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厚生労働大臣に「2025年度の生活保護基準額改定にあたり物価高騰をふまえた大幅な引き上げを求める要望書」を提出しました。

要望書

日本・ドイツ・韓国の保護費の推移

ポンチ絵「物価高なのに保護費引下げ」




2024年11月12日


2025年度の生活保護基準額改定にあたり
物価高騰をふまえた大幅な引き上げを求める要望書


厚生労働大臣 福岡 資麿 殿
      
 私たち(文末に記載した32団体)は、本年9月13日付けで同趣旨の要望書を提出したところですが、年末にかけて来年度予算編成作業が本格化するにあたり、近年の物価高騰が生活保護利用世帯に与えた影響についての新たな試算結果等をふまえ、改めて以下の要望を行います。

第1 要望の趣旨
1  前回改定時(2020年)以降の特異な物価高をふまえ、生活保護利用世帯の実質的購買力を維持するため、2025年度の生活扶助基準額を単身世帯は13%、複数世帯は12.6%以上引き上げることを要望する。
2  2019年の全国家計構造調査の所得下位10%層の消費水準を基礎とした2022年の生活保護基準部会による検証は白紙撤回をし、「健康で文化的な生活」を維持し得る生活保護基準の設定に向けた再検証を要望する。

第2 要望の理由
1 はじめに

 国は、2023 年度からの生活保護基準の在り方を検討した生活保護基準部会の2022年12月6日付け報告書をふまえ、「生活保護基準の見直し」方針を示し、2023~2024年度の2年間の生活扶助基準については、①2019年当時の消費水準(検証結果反映後)に一人当たり月額 1,000 円を特例的に加算し、②①の措置をしても現行基準が減額となる世帯については現行の基準額を保障することとし、さらに、③2025年度以降の生活扶助基準額については、2025年度の予算編成過程において改めて検討するとした。
 そして、今、来年度予算編成に向けて、2025年度の生活扶助基準の改定内容の検討が本格化する時期を迎えている。







2 2025年度の生活保護基準が大幅引下げとなる危険が大であること
 上記の「見直し」方針は、「生活保護基準部会における検証結果を反映することを基本」としたうえで、2025年度(令和7年度)以降については、「一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るため、上記の検証結果を適切に反映する」としていることからすると、「その時々の社会経済情勢等を勘案」しない限り、生活保護世帯の55.4%を占める高齢者世帯と4割を占める都市部(1級地の1)居住世帯、つまり、生活保護世帯のほとんどにおいて大幅な引下げとなる可能性が高い。
 具体的には、下記一覧表のとおり、65歳の高齢者世帯は1級地の1(都市部)で減額(単身世帯は7.7万円から7.4万円に3.4%減額)、75歳以上の高齢者世帯は全級地で減額(1級地の1の単身世帯は7.2万円から6.8万円に5.9%減額)となるなど、都市部の高齢世帯を中心に基準引下げが見込まれる。





3 最貧困層との比較による検証手法が破綻していること
 上記の生活保護基準部会での検証は、2019年の全国家計構造調査における、第1十分位(所得下位10%)の消費水準と生活保護基準を比較する手法に拠っている。
 しかし、日本の生活保護の捕捉率が極めて低いことからすれば所得下位10%の最貧困層には生活保護基準以下の水準での生活を強いられている世帯が多数含まれている。そのような最貧困層の消費水準と生活扶助基準の比較という手法に依拠し続ければ、基準部会自身が自認しているとおり、肉体的生存を確保する「絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」(2022年報告書35頁)。単身高齢世帯の生活扶助費が6.8万円と遂に7万円を下回ることとなれば、もはや明らかに肉体的生存の維持さえ危うい領域であり、これは上記の検証手法が既に破綻していることを示している。
 しかも、上記検証が使用とした2019年の消費支出データは、次に述べる2021年後半から始まった物価高騰の影響を受ける以前のものであり、現時点でこれを反映させる前提を欠く。現在行われている2024年度の全国家計構造調査の公表を待って再検証を行うべきである。


4 低所得世帯の生活を直撃している記録的な物価高
 総務省統計局が2024年8月23日に発表したところによると、2020年度を100とした、2023年度平均の消費者物価指数は、3年連続して上昇し、生鮮食品を除いた総合指数が105.9%となり、2022年度より2.8%上昇した。とくに生鮮食品をのぞく食料は7.5%も上がり、1975年度(11.4%)以来の伸びとなった。





 また、上記(表3)のとおり、2024年9月分の消費者物価指数は、2020年を100とすると108.9%で、前年同月比で3.0%上昇した。なかでも食料の消費者物価指数は119.0(前年同月比3.6%上昇)で、特に生鮮食品は125.6(同前7.8%上昇)、光熱・水道は110.5%(同前15.0%上昇)に及ぶ。
 このように昨今、異常ともいえる物価高が続いており、特に、低所得者の家計に占める割合の高い、食料や光熱・水道にかかる費用が著しく高騰しているため、生活保護利用者の家計を直撃している

 
5 諸外国(ドイツ、韓国、スウェーデン)は公的扶助基準を大幅に引き上げていること
 2012年以降の日本、ドイツ、韓国の公的扶助基準額の推移を比較すると以下の表のとおり、かつては日本が一番高かったが、その後引下げが続く一方、ドイツ、韓国は引上げが続いてきたため逆転され、さらに乖離が大きくなりつつある。





 ドイツは、2023年の市民手当導入に際し、直近の物価上昇に対応できていないとして法改正までし、2023年、2024年には2年連続して各12%もの大幅引上げをした。
 韓国では、国民基礎生活保障制度の生計給与の支給要件となる所得基準は、2023年には7%、2024年には14%も引上げられた。韓国政府は、さらに、これを2026年まで段階的に引上げることを決定している。
 なお、スウェーデンの生計援助の生計費の全国標準額(単身者)の月額も、近時の物価高に対する対応で、2022年3210クローナ(4.6万円)から2023年3490クローナ(5万円)へと前年比8.7%引上げられ、2024年も3800クローナ(5.4万円)へと前年比8.9%引上げられている。(注:電気代、交通費等は別途原則として実費が支給される。)


6 生活保護基準の引下げではなく、物価高を勘案した基準引上げが必要であること
 生活保護利用者は、度重なる生活保護基準の引下げにあったうえに、2013年からの史上最大(最大10%、平均6.5%)の生活扶助基準の引下げについては、直近の10月28日の岡山地裁判決を含め、18地裁、1高裁で違法であるとの判決が言い渡されている。すなわち、既に生活保護基準が「最低限度の生活」以下の生活を強いるものになっていることに加え、急激な物価高騰によって生活保護利用者の生活は極めて過酷なものとなっているのである。
 前回生活扶助基準が改定された2020年4月以降の消費者物価指数の動向を見れば、上記4で述べたとおり、2024年9月の消費者物価指数は、2020年に比較して108.9と8.9%上昇しており、特に生活保護世帯の消費に占める割合が高い食料費や光熱水費において高騰している。
 生活保護利用世帯の実質的購買力を維持する観点からすると、本来、生活扶助に相当する消費支出に関する品目に限定して、生活保護利用世帯の家計調査である「社会保障生計調査」(又は少なくとも第1・十分位(下位10%)層、第1・五分位(下位20%)層の消費支出)に基づく消費構造を前提とした物価の影響を勘案するのが相当である。





 これを試算したところ、上記一覧表のとおり、第1・五分位で112.1、第1十分位で112.2、社会保障生計調査(2人以上世帯)で112.6、同(単身世帯)で113.0と、12.1%から13.0%の上昇となっている。
 したがって、生活保護利用世帯の実質的購買力維持の観点からは、来年度の生活扶助基準は、単身世帯については13%、複数世帯については12.6%引き上げる必要がある。


(要望団体)
生活保護問題対策全国会議/いのちと暮らしを守る なんでも相談会実行委員会
いのちのとりで裁判全国アクション/生活保護基準引下げにNO!全国争訟ネット
全国クレサラ・生活再建問題対策協議会 / 一般社団法人つくろい東京ファンド
一般社団法人反貧困ネットワーク / 一般社団法人シンママ大阪応援団
きょうされん / きょうされん大阪支部 / 障害者労働組合
全国生活保護裁判連絡会 / 北九州市社会保障推進協議会
NPO法人ささえる絆ネットワーク北陸 / 特定非営利活動法人さんきゅうハウス
NPO法人ほっとポット / 全国生活と健康を守る会連合会(全生連)
全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連) / 生活困窮者支援りぼん
NPO法人サマリア / 特定非営利活動法人みんないっしょ
奈良県の生活保護行政をよくする会 / 反貧困ネットワーク埼玉
like minds(ライクマインズ) / ダイアローグ in YOKOHAMA
ホームレス問題の授業づくり全国ネット / 生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会
北陸生活保護支援ネットワーク石川 / 一般社団法人 人権精神ネット
生活保護基準引下げ違憲訴訟を支える大阪の会(引下げアカン!大阪の会)
大阪クレサラ・貧困被害をなくす会(大阪いちょうの会)
非正規労働者の権利実現全国会議 
(計32団体)

以 上





生活保護問題対策会議といのちのとりで裁判全国アクションは、来たる衆議院総選挙に向けて、国政主要政党(自由民主党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組)に対し、2024年10月2日に「生活保護制度に関する公開質問状」を発出しました。

■ 生活保護制度に関する公開質問状(PDF)



【質問事項】
1 貧困率の改善
2-1 生活保護の捕捉率向上
2-2 水際作戦の根絶
3  ケースワーカーの増員と専門性確保
4  特異な物価高をふまえ生活保護基準を引き上げる
4-2 夏季加算の創設
5  一歩手前の困窮層への支援(一部扶助の単給化)
6  利用しやすい生活保護制度に
6-1 扶養照会の原則廃止(申請者の同意を要件に)
6-2 自動車保有要件の緩和
6-3 生活保護世帯の子どもの大学等への進学保障




これに対し、本日(2024年10月10日)時点で、れいわ新選組、自民党、社民党、共産党、公明党、国民民主党、立憲民主党(回答順)より、以下のとおりの回答が寄せられました。
回答を一覧表(簡略版・理由付き詳細版)にしました。黄色の網掛けが私たちの見解と一致していることを意味しており、れいわ新選組、共産党、立憲民主党は私たちと完全に見解が一致しています。
来る衆議院選挙での投票の参考にしていただければ幸いです。


■ 回答一覧表(簡略版・PDF)
■ 回答一覧表(理由付き詳細版・PDF)
2024/10/10


5年ぶりに大幅改定しました!
「必携 法律家・支援者のための生活保護活用マニュアル2024年度改訂版」


5年ぶりに大幅改定!
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本日、厚生労働省に以下の要望書を提出しました。



2024年9月13日


2025年度の生活保護基準額改定にあたって
大幅な増額と夏季加算創設等を求める要望書



厚生労働大臣 武見 敬三 殿
      

生活保護問題対策全国会議/いのちと暮らしを守る なんでも相談会実行委員会/いのちのとりで裁判全国アクション/生活保護基準引下げにNO!全国争訟ネット/全国クレサラ・生活再建問題対策協議会 / 一般社団法人つくろい東京ファンド/一般社団法人反貧困ネットワーク / 一般社団法人シンママ大阪応援団/きょうされん / きょうされん大阪支部 / 障害者労働組合/全国生活保護裁判連絡会 / 北九州市社会保障推進協議会/NPO法人ささえる絆ネットワーク北陸 / 特定非営利活動法人さんきゅうハウス


(計15団体)

(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満 3 丁目 14 番 16 号
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
電話06-6363-3310  fax06-6363-3320 弁護士 小久保 哲郎


第1 要望の趣旨
1 2025年度の生活扶助基準額を全ての生活保護利用世帯について、2025年度の生活扶助基準額を少なくとも7.7%以上引き上げること。
2 夏季の光熱水費を賄うための夏季加算を創設すること。
3 全ての生活保護利用世帯について、エアコン購入費用の支給を可能とすること。

第2 要望の理由
1 はじめに

 私たちは、生活保護基準が、憲法に基づき、誰もが健康で文化的な生活の保障を権利として求めることができる基準であるとともに、住民税の非課税基準、就学援助の基準、国民健康保険の減免基準など国の発表で47の制度と連動するなど、私たちのいのちの最低ライン(ナショナル・ミニマム)と言われてきたところから、そのあり方について、重大な関心を寄せてきた。
 一方、国は、2023 年度からの生活保護基準の在り方を検討した生活保護基準部会の2022年12月6日付け報告書をふまえ、「生活保護基準の見直し」方針を示し、2023~2024年度の2年間の生活扶助基準については、①2019年当時の消費水準(検証結果反映後)に一人当たり月額 1,000 円を特例的に加算し、②①の措置をしても現行基準が減額となる世帯については現行の基準額を保障することとし、さらに、③2025年度以降の生活扶助基準額については、2025年度の予算編成過程において改めて検討するとした。


要望書


 そして、今、2025年度の生活扶助基準の検討にあたる時期を迎えているところである。

2 2025年度の生活保護基準が大幅引下げとなる危険が大であること
 上記の厚生労働省の「見直し」方針は、「生活保護基準部会における検証結果を反映することを基本」としたうえで、2025年度(令和7年度)以降については、「一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るため、上記の検証結果を適切に反映する」としていることからすると、「その時々の社会経済情勢等を勘案」しない限り、以下のとおりの基準改定が行われることになる。

要望書


 上記の見直し方針によれば、65歳の高齢者世帯は1級地の1(都市部)で減額(単身世帯は7.7万円から7.4万円に3.4%減額)、75歳以上の高齢者世帯は全級地で減額(1級地の1の単身世帯は7.2万円から6.8万円に5.9%減額)、1級地の1では9類型中7類型で減額となる。すなわち、生活保護世帯の55.4%を占める高齢者世帯と4割を占める都市部(1級地の1)居住世帯、つまり、生活保護世帯のほとんどにおいて大幅な引下げが予定されているのである。


3 最貧困層との比較による検証手法が破綻していること
 上記の生活保護基準部会での検証は、第1十分位(所得下位10%)の消費水準と生活保護基準を比較する手法に拠っている。
 しかし、日本の生活保護の捕捉率が極めて低いことからすれば所得下位10%の最貧困層には生活保護基準以下の水準での生活を強いられている世帯が多数含まれている。そのような最貧困層の消費水準と生活扶助基準の比較という手法に依拠し続ければ、基準部会自身が自認しているとおり、肉体的生存を確保する「絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」(2022年報告書35頁)。単身高齢世帯の生活扶助費が6.8万円と遂に7万円を下回ることとなれば、もはや明らかに肉体的生存の維持さえ危うい領域であり、これは上記の検証手法が既に破綻していることを示している。
 なお、ドイツの連邦憲法裁判所は、2010年2月9日の違憲判決において、社会扶助の「給付の水準を下回る世帯を参照世帯から除外する」ことを求めた上、「参照世帯に含まれるのは、統計上確実に社会扶助受給レベルを上回る個人及び世帯でなければならない」としている。これを踏まえ、ドイツでは、2011年、基準需要算出法が制定されて、参照世帯から社会扶助利用世帯を除いた上、単身世帯については所得下位15%層、家族世帯については所得下位20%層を参照世帯とし、2024年度に至るまで一貫して保障基準が引上げられ続けている(後記5⑴参照)。

4 低所得世帯の生活を直撃している記録的な物価高
 総務省統計局が2024年8月23日に発表したところによると、2020年度を100とした、2023年度平均の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合指数が105.9%となり、2022年度より2.8%上昇した。上げ幅は第2次石油危機以来の伸びだった2022年度(3.0%)より弱まったが、3年連続の上昇となり、依然として高い水準である。
 とくに生鮮食品をのぞく食料は7.5%も上がり、1975年度(11.4%)以来の伸びとなった。

要望書


 また、上記(表3)のとおり、2024年7月分の消費者物価指数は、2020年を100とすると108.6%で、前年同月比で2.8%上昇した。なかでも食料の消費者物価指数は116.4で、前年同月比で3.6%の上昇、特に生鮮食品は8.0%も上昇している。光熱・水道の消費者物価指数は119.4%に及び、前年同月比で7.5%の上昇(電気代は22.3%の上昇)である。
 このように昨今、異常ともいえる物価高が続いており、特に、低所得者の家計に占める割合の高い、食料や光熱・水道にかかる費用が著しく高騰しているため、生活保護利用者の家計を直撃している。コロナ禍以来、全国で連携しながら継続的に取り組んでいる「いのちと暮らしを守る なんでも相談会」でも、次のような生活保護利用者からの切実な訴えが相次いでいる(詳細は、添付の別紙参照)。
 
(2022年10月2日相談会】
②生活保護を利用しているが、相次ぐ保護費の引下げと物価高で生活していけない。これ以上どこを削ればいいか分からない。今、来年度に向けて更なる保護費の引下げが検討されているようだが、何とか止める方法はないか。
⑩60代女性 生活保護費が下がっている。電気が使えない。100均の懐中電灯を使っている。弁当を半分ずつ食べている。
⑪40代男性。電気・ガスなど光熱水費が急に上がって生活できない。5万円はいつもらえるのか。
⑮70代単身女性。年金と生活保護で生活しているが、電気代も値上がりし、大変苦しい。一時的に給付金があっても、臨時的に必要なものに消えてしまう。
⑱70代男性 2人世帯。物価が上がって辛い。1日2食しか食べられない。灯油代に困っている。
⑲40代単身男性。弁当屋で働いていたが3年前にリストラにあった。精神障害がある。物価高で以前買えたものが買えず、つらい。
⑳60代単身女性。物価高騰で例えばコロッケが50円から100円に。トイレットペーパー、ティッシュなどの紙製品、パン類、麺類など幅広い品物が値上げされ、生活保護費だけでやっていくのが以前にも増して厳しい。電気・ガスも値上げ。水道代は半額だけの免除なので負担大きい。電力等価格高騰緊急支援給付金はいつ支払われるのか。

【2022年12月17日相談会】
③80代単身女性。生活保護を利用させていただきながら、申し訳ないとは思うが、生活費が足りない。高齢で身体も弱ってきており、物価上昇で、ガスは最低限しか使わず、エアコンは使うと電気代が大変なことになるので、一日中湯たんぽを抱いて過ごしている。他者とのコミュニケーションはほとんどない。
⑦80代男性。ガス代が高いので風呂は4~5日に1回しか入っていない。
⑧60代男性、視覚障害1級。物価高で生活費は2割くらい上がっている。今の保護費では生活していけない。エアコンはあるが使わず、オーバーを着てコタツに入っている。冬場でもシャワーで、お風呂は3年入っていない。

【2023年7月29日相談会】
⑤そもそも必要生活費が低すぎる。以前は1日1000円でやりくりしていたが、この物価高騰で1300円は必要。
⑧単身女性。物価上昇の影響が大きい。持病がありバランスの良い食事をとりたいができない。空腹時には水を飲むくらいしかできない。 

【2023年12月23日相談会】
⑥80代単身男性。インフレで生活が苦しい。灯油1000円台から2000円台に。
⑨生活が苦しく水だけで過ごす日もある。物価高もきつい。生きていくのがつらい。

【2024年4月27日相談会】
⑫60代単身女性。年金と生活保護で月収10万5000円。家賃3万4000円。洗剤や食料品の値上がりが止まらない。缶詰のサイズが小さくなった。米は昨年暮れから500円位上がった。夏の電気代を考えると怖い。今の生活保護基準では、やりくりするのが厳しすぎる。糖尿病でインシュリンを打っている。
⑭40代男性。食料品や電気代、ガス代が高い。ガス代節約のために入浴せずシャワーだけにしている。就職活動でケータイ代もかかる。友だちとも会っていない。保護基準を上げてほしい。
⑮50代男性。食料がほしい。家電が壊れ、冷蔵庫使えず、給湯器お湯が出ない。食材もスーパー等で安い物を買っているが生活が苦しい。特に野菜の高騰。1日1食が、週2日くらいある。
⑯70代女性。ガス代を滞納してガスを止められている。支払えない。東京ガスにかけあってもダメ。

【2024年7月27日相談会】
①80代単身女性。生活保護費が減らされて生活が苦しい。脳梗塞で左半身不随だが要支援2なのでパット代も介護タクシーも使えない。電気代と食費をさらに削るしかなく生きていけない。
②生活保護を受給しているが少ない。水道、ガス、電気代等を節約しているが中学生、幼稚園の子どももいて、限度がある。無料で食料などもらえるところを教えて欲しい。
⑤80代女性、2人世帯。生活保護費が低すぎる。普段は扇風機もつけずに我慢し、1日1食、安いせんべいを水に浸して食べている。夫はレタスが噛めないほど衰弱している。
⑥80代女性。物価高でまともに食事も取ることができていない。水道・光熱費を2か月分滞納している。水道局・電気会社に延納措置をお願いしているが、今後支払いが滞った場合、水道を停めると言われている。月の食費は1万5千円でおさめている。病気を持っているため食事に気をつけなければいけないのだが、献立はお粥などに限られ、量も少ないため、毎日白湯やお茶を飲んで空腹を凌いている。毎日暑い日が続くが、電気代節約のためエアコンはなるべくつけないようにしている。毎日不安で夜に目が覚めてしまう。

5 諸外国(ドイツ、韓国、スウェーデン)は公的扶助基準を大幅に引き上げていること
 同様に生活物資の物価高騰が続く先進諸外国では、以下に見る通り、公的扶助基準を大幅に引き上げている(レートは2024年9月1日時点で1000円未満は四捨五入)。
 日本の単身高齢世帯(75歳)の生活扶助基準額(都市部)は、老齢加算の削減前の2004年には9.4万円とドイツや韓国より相当高かったが、年々引下げられ続けた結果、2024年度には7.2万円とドイツからも韓国からも完全に追い抜かれている。さらにこれを6.8万円まで引下げようとしている日本の姿は、もはや「先進国」を標ぼうする資格すら投げ捨てようとしているように見える。

⑴ ドイツ
 ドイツの求職者基礎保障制度の単身者基準給付額は、2005年は345ユーロ(1ユーロ=161.7円。5.6万円)であり、当時の日本の単身高齢世帯(75歳)の生活扶助基準額9.3万円を大きく下回っていた。
 社会法典12編28a条(基準需要水準の更新)は、毎年1月1日に基準需要水準を更新するものとしていたが、2010年の違憲判決を受けて、それまで年金価値の変動を指標としていたのを「財・サービスの物価指数(70%)+実質賃金指数(30%)」の「混合指数」に基づいて行うこととした。
 その結果、毎年、基準は引上げられ続け、2022年には449ユーロ(7.3万円)となった。
 さらに、2023年の市民手当導入に際し、直近の物価上昇に対応できていないとして、受給世帯の実質的購買力を維持するため、従来の「混合指数」を第1段階の「基本変化率」とし、第2四半期の財・サービスの物価上昇率を「補充変化率」として掛け合わせるよう、28a条を改正した。その結果、2023年には502万ユーロ(8.1万円)、2024年には563ユーロ(9.1万円)と、2年連続して各12%もの大幅引上げがなされた。
 なお、2025年の市民手当基準額については、インフレ率の低下によって単純計算によっては引下げの可能性があったが、「法律に従った改定の結果、基準需要額が引下げとなる場合、据え置かなければならない」との規定(社会法典12編28a条5項)に基づき据え置く旨発表されたとのことである(9月4日)。

要望書


⑵ 韓国
 韓国でも、国民基礎生活保障制度の生計給与の支給要件となる所得は、基準中位所得の30%以下とされ、単身者の選定基準は、2022年で58.3万ウォン(6.4万円)であったが、基準中位所得自体の引上げにより、2023年には62.3万ウォン(6.8万円)へと7%引上げられた。また、2024年には、生計給与の支給要件が基準中位所得の32%以下に引上げられたことから、選定基準は71.3万ウォン(8.2万円)に14%も引上げられた。

 なお、韓国政府は、さらに、これを2026年までに段階的に35%以下まで引上げることを決定している。

⑶ スウェーデン
 スウェーデンの生計援助の生計費の全国標準額(一律の最低保障額で自治体の上乗せがある)の大人の単身者の月額も、近時の物価高に対する対応で、2022年3210クローナ(1クローナ=14.2円。4.6万円)から2023年3490クローナ(5万円)へと前年比8.7%引上げられ、2024年も3800クローナ(5.4万円)へと前年比8.9%引上げられている。ちなみに、この金額は、食料、衣服、靴、遊び・レジャー、消耗品、健康と衛生に係る物品、及び毎日の新聞・電話にかかる妥当な費用であり、電気代、交通費等は別途原則として実費が支給されることに注意が必要である。

6 生活保護基準の引下げではなく、物価高と地球沸騰化を勘案した基準引上げと夏季加算の創設等が必要であること
⑴ 物価高を勘案した生活扶助基準の引上げの必要性

 生活保護利用者は、度重なる生活保護基準の引下げにあったうえに、2013年からの史上最大(最大10%、平均6.5%)の生活扶助基準の引下げについては、17地裁、1高裁で違法であるとの判決が言い渡されている。すなわち、既に生活保護基準が「最低限度の生活」以下の生活を強いるものになっていることに加え、急激な物価高騰によって生活保護利用者の生活は極めて過酷なものとなっているのである。
 前回生活扶助基準が改定された2020年4月以降の消費者物価指数の動向を見れば、2024年4月の消費者物価指数は、2020年度に比較して107.7と7.7%上昇していることからすれば、少なくとも7.7%以上の生活扶助基準の引上げが必要である。
 なお、上記4で述べたとおり、この間の物価は、特に生活保護世帯の消費に占める割合が高い食料費や光熱水費において高騰している。生活保護利用世帯の実質的購買力を維持する観点からすると、本来は、生活扶助に相当する消費支出に関する品目に限定して、社会保障生計調査(又は第1・十分位層、少なくとも第1・五分位層の消費支出)に基づく消費構造を前提とした物価の影響を勘案するのが相当であり、その場合の引上げ率は、上記の7.7%を上回るはずである。

