期待?
5月に広島で開催されたG7サミット(先進7カ国首脳会議)の結果に反核運動や被爆者が失望したとの報道が多く見られる。人々は何を期待し、どう失望したのか。
昨年11月インドネシアで開かれたG20サミットの首脳宣言に「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」との表現が入ったことが期待を大きくした一因となったようだ。
2023年08月26日
プリンストン大フランク・フォンヒッペル名誉教授と核情報主宰の再処理批判報告書
「核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)」調査レポートNo.20「プルトニウムの分離を禁止する」(2022年7月発行)の翻訳改訂版が原子力資料情報室から発行されました。
報告書は、世界の再処理計画の歴史と現状を分析し、使用済み燃料再処理の終焉を加速するとともに、近い将来に使用する計画のない既存の分離済みプルトニウムを処分するために、
- 「核分裂性物質禁止条約(FMCT)」の対象を広げ、民生用も含めたあらゆる目的のプルトニウム分離を禁止すること、
- (a)再処理及び再処理廃棄物の深地下処分と、(b)使用済み燃料の深地下直接処分が、環境に与える影響を比較する国際的研究を実施すること
2023年08月25日
過密貯蔵の進む日本の原発と乾式貯蔵 に追記2挿入のお知らせ
過密貯蔵の進む日本の原発と乾式貯蔵──危険な稠密貯蔵の実態分析(2021. 9.29)の 敷地内乾式貯蔵導入済みは福島第一原発と東海第二原発のみに<追記2> キャスク仮保管施設のキャスク設置状況(2023/08/16) を挿入し、また、乾式キャスク導入状況(使用済燃料の貯蔵状況と対策)も追記しましたのでお知らせします。拡散・ご活用よろしくお願いします。
2023年06月19日
フランク・フォンヒッペル講演資料 「日米高速炉開発協力の背景」
新外交イニシアティブ/ジョージ・ワシントン大学エリオット国際関係大学院共催 オンラインシンポジウム 「日米の高速炉開発協力を問う」2023/03/11における米プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル名誉教授の講演資料を紹介します。
2023年06月16日
日本の物理学者に行動を呼びかける「核脅威削減のための米国物理学者連合」日本物理学会の3月の会合で──米中の専門家
2023年3月22日に開催された日本物理学会の「物理と社会シンポジウム(言語:英語)」The current nuclear threat and opportunities for threat reduction: What Physicists Can do [現在の核の脅威と脅威削減の機会:物理学者に何ができるか]での「米国側」発表に使われたパワポ(日英両語)を紹介します。
2023年05月21日
世界の核分裂性物質の量 2021〜22
「核保有国とその他の国の核分裂性物質(高濃縮ウランとプルトニウム)の量」の2022年初頭現在版を「核分裂性物資に関する国際パネル(IPFM)」が2023年4月29日に発表したので紹介します。
2023年04月10日
世界の核兵器の状況 2023年
核情報で継続して訳出している米国科学者連合(FAS)のデータ(原文:Status of World Nuclear Forces - Federation of American Scientists)が3月末に更新されたので、訳出して紹介します。
2023年04月07日
原子力の安全確保の目的が「我が国の安全保障に資すること」? に加筆・注挿入のお知らせ
2012年当時の核セキュリティーの定義を巡る議論を<追記>の形で入れるとともに、脚注の[^1]で民主党政権の原子力規制委設置法案(2012年1月31日)URLと近藤駿介原子力委委員長(当時)が同案に「セキュリティという概念が入っている」と期待を表明した事実の紹介。脚注の[^2]では、自公案(2012年4月20日)のURLを紹介。
2023年04月02日
原子力の安全確保の目的が「我が国の安全保障に資すること」?──現行原子力基本法のこの意味不明の文言こそまず改正すべき
原子力基本法を原子力・再処理・高速炉推進法へ変質させることを狙った「改正案」が2023年2月28日に閣議決定されたことについて各方面から批判の声がっているが、現行の同法にも実は大きな問題がある。「安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ・・・我が国の安全保障に資することを目的として、行う」との意味不明の文言だ。2012年に制定された原子力規制委員会設置法に「我が国安全保障に資する」の文言が入り、同法附則によって、同じ文言が原子力基本法と原子炉等規制法(炉規法)にも挿入された。当時、核武装に向けての布石ではないかとの懸念が国内外で表明された。
2023年03月15日
電事連2023年「プルトニウム利用計画」発表 3年で合計わずか2.1トン
