村野瀬玲奈の秘書課広報室

今日からちょうど67年前の1941年12月15日は、フランスでガブリエル・ペリという人が殺された日です。彼への追悼の意を込めて、圧政と闘った彼の勇気に敬意を表して、この記事を書きます。

ガブリエル・ペリについて簡単な紹介をしたのが古いこちら↓の記事。

■歴史を忘れない街角
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-205.html

ガブリエル・ペリ Gabriel Péri : 1902-1941。フランスのジャーナリストで政治家。フランス共産党の中央委員会のメンバーで、フランス共産党機関紙リュマニテの外国政治部の編集者で、セーヌ・エ・オワーズ県議員。第二次世界大戦中の対独抵抗運動（レジスタンス）の運動家でもあり、ドイツ軍に逮捕され、軍事裁判の末に銃殺刑にされた。

（引用ここまで）

もう少し詳しくは、グーグル検索で出てくる次のようなサイトが参考になるでしょう。

■Wikipedia　フランス版　Gabriel Péri
http://fr.wikipedia.org/wiki/Gabriel_P%C3%A9ri

上の「歴史を忘れない街角」の記事はウィキペディアの記事の枕をまとめたものです。

こちら↓は、ガブリエル・ペリを偲ぶサイト。彼の養女の方がやっているサイトのようです。

●ガブリエル・ペリ、レジスタンス闘士、殉教者、彼の娘、彼の思い出
http://www.gabrielperi.net/

さて、文学者ルイ・アラゴンがガブリエル・ペリについての詩をいくつか書いています。（ルイ・アラゴンについては、『「赤いポスター」（思い出すための詩節）』という記事で少し紹介しましたのでご参照ください。）

一つ目はこちら↓で読むことのできる、「責苦のなかで歌ったもののバラード」。対独協力の傀儡政権であったヴィシー政権に逮捕され、ドイツ軍に引き渡されて拷問を受けて、転向せよと迫られても屈しないまま、ミサク・マヌキアンと同じようにヴァレリアン山で処刑された彼の高貴な姿が描かれています。同時に彼を含めて合計92名の人々が処刑されたと伝えられています。

●大島博光の詩と訳詩を読む
責苦のなかで歌ったもののバラード
http://www.geocities.jp/oshimahakkou/aragon/semekuno.html

お読みいただいたでしょうか。「フランスの起床ラッパ」というアラゴンの詩集に含まれていた詩です。大島博光さんが解説で言うとおり、「ナチの圧制、虐殺、野蛮に抗して挙げられた、誇らかな人間の声であり、人間の尊厳と自由をもとめ、祖国愛をうたいあげた歌声」であり、「孤独や絶望と闘う希望の歌」なのだと思います。

二つ目の詩は、フランス共産党パリ14区支部のブログから引いた、同じくアラゴンの「フランスの起床ラッパ」に含まれていた「ガブリエル・ペリの伝説」です。上の大島博光さんのサイトでは訳されていないので、私が訳したうえで紹介します。トゥーロンとは、ガブリエル・ペリが生まれた南フランスの地中海に面した港町です。イヴリーとは、詩にあるように、彼が埋葬されているパリ近郊の町です。

●フランス共産党パリ14区支部のブログ
http://pcf-paris14.over-blog.org/pages/Legende_de_Gabriel_Peri-57523.html

ガブリエル・ペリの伝説　（訳：村野瀬玲奈）
Légende de Gabriel Péri

ルイ・アラゴン　Louis Aragon

イヴリーの墓場
共同墓地の奥
月のない無名の夜の中に
ガブリエル・ペリは眠る

しかし墓の中から殉教者は
彼を殺めた者たちを今も揺さぶる
奇跡は起きる
人民の涙が落ちる聖なる土地で

イヴリーの墓場の中
ガブリエル・ペリを殺めた者たちは
犯罪によって犯罪を払いのけながら
彼を他の犠牲者の下でもみ消せたと信じている

血の跡の前で
死刑執行人はぎこちない様子
通行人からそれを隠すために
衛兵が配置された

イヴリーの墓場の中
苦悩は手ぶらで訪れるだろう
かくして我らの支配者たちは決着をつける
ガブリエル・ペリへの怖れから

伝説的な死者たちが眠る影の中には
常に告発が込められている
ここには青いセイヨウアジサイが
なぜかわからないが花咲いている

イヴリーの墓場では
扉を閉めても
毎晩誰かがセイヨウアジサイを手向けに来て
ガブリエル・ペリが花咲く

静寂の上に広がる少しの青空
雨が降るとき太陽は美しい
記憶は青い目をしている
暴力によってそこから決別した彼

イヴリーの墓場では
我らの不幸の重い花束は
最も軽やかな色を帯びている
ガブリエル・ペリ好みの色を

ああ、その花びらの中に再び生まれる
彼が生まれた明るい地と
地中海と
彼の若き日々のトゥーロンが

イヴリーの墓場では
花束はこの愛を告げる
このささやかな日に生み出された愛を
ガブリエル・ペリが斃れた日に生み出された愛を

空しい殺戮を行なった圧政者たちよ
見せしめに殺された者たちを怖れよ
ある人民とその怒りにとって
それらの死は恐ろしい酒なのだから

イヴリーの墓場では
何をしようとも、何を消そうとも
通り過ぎる人々に吹く風は
ガブリエル・ペリの名を告げる

おお、銃殺刑執行者たちよ
彼が朝歌っていたように思い出すだろうか
さあ、これは消し残しの砲火
砲火はここでくすぶるが、他の場所で燃えている

イヴリーの墓場では
彼は今も歌う、なお歌う
まだまだ生まれることだろう
曙光が、そして、ほかのガブリエル・ペリたちが

今日も昨日のように輝くともし火
殺されたともし火を掲げる者は誰だろうか
そして、ともし火を掲げる者は入れ替わっても
そのともし火そのものは変わらない

イヴリーの墓場では
無関心の地の下で
今もなおフランスのために闘っている
ガブリエル・ペリの心は

（翻訳引用ここまで）

ガブリエル・ペリはミサク・マヌキアンやギィ・モケらと同じく、フランスでは愛国のひとつの象徴であり、ルイ・アラゴンのこれらの詩もまた、『異議申し立てのための文化的インフラ』なのだと思います。

一方、1930～1940年代の日本の軍国主義的圧政と闘って殺された大勢の日本人たちが日本では愛国の象徴として日本人の中で広く記憶されていないことはたいへんに悲しく、おかしなことではないでしょうか。

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