⑵ 夏季加算創設とエアコン代支給の必要性
 気象庁によると、この夏の日本の平均気温は平年と比べて1.76度高く、1898年(明治31年)に統計を取り始めてから去年と並んで最も高かった。地域別でみると西日本が平年より1.4度、沖縄・奄美が平年より0.9度高く、それぞれ地域別の統計を取り始めた1946年(昭和21年)以降で最も高くなったほか、東日本は平年より1.7度高く1位タイとなった。また、総務省消防庁によると、全国で熱中症で病院に搬送された人は、ことしの4月29日から8月25日までに8万3238人と去年のほぼ同じ時期と比べ5200人余り多く、このうち死亡したのは108人、入院が必要な「重症」や「中等症」があわせて2万8682人で、都道府県別にみると東京都が7236人と最も多く、大阪府が6030人、愛知県が5586人、埼玉県が4820人などとなっている(2024年9月2日NHKニュース)。
 地球温暖化が進む中、今後とも、夏の暑さの過酷化が必至であり、生活保護利用世帯のうち熱中症リスクの高い高齢者世帯(55.4%)と障害・傷病世帯(25.0%)が8割を超えていることからすれば、夏季の光熱水費を賄うための夏季加算の創設が切実に求められている。
 また、厚生労働省は、2018年6月27日の保護課長通知によって、2018年4月1日以降に保護開始や転居等したがエアコンの持ち合わせがない世帯に対してエアコン購入費を支給することを認めたが、2018年3月31日以前から生活保護を利用している世帯やエアコンの故障等で買換えが必要になった世帯に対する支給は頑として認めていない。そのため、相談会では、以下のように切実な声が寄せられている。
 エアコンを必要とする世帯には柔軟にその購入費の支給ができるよう、実施要領を改正することが必要である(詳細は、生活保護問題対策全国会議の2023年8月10日付「エアコン設置費用を生活保護世帯に柔軟に支給できるよう厚生労働省通知の改正等を求める要望書」参照)。

【2024年7月27日相談会】
①70代男性。給付金が少なくて生活できない。クーラーがないため暑くて熱中症になった、死んだ方がまし。
②70代夫婦。物価高で電気代も高いが、何か利用できる制度はないか。親名義の古い持ち家に住んでおり、エアコンがないので熱中症になった。
④70代単身男性。部屋のクーラーが故障したままで、室温36~37度で辛い。

以 上


「生活保護利用者の生活苦」抜き書き


コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会 第15回(2022.8.27)
①50代男性 1人暮らし。生活保護利用者、物価の値上がりがきつい。食費で保護費がなくなる。床屋にいけない。
②40代男性 単身。生活保護利用。たばこもやめて節約しているが、生活が苦しく、所持金もわずかで死にたいと思う。
③生活保護でもらえるお金が少ないままだが、物価や電気代があがって生活が苦しい。
④生活保護受給中で生活が苦しい。食事の支援をうけたい。
⑤生保受給中。家具のレンタル代を支弁するのが難しい。
⑥男性 10万円の給付が底をついて困っている。再び支給されないか。生活保護費を上げてほしい。誰に言えばいいか。
⑦男性 生活保護基準引き下げを争いたい
⑧80代女性 生活保護受給中。年金と生活保護で10万円、家賃と光熱費がかかり食費を削っている。物価高騰で生活が厳しい。睡眠剤とうつ病の薬を飲んでいる。市役所の職員が家賃の安い所に引っ越してはというが、30年も済んでいて無理。給付金があれば。
⑨50代女性 単身。生保受給中。通院にタクシーを利用しているが一部のみ移送費であとは保護費から自己負担で生活できない。エアコンも申請したが認めてもらえなかった。
⑩70代男性 単身。生保受給中。月末になると生活費が不足し知人や親族から借りて次月保護費で返済。保護課から「収入認定の問題があるので相手の証明をとれ」と言われた。
⑪男性 生活保護受給中。足が不自由で買い物も知り合いに頼んでいる。生活が苦しい。
⑫30~40代男性 生活保護受給中。精神保健福祉手帳所持、生活が困窮している。
⑬70代女性 年金2か月20万円。生活保護費2万円。生活が苦しい。給湯器がこわれそう。どうしたらよいか。

コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会 第16回(2022.10.22)
①70代男性 単身。年金(3万円/月)で生活保護受給中。物価が高く生活費が足りない。
②生活保護を利用しているが、相次ぐ保護費の引下げと物価高で生活していけない。これ以上どこを削ればいいか分からない。今、来年度に向けて更なる保護費の引下げが検討されているようだが、何とか止める方法はないか。
③60代男性 生活保護受給中。電気ガス水道料金値上げ負担が重い。訪問介護の職員が予防接種に対して「無駄遣いするな」と言った。
④50代男性 生活苦しい。生活保護の受給金額を上げてほしい。
⑤60代男性 生活保護を受給中。今日で5日間食事が出来ていいない。
⑥60代男性 生活苦しい。生活保護では足りない。物価高の影響。
⑦60代男性 生活保護利用者、物価高騰。これから灯油をする時期、生活保護費だけで生活できない。仕事で腰を悪くして働けない。何か収入を増える方法はないか。
⑧80代男性 生活保護を受けている。物価高で生活できない。5万円はいつ給付されるのか。
⑨70代男性 年金で生活できない。生活保護を受けている。保護費が毎年下がっている。3食食べられない。毎日風呂に入れない。5万円はいつ支給される。生活保護費が低すぎる。上げてほしい。
⑩60代女性 生活保護費が下がっている。電気が使えない。100均の懐中電灯を使っている。弁当を半分ずつ食べている。65歳から年金あるのか。
⑪40代男性 生活保護を受給している。電気・ガスなど光熱水費が急に上がって生活できない。5万円はいつもらえるのか。
⑫70代女性 年金額が減っている。生活保護も受給しているが改悪で自己負担が増えた。このままどんどんと生活苦になっていく。どうしたらいいか。5万円の給付はいつか。国の支援が若い世帯に偏りすぎ。高齢者に冷たすぎる。
⑬生活保護利用中の単身男性。物価高で電気代が高く、生活が苦しい。支援はないのか。
⑭70代女性 単身。生活保護利用中。今年春頃から物価高騰のために生活が逼迫している。生活保護基準を上げてほしい。
⑮70代女性 単身。生活保護利用中。年金と生活保護で生活しているが、電気代も値上がりし、大変苦しい。一時的に給付金があっても、臨時的に必要なものに消えてしまう。
⑯70代女性 単身。昨年から生活保護を利用しているが、最低限の生活で毎月ギリギリ。電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金はまだ支給されないのか。
⑰50代男性 単身。生活保護基準をもとに戻してほしい。身体障害がある。食費、光熱費も値上がりがひどい。
⑱70代男性 2人世帯。生活保護を利用中。物価が上がって辛い。1日2食しか食べられない。灯油代に困っている。
⑲40代男性 単身。生活保護利用中。弁当屋で働いていたが3年前にリストラにあった。精神障害がある。物価高で以前買えたものが買えず、つらい。
⑳60代女性 単身。生活保護利用中。物価高騰で例えばコロッケが50円から100円に。トイレットペーパー、ティッシュなどの紙製品、パン類、麺類など幅広い品物が値上げされ、生活保護費だけでやっていくのが以前にも増して厳しい。電気・ガスも値上げ。水道代は半額だけの免除なので負担大きい。電力等価格高騰緊急支援給付金はいつ支払われるのか。
㉑40代男性 単身、生活保護利用中。物価高なのに同じ扶助費ではやっていけない。
㉒70代男性 単身。会社が倒産して生活保護を利用するようになった。物価高で電気ガス食料品も高くなって今までの生活保護費でやっていけない。
㉓70代女性 単身。夫が急死して精神疾患で入院し、退院後は生活保護を利用している。食事も1日1~2食しかできない。
㉔女性 生活保護を受けている。精神疾患がある。物価高騰で生活が苦しい。物価高騰で計算したら月3万円から4~5万円になった。
㉕ケースワーカーからは保護費の範囲内で生活して欲しいと言われているが、保護だけでは生活できない。
㉖生活保護を受けているが、光熱費増で生活が苦しい。
㉗生活保護受給者。保護費では生活ができない。

コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会 第17回(2022.12.17)
①生活保護を受けていて、社協の日常生活自立支援事業を利用しているが、自由に使えるお金が3万円で苦しい。
②20代女性 単身。障害があり、働くことができず生活保護を利用している。計画的な金銭管理が難しく、月末になるとお金が底をついてしまう。支援団体から食料の現物支援を受けて、何とか生活出来ている状態で、不安が消えない。
③80代女性 単身。生活保護を利用させていただきながら、申し訳ないとは思うが、生活費が足りない。高齢で身体も弱ってきており、物価上昇で、ガスは最低限しか使わず、エアコンは使うと電気代が大変なことになるので、一日中湯たんぽを抱いて過ごしている。他者とのコミュニケーションはほとんどない。
④50代男性 単身。4年前から生活保護を利用している。双極性障害で、睡眠時無呼吸症候群も患い、強度の眠気があり、睡眠時間は12時間必要。ガス料金を滞納しており、今日から止められた。1日1~2食しか食べていない。
⑤男性 単身。3年前コロナと体調不良で仕事をやめ、生活保護を利用しているが、物価高で暮らしていけない。暖房代がもったいないので、ダウンを着て寝ている。仕事を探して、説明会にもハローワークにも行っているが、7社も落とされ面接にもたどり着けない。本当に困っている。
⑥生活保護費が下がり、物価も上がっている状況で、食べ物も満足に食べられない。国の税金の使い方がおかしいのでないか。
⑦80代男性 生保受給者。ガス代が高いので風呂は4~5日に1回しか入っていない。
⑧60代男性 視覚障害1級で生活保護受給中。物価高で生活費は2割くらい上がっている。今の保護費では生活していけない。エアコンはあるが使わず、オーバーを着てコタツに入っている。冬場でもシャワーで、お風呂は3年入っていない。
⑨年金と生活保護で生活しているが生活が苦しい。
⑩生活保護受給中、年金もあるが支給額が下がり生活が苦しい。
⑪生活保護受給者で食費が尽きており今すぐにでも食料がほしいが、ガラケーしかもっておらずフードバンク等食料支援をしてくれる連絡先を探すこともできないため教えてほしい。

いのちとくらしを守るなんでも相談会 第1回(2023.4.30)
①80代男性 生活保護を受けているが、物価があがり生活が苦しい。きょうだいから借金することもある。
②年金と生活保護を受給しているが,病院で窓口負担を求められる。生活を切り詰めているが負担が大きい。
③60代男性 生活保護を受けているが生活が苦しい。
④40代男性 生活保護受給中、光熱費が上がり生活が苦しい。携帯も解約。精神障害手帳2級。
⑤70代男性 生活保護費の引上げは予定されているか。3万円の給付金はいつか。
⑥50代女性 生活保護受給中。物価高で生活が苦しい。
⑦70代女性 生活保護受給中。生活保護費が世帯(姉妹)10万2000円で足りない。
⑧60代女性 生活保護受給中。年金と生活保護で生活。体調を崩してからは外出にはタクシーを利用し、障害制度でタクシー代(年7000円)もらっているが足りない。
⑨生活保護を受給しているが物価高で保護費だけではとても暮らせない。
⑩70代男性 年金と生保受給中。物価高騰の影響で生活が苦しい。
⑪70代男性 生活保護を受給しているが、物価高騰・年金額減少で生活がギリギリである。
⑫男性 生活保護を受給しているが、物価高で生活費もかかって苦しい。食糧支援を郵送で送ってもらえないだろうか。
⑬60代男性 単身、無職、持病で働けず10年以上前から生活保護利用中。食事は完全自炊、酒も喫煙もせずぎりぎりの生活。それでも物価高で生活保護だけでは月の途中でお金が足りなくなる。
⑭60代男性 単身。生活保護利用中。年金と合わせて月額12.7万円。極力節約してくらしているが月末になるとお金が底をつく。保護費基準を上げてほしい。
⑮50代男性 単身。生活保護利用中。物価高騰で生活できない。保護費を上げて欲しい。
⑯60代男性 単身、生活保護利用中。光熱水費が高くなっており、今の保護費では生活できない。住民税非課税世帯向けの給付金を早く支給してほしい。
⑰70代男性 単身。生活保護利用中。特例貸付の返済は免除となった。コロナのため、家でじっとしている生活。物価高、電気、ガスの高騰で生活は苦しい。このまま孤独死するのはイヤ。
⑱50代男性 単身、生保受給者。「家計改善支援事業」を生保受給者受けられないのか。生活扶助をあげて欲しい。
⑲70代女性 生活保護と年金受給しているが、この間の物価高騰で、生活が本当に苦しい。

いのちとくらしを守るなんでも相談会 第2回(2023.7.29)
①障害者で生活保護を受けているが、物価高の影響で生活が大変。月5千円ほど追加の保護費があればだいぶ助かるのだけど。
②生活保護を受けているが生活が成り立たない。保護費が少なく支給されている可能性がある。
③女性 年金+生保受給中。長期入院となり保護費がゼロとなった。市営住宅にて家賃は問題ないが、入院中でも出費が諸々あり困っている。役所に相談するも難しいと。
④親と自分の生活保護費でなんとか生活できていたが、親が死亡したため1人分の保護費では生活できない。
⑤年金が増えた分は生活保護費が減るしくみ。そもそも必要生活費が低すぎる。以前は1日1000円でやりくりしていたが、この物価高騰で1300円は必要。
⑥60代男性 単身。生活保護受給中だが次の支給日まで食べるものがない。心筋梗塞の持病があり遠くまで行けない。
⑦70代女性 単身。食料品をもらいたい。生活保護を受けているが高齢になって金額を減らされた。介護のアルバイトをして働いているのに金額が減るのは納得できない。物価も高くなっているのに。
⑧女性 単身。生活保護を受けているが物価上昇の影響が大きい。持病がありバランスの良い食事をとりたいができない。空腹時には水を飲むくらいしかできない。 

いのちとくらしを守るなんでも相談会 第3回(2023.9.30)
①50代男性 精神障害があり働けず現在、生保受給中。毎月、受診のため役所に医療券を受け取りにいくがその都度、病気の事やパソコンの使用可否など仕事が限定されるのに「仕事を見つけて働く様に」と毎回、言われる。それがストレスで病気が悪化しそう。
②60代男性 役所の担当者やケースワーカーの対応が悪い。
③70代女性 年金と生活保護で生活をしている。前回の保護費がいつもより少なかったので、ケースワーカーに確認したが、ちゃんと話を聞いてくれず困っている。
④50代男性 無職。生活保護利用中。派遣切りにあい、ハローワークに行っているのに、ジョブスポットへ行かないだけで生活保護切られそうな言い方をされ、打ち切られないか不安。
⑤60代男性 単身。無職。生活保護受給中。集団生活の施設に居住しているが、引っ越しをして、1人暮らしがしたい。4~5年前の借入で借金350万円がある。

いのちとくらしを守るなんでも相談会 第4回(2023.12.23)
①50代男性 生活保護利用中。母が死去したばかりでお金ない。所持金25円。食べるものがない。
②60代男性 生活厳しい、生活保護を受けているが足りない。
③70代男性 生活保護を受けているが、金額が少なく、生活が苦しい。
④病院に電車と徒歩で通っていたが、高齢で病気もあることからタクシーを使いたい。でもお金がかかるのでそれも難しい…。生活保護で交通費が出る⁈そんなこと全然知らなかった。
⑤男性 単身。生活保護を利用しているが、暖房費も上がり、生活が苦しい。給付金の支給手続が遅すぎる。
⑥80代男性 無職、単身。生活保護利用中。インフレで生活が苦しい。灯油1000円台から2000円台に。
⑦50代女性 無職。生活保護利用中。冷蔵庫や布団もない。物価高で困っている。借金が600万円あり、自己破産をしたい。精神疾患で通院中。
⑧40代男性 単身、生活保護利用中。ガス代を払えない。
⑨生活保護利用中だが生活が苦しく水だけで過ごす日もある。物価高もきつい。生きていくのがつらい。

いのちとくらしを守るなんでも相談会 第5回(2024.4.27)
①40代 独居。16年間生保受給中。物価高騰でこれからの生活が不安。何かプラスになる、利用できる助成金などないか。精神疾患もあり、外出もしにくくなってきた。
②34年間生保受給中。約7万円の生活費では足りない。食料支援を受けたい。
③生活保護費でギリギリの生活をしてきた。外食をしてD払いで払おうとしたら使えず、現金がなく払えなかった。次に来た時に払ってくれればいいと言ってくれた。売れる物をメルカリや質屋に売って払おうと思った。来月もスマホ代やD払い、電気代等を払うとマイナスになってしまう。
④父母と3人で生保受給中。残金が15,000円で生活が苦しい。給湯器を直したい。
⑤男性 生活保護受給中だが、物価高で生活が大変。障害年金を受給したい。
⑥男性 父子家庭の父親。コロナで電気代と電気代を滞納してしまった。現在は生活保護を受給しているが、滞納した分の支払が苦しい。
⑦70歳になってから、保護費が5000円程度下げられた。以前はそれでも外食で牛丼くらい食べられたが今はそれもできない。1日2食。クーラーはあるが、昨年は1度も使わず、濡れタオルを身体にかけてベッドで寝て暑さをしのぐ。
⑧生活保護を利用しているが、手持ちが0円になった。何か使える制度はないか。
⑨生活保護受給中。夫が3年前から脳出血で入院中で、お見舞いに行くにも交通費がかかり、物価高もあり生活が苦しい。国に受給者の苦しい状況を伝えてほしい。
⑩70代女性 生保受給中だが75歳になったら8%減額になると言われた。今でも保護費が少なく節約して生活しているのにこれ以上、減額されると今後が不安。
⑪70代男性 無職。生活保護利用中。物価高で苦しい。自分で料理ができないので外食になってしまい、余計出費がかさみ、電気代が高く困っている。今後冷房代が気になる。
⑫60代女性 単身、無職。年金と生活保護で月収10万5000円。家賃3万4000円。洗剤や食料品の値上がりが止まらない。缶詰のサイズが小さくなった。米は昨年暮れから500円位上がった。夏の電気代を考えると怖い。今の生活保護基準では、やりくりするのが厳しすぎる。糖尿病でインシュリンを打っている。
⑬40代男性 生活保護利用中。ガス代、お米などが高騰し、お風呂は週2回にしているが生活苦。現在、お米が1合とレトルトカレーが4袋しか残っていない。
⑭40代男性 生活保護利用中。食料品や電気代、ガス代が高い。ガス代節約のために入浴せずシャワーだけにしている。就職活動でケータイ代もかかる。友だちとも会っていない。裏金問題が酷い。保護基準を上げてほしい。
⑮50代男性 無職。生活保護利用中。食料がほしい。家電が壊れ、冷蔵庫使えず、給湯器お湯が出ない。食材もスーパー等で安い物を買っているが生活が苦しい。特に野菜の高騰。1日1食が、週2日くらいある。5年前に上司のパワハラで失職した。
⑯70代女性 無職。生活保護利用中。ガス代を滞納してガスを止められている。支払えない。東京ガスにかけあってもダメ。
⑰生活保護受給中。月生活費7万1900円。物価高のため生活が苦しい。
⑱40代男性 単身。生活保護受給中だが物価高で生活がキツイ。持ち家だが先日ヒョウが降り屋根に穴が空いた。ケースワーカーに聞いたら住宅補修費を出せると聞いたので見積りを取ったのに結局出せないと言われた。雨漏りもして困っている。

いのちとくらしを守るなんでも相談会 第6回(2024.7.27)
①80代女性 単身。生活保護費が減らされて生活が苦しい。脳梗塞で左半身不随だが要支援2なのでパット代も介護タクシーも使えない。電気代と食費をさらに削るしかなく生きていけない。
②生活保護を受給しているが少ない。水道、ガス、電気代等を節約しているが中学生、幼稚園の子どももいて、限度がある。無料で食料などもらえるところを教えて欲しい。
③70代女性 生活保護利用者・息子と2人暮らし。生活保護費月16万円、息子は病気や障害を持っている(障害年金は出ている)。生活が大変。半額のものを買ったりして工夫している。
④40代男性、単身、生活保護利用中。うつ病。物価が高騰しているのに保護費はそのままで生活できない。
⑤80代女性、2人世帯。収入は年金と生活保護。生活保護費が低すぎる。普段は扇風機もつけずに我慢し、1日1食、安いせんべいを水に浸して食べている。夫はレタスが噛めないほど衰弱している。
⑥80代女性、無職。生活保護を利用しているが、物価高でまともに食事も取ることができていない。水道・光熱費を2か月分滞納している。水道局・電気会社に延納措置をお願いしているが、今後支払いが滞った場合、水道を停めると言われている。月の食費は1万5千円でおさめている。病気を持っているため食事に気をつけなければいけないのだが、献立はお粥などに限られ、量も少ないため、毎日白湯やお茶を飲んで空腹を凌いている。毎日暑い日が続くが、電気代節約のためエアコンはなるべくつけないようにしている。一昨年に娘が失踪してからは、毎日不安で夜に目が覚めてしまい不安な日々を過ごしている。
⑦生活保護を受けているけれど、お金が足りない。
⑧生活保護だけど、保護費が足りない。光熱費が上がって生きていけない。
⑨生活保護受給中だが電気代高騰で生活が不安。
⑩生活保護受給者であるが、支給額が不十分であり、生活が苦しい。電気代節約のため上半身裸で過ごし暑さをしのいでいる。物価上昇を加味して、生活保護の支給額を上げてもらえないか。
⑪物価高騰、水道光熱費UPの中で食べるものがない。フードバンクを紹介してほしい。
⑫50代男性 単身。知的障害があり作業所に勤務しており、生活保護を利用中。物価高騰で生活が苦しい。
⑬40代男性 単身。障害年金と生活保護が収入。物価高で生活が苦しい。油、乳製品、パンなど食料品全般、光熱費が値上がりしているため、食事は1日1食にしている。追い詰められているので食料支援をしてほしい。
⑭50代男性 生活保護利用中。生活保護だけでやっていけず、食料支援をお願いしたい。
⑮50代男性 無職。生活保護利用中。父の残した一軒家に住んでいる。物価高で、生活が苦しい。
⑯60代男性 無職。生活保護利用中。今の保護費では物価高騰で暮らしていけない。複数の医療機関に通院しているが、交通費が自己負担になっている。
⑰80代女性 単身、無職。生活保護の支給額が少なく、生活が大変。これからの生活費、家賃をどうすればいいか。
⑱50代男性、単身、無職。生活保護利用中。今の保護費では生活できない。家具什器費でガスコンロ、食器、炊飯器などは変えたが、冷蔵庫、洗濯機、エアコンもない。物価高騰で生活が限界。1日2食くらいしか食べられない。

うち、特にエアコン利用に関するもの
①70代男性 生活保護受給中。給付金が少なくて生活できない。クーラーがないため暑くて熱中症になった、死んだ方がまし。
②70代夫婦 年金月額10万円。物価高で電気代も高いが、何か利用できる制度はないか。親名義の古い持ち家に住んでおり、エアコンがないので熱中症になった。福祉事務所に購入費の申請をしたら、「名義変更して家を売ったらいい」と言われた。
③60代男性 単身。生活保護利用中。低所得者給付金が昨年支給された人を対象から外すのはおかしい。今年1月転居した今の家にエアコンがなくて死にそうなのでエアコンが買えると思っていたのに。転居の際に電化製品代は保護費で出してもらったが、エアコン代は出せないと言われた。
④70代男性 単身、生活保護利用中。部屋のクーラーが故障したままで、室温36~37度で辛い。
⑤50代女性。単身、無職。生活保護を利用している。酷暑でエアコンを買いたいが補助金はないか。ケースワーカーに相談しても貯金しろとしか言わない。血圧が高く、頭痛がする。物価も上昇していて生活が苦しい。我慢するほかないのか。




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 そんな気持ちで書きました。
 (本書まえがきより)



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市民の力で貧困を絶つ!
発行日:2007年12月15日 概要:A5版・230頁
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 岐路に立つ日本の「いま」が見える最良の入門書(推薦・湯浅誠)
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間違いだらけの生活保護バッシング
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「貧しき者は死ねと言うのか!」

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  生活保護「改革」 ここが焦点だ!
発行:あけび書房
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 最近、群馬県桐生市や奈良県生駒市など全国各地で、生活保護制度における扶養義務の取扱いに関して保護の実施機関による著しく違法・不適切な事件が連続して起きています。
 これらの事件は、扶養の仕組みを悪用して要保護者を強引に制度から締め出そうとする点において極めて悪質ですが、その背景には、こうした違法な運用を誘発する違法又は不適切な厚生労働省通知の存在があります。
 自治体・実施機関による違法・不適切な運用を根絶するためには、その大元となっている厚生労働省通知の内容の抜本的な改善が不可欠であることから、私たちは、厚生労働省に以下の要望書を提出しました。




