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歌舞伎座「三月大歌舞伎」、夜の部。「伊勢音頭恋寝刃」
歌舞伎座三月大歌舞伎 「夜の部」を見たのは次の週。開場直前に何時も以上に人がごった返している気がする。団体のお客さんか。

最初は、通し狂言 「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」

伊勢参りで賑わう伊勢の遊郭、油屋で何人もの遊女を斬った実際の刃傷沙汰を歌舞伎に取り入れた作品。本作は、刃傷沙汰を骨格に、伊勢参りを司るコーディネータである「御師」を主人公に据え、伝家の妖刀、その折り紙、密書などの、ヒッチコック映画でいう所謂「マクガフィン」を入れ込んで大作に仕上げている。

歌舞伎座での通し上映は60何年かぶりというが、「追駈け」からは見た記憶がある。

主役の御師、福岡貢を幸四郎。何でも器用にそつなくこなす役者であるが、やはりこういった役が本役というべきだろうか。

今田万次郎が菊之助。愛之助の料理人喜助

前半の、「相の山」、「宿屋」、「追駈け」、「地蔵前」、「二見ヶ浦」などでは、それぞれの段でコミカルな場面も多く、出る役者にとっては、しどころもある芝居なのだろうが、どうもいまいち見ごたえがなかった。配役にも座組の限界があるかな。

「追駈け」では役者が舞台を降りて客席を巡る。すぐ近くまで歌昇が来て面白かった。かなり小柄なんだねえ。ただ、まあこんな役をやらなくてもとは感じたけれども。

よく上演される後半、「油屋」「奥庭」 の段では、伊勢遊郭の豪華な風情や伊勢音頭の総踊り、妖刀青江下坂に魅入られた貢の凄惨な刃傷など、見どころも多い。

彌十郎が演じる不器量な遊女油屋お鹿は、貢に恋慕するのだが、取り合ってもらえず、逆に万野が仕掛けで、金を無心する貢の偽物の手紙を信じて金を騙し取られ、最後は妖刀の力に操られる貢に斬られてしまうのだから、まあ踏んだり蹴ったりで誠にお疲れさま。

他にも、彦三郎、市蔵、高麗蔵、彌十郎、又五郎、雀右衛門、魁春など豪華出演陣なのだが、通しでやると物語が散漫で、取り敢えず最初から最後まで段取りでやってみましたという風で、なんとなく終わってしまったという感あり。

大詰では、まるで「籠釣瓶花街酔醒」のように、妖刀に魅入られた幸四郎、貢が次々人を切る。一種のホラー風味であるが、最後は奴を切って、愛之助の板前が血糊を拭き「お見事」と声をかける。見得が決まってチョンと柝が入り、舞台の明かりが煌々とついて終わりとなる。

あれよあれよという間に全部片付きましたという、いわば能天気な終わりなのだが、何人も人を斬っている訳だから、「お見事」で終わられてもなあという釈然としない気がするのであった。

つぎの演目は「喜撰(きせん)」。 松緑の喜撰法師も見たかったのだが、よんどころない事情で歌舞伎座を出て帰路に。

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