文庫本になってたこの本を、数年前に購入したのは虎ノ門書房だったか。個人輸入ビジネスをやっている主人公が、街のあちこちで食べた一人飯の記録という地味な漫画なのだが、これが、何の山場もない割に、奇妙に面白かった。
今回、寿司関係の本を再発注した際に、Amazonのお勧めに「新装版」なるものが出てきたので、つい発注。Amazon使うと、自然とロング・テイルの売上に貢献することになる(笑)。
主人公は、若干時代に逆らってか、乗り遅れてか生きてるような、真面目で無骨な人間なのだが、仕事で訪れたあちこちの街で、一人で食事することになる。これが、毎回、どういう訳か時間が外れて、しかも腹はペコペコ。飛び込みで知らない店に入るものの、目当てのものが無かったり、注文がダブってしまったり。毎回なにかこう、上手く行かない点が出てくるのだが、そんなじれったいところも、ある種人生のリアリティを感じて、なかなか面白い。
今回の新装版の後書きにある対談によると、店の名前は変えてあるものの、対象の店はすべて実在し、これは原作者が実際に訪問取材して、その写真に基いて漫画が描かれているのだそうである。
石神井公園や江ノ島を扱った回は、孤独と追憶の間を彷徨う、「ひとり飯」の奇妙な醍醐味を十分に感じさせて秀逸。主人公はお酒が1滴も呑めないという設定なのだが、ビールやら熱燗なんか飲むと、さらに風情があったのだがなあ。
もっとも、原作者によると、主人公を酒飲みにすると、決められたページで終わらなくなる、というのである。まあ、確かにそうかもしれない(笑)
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