2024年8月6日


生活保護の扶養に関する
違法・不適切な運用の原因となっている
厚生労働省通知の改正を求める要望書


厚生労働大臣 武見 敬三 殿
生活保護問題対策全国会議
桐生市生活保護違法事件全国調査団
奈良県の生活保護行政をよくする会
一般社団法人つくろい東京ファンド


第1 はじめに
 私たちは、2021年2月8日には「生活保護の扶養照会に関する要望書」と「扶養照会に関する実施要領等の改正案」 を厚生労働大臣に提出し、同年2月28日には「生活保護の扶養照会に関する厚生労働省通知に関する緊急声明」を提出して、かねてより生活保護の扶養問題の改善を求めてきた。
 厚生労働省は、2021年3月30日付で「『生活保護問答集について』の一部改正について」と題する事務連絡を発出し、十分ではないものの、扶養照会に関する実務運用を一定程度改善した(本改正に関する私たちの見解 )。
 しかしながら、今般、以下に示すとおり、保護の実施機関による著しく違法・不適切な事件が連続して起こり、生活保護制度における扶養義務の取り扱いが要保護者の生存権を脅かしていることが明らかになった。これらの事件は、扶養の仕組みを悪用して要保護者を強引に制度から締め出そうとする点において極めて悪質であるが、その背景には、こうした違法な運用を誘発する違法又は不適切な厚生労働省通知の存在がある。
 こうした自治体・実施機関による違法・不適切な運用を根絶するためには、その大元となっている厚生労働省通知の内容の抜本的な改善が不可欠であることから、以下の要望内容の早期実施を求めるものである。

第2 要望の趣旨
1 保護の実施機関が扶養の強要(引取り扶養及び金銭的援助(仕送り))をしないよう、自治体に対して扶養の強要を厳に慎むよう求める通知を発出すること。
2 扶養に関する生活保護の実施要領について、以下のとおり改正すること。また、仕送り収入の認定方法を明確化すること。
⑴ 扶養義務に関する保護の実施要領等の改正・削除
① 次官通知 第5 (要保護者への指導)の削除
② 別冊問答集 第5問5-9(扶養義務における感情問題)の削除
③ 課長通知第5の問2の改正(「取り扱って差し支えない」の改正)
④ 局長通知第5-1(3親等の「相対的扶養義務者」の定義)の見直し
⑤ 局長通知第5⁻2-(1)(精神的な支援の可能性)に基づく扶養照会の禁止
⑵ 仕送り、贈与等による収入に関する保護の実施要領等の改正(収入認定の方法の明確化)
3 保護の申請及び廃止段階で違法・不適切な扶養の強要が行われていないか、仕送り収入のカラ認定などの実態を伴わない扶養を理由とした申請却下(境界層却下を含む)や廃止が行われていないかにつき、生活保護施行事務監査において重点的に確認すること。

第3 要望の理由
1.相次ぐ生活保護の扶養を悪用した事件の顕在化
(1)群馬県桐生市における扶養の履行のカラ認定及び引き取り扶養の偽装による申請却下、保護廃止、収入認定

 2024年6月21日に公表された群馬県による桐生市への生活保護施行事務監査(特別監査)の実施結果 によると、桐生市における申請却下事案(境界層該当措置に係る却下)において、以下のとおり、仕送りの実現性が確認できない収入認定による却下事案が多数存在することが明らかとなった。
① 年金収入が最低生活費以下の高齢の妹から「不足分」として11,933円の仕送りを認定し、却下した事案
② 娘からの扶養届の記載が当初15,000円の仕送りであったが、「不足分」として30,372円に金額訂正して収入認定し、却下した事案
③ 行方不明の長男名義の扶養届(施設職員が代筆した)に基づき、仕送りを認定し、却下した事案
④ 姪(桐生市在住の被保護者)へ20,000円の仕送りを行っている申請者について、「不足分」として1,706円の甥からの仕送りを認定し、却下した事案
⑤  姉からの扶養届について、当初金銭的な援助が「できません」にチェックされていたが、その後「援助します(不足額)」と内容訂正されて、却下された事案
 監査では、面接記録約450件のうち、70件以上を不適切な対応として調べたところ、「家族が協力すれば困窮に至らない」などと仕送りや引き取りの強要が疑われる対応や却下が「多数」確認されたとしている。
職員へのヒアリングでも、たとえば③の事案において、「境界層措置が適用されれば、本人の年金収入のみで生活できるので、扶養義務者からの仕送りがなくても問題ないとの認識であった。」というように、実際には仕送りの事実がなくても収入認定し、却下措置を行なっていた実態が裏付けられている
 なお、通常、扶養届には扶養義務者の援助可能な程度にもとづいて「〇〇円の金銭的援助をします」といった記載がなされるものであるところ、桐生市の境界層却下の場合、上記事案のように「不足分」といった申請世帯の要否判定を保護否にする目的としか考えられない記載がなされていることが明らかになっている。
 また、却下(境界層却下)だけではなく、保護開始となったケースについても同様に、仕送りの実現性が確認できないものや、実態を欠く仕送り収入の認定を行い、保護費を減額していたことが指摘されている(①姉からの扶養届の金額が15,000円から20,000円に訂正されて収入認定されている事案。②姪からの扶養届が、援助が「できません」から「します」に訂正されている事案など)。
 以上のとおり、桐生市においては、要保護者の親族に対する仕送りの強要に留まらず、実態を欠く仕送りの「カラ認定」という、いわば扶養の偽装によって、申請却下や保護の廃止、収入認定による保護費削減等の行為が長期間に亘って広く行われていたことが明らかとなっている。

(2)奈良県生駒市による扶養引取による保護廃止及び2度の申請却下事件
 母親の扶養意思の確認を理由に生活保護申請を却下された奈良県生駒市の50代女性が市に対して国家賠償法に基づく損害賠償を求めた事件について、奈良地裁は、令和6年5月30日判決(令和3年(行ウ)第25号))において、市の却下処分などを違法として、市に対し、慰謝料等の損害賠償55万円の支払いを命じた。生駒市は控訴を断念し、判決が確定している。
 本事件において、①生駒市は、原告に対して稼働能力活用の指導指示を行い、指導指示違反を理由として保護停止処分を行った上で、「アパートを引き払い実家に戻ろうと思っている」との原告の供述のみをもとに「親類・縁者等の引取り」を理由に保護廃止した。②保護の停廃止後、実家に戻れず、生活困窮が継続し電気・ガスが止まったままの状態であった原告は、2回にわたって保護の申請をしたが、生駒市は、77歳で軽度の認知症のある原告の母に引取り意向があるとして、「親類・縁者等の引き取り」を理由にいずれも申請を却下した。「母の引き取り意向」なるものは、生駒市の職員3名が母宅に押しかけ、原告を引き取れないかと「打診」した結果、母が口頭で応じたことのみを根拠としており、全く実現可能性を欠くものであった。
 奈良地裁判決は、①本件廃止処分において、廃止理由に「親類・縁者等の引取り」による旨の記載があるが、実際に原告が母と同居して引取扶養を受けるには至っていないのであるから、法26条の保護廃止の要件を充足するに至ったものと認められないこと、②本件却下処分について、被告である生駒市は生活保護問答集(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「別冊問答集」という。)第5問5-9の記載により保護申請を却下すべきであったと主張しているが、原告母の意向を聴取しただけで実現可能性について何ら具体的な調査・検討をしていないことをも考慮すると、市は職務上の法的義務に違背したと判断している。

(3)小括
 上記(1)(2)の事案に共通する特徴として、①実施機関が要保護者や扶養義務者に対して扶養を強要し、②実際の金銭扶養(仕送り)の発生又は引取り扶養の実現がなされていないにもかかわらず、本人や扶養義務者からの口頭等による意向確認、行方不明状態の扶養義務者による仕送り認定や、職員による扶養申告の訂正をもとに、いわば架空の事実を根拠として、申請却下や保護廃止、保護費減額等がなされている。しかも、③扶養義務の履行が到底期待できない高齢者や行方不明者(生駒市においては77歳の軽度認知症のある母、桐生市においては高齢の妹や行方不明者)、また絶対的扶養義務者ではない甥や姪などの親族に対しても扶養照会が行われて(桐生市)、引き取り扶養や仕送りの認定が行われていることがあげられる。

第4 要望の内容
1.扶養義務、仕送り収入の現行取り扱いの問題点と改正要望
(1)扶養義務に関する法律上の基本観点

 桐生市や生駒市による一連の対応は、極めて重大な違法行為である。扶養の強要、実態を伴わない仕送りや引き取りに基づく保護廃止や申請却下によって、要保護者の保護を利用する権利、申請権を侵害し保護から排除する行為は到底許されるものではない。しかしながら、上記のような扶養に関する違法な対応の背景には、国が定める扶養義務の取り扱い(実施要領や別冊問答集による定め)の影響がある。
 まず、現行生活保護法において、扶養義務者による扶養は、法第4条第2項において「保護に優先して行われるもの」と規定されているが、これは扶養が保護の要件ではなく、あくまでも、「生活保護の実施に当たっては、実際に扶養が行われた場合に、はじめてこれを被保護者の収入として取り扱う」ということを規定しているにすぎない(別冊問答集第5 生活保護と私的扶養の項)。
 そもそも民法上の扶養義務が発生するためには、①一定の親族関係にあること、②扶養権利者の要扶養状態、③扶養義務者の扶養能力、④扶養権利者の請求の要件を満たすことが必要である。民法上の扶養義務は、扶養義務者が負うものであり、要扶養者が持つのは、処分や譲渡ができない一身専属権としての「扶養請求権」であって、扶養請求権は、要扶養者が特定の関係にある扶養義務者に扶養の請求をした時に初めて発生すること(判例・通説)からしても、扶養を求めるかどうかは本来的に要扶養者の自由である。
そのため、申請者において④の扶養義務者に扶養を請求するかどうかということ自体、扶養権利者たる要保護者の意思に任すべき問題である。この法律上の観点からすると、扶養の強要はもとより、扶養に関する要保護者や扶養義務者に対する指導自体が行われるべきものではない

(2)扶養義務に関する保護の実施要領等の改正・削除
① 次官通知 第5 (要保護者への指導)の削除

  上記が扶養に関する法的な基本原則であるにもかかわらず、保護の実施要領(「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知。以下「次官通知」という。)第5では、「要保護者に扶養義務者がある場合には、扶養義務者に扶養及びその他の支援を求めるよう要保護者を指導すること」とある。これは、保護の実施機関が要保護者に対して扶養の指導を行い、ときに強要を後押しするような非常に問題のある表現となっており、このような記載は即刻削除されるべきである。

② 別冊問答集 第5問5-9(扶養義務における感情問題)の削除
  さらに、生駒市で2回に亘り保護の申請を却下した事件において、市側は別冊問答集第5問5-9(扶養義務における感情問題)を却下した根拠であると主張していた。別冊問答集の当該記述では、「一方で単に感情的な理由のみによって受けられる扶養の履行を受けないということでは、保護の補足性の原理にもとることとなる。したがって、直ちに保護を行うことは適当ではない。」、「以上、いずれの場合も扶養義務者の側に扶養の意思がある以上、これを拒むことは認められるものではなく、これらの説明・説得を十分に行っても、なお要保護者本人が扶養を受けることを拒むようであれば、法第4条第1項の要件を欠くものとして保護申請を却下すべきである。」とあり、特に下線部の記述が、保護の実施機関の申請却下を促す内容となっている。
(1)で述べたように、扶養義務者に扶養を請求するかどうかということ自体、扶養権利者たる要保護者の意思に任すべき問題である。にもかかわらず、法第4条第1項に定める「保護の要件」における「その他あらゆるもの」の活用要件に欠けるものと解して、申請を却下すべきと別冊問答集に記載しているのは、民法上の扶養請求権に関する無理解により、生活保護法4条1項と同条2項を混同するもので明らかに違法であるから、直ちに削除されるべきである。

③ 課長通知第5の問2の改正(「取り扱って差し支えない」の改正)
 生駒市においては77歳の軽度認知症のある母、桐生市においては高齢の妹や行方不明者に対しても扶養照会が行われて、引き取り扶養や仕送りの認定が行われていた。
 扶養能力調査における扶養照会(直接照会)については、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第5-2に基づき、まず「扶養義務履行が期待できる者」と「扶養が期待できない者」を判断することになっている。
 「扶養が期待できない者」の判断基準として、保護の実施要領(「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知。以下「課長通知」という。)第5の問2及び別冊問答集の問5−1により例示として、① 当該扶養義務者が被保護者、社会福祉施設入所者、長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者(いわゆる専業主婦・主夫等)未成年者、概ね70歳以上の高齢者など。② 要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない(例えば、当該扶養義務者に借金を重ねている、当該扶養義務者と相続をめぐり対立している等の事情がある、縁が切られているなどの著しい関係不良の場合等が想定される。なお、当該扶養義務者と一定期間(例えば10年程度)音信不通であるなど交流が断絶していると判断される場合は、著しい関係不良とみなしてよい。)、③ 当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者(夫の暴力から逃れてきた母子、虐待等の経緯がある者等)などが該当するとしている 。
  ただし、課長通知第5の問2は、上記例示に該当する場合、「直接照会することが真に適当でない場合/扶養の可能性が期待できないものとして、取り扱って差し支えない」とするにとどめている(ただし、DVや虐待に関する③については「取り扱うこと」としている)。この「取り扱って差し支えない」という曖昧な表現が、保護の実施機関に判断を丸投げし、通常であれば扶養の可能性が期待できないと解される状況の扶養義務者に対しても強引な扶養照会が行われる原因となっている。
  上記例示に該当するような扶養義務者に対して直接照会を行うこと自体が、今日の扶養に関する時代状況、社会実態に反しており、課長通知や別冊問答集で「扶養の可能性が期待できない」として例示しているにもかかわらず、実施機関に無用な直接照会の余地を与えるような記載は見直されるべきである。そのため、例示の①、②に対しても、DVや虐待に関する③と同様に、「取り扱うこと」と明示し、直接照会を行わない取扱いに統一すべきである。

④ 局長通知第5-1(3親等の「相対的扶養義務者」の定義)の見直し
  先述のとおり、生駒市においては77歳の母、桐生市においては高齢の兄弟姉妹や絶対的扶養義務者でもない甥や姪などの親族に対して広く扶養照会が行われていた。
現在、生活保護制度における扶養義務者の範囲については、局長通知第5の1の(1), (2), (3)、課長通知第5の1において定められているが、これは民法第877条第1項のいう絶対的扶養義務者と、民法第877条第2項に準じる相対的扶養義務者を対象としている。
  ところで、民法877条2項が「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合の外、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」と規定しているとおり、相対的扶養義務は、家庭裁判所の審判によって初めて課されるものである(3親等内の親族:おじ・おば・甥・姪)。この点について、別冊問答集問5−4において、「家庭裁判所の審判のない一定の者に対して生活保護法上扶養義務の履行を求むべき法律的根拠」について、「具体的な法律上の根拠はない」としている。法律上の根拠のないまま、福祉事務所が裁判所になり代わって「特別の事情」の有無を判断することは不可能かつ不適切であって、現行通知は、民法877条2項に明らかに違反している。桐生市の甥や姪からの仕送り認定による却下や収入認定の事件を踏まえても、「相対的扶養義務者」は、現に家庭裁判所の審判がある場合に限るよう規定を改正するべきである

⑤ 局長通知第5-2-(1)(精神的な支援の可能性)に基づく扶養照会の禁止
  広範な直接照会の余地を与える要因として、局長通知第2の(1)の扶養の可能性調査において、「金銭的な扶養のほか、精神的な支援の可能性についても確認するものとする」としている点がある。この通知をもとに、実施機関では、金銭的援助が困難な世帯に対しても、万一の緊急連絡先などの確保のために扶養照会を行っている事案が散見される。
 しかしながら、親族に対する精神的支援の要請は、扶養照会を通じて求める必要はなく、必要に応じて別途連絡を行えばよいだけの話である。局長通知においても、この精神的支援の可能性の確認については、あくまで要保護者その他からの聴取などによる「扶養の可能性調査」(直接照会の前段階に実施される)での確認事項として記載されているが、扶養届の様式(国が準則で様式例を示している)のなかに「精神的な支援の可能性」が記載されていることから、本来直接照会の対象とならないような扶養義務者に対しても無用な照会が行われることとなっている。このため、「精神的な支援」や「緊急連絡先の確保」のみを理由に直接照会を行わないように課長通知、問答集等で明示するとともに、扶養届の様式も見直すべきである。

(3)仕送り、贈与等による収入に関する保護の実施要領等の改正(収入認定の方法の明確化)
法第4条第2項が、扶養義務者による扶養が「保護に優先」するとしているのは、あくまでも「実際に扶養義務者からの金銭的扶養が行われたときに、これを被保護者の収入として取り扱うこと等を意味するものであり、扶養義務者による扶養の可否等が、保護の要否の判定に影響を及ぼすものではない」。
 そして、扶養に関する仕送り等の収入認定の方法に関しては、次官通知第8の3の(2)、局長通知第8の1の(5)によって規定されているが、これは他の収入(就労に伴う収入、恩給、年金等の収入等)に関する諸通知に比べて極めて簡素なものとなっている。たとえば、恩給、年金等の収入については、次第8の3の(2)のアの(ア))のように「恩給、年金、失業保険金その他の公の給付については、その実際の受給額を認定すること」とあるが、仕送り収入についてはこのような記載はない。
 よって、当然のことではあるが、仕送り収入についても、「その実際の受給額を認定すること」と明記し、実施機関は、仕送り等が実際に履行されていることを通帳等の客観的証拠によって確認の上で認定すべきことを明確にすべきである。前掲令和6年5月30日奈良地判も、扶養の「実現可能性について何ら具体的な調査・検討をしていない」場合には違法となる旨判示している。扶養によって保護が廃止になったり、保護申請が却下されるのは、扶養援助額によって最低活費を上回る場合(引取扶養においては、引き取られた扶養権利者と同居に至った扶養義務者の両者を同一世帯として要否判定を行った結果、要保護性が認められない場合)でなければならないのである(同旨、前掲奈良地判)。

2.自治体への周知と生活保護法施行事務監査事項における却下項目の追加
 第3の1(1)(2)の桐生市、生駒市の事案は、県の特別監査や裁判によって問題が明らかになったものであるが、同様の違法・不適切な扶養の取り扱いを行っている保護の実施機関が他にも存在する可能性がある。厚生労働省は事態の深刻性、重要性に鑑み、全国の自治体に対して①扶養の強要と疑われる行為を厳に慎むこと、②引取り扶養及び金銭的援助(仕送り収入)の認定においては、実態を伴わない扶養援助の認定等を行わないことを周知徹底するための通知を発出し、注意喚起を行うべきである。
 また、群馬県桐生市においては、保護率が近隣他自治体に比べて異様な減少を示しており、申請却下件数の割合(却下率)においても周辺自治体に比べて明らかに高い事実があったにもかかわらず、毎年の県監査(通常監査)ではそれを長期間見落としていたという事実がある。これは、国を含めた生活保護施行事務監査自体が、「濫給防止」にのみ力点を置き、「漏給防止」を軽視しているため、保護率の減少動向については注意を払わず、そこに何らかの組織的要因(申請抑制や保護辞退の強要など)がないかを解明する姿勢に欠けていたことが原因と考えられる。
 ついては、顕著な保護率の減少が見られる実施機関については、国及び都道府県・政令市本庁は、とくに注意を払って、生活保護法の施行事務監査でその構造的・組織的要因を明らかにするために最大限の努力が払わなければならない
また、「生活保護法施行事務監査の実施について」(平成12年10月25日社援第2393号 厚生省社会・援護局通知)による「生活保護法施行事務監査事項」では、「主眼事項7 面接相談の体制、保護の開始、廃止の状況」のなかで、(2)保護の開始が設定されているが、各項目の「着眼点」において「保護の申請却下」についてはほとんど記載されていない。
桐生市の事案を踏まえれば、国及び都道府県、政令市本庁が実施する監査の着眼点として、「保護の申請却下」が適正に行われているかについて、重点的に把握することが重要であるから、主眼事項・着眼点において「保護の申請却下」を重点項目として設定し、その適正運用の監視に努めるべきである。
 また、「主眼事項7 面接相談の体制、保護の開始、廃止の状況」の(3)保護の廃止において、現在は重点項目として設定されていない「扶養・仕送りによる廃止」についても重点項目として設定し、その適正運用、とりわけ扶養の強要や実態の欠けた引き取りや仕送りの認定が行われていないかについての監視を強化すべきである。
以 上


ⅰ 「生活保護の扶養照会運用に関する要望書」「扶養照会に関する実施要領等の改正案」(2021年2月8日) http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-382.html
ⅱ 「生活保護の扶養照会に関する3月30日付厚生労働省通知に関する見解」(2021年4月7日) http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-398.html
ⅲ 群馬県健康福祉部福祉局地域福祉課保護係「令和5年度生活保護施行事務監査(特別監査)の実施結果について」(令和6年6月21日) https://www.pref.gunma.jp/site/houdou/653011.html
ⅳ 厚生労働省社会・援護局保護課「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」(令和3年2月26日付事務連絡)



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コロナ災害を乗り越える
いのちとくらしを守る Q&A

2024年7月23日版

    
いのちとくらしを守る何でも相談会実行委員会


【参考になるまとめサイト等】

※1 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 くらしや仕事の情報」

https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kurashiyashigoto.html


※2 経済産業省パンフ「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(R5.7.27更新)

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf


※3 困窮者支援情報共有サイト ~みんなつながるネットワーク~(厚労省通知をまとめたもの)

https://minna-tunagaru.jp/mhlw/covid19/


※4 厚生労働省「社会福祉・雇用・労働に関する情報一覧(新型コロナウイルス感染症)」(同上)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00110.html


※5 大阪弁護士会「新型コロナウイルス特設サイト」

https://www.osakaben.or.jp/corona/



【「死にたい」「気持ちがふさぎ込む」という方々の相談先】
①いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)
0120-061-338  おもい ささえる(フリーダイヤル・無料)
 実施日時  毎日 0:00~24:00(24時間)

②よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
0120-279-338 つなぐ ささえる(フリーダイヤル・無料)
岩手県・宮城県・福島県から 0120-279-226 つなぐ つつむ(フリーダイヤル・無料)  
実施日時:24時間対応 ※FAX、チャットやSNSによる相談にも対応



Ⅰ 生活保護編
Q1 収入が減り、生活がままならなくなりました。現金の支給をしてもらえる制度はあるでしょうか。

Q2 生活保護はどんな場合に利用できますか?

Q3 福祉事務所で保護を断られたらあきらめるしかありませんか?

Q4 申請はどこにするのですか?

Q5 外国籍でも生活保護を利用することはできますか?

Q6 ホームレス状態でも生活保護は利用できますか?

Q7 役所で、「住む所がない人は施設に入ることになっている」と言われたのですが?

Q8 一時的に親戚・知人宅に居候しているのですが、私だけが生活保護を利用できますか?

Q9 申請して生活保護が開始されるまでどれ位かかりますか? 少しでも早くしてもらいたいのですが。

Q10 現金を持っていると生活保護は利用できないのですか?

Q11 給料や年金などの収入があると生活保護は利用できませんか?

Q12 生命保険は解約しなくてはいけないのですか?

Q13 学資保険を続けることはできますか?

Q14 家賃が高いと生活保護は利用できないのですか?

Q15 持ち家があるのですが生活保護は利用できますか?

Q16 住宅ローンが残っていても大丈夫ですか?

Q17 借金がありますが生活保護は利用できますか?

Q18 失業や自宅待機による減収で生活保護を利用する場合、自動車は処分しなければなりませんか?

Q19 Q18以外に自動車の保有が認められる場合がありますか?バイクの保有はどうですか?

Q20 65歳未満の若い人は生活保護は利用できないのですか?

Q21 自営業をしていますが、廃業せずに生活保護を利用できますか?

Q22 親族に連絡すると言われましたが、どういうことですか?

Q23 「扶養照会」を避けて、元夫や親族に居場所を知られない方法はありますか?

Q24 生活保護利用世帯が「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援給付金」(1世帯7万円など)や「低所得者世帯への支援給付金」(1世帯10万円など)を受給した場合、収入認定されて保護費を減らされてしまいますか? その他、各自治体が独自に実施する給付金はどうですか?

Q25 生活保護利用世帯の子どもが通学する学校で、ICT(情報通信技術)を活用したオンライン教育が始まりました。これに対応する費用を保護費から支給してもらえますか?


Ⅰ´ 求職者支援制度
(求職者支援制度)

Q1 給付金を受給しながら職業訓練を受けられる制度があると聞きましたが、どんな制度でしょうか?

Q2 職業訓練受講給付金と住居確保給付金の併給は認められますか?


Ⅱ 生活福祉資金の特例貸付編
(緊急小口資金の特例貸付)

Q1 収入が減り、光熱費の支払いもままなりません。緊急・一時的にお金を貸してもらう制度はないでしょうか?


(総合支援資金の特例貸付)
Q2 新型コロナウイルスの影響で失業し、当面の生活費の目途がありません。しばらくの間、一定の生活費を貸してもらう制度はありませんか?