電気事業連合会は、2023年2月17日、最新の「プルトニウム利用計画」 を発表しました。電力9社(除く沖縄電力)と日本原子力発電、電源開発の電力11社の「2023年度から2025年度までの3年間における各社のプルトニウム利用量を記載」と記載された計画は、3年間で合計わずか2.1トンを消費というものです。
2023年02月25日
米、2023年1月末、「2022年核態勢の見直し」日本語版を発表
1月末、米国国防省が「2022年核態勢の見直し」の日本語版を公表しました。2022年10月27日に公開された原文の全訳です。日本語版と同時に公表された韓国語版について、韓国メディアは、『米国が核戦略指針の韓国語版を公表「核武装論」意識か」』(聯合ニュース)、『米国防総省が「核態勢見直し」の韓国語版公開、韓国の「核武装論」を意識か』(東亜日報)、 『米国防総省、核戦略指針の全文を韓国語訳…韓国の「懸念」を意識か』(朝鮮日報)などと伝えました。
2023年02月12日
再処理・プルトニウム利用計画の歴史を振り返る──六ヶ所再処理工場完工予定の27回目の延期を機に
日本原燃は、2022年12月26日、六ヶ所再処理工場の完工目標を2022年上期から「2024年度上期のできるだけ早期」に延期することを発表しました。27回目の延期で、当初計画(1997年)から27年遅れとなります。日本の2021年末現在の分離済みプルトニウム保有量は45.8トンとなっていますが、その消費計画は難航しています。工場には、年間約8トン(核兵器約1000発分)のプルトニウム分離能力があります。その消費のめどは?
2023年01月27日
使用済み燃料プール火災の恐怖──空冷式乾式貯蔵の迅速導入を に追記のお知らせ
記事に 掲載しているパワポ資料「使用済み核燃料プール火災の恐怖~教訓 5年以上プール冷却の使用済み燃料は自然対流空気冷却の乾式貯蔵へ」(2022年10月26日)を使った講演の録画へのリンクを追加しましたのでお知らせします
2022年12月29日
水爆研究施設の実験成功をたたえる日本の報道
12月14日~15日にかけて、各紙が、一斉に米国のレーザー核融合施設での実験「成功」について大きく報じた。「核融合で投入以上のエネルギー獲得に成功」(毎日)、「今回は小規模で実用化まで多くの課題があるが、核融合発電に一歩近づいた」(朝日)、「核融合実験で世界初、エネルギー『純増』に成功」(読売)、「脱炭素につながる夢の技術の重要な一歩になる」(日経)、という具合だ。
12月5日の実験で成功を収めたローレンス・リバモア国立研究所は、米国の主要核兵器研究所の一つであり、レーザー核融合実験に使われた「国立点火施設(NIF)」は、水爆の爆発過程の研究のためとして建設されたもので、その建設予算の全額がエネルギー省の核兵器部門から来たという話がほとんど抜け落ちている。
2022年12月23日
岸田政権の下で続く核燃料サイクルの虚構
遅々としたプルトニム消費──六ヶ所再処理工場完工予定、26回目の延期
原子力委員会は、2018年7月31日、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」において、「上記の考え方に基づき、プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は、以下の措置の実現に基づき、現在の水準を超えることはない」と宣言した。原子力委員会のこの「予言」は、これまでのところ当たってるかに見える。しかし、それは、六ヶ所再処理工場の完成予定が遅れていることだけによるもので、プルトニウムを利用する計画は遅々として進んでいない。
2022年11月09日
使用済み燃料プール火災の恐怖──空冷式乾式貯蔵の迅速導入を
2011年3月11日の東日本大震災と津波で起きた事故のため、福島第一原発4号機のプールは、もう少しのところでプール火災が起きて、風向きによっては、約3000万人の避難が必要な事態に至るところでした。以下に掲載するパワポ資料は、次のような事実を改めて想起するためのものです。
- 4号機のプールには、炉心での工事のために地震の直前に炉心から取り出したばかりの熱い燃料が保管されていた
- プール火災を免れたのは、原子炉の上に位置する原子炉ウェルの水がプールに流れ込んだためだった
- ウェルは、本来なら原子炉内の工事のために空になっているはずだった
- たまたま、工事の遅れのためにウエルが水で満たされていたという幸運に恵まれたため、プール火災・大量の放射性物質の拡散が避けられたのだった。
そして、大規模なプール火災を防止するために、プールで5年以上保管した使用済み燃料を、自然対流利用の空冷式乾式貯蔵に移すことを提唱しています。
2022年10月18日
日本のお手本、フランスの再処理体制が崩壊の危機に加筆のお知らせ
ラアーグ再処理工場のプールの満杯状況に関する追加情報を「追記」として入れるとともに、地図・解説図(3点)と、メロックス工場の「MOX燃料生産量推移」グラフを挿入しました。
2022年09月28日
不思議なNPT再検討会議関連報道──「唯一の被爆国による橋渡し」の幻想が招く思考停止?
