パリの隣、ブローニュ・ビヤンクール市の中学生と高校生が、アウシュヴィッツおよびビルケナウの強制収容所の旅をしました。いくつかの感想を紹介します。(市広報より)
レア 17歳
「記憶する義務を持続し、人は最悪のことをなし得るのだということを決して忘れないことが絶対に必要」
マチルド 16歳
「これが繰り返されるのを避けるために、僕たちは批判精神を発揮し、憎悪と暴力を見過ごしにしないようにしなければならない」
セリア 15歳
「私たちは現実を目の前にして、嫌悪、悲しみ、恐れを強く感じた。その意味で、この旅は私たちに信じがたいほどの恩恵を与えてくれた」
クリストフ 15歳
「昔の強制収容者の証言は、僕をより強くした」
イネス 14歳
「僕たちは、過去の過ちを学び、どの様な状況に置かれてもそれに距離をとり、記憶しなければならない」
道徳的価値は決して消滅しないし、発明されることもない。それは人類の文化の果実であり、その及ぶ範囲は普遍的である。したがって、道徳的価値は教えるに値する。
しかし道徳的価値に対する我々の関係は、変化する。したがってそれは昔のように教えることはできない。
他人の配慮がない道徳はない。しかし自己犠牲、自己の権利放棄という理想と、他人の権利を侵害しないことの義務との隔たりは小さくはない。
ところで現在の道徳への関心の復活は、昔の無私無欲の要請に戻ることでは決してない。G.Lipovetskyが発展させた命題のようなものである。それは他人のために生き、全体の利益と集団的理想の名の下に奉仕することを、我々が少しずつ拒否することを示そうとしている。
各人が自分のために、それによって他人との連帯の絆のすべてを断ち切ることなく、生きる権利を要求することで、道徳的規範は次のように変わるであろう。すなわち、もはや厳格な義務、遊びの敵視、非妥協もなくなり、自己について考えるあらゆる欲求を窒息させる司令官もいなくなるだろう。しかし個人的な営みの追究は、他人に役に立つと感じる喜びを除外しないであろう。
「欲望」
<古い義務の道徳>
・我々は、自分の欲望を強制的にコントロールし、抑制しなければならない。
<新しい道徳的規範>
・我々は、(自分自身の幸せのために)過ぎることがなく、生活を送ることに気を配らなければならない。
「スポーツ」
<古い義務の道徳>
・スポーツによる育成は、努力を味わうことであり、無気力さの拒絶である。そして勇気と誠実さ(ルールの尊重)を教える。
<新しい道徳的規範>
・スポーツ(ますます多様化する)は、「元気でありつづける」手段である。それは道徳の勉強よりも経験に結びつく(新たな感動と強い興奮)。
「衛生」
<古い義務の道徳>
・不潔は怠惰、なげやり、社会的排除を示す。
<新しい道徳的規範>
・自分のこと、とりわけ身体の衛生に気を配ることは良いことである。
「自殺」
<古い義務の道徳>
・自殺は弱さの一形態を示す。自殺は放棄である。
<新しい道徳的規範>
・是が非でも生きることは、義務としての価値を有しない。自殺はもはや過ちではなく、悲劇である。
「夫婦の誠実」
<古い義務の道徳>
・誠実は、いかなる場合においても、強制力を持つ。両親の義務は、不和の時でも、子どものために幸福を犠牲にして、一緒にいることである。
<新しい道徳的規範>
・大切なのは、相手の信頼を裏切らないことである。関係を終わらせないために愛する振りをすることは、卑怯な行為である。
「労働」
<古い義務の道徳>
・労働の美徳は、皆に対して各人が連帯を示すことであり、才能に磨きをかけることを我々に課す。
<新しい道徳的規範>
・自分の楽しみのために一人で生きるよりも、価値を高める労働に関わるほうが良い。ともかくも仕事が気に入らなければならない。
「連帯」
<古い義務の道徳>
・慈悲深くあらねばならない。なぜなら他人の困窮に無関心である権利はないからだ。
<新しい道徳的規範>
・連帯の行為は良いことである-喜ばせることは喜びである-しかし他人への献身を強いてはならない。
「家庭」
<古い義務の道徳>
・我々は家庭を築く義務がある。自分の意思で独身でいるのは、自分のために生きようとするエゴイストの行為である。
<新しい道徳的規範>
・子どもに対する義務は、次第に多くなる。しかし家庭を築くことは、もはや義務ではない。
「国」
<古い義務の道徳>
・我々は、我々の祖国を愛し、必要とあらば、祖国のために自らの命を捧げる危険を冒さなければならない。
<新しい道徳的規範>
・我々は、我々の国を誇りにすることが好きである。だからといって、すべての徳を国に与えるわけではない。そして我々は、孤立することなく、我々の国民としてのアイデンティティを守りたい。
投票権、長い歴史の果実
Saint-Brès市の市長、選挙人カードと市民手帳を手渡す。
「市民の資格」citoyennetéの儀式(日本の成人式?)において、市長は新しく選挙人名簿に登録する18歳になった青年に、選挙人カードと市民手帳を手渡した。市長は共和国と民主主義の基本原理に触れ、投票権の歴史を振り返った。「1791年、投票権は制限されていた。直接に納税する25歳以上の男性のみが投票権を持っていた。[...] 1848年に普通選挙が施行されたが、まだ男性(貧富を問わず25歳以上)に限られていた。投票の秘密は実現した。1944年4月21日、女性の選挙権が認められた。1974年、成人の法的規定と投票の権利が、21歳から18歳に移行した」。
市民教育の教科書(小学校3~5年用)
「ねえ、パパ。この世から人種差別がなくなるには、どうしたらいいの?」
―ド・ゴール将軍じゃないけど、それは「遠大な計画」だね。憎しみは、愛よりもはるかに根を下ろしやすいんだ。知らない人を警戒したり、愛さないことの方が、愛するより簡単なのさ。
Tahar Ben Jelloum 「娘に語る人種差別」
Krauze(イギリス)の作品