(緊急小口資金と総合支援資金の併用)
Q3 緊急小口資金と総合支援資金(合わせて「特例貸付」)の両方を利用することはできますか? また、保証人がいなくても大丈夫ですか?


(特例貸付の受付期間等)
Q4 特例貸付はいつまで受け付けてもらえますか? 貸付が終わった後はどうすればいいですか?


(償還免除)
Q5 償還免除の対象となっている「償還時に所得の減少が続く住民税非課税世帯」とは、どのように判断されますか。


(償還猶予)
Q6 特例貸付の償還猶予は、どのような場合に受けることができますか。


Q7 特例貸付における償還猶予について、上記⑥「都道府県社会福祉協議会会長が上記と同程度の事由によって償還することが著しく困難であると認める場合」も対象とされていますが、具体的にはどのように判断されますか。


(猶予期間中の職権による償還免除)
Q8 償還猶予の期間中には、償還免除を受けられないのでしょうか。


Q9 償還猶予の終了時にも特例貸付の償還に困っている場合、償還免除を受けられないでしょうか。


(フォローアップ支援など)
Q10 特例貸付の償還に困っている方について、償還猶予や償還免除以外の支援方法はないでしょうか。


(本則の生活福祉資金)
Q11 生活福祉資金の特例貸付は終了しましたが、本則の生活福祉資金(通常貸付)はどのような制度になっていますか。


Ⅲ 住宅維持・借金整理編
(住居確保給付金:支給要件)

Q1 失業して家賃が支払えなくなりました。家賃を補助してくれる制度はありますか?


(住居確保給付金:外国人・自営業者)
Q2 外国人、フリーランス・自営業者も支給対象となりますか。


(住居確保給付金:学生)
Q3 大学生等は支給対象にならないのですか。


(住居確保給付金:支給額の改善)
Q4 最近、支給額を増額する方向での運用改善が行われたと聞きましたが、どのような改善ですか。


(家賃の滞納と立退き)
Q5 家賃を2か月分滞納したら、家賃保証会社の社員から月末までに退去するとの書面にサインするよう強く求められました。私が悪いので応じなければならないでしょうか?


(住宅ローン等の滞納)
Q6 収入が減り、住宅ローンの返済が難しくなってきました。銀行は返済猶予や条件変更に応じてくれるでしょうか?


(コロナ版ローン減免制度の概要)
Q7 新たなローン減免制度が始まったと聞きましたが、どのような制度ですか?

Q8 コロナ版ローン減免制度はどうすれば利用できますか?また、詳しいことはどこに聞けばいいですか?


Ⅳ 税金・公共料金滞納編
Q1 上下水道、電気、ガス、電話の料金や公営住宅の家賃の支払いができません。待ってもらえるでしょうか?

Q2 納税の猶予(徴収猶予)、換価の猶予の手続がわかりません。

Q3 解雇(雇止め)で失業したのですが、前年所得を前提とする国民健康保険料が高くて払えません。

Q4 滞納している税金について相談をしたいのですが。

Q5 制度の区別や適用要件など、あまりよくわからないので教えてほしい。

Q6 引用された通知などに従った処理がなされていない場合はどうすればよいですか。

Ⅴ 労働編
※Ⅴ-1 日本労働弁護団「新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A」(Ver5)(R3.12.1更新)
※Ⅴ-2 厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」(R5.11.22更新)
※Ⅴ-3 厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(R5.11.22更新)


(休業手当)
Q1 新型コロナウイルスに感染した、または発熱などの症状がある労働者を使用者の判断で休ませた場合、休業手当の支払いは必要ですか。

Q2 私は、飲食店等でアルバイトを繰り返して生活しているフリーターです。どこの事業主も、私のようなアルバイトを雇用保険に加入させていません。これは仕方が無いのでしょうか?

Q3 退職後、雇用主が離職票を出してくれないので、公共職業安定所に提出できず、求職者給付の受給ができません。どうしたら良いでしょうか。

Q4 就職した会社がいわゆるブラック企業だったため、違法な長時間労働で働かされ、かつ、毎日上司の叱責を受けていたため、精神的に参ってしまい、1年間もたずに会社を退職しました。職安に行きましたが、「1年以上働いていないので、失業手当は受給できない」と言われました。何とか受給できる方法は無いのでしょうか。

Q5 2~3か月の短期就労を繰り返し(途中に無職の期間があり)、その後、失業状態にあります。そこで、求職者給付の受給のために、職安に求職の申込みをし、受給資格の認定を求めました。しかし、「就労期間(被保険者期間)が11か月半で、0.5か月分足りないので、受給資格は無い」と言われました。何とか受給できる方法はないですか?

Q6 持病を抱えて体調が悪いため、仕事に就いたり辞めたりを繰り返しています。直近の離職前2年間に12か月、もしくは1年間に6か月の被保険者期間はないのですが、失業手当の受給資格はやはり難しいのでしょうか。

Q7 自己都合によって退職しました。失業給付を受けるのに3か月待たないといけないと聞きましたが、仕方ないのでしょうか?

Q8 求職者給付の給付日数が90日間しかなく、もうすぐ終了しそうですが、就職のメドは立っていません。どうしたら良いのでしょうか?

Ⅵ 電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援給付金(1世帯7万円または10万円+児童1人5万円)

Q1 電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援給付金の概要について、教えてください。

Ⅶ 低所得者世帯への支援給付金(1世帯10万円+児童1人5万円)

Q1 低所得者世帯に対する支援給付金の概要について、教えてください。

Ⅷ その他(地方独自の給付金制度や国の動きなど)

Q1 都道府県、市町村など地方独自の支援策にはどのようなものがありますか?




Ⅰ 生活保護編
※本編の各QAの根拠となる通達・判例等の詳細については、「必携 法律家・支援者のための生活保護活用マニュアル 2019年度版」(生活保護問題対策全国会議編)の各Qの末尾に【活用マニュアルQ●】とある箇所をご参照ください。

Q1 収入が減り、生活がままならなくなりました。現金の支給をしてもらえる制度はあるでしょうか。
 生活保護が利用できないか検討しましょう。
生活保護は、生活費・住宅費・教育費・医療費等をパッケージで給付してもらえる制度で、給料や年金などの収入があっても(Q11)、持ち家があっても(Q15・16)、車があっても(Q18)、利用できる可能性があります。

※Ⅰ-1 日弁連パンフ「『実は少ししんどい』あなたへ あなたも使える生活保護」
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/seikatsuhogo_qa_pam_150109.pdf


 国も、今回の事態に対応して自治体に以下の通知を出し、「適切な保護の実施」や「速やかな保護決定」等を指示しています。

※Ⅰ-2 令和2年3月10日付事務連絡「新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支援制度における留意点について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000608930.pdf


 さらに国は、緊急事態宣言の発令を受け、申請意思がある者に対しては「生活保護の要否判定に直接必要な情報のみ聴取」し、他の情報は「後日電話等により聴取する等、面接時間が長時間にならないよう工夫されたい」とするなど、柔軟な対応で早期に保護開始するよう通知しています。(Q18、19、20も参照)

※Ⅰ-3 令和2年4月7日付事務連絡「新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000619973.pdf


生活保護の利用条件を満たさない場合には、貸付編(Ⅱ)、住宅維持編(Ⅲ)などを見て別の制度の活用をご検討ください。

Q2 生活保護はどんな場合に利用できますか?【活用マニュアルQ1】
 国が定めている「最低生活費(生活保護基準)」以下の収入しかなく、手持金や貯金などもわずかになり、生活に困窮している状況であれば誰でも生活保護制度を利用できます。
最低生活費は、地域や年齢で細かく決められています。神戸公務員ボランティアのHPで生活保護費の自動計算ソフト(エクセルファイル)がダウンロードできるので、ご自分の家庭の最低生活費を計算してみてください。

http://kobekoubora.life.coocan.jp/saiteiseikatuhikeisan.html



Q3 福祉事務所で保護を断られたらあきらめるしかありませんか?【活用マニュアルQ3】
 不当に追い返されている可能性もあるので、必ずしも、あきらめる必要はありません。申請権があるので、申請書を出してもらい、「申請」しましょう。あるいは、各地の相談窓口に相談をして助言を受けたり(相談料は無料です)、窓口に同行してもらいましょう。

ホームレスである(Q6)、生命保険の解約返戻金がある(Q12)、家賃が高い(Q14)、持ち家がある(Q15・16)、 借金がある(Q17)、車がある(Q 18)などの理由で 、窓口での申請を受け付けてもらえなかった場合には、あきらめず、下記の各地の相談窓口に相談をしてください。弁護士等が、無料で、あなたの事情を聴き取り、意見書を作成し、窓口に同行して、「申請」手続きを支援してもらえる場合があります。

【各地の相談窓口】
 東北 東北生活保護利用支援ネットワーク

Tel. 022-721-7011 (月・水・金 13時〜16時、祝日休業)


 関東(東京含む)・甲信越・北海道

首都圏生活保護支援法律家ネットワーク
http://seiho-lawyer.net/
Tel. 048-866-5040 (月〜金 10時〜17時、祝日休業)


 東京 認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

http://www.npomoyai.or.jp/
Tel. 03-6265-0137 (火 12時〜18時、金11時〜17時のみ)
面談相談:毎週火 11時~18時 もやい事務所にて



 北陸 北陸生活保護支援ネットワーク福井(福井・富山) 

Tel. 0776-25-5339 (火 18時〜20時、年末年始、祝日休業)


北陸生活保護支援ネットワーク石川

Tel. 076-204-9366(火 13時~15時・18時~20時、年末年始、祝日休業)


 静岡 生活保護支援ネットワーク静岡

Tel. 054-636-8611(平日 9時~17時)


 東海 東海生活保護利用支援ネットワーク (愛知、岐阜、三重)

Tel. 052-911-9290 (火・木 13時〜16時、祝日休業)


 近畿 近畿生活保護支援法律家ネットワーク 

Tel. 078-371-5118 (月・木 13時〜16時、祝日休業)


 中国 生活保護支援中国ネットワーク

https://seiho-chugoku.net/
Tel. 0120-968-905 (月〜金 9時半〜17時半、祝日休業)


 四国 四国生活保護支援法律家ネットワーク

Tel. 050-3473-7973 (月〜金 10時〜17時、祝日休業)


 九州 ・沖縄 生活保護支援九州・沖縄ネットワーク

Tel. 070-9123-1114 (月・火・木 13時〜16時 祝日休業)


 全国青年司法書士協議会 生活保護相談ダイヤル

Tel. 03-3351-4911 (月 13時〜15時、祝日休業)


Q4 申請はどこにするのですか?【活用マニュアルQ2】
 住民票に関係なく、今あなたがいる場所の市役所などの生活保護担当部署(福祉事務所)に申請できます。
「居住地」がある人は「居住地」、「居住地」がない人(ホームレス状態、一時的居候状態)は「現在地」を管轄する福祉事務所が実施責任を負います(生活保護法19条1項)。但し、外国籍の方の場合は、Q5をお読みください。
Q5 外国籍でも生活保護を利用することはできますか?【活用マニュアルQ40】
 外国籍の場合は、①「永住者」・「定住者」・「永住者の配偶者等」・「日本人の配偶者等」のいずれかの在留資格を有する方、②「特別永住者」、③入管法による難民認定を受けた方であれば生活保護を利用できます(①~③に当てはまらない外国人でも、在留資格が「特定活動」で活動に制限のない場合等は、自治体から厚労省に個別に照会することで適用される場合があります)。
 申請は在留カードまたは特別永住者証明書に記載された住居地を管轄する福祉事務所に行います。実際の居住地が住民登録地と違う場合は、生活保護申請と同時に変更するようにしてください。
 DV被害者等で住所変更届ができない場合は、その理由を福祉事務所に説明してください。住所変更ができない状態にあると認められた場合は実際の居住地で保護が適用されることになります。
Q6 ホームレス状態でも生活保護は利用できますか?【活用マニュアルQ35・36】
 「現在地」(今いる場所)の福祉事務所で申請できます。通常の生活費とは別に、アパート暮らしを始めるための敷金や生活用品代も支給されます。保護申請後、開始決定前にカプセルホテル等を利用した場合、その後に移った一般住宅の家賃とは別に一定の範囲で宿泊料等を支給してもらうこともできます(Q1※Ⅰ-2の通知3(3)参照)。
Q7 役所で、「住む所がない人は施設に入ることになっている」と言われたのですが?【活用マニュアルQ36】
 生活保護法30条1項は「居宅保護の原則」を定めているので、本人の希望する場所で暮らすことができます。各種の支援を受けながらでも居宅で生活することができる人は、施設を断って最初からアパート暮らしを始めることもできます。
 国も、今回、自治体に対し、一時生活支援事業のシェルター等に加え、協力してくれるビジネスホテルや旅館等を開拓し宿泊場所の確保を進めること、必要に応じて衣食の提供をすること、DV・家庭環境の破綻等の課題を抱える者については自立相談支援機関へつなぐこと、無料低額宿泊所当への入所を経ることなく居宅での保護が可能な者についてはアパート等の居宅入居を指導するよう通知しています。

※Ⅰ-4 令和2年4月14日付事務連絡「生活困窮者自立支援法における一時生活支援事業の活用等について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000621870.pdf


 さらに、国は、感染拡大防止の観点から、「今般の事態に関する対応に当たって新たに居住が不安定な方の居所の提供、紹介等が必要となった場合には、やむを得ない場合を除き個室の利用を促すこと」という通知も追加して出しています。

※Ⅰ-5 令和2年4月17日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言に係る対応に当たっての留意点について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000622762.pdf


Q8 一時的に親戚・知人宅に居候しているのですが、私だけが生活保護を利用できますか?【活用マニュアルQ32】
 居候先と「生計」(家計)が別であれば、別世帯としてあなただけで生活保護を利用できます。Q1※Ⅰ-2の通知(4)で参照されている平成21年12月25日付保護課長通知(3)も、「一時的に同居していることをもって、知人と申請者を同一世帯として機械的に認定することは適当ではない」として「適切な世帯の認定」を求めています。
 保護が開始されると、居候を解消するための新住居の敷金等の転居費用も出してもらうことができます。


Q9 申請して生活保護が開始されるまでどれ位かかりますか? 少しでも早くしてもらいたいのですが。【活用マニュアルQ14】
 申請のあった日から原則として14日以内、特別な理由がある場合には30日以内に書面で通知されることになっています。Q1※Ⅰ-2の省通知(3(2))も、「保護の決定に当たっては、申請者の窮状にかんがみて、可能な限り速やかに行うよう努めること」としていることを示して、より「速やかな保護決定」を求めましょう。
Q10 現金を持っていると生活保護は利用できないのですか?【活用マニュアルQ16】
 現金や預金の合計がQ2の最低生活費以下であれば利用できます。ただし基準の半額を超える分は最初の保護費から差し引かれるので、手持ち金が基準の半額を切ってから申請すると良いでしょう。
Q11 給料や年金などの収入があると生活保護は利用できませんか?【活用マニュアルQ16】
 年金や給料などの収入があっても最低生活費未満であれば最低生活費と収入の差額分が支給されます。保護を受けられるかどうかの判定の際には、医療費や介護費がかかる場合はその分もプラスして判定されます。
Q12 生命保険は解約しなくてはいけないのですか?【活用マニュアルQ28】
 解約したときの払戻金がQ2の最低生活費のおおむね3か月以下で、保険料が最低生活費の1割程度以下であれば解約しなくても良いことになっています。貯蓄性の高い保険などについては解約して払戻金を生活費に当てることを求められます。
ただし、2021年1月、上記に該当せず本来解約を要する保険を有している場合でも,「まずは概ね6か月を目途に処分指導を留保することとして差し支えない」とする事務連絡を発出しました。この通知は解約返戻金の額に限定を付しておらず、かなり大きな運用改善です。
 ※Ⅰ-10 令和3年1月29日付事務連絡「保護の要否判定等における弾力的な運用について」

https://www.mhlw.go.jp/content/000731221.pdf


Q13 学資保険を続けることはできますか?【活用マニュアルQ29】
 解約返戻金が50万円以下である場合は続けることができます。また生活保護を利用し始めた後で新たに加入することもできます。
 但し、Q12で述べたとおり、※Ⅰ-10の通知で、上記に該当しない保険も「まずは概ね6か月を目途に処分指導を留保することとして差し支えない」とされました。
Q14 家賃が高いと生活保護は利用できないのですか?【活用マニュアルQ31】
 支給される家賃額(住宅扶助費)に上限がありますが利用できます。保護が始まったあとに低額な家賃の住居に転宅するように言われることがありますが、その場合は転居に必要な敷金等も支給されます。家賃と住宅扶助費の差額が小さくて生活費から持ち出しても支障がない場合には転居せずに住み続けることもできます。
Q15 持ち家があるのですが生活保護は利用できますか?【活用マニュアルQ24】
 住むための家や活用している農地などは問題ありません。ただし資産価値が大きい土地や豪邸は処分して生活費に当てることを求められることがあります。
 国も、居住用不動産は原則保有を認めることや、処分指導を行うかどうかをケース診断会議に付する目安額を示した上で、「組織的な検討を行わずに判断することのないよう」注意喚起しています。

※Ⅰ-9 令和2年9月11日付事務連絡「現下の状況における適切な保護の実施について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000671433.pdf


Q16 住宅ローンが残っていても大丈夫ですか?【活用マニュアルQ26】
 原則として生活保護費で住宅ローンの支払いをすることはできません。例外的にローンの残金が少ない場合はローンの支払いを認められる事があります。住宅ローンが払えず家を手放さざるを得ない状態の場合も生活保護を利用できます。
Q17 借金がありますが生活保護は利用できますか?【活用マニュアルQ21】
 利用できます。ただし、保護費から借金を返済することは望ましくありませんので、法律家に相談して任意整理や自己破産などで借金を整理しましょう。法律家の費用は、「法テラス」で立て替えてもらい分割で払う制度(法律扶助)もあり、生活保護利用者については、分割払いも猶予・免除してもらえます。
Q18 失業や自宅待機による減収で生活保護を利用する場合、自動車は処分しなければなりませんか?【活用マニュアルQ23】
 自動車は保有も運転も原則として制限されているのが現状ですが、①概ね6か月以内(さらに6か月延長可)に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる場合には通勤用自動車の処分指導はされません。
国は、今回、Q1Ⅰ-3の通知で、「緊急事態措置期間経過後に収入が増加すると考えられる場合で、通勤用自動車を保有しているときは」、これに準じることとし、処分指導を留保する場合や期間を柔軟に判断することを求めていましたが、コロナ禍の長期化に伴い、令和2年4月7日以降に保護を開始した世帯については、保護開始から概ね1年を経過した場合であっても、処分指導を行わなくてもよいとの通知が出されました。

※Ⅰ-11 令和3年4月6日付保護課長通知「新型コロナウイルス感染症拡大の影響下の失業等により就労を中断している場合の通勤用自動車の取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/000766136.pdf


Q19 Q18以外に自動車の保有が認められる場合がありますか?バイクの保有はどうですか?【活用マニュアルQ23】
 Q18の場合以外にも、②障害者の通院・通学等に使う場合、③山間僻地など自動車を使わずに通勤することが著しく困難な地域に住んでいる場合、④保育所の送迎に使う場合、⑤事業用の場合などには自動車を持ったまま生活保護を受けることができます。
 総排気量125cc以下のオートバイ及び原動機付自転車については、自動車損害賠償保険及び任意保険に加入しており、最低生活維持に必要な場合は保有が認められます。総排気量125ccを超えるオートバイは、自動車と同様の扱いとなります。
Q20 65歳未満の若い人は生活保護は利用できないのですか?【活用マニュアルQ20】
 年齢制限はありません。働ける健康状態であっても、仕事を探しているのに就職できない場合や、働いていても収入が生活保護基準に満たない場合は生活保護を利用することが出来ます。
 そして、国は、Q1Ⅰ-3の通知で、「緊急事態措置の状況の中で新たに就労の場を探すこと自体が困難であるなどのやむを得ない場合」には、緊急事態措置期間中、働く能力を活用できているかの判断を留保できるとしています。
Q21 自営業をしていますが、廃業せずに生活保護を利用できますか?
 できます。国も、Q1Ⅰ-3の通知で、「臨時又は不特定就労収入、自営収入等の減少により要保護状態となった場合」、「緊急事態措置期間経過後に収入が増加すると考えられる場合には、増収に向けた転職指導等は行わなくて差し支えない」とし、「自営に必要な店舗、機械器具類の資産」(自動車も含まれます)は保有を認めるよう指示しています。これは今回の事態を受けて自営業者に対する生活保護の積極的適用を促す趣旨であると考えられます。
Q22 親族に連絡すると言われましたが、どういうことですか?【活用マニュアルQ30】
 生活保護を申請すると福祉事務所は、親や兄弟に「○○さんが生活保護の申請をしましたが、経済的な援助ができますか?」と問い合わせ(扶養照会)をします。親や兄弟は出来る範囲で援助すれば良いことになっており、照会を受けた親族は、金銭的に余裕がない場合、援助を断ることができます。
Q23 「扶養照会」を避けて、元夫や親族に居場所を知られない方法はありますか?【活用マニュアルQ30】
 「扶養義務の履行が期待できない者」に対しては扶養照会をしなくてよいことになっています。具体的には、扶養義務者が、生活保護利用者、福祉施設入所者、長期入院患者、働いてない人、未成年者、70歳以上の高齢者、著しく関係不良の者、10年間音信不通の者等の場合です。その扶養義務者から虐待・DVを受けたなどの場合は、むしろ連絡してはなりません。
 国も、Q15Ⅰ-9の通知で、上記のような場合は「扶養の可能性が期待できないもの」として扶養義務者に対する直接照会をしなくて良いことについて注意喚起していました。さらに、この度、生活保護手帳別冊問答集を改正して、その考え方と判断の手順を改めて整理し明確にするとともに、「要保護者が扶養照会を拒んでいる場合等においては、その理由について特に丁寧に聞き取りを行い」、対象となる扶養義務者が「扶養義務履行が期待できない者」に該当するか否かという観点から検討を行うべきであるとして、初めて申請者の意思を尊重する姿勢を示しました。

※Ⅰ-12 令和3年3月30日事務連絡「『生活保護問答集について』の一部改正について」
http://665257b062be733.lolipop.jp/0303301.pdf


 この運用改善を活かすには、扶養照会されたくない人は、その意思と具体的理由を記載した以下の「申出書」に予め記入して、保護の申請時に提出すると良いでしょう。
※ 書式「扶養照会に関する申出書」
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-401.html

Q24 生活保護利用世帯が「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援給付金」(1世帯7万円など)や「低所得者世帯への支援給付金」(1世帯10万円など)を受給した場合、収入認定されて保護費を減らされてしまいますか? その他、各自治体が独自に実施する給付金はどうですか?【活用マニュアルQ49】
 「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援給付金」(1世帯7万円など)や「低所得者世帯への支援給付金」(1世帯10万円など)については、全額収入認定の対象となりません。

自治体が独自に実施する給付金については、以下の通りの扱いとなります。

ア 特別定額給付金と同様の趣旨・目的のもの(市民全体に幅広く支給されるもの)
⇒全額収入認定除外

イ 災害等によって損害を受けた見舞金と同様の趣旨・目的のもの
⇒「自立更生計画」を立て自立更生に資する経費と認められた額が収入認定除外

ウ 子育て世帯、ひとり親世帯、障害者、高齢者等の福祉を増進する趣旨・目的のもの
⇒8000円までが収入認定除外

イの自立更生経費としては、マスク・消毒液等の防疫商品や、オンライン就労・学習に対応するためのPC関連機器の購入のほか、その他の耐久消費財の買替費用等、その世帯の自立に資する経費が幅広く計上され得ます。持続化給付金等の休業補償的意味合いのある給付もイに該当すると考えられますが、その場合、店舗の家賃・光熱費等事業維持のための経費も自立更生費に計上できるでしょう。

※Ⅰ-6 令和2年5月1日付「特別定額給付金及び令和2年度子育て世帯への臨時特別給付金の生活保護制度上の取扱いについて(通知)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000627228.pdf



Q25 生活保護利用世帯の子どもが通学する学校で、ICT(情報通信技術)を活用したオンライン教育が始まりました。これに対応する費用を保護費から支給してもらえますか?
 オンライン教育に対応するために必要な通信費、モバイルルーター等の通信機器の購入又はレンタルに係る費用について、教育扶助(小中学校生)又は生業扶助(高校生)の「教材代」として支給してもらえます。

※Ⅰ-7 令和2年5月15日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症対策のための小学校等における臨時休業に伴う生活保護業務における教材代の取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/000630849.pdf
別添2 https://www.mhlw.go.jp/content/000630851.pdf


Ⅰ´ 求職者支援制度
(求職者支援制度)
Q1 給付金を受給しながら職業訓練を受けられる制度があると聞きましたが、どんな制度でしょうか?
 求職者支援制度は、月10万円の給付金を受給しながら、無料の職業訓練を受けられる制度です。また、訓練前後を通じてハローワークが求職活動を支援してくれます。
 利用要件や支給額は以下のとおりです。

【訓練受講の要件】
① ハローワークに求職の申込みをしていること
雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
③ 労働の意思と能力があること
④ 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと

【訓練対象者の追加(2023年4月~)】
再就職や転職を目指して訓練を受講する方に加えて、働きながら訓練を受けて社内での正社員転換などを目指す方や、今の仕事に役立つ能力を身に付けようとする方なども訓練の対象となります(今の仕事を続けながらスキルアップを目指す方も訓練の対象となります)。ただし、雇用保険被保険者の方は対象となりません。

【給付金の支給要件】
本人収入が月8万円以下
②世帯全体の収入が月30万円以下
③世帯全体の金融資産が300万円以下
④現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
⑤全ての訓練実施日に出席する(やむを得ないにより欠席し、証明できる場合(育児・介護を行う者や求職者支援訓練の基礎コースを受講する者については証明ができない場合を含める)であっても、8割以上出席する)
⑥世帯の中で同時にこの給付金を受給している者がいない
⑦過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金受給していない
⑧過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない
※①又は②を満たさない場合であっても、本人収入が月12万円以下かつ世帯収入が月34万円以下で③~⑧を満たす場合は、訓練施設への交通費(下記「通所手当」)を受給することが可能です。

【訓練期間】 2か月~6か月
※ 訓練期間や訓練時間に配慮が必要な方を対象とした訓練コースは2週間から(2024年3月末までの特例措置)

【職業訓練受講給付金の内容と支給額】
① 訓練受講手当          月10万円
② 通所手当(定期乗車券等)    月上限42500円
③ 寄宿手当(家族と別居する場合) 月1万700円

【相談・申込先】ハローワーク

※Ⅰ´-1 求職者支援制度パンフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/001073991.pdf


(住居確保給付金との併給)
Q2 職業訓練受講給付金と住居確保給付金の併給は認められますか?
 