米国ニューヨークの国連本部で8月1日から26日まで、開催された第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議は、合意文書を採択できないまま幕を閉じました。一つの焦点は、核攻撃を受けていないのに核兵器を先に使うことはしないとする「先制不使用」宣言を巡るものでした。「先制不使用」宣言を核保有国に求めるとの文言が草案に入ったものの、米国などの反対でこれが削除されたと各紙で報じられました。米国が先制不使用宣言をすると──核以外の攻撃に対するものも含め──抑止力が弱まると日本など同盟国が憂慮しているということが背景にあり、米国がこれに配慮したという内容です。
ところが、NPT再検討会議に関する総論的な記事では、どういうわけか、米国による「先制不使用」宣言に日本が反対してきたという事実が抜け落ちる傾向があるようです。総論の記事となると、「唯一の被爆国」の政府は核廃絶を真に願っており、その早期実現を目指しているはずだとの想定が存在していて、実際の政策の検証を行うことなく、最初からその想定にしたがって記事が書かれることになっているのでしょうか。広島選出の首相と首相補佐官が登場すると特にそうなるのでしょうか。政府広報かと錯覚させるような内容のものが散見されます。
2022年09月08日
日本のお手本、フランスの再処理体制が崩壊の危機
日本の再処理政策のお手本の国フランスで、再処理政策中止の可能性を規制当局が口にする事態となっています。ラアーグ再処理施設の使用済み燃料貯蔵プールが満杯になる時期が2030年のはずだったのが、2028年以前、場合によっては2024年になる可能性が出てきているといいます。一方、満杯事態に備えて同施設内にフランス電力(EDF)が建設を計画している大規模な集中型貯蔵プールの完成予定時期が2030年のはずだったのが2034年以降に延期されています。二つの時期にギャップが生じているのです。
2022年08月31日
中・独核共有論争──「戦争が始まればNPTは失効」とのNATO解釈巡り
NATO解釈をいつ知ったか、支持するか──答えない日本政府
先週金曜(2022年8月26日)まで開かれていた第10回「核拡散防止条約(NPT)」再検討会議で「北大西洋条約機構(NATO)」における核共有体制について、中国とドイツが議論を戦わせた。故安倍晋三元首相が2月27日、ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、日本も核共有の導入を検討すべきと発言したことが大きな議論を呼んだ割には、日本では注目されていないようだ。その背景には、日本導入の是非以前に、NATOの核共有を日本政府がどうみなしているかを重要視した論点が当時欠けていたことがあるのだろう。
2022年08月04日
高速炉計画──再処理に反対するビル・ゲイツがもんじゅ関連機関・企業と協力?
今年の元日の読売新聞が「米高速炉計画に日本参加へ──『もんじゅ』の技術共有、国内建設にも活用」 と報じて話題を呼びました。著名な米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が設立した米テラパワー社の高速炉建設計画への参加ということで、特に関心が高まったようです。もんじゅの地元の福井新聞は「もんじゅの廃炉で地元自治体や住民の期待は一度裏切られたものの『ポストもんじゅ』をにらみ、再期待感が膨らみ始めている」と報じました 。
しかし、テラパワー社は、元々、再処理を必要としないから核不拡散に役立つというはずの特殊な原子炉を開発するために設立された企業です。その炉の開発に失敗した後に登場したのが、今回の日米協力の対象となった高速炉「ナトリウム」ですが、同社はこちらも再処理を必要とせず、核拡散のリスクを制限する炉だと説明しています。ここでは、「再処理批判」のビル・ゲイツと、再処理推進の日本の機関・企業の協力という奇妙な呉越同舟状況について検討してみましょう。
2022年06月20日
世界の核兵器の状況 2022年
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2022年6月13日に、冷戦後続いた核兵器の減少が終り、増加に転じるだろうと警鐘を鳴らす報告(Global nuclear arsenals are expected to grow as states continue to modernize - New SIPRI Yearbook out now)を発表して話題を呼んだ。ここに掲載するのは、その基になったデータ。著者らの承諾を得て全文訳出。
2022年06月02日
繰り返し語られる核共有の幻想と実体
安倍晋三元首相が2月27日にフジテレビの番組で、ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、日本も米国の核兵器の「核共有」導入を検討すべきと発言したことをきっかけに、「核共有」についての議論が起きています。核情報では、これまで、何度か核共有について取り上げてきましたが、ここでは、それらの記事の内容にも触れながら、今回の議論とその背景について簡単にまとめてみましょう。
2022年03月14日
「核共有」NATO 4カ国60発──魅せられる安倍元首相?