以前は併給が認められず、職業訓練受講給付金を受給すると住居確保給付金の支給は停止されていました。しかし、2023年4月1日からは、職業訓練受講給付金と住居確保給付金の併給が可能とされました。
Ⅱ 生活福祉資金の特例貸付編
(緊急小口資金の特例貸付)
Q1 収入が減り、光熱費の支払いもままなりません。緊急・一時的にお金を貸してもらう制度はないでしょうか?
 新型コロナウイルスの影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯(主に休業した方)については、無利子で、以下の内容の「緊急小口資金」を借りることができます。

【申込先】お住まいの市町村社会福祉協議会

【貸付上限】20万円以内

※「休業等による収入の減少等で生活費用の貸付が必要な場合」も対象になったので、多くの場合20万円まで借りることができます。


【据置期間】1年以内。但し、令和4年12月末までは償還が開始しないものとされました。また、令和4年4月以降に申請した緊急小口資金については、令和5年12月末まで償還が開始しないものとされました(※Ⅱ―3)。

【償還期限】2年以内。但し、令和3年度又は令和4年度の住民税非課税世帯は一括免除されます(ただし、令和4年4月以降の申請分については、令和5年度の住民税非課税世帯が一括免除されます)。また、償還時においてなお所得の減少が続く住民税非課税世帯については償還免除ができるとされています(詳細はQ5参照)。

 特に急を要する場合には、①市町村社協は、実印や印鑑証明を求めず、住民票等の必要書類は事後提出で対応し、②都道府県社協は、審査・決定事務は後に回し、申込書の到着と同時に送金処理を行うことで、申込時の翌々営業日までに送金が行われるようにするとされています。

※Ⅱ-1 令和2年4月27日付プレスリリース
https://www.kanagawadoken-atsugi.jp/topics/wp-content/uploads/2020/04/944a3794c5b5fc461960272df251dd10.pdf


※Ⅱ-2 令和2年3月18日付事務連絡「緊急小口資金等の特例措置による貸付金の送金までに係る適切な支援について(周知)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000611265.pdf


※Ⅱ-3 令和4年2月25日付プレスリリース「緊急小口資金等の特例貸付、住居確保給付金及び新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金の申請期間の延長等について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12003000/000857235.pdf


(総合支援資金の特例貸付)
Q2 新型コロナウイルスの影響で失業し、当面の生活費の目途がありません。しばらくの間、一定の生活費を貸してもらう制度はありませんか?
 新型コロナウイルスの影響を受け、収入の減少や失業等により日常生活の維持が困難となっている世帯(主に失業した方)については、無利子で、以下の「総合支援資金(生活支援費)」を借りることができます。(※Ⅱ-1参照)

【申込先】お住まいの市町村社会福祉協議会

【貸付上限】2人以上:月20万円以内 単身:月15万円以内

【貸付期間】

1か月ごとの分割交付で原則3か月以内。延長貸付(最大3か月)1回。自立相談支援機関の相談支援を受けることを要件として最大3か月の再貸付。但し、「延長貸付」については、令和3年3月末までに初回貸付を申請した世帯をもって終了し、「再貸付」の申請期間も令和3年12月末をもって終了しました。その結果、令和4年1月以降に特例貸付を申請した場合の最大貸付額は、緊急小口資金と総合支援資金(初回貸付)を合わせて80万円となります。


【据置期間】

初回貸付は1年以内、延長貸付は2年以内、再貸付は3年以内。
初回貸付は、令和4年12月末までは償還が開始しないものとされています(ただし、令和4年4月に申請した初回貸付については、令和5年12月末まで償還が開始しないものとされました)(※Ⅱ-3)。
 延長貸付は、令和5年12月末まで償還が開始しないものとされており、再貸付は、令和6年12月末まで償還が開始しないものとされています。


【償還期限】

10年以内。但し、償還時においてなお所得の減少が続く住民税非課税世帯については償還免除ができるとされていますが、具体的な制度設計はなお検討中です(詳細はQ5参照)。


※Ⅱ-5 令和3年6月1日付社会・援護局長通知「『生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金等の特例貸付の実施について』の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000788578.pdf


(緊急小口資金と総合支援資金の併用)
Q3 緊急小口資金と総合支援資金(合わせて「特例貸付」)の両方を利用することはできますか?また、保証人がいなくても大丈夫ですか?
 両方同時に貸付を受けることができます。また、いずれも連帯保証人は不要です。

(特例貸付の受付期間等)
Q4 特例貸付はいつまで受け付けてもらえますか? 貸付が終わった後はどうすればいいですか?
A 受付期間は、2020年12月8日の事務連絡で2021年3月末まで延長され、同年3月19日の局長通知で同年6月末まで延長され、その後も事務連絡により延長が繰り返されていましたが、2022年9月末で受付終了しました。
 貸付が終了した方に対しては、必要な支援が途切れないよう、求職者支援制度や生活保護制度の利用につなぐこととされています。

(償還免除)
Q5 償還免除の対象となっている「償還時に所得の減少が続く住民税非課税世帯」とは、どのように判断されますか。
A 償還免除の判断は、資金種類(①緊急小口資金、②総合支援資金の初回貸付分、③同資金の延長貸付分、④同資金の再貸付分)ごとに一括して行い、①と②については令和3年度又は令和4年度の住民税非課税世帯(ただし、令和4年4月以降の新規申請分については令和5年度の住民税非課税世帯)、③については令和5年度の住民税非課税世帯、④については令和6年度の住民税非課税世帯であれば、それぞれ一括して償還免除とされます。
 借受人と世帯主が住民税非課税であれば償還免除の対象となり、そのほかの世帯員の課税状況は問いません(なお、借受人がDVのため避難していて世帯主の所得証明書が取得できない場合など、借受人のみ住民税非課税であれば足りる一定の例外も存在します)。
また、償還開始時に償還免除の要件を満たさなかった場合でも、償還開始以降に、借受人及び世帯主が住民税非課税となった場合には、償還免除申請すれば、それ以降の償還計画の対象となる残債務は一括して免除されます。

 詳細は「別紙」をご参照ください。

※Ⅱ-4 令和3年3月16日付事務連絡「緊急小口資金等の特例貸付の申請受付期限の延長及び償還免除に関する取扱について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000755463.pdf

※厚生労働省のホームページ(生活福祉資金の特例貸付)
https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/index.html

※「緊急小口資金等の特例貸付」返済免除について(リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001019894.pdf
 
※生活福祉資金貸付相談コールセンター
0120-46-1999(受付時間 平日のみ 9:00~17:00)


(償還猶予)
Q6 特例貸付の償還猶予は、どのような場合に受けることができますか。
A 借受人又は借受人の属する世帯が以下の①から⑥のいずれかに該当する場合で、償還が著しく困難になったと認められるときは、借受人の申請に基づき、都道府県社会福祉協議会会長は、貸付元利金の償還を猶予することができるとされています。
 なお、特例貸付の償還猶予の申請は、償還開始前から可能であり、償還猶予の適用に当たっては、将来的に償還可能性が確実に見込める借受人だけを対象とはせず、特例貸付の趣旨にかんがみ、猶予後の償還可能性を厳密に求めることなく、相談時点で償還困難な状況がある場合には積極的な対応が求められています。

① 地震や火災等に被災した場合
② 病気療養中の場合
③ 失業又は離職中の場合
④ 奨学金や事業者向けのローン(ただし、住宅ローンは除かれます)など、他の借入金の償還猶予を受けている場合
⑤ 自立相談支援機関に相談が行われた結果、当該機関において、借受人の生活状況から償還猶予を行うことが適当であるとの意見が提出された場合
⑥ 都道府県社会福祉協議会会長が上記と同程度の事由によって償還することが著しく困難であると認める場合(→Q7参照)

特例貸付における償還猶予期間は原則1年間であり、償還猶予が認められた借受人は、猶予期間中、可能な限り、生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の支援を受けることになります。
また、償還免除に該当する場合は、猶予期間中でも償還免除の適用を検討することとされています。

※緊急小口資金等の特例貸付の借受人へのフォローアップ支援について
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001019893.pdf(3~4頁参照)
(償還猶予)
Q7 特例貸付における償還猶予について、上記⑥「都道府県社会福祉協議会会長が上記と同程度の事由によって償還することが著しく困難であると認める場合」も対象とされていますが、具体的にはどのように判断されますか。
A 例えば、以下の事由を参考に個別の状況に応じて柔軟に判断することとされています。

・ 収入減少や不安定就労によって生活が安定しない(生活困窮者自立支援制度に基づく住居確保給付金の取扱いを参考に、直近3か月の収入がおおむね住民税非課税相当となっているかを目安に判断する等)
・ DV等の被害を受けて避難している。
・ 多重の債務があり、債務整理を行う可能性がある。
・ 公共料金等の滞納が続いており、生活に困窮している。 等

上記「公共料金等の滞納が続いており、生活に困窮している」については、税金や水道使用料等の滞納も含まれますので、滞納関係の書類を示して猶予申請することが考えられます。

※生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集(vol.28)
https://www.mhlw.go.jp/content/001155640.pdf(32頁参照)

※緊急小口資金等の特例貸付の借受人へのフォローアップ支援について
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001019893.pdf(3~4頁参照)
(猶予期間中の職権による償還免除)
Q8 償還猶予の期間中には、償還免除を受けられないのでしょうか。
A 都道府県社会福祉協議会は、特例貸付の償還猶予を受けている借受人について、「償還の見込みがないと判断できる場合」には、職権により償還免除を行うことができます。
  上記「償還の見込みがないと判断できる場合」については、あくまで個々の借受人世帯の状況を総合的に考慮して判断されることとなります。下記の問答集(vol.28)で示されている具体例は下記のとおりです(あくまで例示であることに注意して下さい)。

相談支援や見守り支援の対象となる借受人について
 そもそも就労・増収や家計改善等の支援を行うことが本人に無理を強いることになるなど、極めて困難な状況にある借受人が、これに該当します。その他、以下のような事情があり、当面の間、支援の効果が現れないことが想定される場合も該当します。
・ 借受人自身のやむを得ない事情(例:精神疾患等に罹患している、本人に障害の疑いがある、ひきこもり状態にある等)
・ 借受人世帯のやむを得ない事情(例:看護や介護の必要がある、多子世帯である、 離婚や DV により住む場所を失う等)

 上記のような借受人について、猶予期間中、相談支援や見守り支援を行ったものの、当初の見立てどおり、状況が改善する見込みがなく、借受人が今後の生活を営むためには少なくとも償還免除を行うことが必要不可欠であるとき
 →上記「償還の見込みがないと判断できる場合」に該当します。

自立相談支援機関の支援の対象となる借受人について
ア 就労・増収に向けた活動に取り組んだものの、以下のような事情にあり、当面の間、支援の効果が現れないことが明らかな場合(支援の途中に以下のような事情が生じた場合も含みます) →上記「償還の見込みがないと判断できる場合」に該当します。
・ 借受人自身のやむを得ない事情(例:精神疾患等に罹患している、本人に障害の疑いがある、ひきこもり状態にある等)
・ 借受人世帯のやむを得ない事情(例:看護や介護の必要がある、多子世帯である、離婚やDVにより住む場所を失う等)

イ 家計改善を図る取組を行ったものの、生活再建につながる程度の支出の改善等の余地がない場合 →上記「償還の見込みがないと判断できる場合」に該当します。
※必要な範囲の生命保険や医療保険、学資保険等まで見直す必要はありません。また、乗用車など合理的な生活を送るために必要な財産を処分する必要もありません。
※ 借受人の支出の改善等の可能性については、猶予期間中に自立相談支援機関等で実施された家計改善支援の中で検討されていれば、償還見込みの有無を判断する際に再度の検討を行う必要はないとされています。

ウ 必要な支援を受けながら生活再建に向けて取り組み、一定の効果が現れたものの、他の債務の償還を行っている場合や、既に生活費の節約等により何とか生活を維持している場合等、償還を行うことにより、当面の間、生活に重大な支障が生じることが明らかな場合 →上記「償還の見込みがないと判断できる場合」に該当します。

※生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集(vol.28)
https://www.mhlw.go.jp/content/001155640.pdf(38~39頁、40~41頁参照)

(猶予期間終了時の意見書提出による償還免除)
Q9 償還猶予の終了時にも特例貸付の償還に困っている場合、償還免除を受けられないでしょうか。
A 特例貸付における償還猶予期間は原則1年間であり、償還猶予が認められた借受人は、猶予期間中、可能な限り、生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の支援を受けることになります。
 そして、市区町村社会福祉協議会や自立相談支援機関では、猶予期間が終了する時点で、具体的な支援状況を踏まえて、

・償還猶予適用時に償還が困難であった原因が解消されたか
・今後、償還を行っても生活できるか
・猶予期間中、借受人本人が個別支援計画に沿って増収を目指したり支出を見直そうとしたりするなど、生活再建に向けて誠実に取り組んできたか

など借受人やその世帯の状況を総合的に考慮し、猶予期間終了後に償還を行っても自立した生活が可能かどうか検討することとされています。

 検討の結果、これ以上の増収や支出の見直しが困難であり、今後も償還が見込めないと判断される場合には、当該借受人への支援の実施状況、その時点における生活状況や償還が困難な状況等を記載した意見書を都道府県社会福祉協議会に提出することとされています。なお、都道府県社会福祉協議会が見守り支援を行っている場合は、意見書の提出は不要です。
ただし、償還免除の意見書を提出するためには、猶予期間が終了する時点で、少なくとも6か月以上、市区町村社会福祉協議会等や自立相談支援機関が借受人の支援を行っていることが必要です(6か月以上の支援が行われていない場合にも、意見書の提出により、償還猶予期間の延長はできます)。

 都道府県社会福祉協議会では、市区町村社会福祉協議会や自立相談支援機関から提出された意見書を踏まえ、当該借受人について、償還の見込みがないと判断できる場合には、会長の職権により償還免除を行うことができます。
具体的には、「12か月以上の償還が遅延している借受人について、償還指導を実施した上で、なお償還の見込みがない場合」とみなすことにより、償還免除が認められます。

※生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集(vol.28)
https://www.mhlw.go.jp/content/001155640.pdf(36~38頁参照)

(フォローアップ支援など)
Q10 特例貸付の償還に困っている方について、償還猶予や償還免除以外の支援方法はないでしょうか。
A 破産や民事再生等で債務を消滅させたり、縮減したりすることが考えられます。
また、厚生労働省からは「償還免除に至らないものの償還が困難な借受人へのフォローアップ支援」も要請されており、必要に応じて、償還計画の変更や少額返済を認めるなど、個々の状況に配慮した柔軟な判断・対応も求められていますので、「償還計画の変更」や「少額返済」の実現を支援することも考えられるでしょう。

※緊急小口資金等の特例貸付の借受人へのフォローアップ支援について
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001019893.pdf(3~4頁参照)
(本則の生活福祉資金)
Q11 生活福祉資金の特例貸付は終了しましたが、本則の生活福祉資金(通常貸付)はどのような制度になっていますか。
A 本則の生活福祉資金(通常貸付)は低所得者世帯(住民税非課税程度)、障害者世帯(各種手帳の交付を受けた者の属する世帯)、高齢者世帯(65歳以上の属する世帯)を貸付対象としており、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金等の種類があります。貸付条件や貸付限度額、(福祉資金のうち福祉費について)貸付上限目安額等の詳細については、下記※をご参照ください。

※生活福祉資金貸付条件等一覧(厚生労働省のホームページ) 
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsu-fukushi-shikin1/kashitsukejoken.html

※生活福祉資金(全国社会福祉協議会のホームページ)
https://www.shakyo.or.jp/guide/shikin/seikatsu/index.html

※生活福祉資金一覧(全国社会福祉協議会)
https://www.shakyo.or.jp/guide/shikin/seikatsu/pdf/ichiran_20160128.pdf

※福祉資金福祉費対象経費の貸付上限目安額等(全国社会福祉協議会)
https://www.shakyo.or.jp/guide/shikin/seikatsu/pdf/meyasu_20150331.pdf


Ⅲ 住宅維持・借金整理編
(住居確保給付金:支給要件)
Q1 失業して家賃が支払えなくなりました。家賃を補助してくれる制度はありますか?
 「住居確保給付金」の利用を検討しましょう。

【申請先】各自治体の福祉担当部署。自治体によって異なりますので、各自治体の自立相談支援機関(生活困窮者の相談窓口)に相談してください。

※Ⅲ-1 自立相談支援機関相談窓口一覧
https://minna-tunagaru.jp/ichiran/


【支給要件】
① 主たる生計維持者が、(1)離職・廃業後2年以内であるか、(2)当該個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合
(1)の要件は、要は「2年以内に離職・廃業」していればいいので、2年以内に離職・廃業後、現在は再就職して働いていてもOKです。2年以内にWワークで1日でも働いて辞める等していても、この要件は満たすので丁寧な聞き取りが必要です。
(2)の要件は、新型コロナ禍により2020年4月20日から改正されたもので、かなり多くの方が新たに対象となりました。「離職・廃業と同程度」とは、勤務日数等が全くなくなったことまでを求めるものではなく、週4~5日の仕事が2~3日になった場合等でもよいとされており(後記Ⅲ-6のQ2、Q4)、それを確認できる書類がない場合は申立書の活用も可能とされています(同Q3)。

※Ⅲ-2 令和2年4月20日付事務連絡「生活困窮者自立支援法施行規則の一部を改正する省令の施行について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000623242.pdf


② ハローワーク又は公的な無料職業紹介の窓口に求職の申込みを行い、原則として誠実かつ熱心に常用就職を目指した求職活動を行うこと。具体的には下記のとおりです。
(ア)(申請時等)公共職業安定所での求職申込み
(イ)自立相談支援機関への相談(月4回以上)
(ウ)公共職業安定所での職業相談等(月2回以上)
(エ)企業への応募等(原則、週1回)
(オ)プランに沿った活動(家計相談、自営業者向けセミナー等への参加など)

※(イ)の条件については、月1回以上「対面での相談」を行い、残りの回数は「電話等による相談」を行っても構いません。

※自営業の方で休業等から事業再生を目指される場合は、(ア)、(ウ)、(エ)の条件については、「経営相談先への相談申込み」、「経営相談先での経営相談」、「給与以外の業務上の収入を得る機会の増加を図る取組」の実施に代えても構いません。

※Ⅲ-3 住居確保給付金の求職活動等要件整理表
https://minna-tunagaru.jp/wp-content/uploads/2023/03/%EF%BC%88%E5%88%A5%E6%B7%BB%EF%BC%89%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%95%E5%B9%B4%EF%BC%94%E6%9C%88%E4%BB%A5%E9%99%8D%E3%81%AE%E4%BD%8F%E5%B1%85%E7%A2%BA%E4%BF%9D%E7%B5%A6%E4%BB%98%E9%87%91%E3%81%AE%E6%B1%82%E8%81%B7%E6%B4%BB%E5%8B%95%E7%AD%89%E8%A6%81%E4%BB%B6%E6%95%B4%E7%90%86%E8%A1%A8.pdf



※Ⅲ-6 住居確保給付金 住居確保給付金に関するQA(vol.11)
https://minna-tunagaru.jp/wp-content/uploads/2023/03/%EF%BC%88%E5%8F%82%E8%80%83%EF%BC%89vol.11%EF%BC%8820220426%E7%89%88%EF%BC%89%E4%BD%8F%E5%B1%85%E7%A2%BA%E4%BF%9D%E7%B5%A6%E4%BB%98%E9%87%91%E8%BF%BD%E5%8A%A0QA.pdf



③ 直近の月の世帯収入合計額が収入基準額(市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12(以下「基準額」)+住宅扶助基準額を上限とする家賃額)以下であること
「基準額」は地域によって違いますが、市町村民税非課税基準と同程度で生活保護基準よりも少し高いです。住宅扶助基準額は、後述の【支給額】を参照。


④ 申請者世帯の預貯金現金の合計額が一定額(③④の「基準額」×6か月分。ただし、最大100万円)以下であること
このように一定の預貯金があっても利用できる点は生活保護よりも良い点です。
 
※ 以前は、「65歳未満」という要件もありましたが、令和2年4月1日からこの要件がなくなりました。
また、「求職者支援法に基づく職業訓練受講給付金を受けていないこと」という要件もありましたが、令和5年4月1日からこの要件もなくなりました。

【支給額】生活保護の住宅扶助基準額を上限とする家賃額(地域によって異なります)

※Ⅲ-7 住宅扶助の限度額一覧表(2021年4月現在)
http://kobekoubora.life.coocan.jp/2021juutakufujo.pdf


【支給期間】原則3か月間(延長は2回まで最大9か月間)
 支給された給付金は賃貸住宅の賃貸人や不動産媒介事業者等へ、自治体から直接支払われます(ただし、クレジットカードで賃料を支払う場合には本人に支給されるなど、一定の例外があります)。

※Ⅲ-14 令和4年10月28日付事務連絡「住居確保給付金の特例措置の申請期間の延長及び新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金の取扱について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28851.html


※ 生活福祉資金貸付相談コールセンター 0120-46-1999
(受付時間 : 9:00~17:00 平日のみ)
(住居確保給付金:外国人・自営業者)
Q2 外国人、フリーランス・自営業者も支給対象となりますか。
 いわゆる国籍条項は存在せず、日本国籍の方と同様、収入要件や求職活動要件等の各種要件を満たす場合であれば支給対象となります(上記Ⅲ-6のQ10)。
 フリーランス・事業者の方も同様です。
(住居確保給付金:学生)
Q3 大学生等は支給対象にならないのですか。
 学生については、QA(vol4)のQ9に昼間の大学等の学生は対象にならないとの誤解を招く記載がありました。
しかし、学生であっても、「離職等前に主たる生計維持者」等の要件を満たせば当然対象になりますし、厚労省も批判を受けてQA(vol5)では記載を改めました。その後のQAにも「常用就職を目指す場合などは、支給対象者になる」と書かれていますが、アルバイト就労を目指す場合でもかまいません(上記Ⅲ―6のQA(vol.11)のQ11、Q9)。

なお、「世帯生計の維持者」とは単に生活費を自分で出しているだけでなく、税金や社会保険の扶養にも入っておらず自ら生計を立てている者をいうとされています。
(住居確保給付金:支給額の改善)
Q4 支給額を増額する方向での運用改善が行われたと聞きましたが、どのような改善ですか。
 以下のとおり、令和2年7月1日以降、生活保護の住宅扶助基準より高い家賃の家に住んでいる人にとって、支給額が増える計算式の改善がされました。

事例)A市の1人世帯住宅扶助基準(3.5万円)、収入基準額(7.8万円)
   実際の家賃額(5.5万円)、月額世帯収入(10万円)の場合・・・

【改正前】
 支給額=家賃額-(月の世帯の収入額-基準額)
 ※家賃額は、住宅扶助基準に基づく額を上限とする。
 事例では)3.5万円-(10万円-7.8万円)=1.3万円(支給額)

【改正後】
 支給額=実際の家賃額-(月の世帯の収入額-基準額)
 ※支給額は、住宅扶助基準に基づく額を上限とする。
 事例では)5.5万円-(10万円-7.8万円)=3.3万円(支給額が2万円アップ!)


※Ⅲ-8 令和2年7月3日事務連絡「生活困窮者住居確保給付金の支給額に係る生活困窮者自立支援法施行規則等の改正について」~イメージ図を見ると分かりやすいです。
https://www.mhlw.go.jp/content/000646522.pdf


※住居確保給付金の支給手続等に関する詳細

「生活困窮者自立支援制度に係る自治体事務マニュアル」(令和5年5月8日 第13版)(住居確保給付金の詳細はp50から)


https://minna-tunagaru.jp/wp-content/uploads/2023/05/%EF%BC%88%E6%94%B9%E6%AD%A3%E5%BE%8C%E5%85%A8%E6%96%87%EF%BC%89%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%EF%BC%88%E7%AC%AC13%E7%89%88%EF%BC%89.pdf

令和2年4月20日事務連絡の
別添1「住居確保給付金の支給に係る事務の手引き」
別添2「住居確保給付金の支給事務の取扱問答」

https://www.mhlw.go.jp/content/000623740.pdf


(家賃の滞納と立退き)
Q5 家賃を2か月分滞納したら、家賃保証会社の社員から月末までに退去するとの書面にサインするよう強く求められました。私が悪いので応じなければならないでしょうか?
 滞納家賃の支払義務はありますが、立ち退く義務があるわけではないので、応じてはなりません。
 家主が賃借人を強制的に立ち退かせるためには、賃貸借契約を解除し、明渡訴訟を起こして判決を得た上で強制執行を申し立てなければなりません。そして、賃貸借契約を解除するためには、信頼関係を破壊するような重大な契約違反が必要で(信頼関係破壊の法理)、2か月の滞納だけでは契約解除は認められません。法務省も「新型コロナウイルス感染症の影響により3か月程度の賃料不払が生じても」契約解除が認められないケースも多いと考えられる旨のQAを発表しています。

※Ⅲ-9 法務省「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた賃貸借契約の当事者の皆様へ」
http://www.moj.go.jp/content/001320302.pdf


仮に書面にサインしてしまっても、法律家に委任して交渉してもらえば状況を打開できることも多いです。
(住宅ローン等の滞納)
Q6 収入が減り、住宅ローンの返済が難しくなってきました。銀行は返済猶予や条件変更に応じてくれるでしょうか?
 金融庁からの要請等をふまえ、銀行等は、住宅ローン等の返済猶予や条件変更の相談に対して、迅速かつ柔軟に応じるものとされており、まず6か月間元金を据え置く等の事例を金融庁が取りまとめて公表しています。こうした事例を示して銀行等に相談してみましょう。


※Ⅲ-10 令和2年3月31日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた住宅ローン等の返済猶予等について(周知)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000617817.pdf

※Ⅲ-11 令和2年5月18日付「住宅ローン等でお困りの方に対する金融庁における支援策について(情報提供)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000631583.pdf


(コロナ版ローン減免制度の概要)
Q7 新たなローン減免制度が始まったと聞きましたが、どのような制度ですか?
 「自然災害による被災者の債務整理ガイドライン」の新型コロナウイルス特則(以下「コロナ版ローン減免制度」)が2020年12月1日から始まりました。

【対象者】
新型コロナウイルスの影響による失業・減収等で、債務の返済が困難になった個人・個人事業主

【対象債務】
2020年2月1日以前に負担していた債務に加え、同年10月30日までに新型コロナ対応のために負担した債務
※なお、「特例貸付」等を行っている都道府県社会福祉協議会も対象債権者です。

【メリット】
①特別定額給付金等の差押禁止財産に加え、一定の「自由財産(99万円プラスα)」を手元に残せる。
②信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録されないので、その後の借入の可能性がある。
③弁護士・不動産鑑定士などの専門家の支援が無償で受けられる。
④住宅を手放さずに、住宅ローン以外の債務だけ減免することができる。
⑤原則として保証人への請求はされない。

【概要】
債務者の財産価値の額から「自由財産」を差し引いた残額を一括又は分割で債権額に按分して支払う(差し引きがゼロであれば免除)。
弁護士会が紹介する弁護士の支援を受けて返済計画を立て、全債権者の同意が得られたら、簡易裁判所に特定調停を申し立て調停調書を作る。
(コロナ版ローン減免制度の利用法)
Q8 コロナ版ローン減免制度はどうすれば利用できますか?また、詳しいことはどこに聞けばいいですか?
 Q7で述べたメリットがあるので、破産や個人再生の前にコロナ版ローン減免制度の利用の可否を検討する必要があります。
制度を利用するためには、一番大口の債権者から「着手同意書」を発行してもらい(債務者が暴力団登録されている等明らかに制度を利用できない場合を除き発行しなければなりません)、これを弁護士会に提出して、登録支援弁護士を紹介してもらう必要があります。詳しい手続は最寄りの弁護士会に相談してください。

※Ⅲ-12 金融庁 説明チラシ
※Ⅲ-13 日弁連 説明チラシ(10のQ&A)
※ 各都道府県の弁護士会の相談窓口はコチラから検索(日本地図の都道府県をクリックしてください)
https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/shinsai/covid19-soudan.html
日弁連HPトップページの上の方「新型コロナウイルスでお悩みの方へ」→「個人の方」「全国の弁護士会の相談窓口のご案内」
https://www.nichibenren.or.jp/index.html


Ⅳ 税金・公共料金滞納編
Q1 上下水道、電気、ガス、電話料金NHK受信料、や公営住宅の家賃の支払いができません。待ってもらえるでしょうか?
 待ってもらえる場合があります。各種料金の支払いにお悩みの方は、まずは一度、契約している事業者に相談するようにして下さい。
 
 また、市営住宅等に入居中の方で、病気や解雇、倒産による失業などにより収入が著しく減少し、家賃の支払いが困難と認められる方については、家賃の減免や徴収猶予の対象となる場合があります。詳細については、お住まいの自治体担当課へお問い合わせください。
Q2 納税の猶予(徴収猶予)、換価の猶予の手続がわかりません。
 以下のホームページでご確認ください。なお、地方税についても、同様の手続で対応されることが通例です。

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan.htm


Q3 解雇(雇止め)で失業したのですが、前年所得を前提とする国民健康保険料が高くて払えません。
 世帯内に、離職した方で次の①又は②に該当する方がいる場合には,届出により,対象者の前年の給与所得を30/100とみなして,(1)国民健康保険料を計算するとともに,(2)高額療養費等の限度額区分の判定を行います。これは、コロナ禍とは関係ない制度です。

① 特定受給資格者
 倒産,解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた方
 (雇用保険受給資格者証の離職理由欄が11,12,21,22,31又は32の方)

② 特定理由離職者
 期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した方
 (雇用保険受給資格者証の離職理由欄が23,33又は34の方)

※ 離職日時点で,65歳以上の方は対象外
Q4 滞納している税金について相談をしたいのですが。
 全国対応できるのは、以下の4団体です。各地で個別に相談にあたっている団体も紹介します。

【全国対応可能な団体】
●滞納相談センター
 (滞納処分対策全国会議代表の角谷啓一税理士会長を務める専門家集団)
 TEL 03-6805-6330

●中央社会保障推進協議会(中央社保協)
 中小・零細事業者および一般市民を幅広く対象にしています
 住所 〒110-0013 東京都台東区入谷1-9-5 日本医療労働会館5階
 TEL 03-5808-5344

●全国商工団体連合会(全商連)
 中小・零細事業者を対象にしています
 住所 〒171-8575 東京都豊島区目白2-36-13
 TEL 03-3987-8575

●全国生活と健康を守る会(全生連)
 一般勤労者はこちらに
 住所 〒160-0022 東京都新宿区新宿5-12-15 KATOビル3F
 TEL 03-3354-7431

【各地での相談】
宮城県 宮城あおばの会

〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町1-17-20 グランドメゾン片平502号
電話 022-711-6225  月・水・金 13:00~16:00


秋田県 秋田なまはげの会

〒018-0951 秋田県秋田市山王町22-16 ラポール山王郷A-1
電話 018-862-2253  月・水・土 随時


群馬県 NPO法人消費者支援群馬ひまわりの会

〒376-0011 群馬県桐生市相生町3-120-6
電話 0277-55-1400  月~木 13:00~17:00 金 13:00~21:00


東京都 玉川 雑草の会

〒158-0091 東京都世田谷区中町5-17-3 玉川民商内
電話 03-3703-5371  第1日曜 19:00~22:00


大阪府 大阪クレ・サラ貧困被害をなくす会いちょうの会

(大阪いちょうの会)
〒530-0047 大阪市北区西天満4-5-5 マーキス梅田301号
電話 06-6361-0546  月~金 13:00~19:00


兵庫県 尼崎あすひらく会

〒661-0021 兵庫県尼崎市名神町1-9-1尼崎民主共同センター内
電話 06-6426-7243  日 10:00~15:00


和歌山県 あざみの会

〒640-8212 和歌山県和歌山市杉ノ馬場1丁目11
電話 073-424-6300  月~金 14:00~18:00 月曜日は夜間も相談 18:30~21:00


広島県 クレジットサラ金被害・生活支援センター福山つくしの会

〒720-0052 広島県福山市東町2丁目3番23号
電話 084-924-5070  月~金 10:00~17:00


広島県 呉つくしの会

〒737-0051 広島県呉市中央3-2-27島崎法律事務所ビル1階
電話 0823-22-7265  月、水、金 10:00~18:00


香川県 高松あすなろの会

〒760-8081 香川県高松市成合町559-15
電話 087-897-3211 0120-39-0476  月~金 10:00~17:00


高知県 高知うろこ(鱗)の会(高知クレ・サラ金被害をなくす会)

〒780-0870 高知県高知市本町4-1-37
高知県社会福祉センター3階-4
電話 088-822-2539 0120-565-275
火・土10:00~16:00 木10:00~20:00


福岡県 ひこばえの会(福岡クレ・サラ被害をなくす会)

〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-2-51 第一吉田ビル501
電話 092-761-8475  月~金 13:00~17:00


Q5 制度の区別や適用要件など、あまりよくわからないので教えてほしい。
 滞納処分対策全国会議のホームページに、詳しい解説つきで掲載されているので、そちらをご覧ください。

https://tainoutaisaku.zenkokukaigi.net/


Q6 引用された通知などに従った処理がなされていない場合はどうすればよいですか。
 滞納処分対策全国会議の事務局あてに、メールまたはFAXでご連絡ください。なお、内容によっては対応致しかねる場合もありますのでご了承ください。

滞納処分対策全国会議 事務局長
弁護士 佐藤靖祥(さとう法律事務所)
電話022-722-6435  FAX022-722-6436
メール [email protected]


Ⅴ 労働編
※Ⅴ-1 日本労働弁護団「新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A」(Ver5)(R3.12.1時点)

http://roudou-bengodan.org/covid_19/


※Ⅴ-2 厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」(R6.7.18更新)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html


※Ⅴ-3 厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(使用者の方向け)」(企業の方向け)」(R6.7.18更新)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html


(休業手当)
Q1 新型コロナウイルスに感染した、または発熱などの症状がある労働者を使用者の判断で休ませた場合、休業手当の支払いは必要ですか。
 使用者は、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合(不可抗力による休業ではなく、自発的な休業の場合)、休業期間中の休業手当(平均賃金の6割以上)を支払わなければなりません(労働基準法26条)。
 「不可抗力による休業」と言えるためには、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であることのいずれも満たす必要があります。
 例えば新型コロナウイルスに感染したことや発熱などの症状があることのみをもって、使用者の自主的な判断で労働者を休ませた場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があります。

(雇用保険)
Q2 私は、飲食店等でアルバイトを繰り返して生活しているフリーターです。どこの事業主も、私のようなアルバイトを雇用保険に加入させていません。これは仕方が無いのでしょうか?
A
【条件を満たせば、アルバイトも雇用保険の被保険者】
労働者であって、①週の所定労働時間が20時間以上、②同一の事業主に継続して31日以上雇用される見込みがあるなどの条件を満たせば、雇用主や労働者の意思に拘わらず、当然に雇用保険の被保険者となります(雇用保険法4条1項、6条1号・2号等。以下、雇用保険法を「法」という。)。このことは、いわゆるアルバイトであっても同じです(ただし、学生アルバイトは、雇用保険の適用除外になっています。法6条4号)。
31日以上の雇用見込みには、期間の定めがなく雇用される場合も含みます。また、当初は1か月で終了する予定のアルバイトであっても、雇入れ後に、31 日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から被保険者となります(雇用保険事務取扱要領20303(3))。

【労働者による被保険者資格の確認請求】
事業主は、被保険者となる労働者を雇用した場合、その月の翌月10日までに、雇用保険被保険者資格取得届を職安に提出する義務があります(法7条、雇用保険法施行規則6条1項。以下、雇用保険法施行規則を「規則」という。)。しかしながら、特にアルバイト労働者については、事業主が被保険者資格取得届の提出を懈怠し、被保険者として扱われていない事例が多く存在します。
そこで、雇用主が届出しない場合、労働者から公共職業安定所(以下、「職安」という。)に対して被保険者資格の確認請求(法8条)をしてみてください。職安が調査の上で、被保険者資格を認定することとなります。被保険者資格の確認請求は、当該職場を既に離職済みであっても可能です。
就職から確認請求まで時間が経過していても、過去に遡って被保険者資格が認定されます。ただし、被保険者資格の遡及認定は、原則として確認請求前2年間が限度となります。それより遡って認定されるには、給与明細から雇用保険料が控除されていた(それにもかかわらず資格取得届の未提出を労働者が知らなかった)との条件が必要となります(法14条2項2号、22条5項。規則33条、33条の2)。

【事業主による被保険者資格取得届の提出懈怠についての罰則】
事業主が法7条に違反して被保険者資格取得届を提出しない場合、刑事罰(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります(法83条1号)。Q3の場合、刑事罰の適用を求めていくことも検討対象となります。

Q3 退職後、雇用主が離職票を出してくれないので、公共職業安定所に提出できず、求職者給付の受給ができません。どうしたら良いでしょうか。
A
【通常の離職票入手と受給資格認定の流れ】
 本来、事業主は、労働者の離職後10日以内に、「雇用保険被保険者離職証明書」(離職証明書)を添付して、「雇用保険被保険者資格喪失届」を職安に提出する義務を負います(雇用保険法7条、同規則7条)。離職証明書が提出された場合、職安は、離職証明書の情報が転写された「離職票」を返付し、これが雇用主を経由して労働者に交付されます(規則17条1項1号、2項)。
また、離職者が事業主に離職証明書の交付を求め(規則16条)、直接、これを職安に提出して離職票の交付を受けることも可能です(規則17条1項2号・3号)。
 離職者が求職者給付を受けるには、離職票を添えて職安に出頭し、求職の申込みをする必要があります。その際に、職安は、求職者給付の受給資格の該当性につき判断します(法15条2項、規則19条)、よって、離職票は求職者給付の受給に必須となります。

【職安に直接離職票の交付を求める方法】
事業主が離職票を出さない本問のようなのような場合は、「その者を雇用していた事業主の所在が明らかでないことその他やむを得ない理由があるとき」に該当するものとして、労働者は、直接、職安に対して、離職証明書を添えずに、離職票の交付を求めることができます(規則17条3項)。この場合、職安が独自に調査の上で離職票を作成し、労働者に交付することになります。ですので、離職証明書がなくても、すみやかに職安に行って、職安に離職票を作成してもらうようにしてください。

【事業主の離職証明書不交付等についての罰則】
事業主は、離職者が求職者給付の受給のために必要な証明書(離職証明書を含む)の交付を請求した場合、交付義務を負います(法76条3項)。そして、事業主が法7条や法76条3項に違反して届出や証明書の交付をしない場合には、刑事罰(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります(法83条1号・4号)。本問の事例の場合、刑事罰の適用を求めていくことも検討対象となります。そして、本問のような場合、罰則の存在を背景に、職安から事業主に対して離職証明書の提出ないし交付を促してもらえる場合もあります。

【受給資格の仮決定手続】
なお、「求職の申込の際にやむを得ない理由により離職票を提出できない」として、「受給資格の仮決定」を求め、手続を進めることも可能です(「雇用保険事務取扱要領 50202」に基づく運用なので、応じてもらえない職安もあります)。ただし、この場合の受給は、離職票の提出後となりますので、いずれにせよ、前述したような方法により離職票を得る必要があります。

Q4 就職した会社がいわゆるブラック企業だったため、違法な長時間労働で働かされ、かつ、毎日上司の叱責を受けていたため、精神的に参ってしまい、1年間もたずに会社を退職しました。職安に行きましたが、「1年以上働いていないので、失業手当は受給できない」と言われました。何とか受給できる方法は無いのでしょうか。
A
【受給資格の要件】
 原則として、求職者給付の受給には、離職前2年間に12か月以上の被保険者期間が必要です(法13条1項)。
ただし、法13条1項により受給資格を満たさない場合であっても、「特定受給資格者」「特定理由離職者」に該当する場合には、離職前1年間に6か月間以上の被保険者期間があれば、受給資格を有することになります(法13条2項)。
 なお、受給資格の認定に際して被保険者期間の算定対象となる期間(離職前2年間または1年間)のことを、「算定対象期間」と言います。

【特定受給資格者該当性の検討】
 そこで、本件の離職理由により「特定受給資格者」等に該当しないかを検討します。
 「特定受給資格者」は、以下の理由により離職した者を指します(主なもののみ挙げています。正確な定義は法令を参照。)(法23条2項、規則34条・35条・36条)
 ①雇用主の倒産  ②事業所の廃止  ③事業所の移転のため通勤が困難
 ④解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)
 ⑤有期雇用の雇用期間満了(雇用期間合計3年以上)
 ⑥有期雇用の雇用期間満了(更新されることが明示されていたのに不更新の場合)
 ⑦退職勧奨  ⑧明示された労働条件との著しい相違  ⑨賃金不払
 ⑩違法な長時間労働  ⑪安全配慮義務違反  ⑫育休等への不利益取扱
 ⑬雇用主・同僚による就業環境を著しく侵害する言動
 ⑭事業主都合の3か月以上の休業   ⑮事業の法令違反
 本問の事例の場合、⑩や⑬に該当する可能性が十分にあります。また、残業代不払が一定以上となると⑨に該当する可能性もありますし、⑧に該当する可能性もあります。
ただし、これらの事実を事業主が否定した場合、証拠がなければ特定受給資格者と認定されません。⑬の場合、録音等の証拠確保が必要となり得ます。また、⑧⑨⑩の場合も、証拠確保に注意が必要です。

【特定理由離職者該当性の検討】
 「特定理由離職者」は、以下の理由により離職した者を指します(法13条3項、規則19条の2)。
① 有期雇用の雇用期間満了(特定受給資格者に該当する場合を除く。その者が更新を希望したにもかかわらず、更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)
② 「正当な理由のある自己都合退職」
「正当な理由」は、具体的に以下のものが例示され、比較的広く認められています(詳細は、雇用保険事務取扱要領50305-2 (5-2)を参照)。
a 結婚・妊娠・出産に伴い退職する慣行があるなど退職せざるを得ない状況に置かれた
b 体力の不足・心身の障害・疾病・負傷・視力や聴力の減退
c 親族の要介護状態などの家庭の事情の急変
d 結婚・転勤命令等の事情により通勤不可能・困難となったこと
本問の事例については、仮に「特定受給資格者」として認定されるのが証拠上難しい場合であっても、心身の傷害・疾病による「正当な理由のある自己都合退職」として「特定理由離職者該当性」に認定されないのか、特に検討すべきです。

Q5 2~3か月の短期就労を繰り返し(途中に無職の期間があり)、その後、失業状態にあります。そこで、求職者給付の受給のために、職安に求職の申込みをし、受給資格の認定を求めました。しかし、「就労期間(被保険者期間)が11か月半で、0.5か月分足りないので、受給資格は無い」と言われました。何とか受給できる方法はないですか?
A【以前の就労に関する被保険者期間の合算の可否の検討】
算定対象期間において、以前に受給資格認定の対象とされていない被保険者期間がある場合には、当該被保険者期間を新たな受給資格認定の算定対象とする被保険者期間に合算することが可能です(法14条2項1号)。
そこで、職安に求職申込みをして受給資格の認定を求める際に、従前の短期就労に関する離職票を含めて複数の離職票を提出し、短期就労を合算して、離職前2年間に12か月以上の被保険者期間(これが満たされなくとも、特定受給資格者・特定理由離職者の場合は離職前1年間に6か月以上の被保険者期間)があれば、受給資格を満たすことになります。
その際、従前の短期就労について、被保険者資格取得の手続がなされていない場合には、被保険者資格の確認請求をして被保険者資格を認めてもらいます(Q2参照)。また、被保険者資格取得の手続がなされていても、離職票の交付を受けていない場合は、元の雇用主に離職証明書の交付を求めます(規則16条。Q3参照)。
 以上のようにして、受給資格が満たされないのか、検討してください。

Q6 持病を抱えて体調が悪いため、仕事に就いたり辞めたりを繰り返しています。直近の離職前2年間に12か月、もしくは1年間に6か月の被保険者期間はないのですが、失業手当の受給資格はやはり難しいのでしょうか。
A【離職前に疾病等により就労できなかった期間がある場合】
 離職前に疾病、負傷、出産、育児、親族の看護、事業所の休業などのやむを得ない事情により30日以上賃金の支払を受けられなかった被保険者については、当該日数につき算定対象期間が最大4年間まで延長されます(法13条1項括弧書き)。算定対象期間が延長されれば、受給資格が満たされやすくなります。
 本問の事例においては、算定対象期間を体調不良による就労不可期間の分だけ延長すれば、受給資格が認められる可能性があります。この点は、職安で受給資格を確認する際に申し出て、受給資格の判定をしてもらうようにしてください。

Q7 自己都合によって退職しました。失業給付を受けるのに3か月待たないといけないと聞きましたが、仕方ないのでしょうか?

【給付制限の期間】
「正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合」には、給付制限の対象となります(雇用保険法33条1項)。給付制限期間は3か月とされてきましたが、行政の運用変更により、2020年10月1日以降に離職した方は2か月に短縮されました(但し、5年間のうち3回目以降は3か月となります)。
https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/LL020617-H01.pdf

【「自己都合退職」について「正当な理由」の有無の検討】
 給付制限は、「自己都合退職」に「正当な理由」がない場合が対象です。「一身上の都合」などと記載して辞職届を提出して退職した場合であっても、それに至った事情により、「正当な理由」が認められる場合があります。
 そして、特定理由離職者(及び特定受給資格者)については、「正当な理由」が認められます。そこで、これらに該当するか否かを検討してください(Q4を参照)。「自己都合退職」だからと言って諦めず、「正当な理由」の有無について十分に検討してください。

【「正当な理由」を裏付ける証拠の確保】
 「正当な理由」は、証拠が不十分だと職安には認められません(特にパワハラや退職勧奨を事業主が否定した場合)。退職に至った事情について、客観的に証明できるように退職前から証拠の確保に努める必要があります。

【不服申立】
 不当にも給付制限処分がなされた場合、処分を知ってから3か月以内に雇用保険審査官に対する審査請求をすることを検討することになります。
Q8 求職者給付の給付日数が90日間しかなく、もうすぐ終了しそうですが、就職のメドは立っていません。どうしたら良いのでしょうか?
 特定受給資格者、特定理由離職者(雇用期間満了による離職者に限る)に該当する離職者の場合、所定給付日数は最大330日まで増やされています(それら以外の受給資格者の場合は、90~150日)。ですので、特定受給資格者、特定受給資格者(雇用期間満了による離職者に限る)に該当しないか、まずは十分に検討してください(Q4を参照)。
 
 公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者について、訓練等を受けている期間(最大2年間)、求職者給付の給付日数が延長される訓練延長給付制度もあります(法24条)。大幅に給付が延長されるかなり有利な制度ですので、職業能力を高めてから就職したいという方は、職安と相談されると良いと思います。


労働問題の相談先
※ 日本労働弁護団 (HPで最新情報を確認)
【全国】03-3251-5363

月火木15時~17時(都度変更あり)、土13時~15時(同上)


【女性専用】03-3251-5364 毎月第2・4水曜 15時~17時(同上)

【北海道】011-261-9099 火木18時~20時、土13時~15時

【東北】022-261-5555 水15時~19時

【東京・三多摩】042-528-1494 月木12時~14時

【埼玉】048-837-4821 火木土12時~14時

【神奈川】045-651-6441 月火水金11時~13時、17時~18時30分 

【神奈川西部】0465-24-5051 木16時~17時30分

【千葉】043-221-4884 水金13時~16時

【群馬】027-251-5707 火木17時~19時

【栃木】028-643-7711 水11時30分~13時30分、土10時~12時

【山梨】070-2675-7885 水11時30分~13時30分

【愛知・岐阜・三重】080-3650-5225 火17時~19時

【三重】059-351-6510 木17時~19時

【岐阜】080-4525-0503 水17時~19時

【福井】0776-25-7727 水18時~20時

【京都】075-256-3360 火15時~18時

【大阪】(民主法律協会)06-6361-8624 金18時~20時

(大阪労働者弁護団)06-6364-8620 火18時~20時


【広島】080-5629-6010 火金 正午~15時

【福岡】092-721-1251 水13時30分~15時30分

【北九州市】093-581-1890 水13時30分~15時30分

【長崎】0120-41-6105 随時 10時~22時

【佐賀】080-8381-6405 火17時~19時30分

【大分】097-536-1221 水13時30分~15時30分

【熊本】096-325-5700 水15時~17時

【宮崎】090-8915-6010 水18時~20時

【鹿児島】099-239-4545 水13時30分~15時30分

※ 全労連 労働相談ホットライン 0120-378-060 平日10時~17時
(地域の労働センターにつながります。)
全労連HPよりメール相談も可

Ⅵ 電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援給付金(1世帯7万円または10万円+児童1人5万円)
Q1 電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援給付金の概要について、教えてください。
A 電力・ガス・食料品等の価格高騰を踏まえ、特に家計への影響が大きい低所得世帯に対する給付金が支給されることになりました。