安倍晋三元首相が2月27日のテレビ番組で、日本も「核共有」の議論が必要と発言して話題を呼んでいます。「核共有」というのは、米国と欧州の「北大西洋条約機構(NATO)」加盟国が冷戦時代以来とっている体制です。「米科学者連合(FAS)」の核問題専門家ハンス・クリステンセン氏によると、現在、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダの4カ国に配備されているそれぞれ15発ずつの米国の核爆弾、計60発が共有状態にあります。米国がNATO諸国に配備している核爆弾は、5か国6基地に約100発ありますが、そのうち、イタリアのアビアノ基地配備の20発は米軍機用であり、トルコ配備の20発の投下用に割り当てられたトルコ機はなく、米軍の投下用航空機も常駐とはなっていません。
2022年02月18日
プルトニウム削減へ電力間融通の報道―懸念は払拭できるか?
2月16日、東奥日報が「電事連、プルトニウム削減へ電力間融通」と報じました。「電気事業連合会(電事連)は、電力各社が英仏に保管しているプルトニウムの消費に向け、各社間で融通し合い総量を削減する方向で調整」していて、「電事連は近く融通案を公表する」とのことです。電事連が昨年2月に公表していた英仏保管のプルトニウムの「名義交換」方針が具体化してきたということのようです。
2021年11月12日
プルトニウム
──原子力の夢の燃料が悪夢に
フランク・フォンヒッペル 田窪雅文 カン・ジョンミン(姜政敏)(田窪雅文訳)緑風出版
専門誌などで高い評価を得た原著の改訂・翻訳版
夢の燃料として喧伝されたプルトニウムの利用計画が、実は見果てぬ夢であり、核拡散・テロの危険を引き起こすだけの「悪夢」となっている状況を説明。日本が、核兵器6000発分近いプルトニウムをため込んでしまっている状況を描く。解決策として、再処理を中止し、5年以上プールで冷やした使用済み燃料を空冷式の乾式貯蔵に移し、最終処分まで中間貯蔵することを提案。
原著序文はモハメッド・エルバラダイ元国際原子力機関(IAEA)事務局長
2021年11月07日
米国家安全保障会議(NSC)で核兵器の存在理由説明の変更検討──日本など同盟国「懸念」表明と報道
ワシントンポスト紙は、11月2日、「バイデン政権、米国の核兵器の存在理由説明の変更検討」(原文)において、「ホワイトハウスは、今月、米国の核兵器の唯一の目的は、核攻撃を抑止するかこれに報復することだと宣言するか否かについての議論をするための会合(複数)を計画している」と報じました。国家安全保障会議(NSC)におけるこれらの会合は、来年初頭までに新しい核兵器政策を打ち出すため広い取組の一部だとのことです。バイデン政権では、核兵器の役割の説明を含む「核態勢の見直し」と「国防戦略」の策定が並行して行われています。
2021年10月05日
過密貯蔵が進む日本の原発と乾式貯蔵
日本の原発の使用済み燃料プールは、元々、1~2炉心分程度しか収納できない設計になっていました(1炉心分というのは、原子炉の炉心部に収容できる核燃料全体に相当する量のことです)。使用済み燃料は数年プールで冷やした後、再処理工場に送られることが想定されていたからです。しかし、再処理計画が想定通り進んでいないため、使用済み燃料は、元々の想定の何倍もの密度で貯蔵されています。
2021年09月09日
被爆者、核問題専門家ら公開書簡──米の先制不使用に反対しないで
9月7日、広島・長崎の被爆者団体や核問題関連団体など22団体と個人44人(呼びかけ5団体・5人、賛同17団体・39人)が、与野党党首に、先制不使用宣言に反対しないよう要請する公開書簡を送りました。これは、8月9日に米国の核問題専門家・団体など(21人・5団体)が、日本与野党党首宛に先制不使用宣言に反対しないよう求める公開書簡を送ったのを受けてのことです。
今回の書簡は、米国からの書簡の背景・意味を説明し、米側書簡と同じく、次の2点を要請しています。
- バイデン政権が先制不使用・唯一の目的政策を宣言することに反対をしないと明言すること
- このような政策が日本の核武装の可能性を高めることはないと確約すること。
2021年08月10日
先制不使用宣言に反対しないで──米国の核問題専門家ら日本の政党党首に公開書簡
長崎原爆投下76周年を迎えた8月9日、米国の核問題専門家らが日本の政党党首に対し、米国の核政策に関する公開書簡を送りました。書簡に署名したのは、ウイリアム・ペリー元国防長官ら21人と、「米科学者連合(FAS)」、「憂慮する科学者同盟(UCS)」、草の根反核平和団体「ピースアクション」など5つの団体です。(核情報からマスコミに発表した際に集計ミスがありました。お詫びして訂正いたします。)
内容は、「米国は先には核を使わない」、「米国の核兵器の唯一の目的は他国による核攻撃を抑止し、必要とあれば報復することにある」とバイデン政権が宣言することに反対しないで、と要請するものです。そして、米国がそう宣言しても日本が核武装することはないと確約することを求めています。
原爆投下した国の専門家が被爆国日本の政党になぜそんな要請を? と思われる方、ぜひ、書簡をご覧ください。連立政権の自公両党が、そして野党が、どんな反応をするのか? 注目されるところです。
2021年05月12日
茂木外相 米が先制不使用宣言だと日本の安全保障を保てない─岡田議員 核攻撃なら撃ち返すで十分では?