【対象者】
自治体によって異なりますが、
① 基準日(令和5年12月1日)において世帯全員の令和5年度分の住民税ないし所得税が非課税である世帯(生活保護世帯を含む。また、この給付金は収入認定除外となる)(原則として申請は不要だが、確認書の返送等が必要な自治体も存在している)
※住民税が課税されている者の扶養親族等のみからなる世帯を除く。
② ①のほか、令和5年12月1日以降、修正申告などにより世帯全員が住民税ないし所得税非課税相当となった世帯(家計急変世帯)(この場合には申請が必要)


※上記②の世帯を支給対象としていない自治体もありますのでご注意ください。
※制度の詳細については、必ず当該自治体のホームページ等でご確認ください。



【給付額】 1世帯あたり7万円を給付
(住民税均等割のみ課税されている世帯など、1世帯あたり3万円の「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援給付金」(令和5年6月1日が基準日の給付金)を受給できなかった世帯には10万円を給付)
更に18歳以下の児童がいる場合、児童1人あたり5万円を給付

【支給実施自治体】
下記②の世帯を支給対象としていない自治体もあります

① 住民税ないし所得税非課税世帯:基準日(令和5年12月1日)時点で住民基本台帳に記録されている市町村(原則として申請は不要だが、確認書の返送等が必要な自治体も存在している)
② 家計急変世帯 :申請時点の住所地市町村(この場合には申請が必要

※1 DV等避難者、虐待等による児童福祉法等の措置入所者で、現在の居住地(措置先)に住民票を移していない場合には、独立した世帯とみなされ、所得要件を満たす場合には、居住地市町村・施設所在市町村等において給付対象となります。
※2 ホームレスの方等で、いずれの市町村の住民基本台帳にも記録されていない場合には、基準日の翌日以降、居住市町村において住民基本台帳に記録されたときは、当該居住市町村において申請・給付対象となります。

【実施時期】 
既に受付終了している自治体が多数。現在継続中でも8月中には確認書の返送等(上記①の場合)ないし申請(上記②の場合)が必要ですので、早期の確認・対応を促すべきです。
       また、(18歳以下の児童1人あたり5万円の追加給付について)令和5年12月2日以降に生まれた新生児がいる場合や、別世帯にいる18歳以下の児童を扶養している場合等にも申請が必要となりますので、早期に当該自治体のホームページ等で確認・対応するよう促すべきです。



Ⅶ 低所得者世帯への支援給付金(1世帯10万円+児童1人5万円)

Q1 低所得者世帯に対する支援給付金の概要について、教えてください。
A 2024年度に新たに住民税均等割が非課税となる世帯、または住民税均等割のみ課税となる世帯に対し、1世帯当たり10万円が給付されます。
  また、給付金の対象世帯のうち、18歳以下の児童がいる場合は、こども加算として児童1人あたり5万円が給付されます。

【対象者】
   自治体によって異なりますが、
基準日(2024年6月3日)において、世帯全員の2024年度分の住民税ないし所得税が新たに非課税となった世帯(生活保護世帯を含む。また、この給付金は収入認定除外となる)
※住民税が課税されている者の扶養親族等のみからなる世帯を除く。
 
※制度の詳細については、必ず当該自治体のホームページ等でご確認ください。

【給付額】 1世帯あたり10万円を給付
更に18歳以下の児童がいる場合、児童1人あたり5万円を給付

※ 2024年6月4日以降に生まれた新生児がいる場合にも給付されます。

【支給実施自治体】
住民税ないし所得税非課税世帯:基準日(2024年6月3日)時点で住民基本台帳に記録されている市町村

※1 DV等避難者、虐待等による児童福祉法等の措置入所者で、現在の居住地(措置先)に住民票を移していない場合には、独立した世帯とみなされ、所得要件を満たす場合には、居住地市町村・施設所在市町村等において給付対象となります。
※2 ホームレスの方等で、いずれの市町村の住民基本台帳にも記録されていない場合には、基準日の翌日以降、居住市町村において住民基本台帳に記録されたときは、当該居住市町村において申請・給付対象となります。

【実施時期】現在実施中(9~10月頃までに申請書や確認書の提出が必要)。


Ⅷ その他(地方独自の給付金制度や国の動きなど)
Q1 都道府県、市町村など地方独自の支援策にはどのようなものがありますか?
A すべてを把握することは困難ですが、「j-net21」のサイトにまとめがありますので参考にしてください。
https://j-net21.smrj.go.jp/support/tsdlje00000085bc.html


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第15回 生活保護問題議員研修会

地域から変える
生活保護をあたりまえの権利に


光熱費や物価の高騰で生活に困窮する人が増え、生活保護の役割が高まる中、いまだにその利用には高いハードルがあります。一方、心ある地方議員や自治体職員の方々によって、地域から一歩ずつ生活保護行政を改善するとりくみも広がってきています。
最新の情報を共有し、地域から生活保護をあたりまえの権利にしていくため、本研修会に多数ご参加いただけますよう、ご案内申し上げます。

第15回生活保護問題議員研修会


リーフレット(PDF)をダウンロード


【日時】
2024年8月23日(金) 10時~16時30分

※ コロナ禍以降オンライン開催をしていましたが、今回は完全リアル開催でオンライン配信は行いません。

【場所】
大阪府社会福祉会館 5階501号ホール

〒542‐0012 大阪市中央区谷町7丁目4‐15(電話06-6762-5681)

※新幹線でお越しの方
▶大阪・梅田まで
JR「新大阪」→「大阪」 又は 地下鉄・御堂筋線「新大阪」→「梅田」
▶大阪・梅田から
(徒歩)→地下鉄・谷町線「東梅田」→「谷町六丁目駅」から徒歩数分。
4番出口(谷町筋を南に280m)出て、谷町7丁目交差点を西に入る。




参加申し込みについて

・研修会 参加費 1万5000円(資料代込)
※地方議員以外の方も参加いただけます。
キャンセル料=8月16日以降1万円 8月20日以降1万5000円

・資料のみ追加購入 1冊1000円

・お弁当 1500円(お茶付き)
※8月12日以降のキャンセルはご遠慮ください

・交流会 参加費1000円(軽食・ソフトドリンク付き)
※事前申込制


【参加のお申込み】 ※締切:8月10日まで
下記のURL又はQRコードから入力フォームに入力してください。

問い合わせ [email protected]
申込フォーム  https://pro.form-mailer.jp/fms/4b23d49b312726

第15回生活保護問題議員研修会

【共催】生活保護問題対策全国会議・全国公的扶助研究会




8月23日(金)
基調報告「一部の逆流を乗り越え、生活保護をあたりまえの権利に!」(10:00~11:00)

40年ぶりの物価高騰(2023年3%)が私たちの生活を襲っていますが、生活扶助基準は2013年度、2018年度と計約8%も減額されたまま。保護世帯の生活は厳しさを増すばかりです。また桐生市等での違法な行政が明るみになる一方で、司法の場では、いのちのとりで裁判での前進、自動車をめぐる前向きの判決など憲法25条を生かす市民の反撃が成果をあげています。こうした情勢のもとで議員活動のあり方を考えます。


吉永 純さん

花園大学教授、全国公的扶助研究会会長。福祉事務所24年、ケースワーカー12年の経験を生かし、貧困と生活保護について研究。



特別報告1「群馬県桐生市調査団活動にとりくんで」(11:00~11:30)

2011年からの10年間で、生活保護利用者数、保護率ともに半減した群馬県桐生市。保護費を1日1000円ずつ渡し全額支給しない、警察官OBが申請受付や就労支援で威圧する、民間団体に金銭管理を委託させるなどの驚くべき実態が明らかになって来ています。「桐生市生活保護違法事件全国調査団」のとりくみなどを現地から報告します。

  
町田茂さん

反貧困ネットワークぐんま事務局。2022年5月まで同副代表。生存権を守るぐんまの会事務局次長。介護福祉士、介護支援専門員。



特別報告2「生活保護世帯の大学生等に対する給付型奨学金の創設について」(11:30~12:00)

生活保護世帯の子どもの大学等への進学率(42.3%)は、一般世帯の進学率(83.8%)のわずか半分。その背景には、生活保護世帯の子どもが大学等に進学すると、その子どもの生活扶助費が停止される扱い(世帯分離)があります。このことで若者が進学を諦めることのないよう、東京都世田谷区は、2024年度から生活保護世帯出身の大学生らに上限50万円の学費・教材費等の実費を支給する独自の給付型奨学金制度を創設しました。制度の創設・運用に関わる職員の方にご報告いただきます。


瀬川 卓良さん

東京都世田谷区・子ども家庭課長。1994年入庁。2018年に玉川保健福祉センター生活支援課の子ども家庭支援を担当。副参事(課長級)に着任、同センター子ども家庭支援課長、介護保険課長、市民活動推進課長を経て2023年から現職。



12:00~13:00 昼食 ※ご希望の方には、お弁当をご用意します。

記念講演「生活困窮者支援の現場から~生活保護制度は使いやすくなっているのか~」(13:00~14:30)

2021年3月に扶養照会の運用が改善され、制度利用への大きなハードルは一見下がったように思われましたが、実際は各自治体で運用の二極化が進んでおり、捕捉率は相変わらず低いまま。あの手この手の水際作戦は依然として存在し、地方では憲法や法律すら飛び越えた「利用者の虐待」といっても過言ではない独自運用が明らかとなっています。困窮者支援の現場からご報告いただきます。


小林 美穂子さん

一般社団法人つくろい東京ファンドスタッフ。1968年生まれ。2009年より生活困窮者支援にかかわる。著書『家なき人のとなりで見る社会』(岩波書店)、共著『コロナ禍の東京を駆ける』(岩波書店)。



リレー報告とディスカッション「明日からできる、ここまでできる 議員活動最前線」(14:40~16:30)

生活保護問題にとりくむ地方議員の方々も増え、各地で熱心な議員活動がおこなわれています。その一方、生活保護の申請同行などの正当な議員活動を問題視しバッシングするような地方議会もあります。議会での質問や地域でのとりくみの中で制度や運用の改善を実現した経験、裁判や地域の運動をつうじて不当な抑圧とたたかった経験を交流し学び合うことで、全国の生活保護行政の底上げをはかりましょう。


小椋 修平さん

東京都足立区議会議員。1974年生、英知大学卒。派遣社員、衆議院議員秘書などを経て07年より5期目。現在も困窮者支援団体スタッフとして現場を奔走。生活保護の扶養照会の実態を明らかにして改善につなげた。


   
青木 恒子さん

奈良県香芝市議会議員(1期目)。こども食堂を始めて8年目。生活保護の議員同席問題に関する議会質問が発端で議会への出席停止処分を受け、現在裁判闘争中(2024年1月16日、奈良地裁で処分を違法とする勝訴判決を得るが、市側が控訴)。



上村 正朗さん

新潟県村上市議会議員。新潟県庁の生活保護担当係長・ケースワーカー歴計13年、新発田市・生活困窮者支援相談員5年弱を経て2020年4月から現職。議会で福祉事務所の体制や業務のあり方について質問をし、 県内の福祉事務所のHPや自動車保有状況等の調査をふまえた申入れに取組んできた。



進行:尾藤 廣喜さん

弁護士、生活保護問題対策全国会議代表幹事。1970年、厚生省入省。1975年、京都弁護士会に登録後、数々の生活保護裁判を勝利に導いてきた。日弁連・貧困問題対策本部副本部長。



オプション企画
17:00~18:00 交流会(定員50人)
※希望者のみ・事前申込制(参加費1000円)

軽食とソフトドリンクをご用意し、各地から参加された方々の交流会を行います。



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東京都江戸川区の生活保護検証・検討委員会報告書の公表をふまえて、なお残る大きな問題点について要望書を提出しました。

東京都江戸川区で、生活保護利用者が自宅で死亡していることを担当職員が把握しながら長期間放置し、2023年3月27日、一部白骨化した状態で第三者により発見されてこれが顕在化した件について、同区は、2023年8月15日、外部専門家等による委員会の設置を公表しました。
これ受けて、当会議は、8月21日、同区に対し、公開質問状を提出するなどしました。
生活保護問題対策全国会議 -東京都江戸川区に「生活保護行政に関する公開質問状」を、同区が設置した検証及び検討委員会に「要望書」をそれぞれ提出しました。 (fc2.com)

これに対し、同区から9月4日、回答書が届きましたが、当会議は、9月19日、なお残る疑問点について、公開質問状(2)を提出しました。
生活保護問題対策全国会議 -東京都江戸川区からの回答書に対し、「生活保護行政に関する公開質問状(2)」を提出しました。 (fc2.com)

これに対し、同区から10月20日、回答書が届き、今後は、専門委員会が十分な審議検討を行うとともに、「議事録及び非公開の場合の議事概要の公表及び最終的な調査報告書の公表において説明責任を果たしていく」との回答でしたので、当会議としては推移を注視することとしました。
生活保護問題対策全国会議 -東京都江戸川区から「生活保護行政に関する公開質問状⑵」に対する回答書が届きました。 (fc2.com)

「江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会」は、検証・検討を重ね、2024年1月29日、検証結果を取りまとめた報告書を提出しました。
江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会 江戸川区ホームページ (city.edogawa.tokyo.jp)

今後は、報告書の提言にそった業務改革が進められていくことになりますが、報告書の提案は基本的には評価できるものの、なお大きな問題が残っていると言わざるを得ません。
そこで、当会議は、今後の業務改善にあたっての参考としていただく趣旨で、以下の意見書を江戸川区等に提出しました。

意見書(PDF)のダウンロードはこちらから




2024年(令和6年)4月15日

東京都江戸川区長
 斉藤 猛 殿
江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会委員長
 池谷 秀登 殿
 
江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び
再発防止対策検討委員会報告書についての意見書
           

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 弁護士  尾 藤 廣 喜
(連絡先)〒530-0047大阪市北区西天満3-14-16
  西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
事務局長 弁護士  小久保 哲 郎
TEL 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

 当会議は、2024年(令和6年)1月29日付け江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会(以下「検討委員会」といいます。)報告書(以下「報告書」といいます。)について、

① 本事案の再発防止策について、単発の事件に対する再発防止策にとどまらず、組織的総合的な視点から再発防止策が提案されていること
② 本事案について、単に「不適切」かどうかの検討を行うことにとどまらず、 地方公務員法及び生活保護法に違反した事実があるかどうかの検討を行ったこと


など、全体的には優れた報告書であると評価しております。
 ただし、以下の諸点については、大きな問題が残されていると考えますので、今後の参考としていただきたく、以下のとおり、意見を申し述べます。

1 区議会副議長を検討委員会委員としたことの問題
 当会議は、2023年(令和5年)8月21日付けの東京都江戸川区長宛の「生活保護行政に関する公開質問状」(以下「公開質問状」といいます。)において、第三者委員会については、「対象事案につき、識見を持ち、予断と偏見を排することができる者であり、かつ、利害関係を有しない者でなければならないことは当然のことであり」、区議会副議長が検討委員会の構成員になることは問題であり、同委員から排除すべきものと考えると主張しました。
 この点について、報告書に直接の記載はないものの、「報告にあたって」と題する検討委員会委員長のコメントが報告書とあわせて公表されています。そこでは、上記の検討委員会の構成について、このような「委員会構成は前例を見ない」としながらも、「第三者専門委員会の検討の結果を団体代表委員に示し意見を求めたことで、報告内容がより区民目線に近づくとともに、団体代表委員も第三者専門委員会報告の理解が深まり、各団体代表委員の立場からも今後の再発防止対策が推進されるものと考える」との意見が表明されています。
 しかしながら、このコメントの内容には、以下指摘する種々の問題があります。区議会副議長を検討委員会の委員としたことは、公正・中立性の確保という観点からは明らかに問題で、委員長のコメントにあるような積極的評価はできません。やはり、このような手法は取るべきではなかったことを改めて指摘せざるを得ません。

① コメントでは、区議会副議長と民生・児童委員協議会会長及び東京都人権擁護委員協議会江戸川地区委員会会長を、いずれも代表者委員として同列に扱っていますが、検討委員会の構成上問題とされているのは、日本弁護士連合会のガイドラインからも明らかなとおり、当該自治体の「議員の職にある者」です。区議会副議長と民生・児童委員協議会会長及び東京都人権擁護委員協議会江戸川地区委員会会長を同列に考え、あわせて評価の対象とすることは、そもそも妥当性を欠いています。
② 本来検討委員会の委員から排除すべき区議会副議長の意見を求め、これが、報告書に万一反映されるようなことがあれば、検討委員会が第三者委員会として公正・中立な立場で検討するという考え方と明らかに矛盾します。
③ 委員長のコメントにいう、区議会副議長が委員になることが、「報告内容がより区民目線に近づく」と判断することの根拠がありません。
④ むしろ、報告書作成前に区議会副議長という区の機関の幹部の意見を求めること自体が、報告書の内容について、区の機関とのネゴシエーシュンを図るという結果を招きかねず、検討委員会の公正・中立性を害するものです。
⑤ 今後の再発防止対策の推進は、あくまでも、検討委員会の報告書が出されてから、首長、関係職員、さらに必要であれば関係団体代表委員と協議の場を持つなどしてなされるべきで、報告書作成前に関係団体代表役員が委員として意見を述べることを正当化する理由にはなりません。

  
2 検討過程の公開性が欠けていたことの問題
 当会議は、2023年(令和5年)8月21日付けの「検討委員会の審議にあたっての要望書」の3において、検証委員会の公開を要望しました。
 この点について、検討委員会委員会の設置要綱上は、「会議は公開とする」とされ、「ただし、会議を公開することにより、率直な意見交換若しくは審議の公正性が阻害され、又はそのおそれがあるとき」などに限って非公開とすることができるとされています。ところが、現実には、検証委員会の議論や調査の過程は殆ど公開されず、議事録として公開された部分も、結論を簡潔に記載したものばかりで、実質的な公開はないに等しい内容となっています。
 しかも、事実の認定については、結論が示されているのみで、どのような証拠に基づいて当該の事実認定がなされたのか全く不明です。
 本事案については、当事者からのヒアリングなど公開に適さない部分は非公開とすることで個人情報の保護には十分配慮しながらも、検討委員会の結論に至る議論や調査の過程を公開し、また、事実認定の根拠を十分に示すことによって、公開の実をあげるべきであったと考えます。

3 事案の経過に関する解明が不十分である問題
(1)2023年(令和5年)1月10日、介護ヘルパーが利用者の死亡を発見し、そのことが担当ケースワーカー(以下、「CW」)に伝えられたのに、同年3月27日、福祉用具を貸与していた事業者がご遺体を発見するまでの2か月半の間、どのような経過があり、なぜ放置されたままとなったのか、本事案の検証にあたって、最も解明されるべき肝心なところが、以下のとおり、全く解明されていません。

① 担当CWは、なぜ放置したのか。
② 担当CWがメンター職員に同日、利用者の死亡について報告し、メンター職員が葬祭事業者や不動産会社に連絡するよう助言したにもかかわらず、担当CWは、なぜこの指示に従って行動を起こさなかったのか。
③ メンター職員は、自らが助言した内容が実施されたかどうかを確認したのか。確認していなかったとすれば、なぜ確認しなかったのか。さらに確認した結果放置されていたとすれば、なぜ指示した行動を行うよう督促しなかったのか。
④ その後も、担当CWは、なぜ訪問診療所からの問い合わせに対し虚偽の回答をし、再三の福祉用具事業者から福祉用具の回収の立ち合いの請求に応じなかったのか。また、査察指導員がその状況について、全く把握していなかった具体的な経過と理由、あるいはそこに組織的な問題点があったかどうか。さらに、利用者の死亡後、緊急対応として保護費の支給を窓口払いに変更したとしても、その後1か月以上にわたって支給停止処理をしないことについて、なぜ査察指導員等が疑問を持たなかったのか。
⑤ 利用者の死亡後、当然支給されるべき葬祭扶助の支給がなされていないのに、なぜその点の確認を誰もしなかったのか。


(2)ご遺体が2ヶ月半もの間、放置されたままとなっていたことについて、担当CWが停職5日、担当査察指導員が訓告、担当課長が厳重注意の各処分を受けた後、一部報道機関がその情報を聞き、取材を受けるようになって初めて公表するに至った理由とそこに問題がなかったかも、解明されていません。

(3)生活援護第三課において、2022年(令和4年)4月から同年12月までの短期間に6人ものCWが退職するという異常事態の原因究明がなされていません。この点の究明は、本事案の再発防止を図るために重要な点だと思われます。
また、生活援護第三課において、精神疾患を理由とする病気休職者の割合が全区庁に比べて高くなっているとの指摘がありますが、そのことの原因究明がなされていません。

(4)生活援護第三課において、一部職員が保護受給者や同僚職員に対してハラスメント的な言動を繰り返していたことが確認されたとの指摘がありますが、どのような証拠と手続きでこのような事実認定をしたのか、後日内部公益通報がなされたことや、生活援護第三課の上司が、なぜ当該職員が「言っていることは正論」「完全にブラックなら対処できるがグレーゾーン」と評価したことからすると、ハラスメント的な言動と評価してよいのかどうか、明確にされていません。
この点も、本事案のような事件の再発防止策を検討するにあたって、重要な点であると考えます。

(5)生活援護第三課職員の約3割が、上司の指導・支援・配慮の不足を指摘しているとありますが、具体的にどのような点について、職員が不満を示し、これについて、どのような対策がとられ、あるいはとられずにいたことが、上司の指導・支援・配慮の不足を招いたと評価されるのか、またその対策としては、どのような対策がとられるべきであったのかが、明らかにされていません。

(6)本事案について、区が保有する関係者の個人情報等が外部に漏洩した可 能性が疑われたとあります。しかし、本事案については、区が本件の経過を公表しない中、マスコミの取材が先行し、その結果、区も公表するという経過をたどったことからすると、どの点が内部公益通報と判断され、どの点が個人情報等の漏洩とされるのかが明確にされなければ、議論が進みません。
ところが、その点が明確に整理されていません。
 
4 再発防止策の実効性に疑問が残る問題
(1)「3 事案の経過」において指摘したとおり、本事案の具体的経過と原因究明が十分になされていないため、組織的総合的な視点から提案された再発防止策が、はたしてこれで十分実効性をあげるかについては疑問が残ります。

(2)具体的には、3の(3)及び(5)に関連しては、提案された再発防止策だけで十分なのかに疑問が残ります。
また、3の(4)及び(6)に関連しては、ハラスメント対策の強化とともに、職場内の自由な意見交換の場の保障、さらには、内部公益通報の重視などを行い、本事案を契機に職場の言論が統制されるなどの弊害を招かないような対策も重視される必要があります。

5 継続的な点検・検証、職場内の自由な意見交換、内部通報尊重の必要性
 江戸川区は、既に取り組んでいる再発防止策に加え、報告書で提言を受けた再発防止策についても実施に向けて検討していくとともに、第三者専門委員の協力を得ながら再発防止策の定期的な効果検証を行う考えであることを表明しているところですが、検討委員会から、せっかく組織的総合的な視点からの再発防止策が提案されていることに鑑みて、少なくとも毎年1回程度、検討委員会において、その実行の有無と程度、さらなる再発防止策が必要であるかどうか、また、弊害が発生していないかどうかについて点検、検証する機会を持つべきだと考えます。
 また、江戸川区は、不適切な言動の事実が確認された職員については、所属長による指導を行うとしていますが、本事案の経過と問題点を早急に公表せず、マスコミの取材が先行して初めて公表されたこと、本事案の発生以降、さらに内部公益通報の結果新たな問題事案が表面化していることからすれば、職場内での自由な意見交換の場を保障し、内部公益通報を重視・尊重することが重要であると考えます。
以 上



2024/4/15




10年で生活保護率が半減した群馬県桐生市に対し、「全国調査団」が、原因分析をふまえた要望書を提出しました。

 群馬県桐生市では、「生活保護費を1日1000円に分割して支給し、基準額の半額程度しか渡さない」、「職員に恫喝されたり、暴言を吐かれた」等、数々の違法行為・人権侵害が発覚しました。
 今年2月に発足した「桐生市生活保護違法事件全国調査団」(団長:井上英夫 金沢大学名誉教授)は、3月4日、桐生市に公開質問状を提出し、3月末に回答書を受け取りました。

桐生市の生活保護行政に関する公開質問状 


桐生市の生活保護行政に関する公開質問状に対する回答  


 桐生市の回答などから、同市では、2011年度からの10年間で生活保護利用者数と保護率が半減し、生活保護費は半分以下の45%まで減少したこと、特に「母子世帯」は2011年の26世帯から2022年にはわずか2世帯と急減したことが分かりました。

 さらに、回答内容を分析すると、その背景には、「警察官OB」の配置数が異常に多く、新規面談の同席や就労支援など趣旨を逸脱した活用がなされていること、他自治体では見られない民間の金銭管理団体を活用した事業をおこなっていること、女性職員の比率が極端に低いことなどがあり、生活困窮者をまるで犯罪者のように扱い、無理な就労指導や違法な金銭管理を通じた管理・支配がなされている疑いが生じました。

 そこで、「調査団」は、4月4日~5日に現地での調査活動を展開。5日には桐生市長、群馬県知事、桐生市が設置した第三者委員会の座長あてに「要望書」を提出しました。

要望書 





2024年4月5日

要  望  書


桐生市長  荒木 恵司 殿
群馬県知事 山本 一太 殿
桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会座長 吉野 晶 殿