茂木敏充外相は、4月21日、衆議院外務委員会で、立憲民主党の岡田克也議員(元外相)の米国の先制不使用宣言に関する質問に答え、宣言がなされると日本の安全保障が保てないと述べました。先制不使用宣言は、すべての核兵器国による検証可能な宣言(条約)でなければ機能しないから、反対だとの主張です。実際には、米国で議論されているのは、米国による一方的宣言であり、敵国の核先制使用は、米国側の核報復の威嚇で抑止する考えです。以下、これまで踏襲されてきた1999年8月6日の高村大臣答弁の一部を切り取って使用した茂木答弁の矛盾について見てみましょう。
2021年05月04日
再処理と原子力発電を混同?「ごみの行先を決めないとやめるとは言えない」と枝野立憲民主代表
枝野立憲民主党代表が、西日本新聞のインタビューで、使用済み燃料の「行先を決めないと」原発を「やめるとは言えない」と主張し、波紋を呼んでいます。その「論理」展開は、再処理がやめられない理由として挙げられてきたものを想起させます。枝野代表は、再処理継続が必要との「論理」と原発継続が必要との「論理」を混同してしまったのでしょうか。ここでは、即時原発停止の主張の妥当性や国民民主党との合併が立憲民主党の原発政策に与えた影響などの話は置いておいて、この「混同」の可能性に焦点を当てて検討してみましょう。これは、再処理・核燃料サイクル政策について、原発容認・推進派と反対派の双方を巻き込んだ国民的議論を進める上でも重要な作業です。
青森県六ケ所村の再処理工場では、2023年度に使用済み燃料のせん断を伴う再処理過程を始める計画になっています。残された時間はあまりありません。
2021年04月15日
「世界の核兵器の状況2021」掲載のお知らせ
核情報では、米科学者連合(FAS)のサイトにある「世界の核兵器の状況」のデータを継続的に紹介してきていますが、今回は、FASの承諾を得て2021年3月更新のページ全体を訳出しました。
2021年04月07日
プルトニウム利用の「夢」の開陳で再処理政策の正当化を図る電事連
電気事業連合会は、2月26日、再処理で取り出したプルトニウムの「利用計画」(以下、新利用計画)を発表するとともに、英仏で保管されているプルトニウムについて、電力各社間で「名義交換」を行うことによって消費を推進する案を検討中であることを明らかにしました。計画とは名ばかりで、実際は、2030年度までに、フル稼働となった六ヶ所再処理工場での毎年の生産分を全量消費できるようなMOX利用炉運転態勢を目指して頑張るとの決意表明をしただけのものとなっています。
2021年02月12日
日本は米国に先制不使用宣言を要請すべきとハルペリン元米政府高官
──ペリー元国防長官も新著で日本に先制不使用支持を呼びかけ
大統領選挙キャンペーンで、紛争において核を最初に使わないとの「先制(先行)不使用宣言」支持を表明していたバイデン氏が1月20日大統領に就任しました。バイデン政権では、先制不使用宣言が検討されると見られています。クリントン政権とオバマ政権が先制不使用宣言を検討しながら放棄した主要な理由は日本を含む同盟国の反対の声でした。
過去のこれら両政権内での検討の事情に精通するモートン・ハルペリン元国務省政策企画本部長(1998-2001年)が、日本は米国政府に先制不使用政策を採用するよう呼びかけるべきだと強調しています(2021年1月6日の核情報へのメール。以下『日本への提言』)。理由は同盟国が賛成すれば、米国は先制不使用を宣言できるからということです。