桐生市生活保護違法事件全国調査団
団長 井上 英夫


第1 はじめに(本要望の趣旨)
私たち「桐生市生活保護違法事件全国調査団」(以下、桐生調査団)は、桐生市の生活保護行政における不適切な対応について、その問題点や改善策を把握・検討するため、桐生市に対し2024年3月4日に公開質問(「桐生市の生活保護行政に関する公開質問状」)を行いました。
 桐生市から2024年3月29日付で回答のあった「公開質問状に対する回答」(令和6年3月29日付桐市相発第05・84号)のほか、調査団が独自に調査収集した資料や調査団に寄せられた当事者の生の声から、桐生市における生活保護行政の違法・不適切な対応、また、桐生市における被保護人員の急減をもたらした要因として疑われる問題点が複数確認されました。
 現在、桐生市においては、①市による内部調査チームによる検証(「不適正な生活保護業務に対する内部調査」、②群馬県庁による特別監査、③第三者委員会(桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会)による調査・監査・検証が行われています。
 今回、私たちの調査によって明らかになった桐生市の生活保護行政における問題構造と論点について、以下の調査分析を参考としていただき、さらなる調査と検証によって徹底的な実態解明を行われることを要望いたします。

第2 調査分析と問題点における要望
1 桐生市の生活保護行政全般に関する問題点-被保護人員・保護費の半減、特に母子世帯・その他世帯の急減

 桐生市においては、2011年をピークに現在まで、被保護世帯数・被保護人員・保護率が急減少を続けています。結果として、桐生市の保護費総額(年間)は2011(H23)年19億6121万円から、2022(R04)年8億7313万円と、2011年水準の45%にまで減少しています。全国傾向及び近隣他市と比べてもこのような減少は異様な状態であり、これは違法・不適切な対応により保護申請数を抑制する「水際作戦」や、同じく違法・不適切な対応により保護受給者を廃止に追いやる「硫黄島作戦」が強く疑われます。




図 桐生市の被保護人員数・生活保護費総額


 桐生市はこの保護世帯数(保護率)の急減について、「高齢化率の高さ」「高齢世帯の割合の多さ」を理由として挙げています。たしかに桐生市は全国に比べて、やや高齢化率が高い傾向にありますが、これは桐生市に限った特異な状況とはいえず、このような理由で近隣自治体と比べて異様な急減を説明することはできません。
また、桐生市の被保護世帯別の人数によると、どの世帯類型においても減少していますが、とりわけ顕著なのは「母子世帯」(2011(H23)年26人→2022(R4)年2人)と「その他世帯」(2012(H24)年107人→2022(R4)年14人)です。稼働年齢層に対する無理な「就労指導」による「水際作戦」や「硫黄島作戦」が疑われるため、「母子世帯」や「その他世帯」の減少理由を検証する必要があります(なお、桐生市はこの点について現在に至るまで説得力のある説明を行なっていません)。
通常では、保護率の増減に関して人口動態や社会経済的といった外在的な要因による説明がつかなければ、内在的な要因、すなわち保護行政における組織的な問題や関与(申請・開始時の不適切な対応。生活保護利用者に対する行き過ぎた指導や不適切な廃止など)が強く疑われます(これら組織的な問題や関与については、「2」以下の調査分析の結果が参考になります)。この点から桐生市の生活保護行政に関しては、以下の点の調査検証が必要です。

・桐生市における保護率・保護人員の急減少の原因について検証を行うこと。
・特に「母子世帯」「その他世帯」の急減少の原因について検証を行うこと。

2 保護の開始時、廃止における対応における問題点

(1)却下率・取下率の多さ

表 桐生市の申請件数、開始件数(開始率)、却下件数(却下率)、取下件数(取下率)




 表のとおり、桐生市における開始率は、全国平均に比べて非常に低い傾向にあります。全国平均(2022)では開始率(申請件数に占める開始の割合)は87.6%ですが、桐生市では、最高でも78.0%であり、もっとも低い2018年度はわずか47.6%と、申請件数の半分以下しか保護開始していません。この開始率の低さの原因は、却下率・取下率の高さにあります。全国平均(2022)では却下率(申請件数に占める却下の割合)は7.5%、取下率(申請件数に占める取下の割合)4.6%ですが、桐生市では却下率が最高で47.6%(2018)、取下率が最高で9.1%(2015,2019)と非常に高い割合となっています。この却下・取下の実態について解明がなされる必要があります。却下・取下の徹底的な検証には、却下・取下したケースの最低生活費と収入・資産の状況について正確な調査が必要です。保護率が急減した期間において却下・取下された全ケースに対して、「最低生活費の算定及び、収入・資産の正確な把握がなされたうえで、適切に要否判定が行われていたか」、「取下理由は適切で、申請者が急迫状態に陥らないよう適切な配慮がなされていたか」、また、桐生市では印鑑が多数保管されていたことが報道されていたことから、「取下届」における印影を確認し、保管された印鑑と同一のものではないかを調査する必要があります。
 なお、高い却下率について、桐生市は「境界層却下」が多いことを理由として挙げていますが、近隣他市に比べて境界層却下の数が異様に多く、単に高齢化や高齢者施設数のみでは説明がつきません。要否判定や収入状況の把握が適切になされていたのか疑問があり、保護を適用すべきなのに「境界層却下」で対応していた疑いがあります。

・桐生市における高い却下率・取下率について、当該期間の却下・取下ケースを全件調査し、その実態について検証すること。
・特に境界層却下については、保護の要否判定や収入状況の把握が適切であったか検証すること。

(2)保護廃止時の対応の問題点
○辞退廃止

桐生市における保護廃止の事由別から、まず「辞退廃止」が際立っています。もっとも多い2014(H26)年には、廃止件数126件のうち26件で辞退廃止となっており、死亡による廃止63件を除けば(126件-63件=63件)、4割以上で辞退届を徴収していたことになります。
また、群馬県庁が実施する生活保護法施行事務監査においても、私たちが確認した2018(H30)年から2022(R5)年までの期間において、桐生市は「保護の廃止」(辞退届による廃止など)について不適切な対応がなされていたことが確認され、毎年監査指摘が行われています(出所:「群馬県庁地域福祉推進室保護係による生活保護法施行事務監査の実施結果」資料)。毎年、是正改善を求められていたにもかかわらず、なぜ(少なくとも)5年連続で、監査指摘が繰り返されていたのか、桐生市の保護の廃止時の対応について検証が必要です。具体的な検証として、保護辞退した全ケースに対して総点検を行うこと。また、ケース記録だけの検証では、限界があることから、当該期間に辞退廃止したケースに対してアンケート調査を行うなどによって、保護辞退が被保護者の真摯な意思によるものであったか(辞退の強要がなかったのか)を確認する必要があります。
加えて、申請取下と同様に、桐生市では印鑑が多数保管されていたことから、「辞退届」における印影を確認し、保管された印鑑と同一のものではないかを調査するべきです。

○施設入所による廃止について
 桐生市の廃止理由に占める「施設入所」が非常に高い割合となっています。全国平均(2022)では廃止件数に占める「施設入所」の割合は2.1%ですが、桐生市においては常時10%を上回っており、2022(R5)年は20.3%となっています。全国平均の5倍、10倍の割合は高齢化率を考慮しても異様です。「施設入所」による廃止は、入所それ自体のみをもって保護の廃止の要件とはなりません。施設入所による保護基準の変更等により保護の要否判定が行われ、最低生活費を上回る状態が確認された場合に、保護否となります。「施設入所が本人や家族の真摯な意向に沿ったものであったのか」、「施設入所時の実施責任や要否判定が適切になされていたのか」を検証する必要があります。

・辞退廃止の多さについて、当該期間の辞退廃止ケースの全件調査を行い、その実態について検証すること(特に辞退廃止した者についてケース記録による検証だけでなく、アンケート/インタビュー調査をするなどして当人の声を元に検証すること)。
・辞退届に押印された印鑑が、預かり保管されている印鑑を冒用したものでないか検証すること。
・施設入所を理由とした廃止については、その件数の高さを検証し、保護の要否判定や実施責任が適切であったか検証すること。

3 生活保護の実務運用上の問題点
(1)保護費の分割支給

 「公開質問状に対する回答」(p.18)によると、2018(H30)年度からの分割支給を行なっていた件数14件のうち、保護開始時から分割支給を行なっていた件数が9件(64%)、家計簿の提出をさせたうえで分割支給した件数が12件(86%)、1か月を超えて保護費の全額を渡していなかった件数が11件(79%)を占めています。
桐生市は、分割支給をおこなっていた理由として、「保護費のやりくりができない方や生活習慣に課題を抱えている方の自立に向けた支援のため」と回答していますが、生活保護利用者を管理・支配する道具として、明らかに違法な保護費の分割支給を活用していた疑いが濃厚です。
 保護費の分割支給自体は、すでに県庁から不適切な支給であったことも指摘があるところですが、その実態解明と再発防止のために、分割支給を行なった経緯について当時のケースワーカー、査察指導員を含めてどのような組織的決定がなされたのかを検証する必要があります。とくに、保護開始時点から分割支給を行なっていたケースについては、「保護費のやりくりができない/生活習慣に課題を抱えている」という理由をどうして把握できたのかも含めて明らかにされるべきです。
 また、「1か月を超えて保護費の全額を渡していなかった件数」11件に関しては、生活保護法第31条2項において「生活扶助のための保護金品は、1月分以内を限度として前渡するものとする」とあるとおり、明確に法律違反です。桐生市は現在まで、これらの対応について「不適切であったこと」を認めても、「生活保護法違反」であることは認めていません(但し、今回の回答書3(4)⑦「1か月を超えて、保護費の全額を支給することが正当化される法的根拠」については「なし」と回答しています)。上記の対応が違法であることを明確に認定し、かかる違法な運用を構築した者の責任が明らかにされるべきです。

・保護費の分割支給に至った組織的な経緯と担当者の判断について詳細な聞き取り調査等を行い、その判断の適否を実態解明すること。
・1か月分を超えて保護費の全額を渡していなかったことが違法であることを明確に認定し、かかる違法運用を構築した者の責任を明らかにすること。


(2)ハローワークへの通所指導

 桐生市においては、ハローワークへ毎日(またはそれに近い数)の通所を事実上指導され、その通所報告を半ば要件のようにして保護費の分割支給(日々支給)がなされていたとの報道があります。今回、「公開質問状に対する回答」(p.19)では、「ハローワークへ毎日(もしくはそれに近い数の)通所を指導した件数」として、2018(H30)〜2022(R4)年度にかけていずれも「0件」であるとの回答がありました。
 これは、報道にあったような事実については否定されるということでしょうか。それとも「指導のつもりはなかった」(支援や助言として行なった)ということでしょうか。仮にその場合は、福祉事務所職員と要保護者の間には大きな権力関係があり、要保護者は常に大きなプレッシャーを感じていることに対して無自覚であったことを指摘せざるをえません。
 また、同じ「公開質問状に対する回答」(p.18)の分割支給に関する項目で、「ハローワークに毎日通所するよう指導し、「求職活動状況・収入申告書」を提出させたうえで保護費の分割支給をしていた件数」として「1件」が計上されています。上記の回答と矛盾するものであり、桐生市の回答の正確性自体に疑念を生じさせます。先述したとおり、桐生市の保護率減少の要因の一つが、稼働世帯が多く含まれると言われる「その他世帯」の減少です。このことから、就労支援対象者に対して無理な指導・支援が行われていないかを検証する必要があります。

・ハローワークへの日々通所を含めて、稼働能力世帯に対して無理な就労指導が行われていないかを検証すること(就労支援員(警察OB)の支援対象者、CWによる就労指導を行なった対象者の指導状況を検証すること)。

(3)家計簿提出と保護の打切り

 「公開質問状に対する回答」(pp.18-19)によると、桐生市において「家計簿の提出を指導した件数」は集計資料のある範囲で、2019(R1)年度17件、2020(R2)年度11件、2021(R3)年度7件、2022(R4)年度15件が確認されています。この家計簿提出指導の対象者のうち、2019(R1)年度に2件、2020(R2)年度に1件、2022(R4)年度に1件の合計4件が辞退廃止をされています。この家計簿提出が本人の真摯な意思に則した支援ではなく、生活保護の受給継続を断念させるようなものとなっていなかったかについて、辞退廃止となったケースのケース記録等を踏まえて、直接本人への聴き取り等により実態が解明される必要があります。
 また、「平成31年度桐生市福祉事務所実施方針・事業計画」に次のような記載があります。




出所:平成31年度桐生市福祉事務所実施方針・事業計画


 桐生市の独自取り組みとして、「被保護者家計相談支援事業」を策定し、「金銭管理のできない対象者に対して、家計簿をつける習慣をつけることや、NPO法人による金銭管理の利用等を進めた結果、平成30年6月の時点での利用者の数が、成年後見人1名、社協の権利擁護17名、NPO法人37名、家計簿提出指導38名であったが、平成31年3月25現在、成年後見人0名、社協の権利擁護16名、NPO法人28名、家計簿提出指導17名となり、また、家計簿提出停止12名、保護廃止17名という結果となった」と記載されています。
この資料から、桐生市が、組織的に家計簿提出を求めていたこと、NPO法人による金銭管理の利用を勧めていたことがわかります。さらに、「家計簿提出指導17名、家計簿提出停止12名、保護廃止17名」を取り組みの成果として記載していることからすると、生活保護の打切りを目的として家計簿提出を活用していたことが強く疑われます。しかし、収入が増えない限り要保護性に変化はないはずであり、家計簿の提出がなぜ生活保護の打切りにつながるのか、その機序が不可解です(桐生市の回答第2の1⑫によると文書による指導指示件数は2018年が12件である以外は毎年0件であり、指導指示違反による停廃止でもなさそうです)。この家計簿提出(被保護者家計相談支援事業)の組織的運用の実態解明が必要です。

・家計簿提出を指導したケースについて、その指導の適否を検証すること。とくに、辞退廃止を含めて停廃止となったケースについては、指導(家計簿提出)が保護の受給継続を断念するようなものになっていなかったか、停廃止に向けた手続が適法であったかを本人への聞き取りも含めて検証すること。
・家計簿提出の取り組みとして、桐生市で策定した「被保護者家計相談支援事業」の事業経緯と組織的運用の実態解明を行うこと。

(4)金銭管理団体との関わりについて

「公開質問状に対する回答」(p.18)によると、「第三者に保護等の金銭管理が委託された件数」について、2022(R4)年度においては、1)成年後見人2件、2)社会福祉協議会の自立支援事業11件、3)民間団体(日本福祉サポート)26件、4)民間団体(ほほえみの会)29件、5)その他0件となっており、合計68件となる。
2022(R4)年度の被保護世帯数(490世帯)の実に13.9%が金銭管理団体に保護費の委託を行っていることとなる(うち、民間団体2社(26+29=55件)で、全保護世帯の11.2%)。
金銭管理は対象世帯にとって生活の根幹的行為であるが、金銭管理団体とのトラブル等により望まぬ金銭管理を強いられているとの声が、私たちのところにも届いている。(3)にして指摘したとおり、桐生市の実施方針において、「NPO法人による金銭管理の利用等を進めた」との記載があり、このような金銭管理団体の活用が、特定のNPO法人に偏った癒着構造になっていないか。また、金銭管理サービスの利用が、保護利用者の真摯な意思によるものであったのかを検証する必要がある。

・金銭管理団体の金銭管理サービスが、要保護者の権利擁護の視点から問題がないものであるかを検証すること(実際に金銭管理団体により金銭管理サービスを利用している利用者の声を聞き、その内容に問題がないか調査をすること。
・福祉事務所から金銭管理団体に紹介・斡旋を行う場合、金銭管理サービスの利用が必要と判断する場合の基準や目安、運用方法を明らかにして、それぞれの妥当性を検証すること。


(5)通院移送費支給額の異常な低さ
「公開質問状に対する回答」によると、桐生市の通院移送費の支給件数、支給額は下表の通りです。

表 通院移送費の支給件数、支給額


 通院移送費については、保護の実施要領に記載のあるとおり、要保護者の居住地等から比較的近距離に所在する医療機関での対応が困難な場合(徒歩等による通院が困難な場合)、電車・バス等(傷病・障害の状態により、公共交通機関の利用が困難な場合はタクシーなども含む)、生活扶助費とは別に、通院移送費の支給が認められています。また、厚生労働省も、通院交通費が支給できることを生活保護利用者に福祉事務所が周知することを求めています。
桐生市の地理的特性を鑑みれば、近隣の徒歩圏内に適切な医療機関が存在しないことがありうることは容易に想像ができますが、桐生市の被保護人員の規模から考えても、この支給件数、支給額はあまりに低すぎます。特に2022(R4)年においては、年間で8件2400円しか決定されておらず、全国的な傾向からしても異様な状態で、作為的な要因がなければ説明がつきません。この通院移送費の支給状況について検証が必要です。

・通院移送費の支給件数、支給額が著しく低い理由について検証すること。特に、要保護者に対して、通院移送費の適切な説明がなされていたか。支給申請を抑制するような事例がなかったかを検証すること(前年度支給していた世帯の支給状況などを点検・聴き取りすることが考えられる)。

4 組織配置における問題点
(1)警察OBの配置数の多さと趣旨を逸脱した活用

「公開質問状に対する回答」(p.15)によると、桐生市の保護係には、面接相談業務の補助として、2012(H24)年7月から1名、2013(H25)年4月から更に1名の計2名の警察OBが配置されています。この導入時期は、桐生市の保護率が急減した時期とほぼ重なります
また、就労支援相談員としても警察OBが1名配置されています。さらにそのほか同じ福祉課の別係(福祉係)の自立支援相談員(生活困窮者対策)としても1名警察OBが配置されています。警察OBを配置している自治体は、桐生市に限らず複数存在していますが、桐生市の福祉事務所の規模(ケースワーカー6名程度)を鑑みれば、警察OBが保護係で合計3名、福祉課全体(生活保護・生活困窮部局)で合計4名が常時配置されているというのは、他自治体の状況からしてもかなり異様な状況です。

○相談員(警察OB)
この警察OBについては、桐生市から群馬県警に対して毎回、退職警察官の紹介依頼を行なっています(下図)。



 さらに、群馬県警に要望している人材として、「警察官」(警部補、巡査部長、巡査長)のうち、刑事課等での暴力団対応経験者を希望していることもわかりました。







このように、相談者による威嚇行為や不当要求者への対応が必要であるとして警察OBを雇用しており、桐生市は、国からの国庫補助金も毎年受領しています(警察との連携協力体制強化事業)。
上記の事業目的は、「暴力団関係者や威嚇行為、不当要求等に対応するため」としていますが、桐生市は、新規相談・面接では、相談員(警察OB)を原則同席させて2名体制で対応するルールを敷いていることが、私たちが群馬県庁から情報公開請求により入手した桐生市の生活保護監査資料によると明らかになりました。



出所:桐生市令和5年度生活保護法施行事務監査資料


 「公開質問状に対する回答」(p.15)によると、相談員(警察OB)の相談窓口における年間対応件数(新規面接相談における件数)は、2022(R4)年で132件となっており、桐生市の2022(R4)年の相談件数が延べ件数79件、実件数73件を上回る件数となっています。また、私たちが独自入手した相談員(警察OB)の対応記録(帳票)などを見ても、暴力団関係者や不当要求者に限定せず、相談のほとんどに警察OBが同席しています。
このような対応は上記の事業の趣旨目的を大きく逸脱していると考えられ、結果的に生活困窮している相談者や申請者を大きく萎縮させる「水際作戦」としての効果を持っていたことが強く疑われます。

○就労支援相談員(警察OB)

桐生市では、被保護者就労支援事業(生活保護法第55条の7)に基づく事業として、就労支援相談員を雇用していますが、この就労支援相談員は代々群馬県警から退職警察官の斡旋依頼を行なっています。
 この就労支援相談員の配置については、厚生労働省は下記の通知のなかで、「キャリアコンサルタントや産業カウンセラー等の資格を有する者やハローワークOB等の就労支援業務に従事した経験のある者など(中略)であることが望ましい」と示しています。


出所:「被保護者就労支援事業の実施について」(平成27年3月31日付 社援保発0331第20号 厚生労働省社会・援護局保護課長通知

 桐生市は、この就労支援相談員を警察OBから斡旋していますが、その理由を「専門性による」としています。しかしながら、警察OBの専門性は犯罪捜査にあるのであり、困窮者に対する就労支援の専門性として、警察OBの専門性を持ち出すのは明らかに不合理です。
 さらに、独自入手した就労支援相談員(警察OB)の対応記録(帳票)をみると、要保護者の新規相談・新規訪問の場に、この就労支援相談員(警察OB)が同席・帯同している場面が見られました。このような利用方法は、就労支援事業の枠組みを大きく逸脱するものであり、要保護者の権利擁護の面からも、国庫負担金の適正な利用の面からも大きな疑念があります。
 すでに報道でなされているとおり、桐生市は、ハローワークへの毎日通所を保護費支給の条件にしていた疑いが報じられています。このように強引な就労指導などの場面において、警察OBが活用されていた実態の解明と影響の検証が必要です。

 なお、相談員(警察OB:警察との連携協力体制強化事業)、就労支援相談員(警察OB:被保護者就労支援事業)による、各種相談員の業務目的、業務内容(業務の範囲)等の内容を規定する実施要領(要綱)の提出を情報公開請求にて求めたところ、桐生市はいずれの事業においても実施要領等の書類は作成していないとの回答がありました。警察OBの各種相談員に無限定に業務を丸投げするものであり、上記の事業において、実施要領等を整備していない他自治体の例は聞いたことがありません。この点についても行政運用として適切であったかどうかを検証されるべきです。

・警察OBの業務役割、実際の業務内容について、帳票等から実態を明らかにする(実際の窓口相談件数、ケース訪問等への帯同件数を調査する)。
・相談員(警察OB)の業務内容、対象範囲について、警察との連携協力強化事業が想定している範囲を超えて、対応していなかったか(相談者、申請者のすべてを対象とするなど)検証する。
・就労支援相談員について、警察OBとして雇用するようになった経緯とその適格性を検証する。
・就労支援相談員の業務内容について、帳票等から実態を明らかにする(新規相談への同席など、その業務の役割を大きく逸脱していることはなかったか調査する)。


(2)女性職員比率の低さ
「公開質問状に対する回答」(p.11)によると、保護係職員の男女比は2022(R4)年で男性81.8%、女性18.2%、2023(R5)年で男性90.0%、女性10.0%となっています。市職員全体の男女比(2019-2023年度)では女性職員の割合が3割を超えていることからすれば、保護係の男女比率には大きな偏りがあり、女性職員の比率の低さが際立っています。さらに、「回答」では保護係職員全体の男女比を回答されていますが、桐生市の生活保護監査資料によると、生活保護ケースワーカー、地区担当員、管理職に占める女性職員比率は毎年0%であり、女性職員は「医療・介護担当」「庶務・経理・統計担当」「レセプト点検(非常勤)」の事務職員のみです。
 他の自治体(かつての神奈川県小田原市等)の例でも、ケースワーカーや査察指導員に占める女性職員比率が低い自治体において、母子世帯等への厳しい対応を行なっている事例が散見されます。また、私たちが桐生市に対して情報公開請求により入手した「桐生市福祉事務所実施方針・事業計画」によると、桐生市福祉事務所は、「女性CWの配置」を毎年度人事・財政担当部局に要請していることがわかりました。毎年要請しているにもかかわらず、現在に至るまで女性職員が配置されていなかった理由について検証される必要があります。
 また、第三者委員会の第1回会議にて、桐生市から提出された「桐生市の生活保護業務の概要」によると、「3 保護係における職場研修および相談体制」(6頁)のなかで、「基本的には新規相談者が来た際は、該当地区の担当CWと相談員(会計年度職員)の2名で対応する。女性の相談者の場合は該当地区の担当CW及び女性職員で対応している」との記載がありますが、これは「医療・介護担当」や「庶務・経理担当」の女性職員に同席させていたということでしょうか?実際に、年間の女性相談者に対して、そのような事例が何件あったのか、を具体的な数値として提出いただき、その適否も含めて検証する必要があります。

・保護係における男女比の偏りと、福祉事務所からの女性CW要請についての人事・財政部局の対応について検証を行うこと。
・女性の新規相談者に対して、女性職員を同席させていた件数について調査・検証すること。



第3 上記を踏まえた要望
1 上記の調査分析を踏まえた上で、それぞれの問題点についてはさらに詳細な検証が必要である。各項目において検証のポイントを列挙しているので、桐生市の生活保護行政における違法・不適切事案の実態解明と再発防止のために、徹底した実態解明に役立てていただき、効果的で生活保護利用者の権利擁護に資する改善策の実施を行うこと。
  特に、警察官OBについては、直ちに本来の職域(対行政暴力事案等)に関与業務を限定し面接相談や就労相談への関与をやめさせること、警察官OBをはじめとする職員らに対する人権教育を徹底すること。

2 すでに桐生市の調査においても不適切事案の一部について概要が明らかとなり、対応・改善策(8点)が示されているが(令和6年3月27日「保護係職員による不適切事案の概要)、これらの改善策については直ちに行うこと。
以 上



2024/4/8




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