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歌舞伎座、一月 「壽 初春大歌舞伎」昼の部
正月五日は、歌舞伎座、一月「壽 初春大歌舞伎」。昼の部。、

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昼の部はまず、「當辰歳歌舞伎賑(あたるたつどしかぶきのにぎわい)」として短い舞踊が二題。

「五人三番叟」は若手の五人が元気よく踊る。鷹之資が一番安定している気がするが、中村福之助、歌之助、玉太郎、虎之介もそれぞれに元気があり、動きに個性があって面白い。

次の「英獅子」は、江戸情緒溢れる吉原を舞台に、芸者と鳶頭が粋に踊る。こちらは雀右衛門、鴈治郎、又五郎の円熟味あるベテラン勢。

次の演目は、松緑が講談から歌舞伎化を企画した新作歌舞伎、「荒川十太夫(あらかわじゅうだゆう)」の再演。
竹柴潤一 脚本、西森英行 演出。

講談でも人気のある赤穂義士伝のひとつ。忠臣蔵外伝。吉良上野介を討って本懐を果たした義士達は、裁きが決まるまで幾つかの藩邸に預かりとなるのだが、御公儀の決定は切腹。堀部安兵衛を介錯した侍、伊予松山藩松平家の下級武士、荒川十太夫を巡る物語。

1年ほど前の初演から比べても、話の筋立てがスッキリした。

初演の時の堀部安兵衛は猿之助。使命を果たし終えた安堵と幸福感の中「冥途の土産に」と介錯人の名前と位を訪ね「立派な人に最期に立ち合って貰える自分は幸せ者だ」と語る姿は泣かせた。そしてこれが十太夫のトラウマとなる伏線。まあ今回の中車も悪くないのだが。

主演の荒川十太夫は松緑。無骨で真っすぐに思い詰める主人公は彼のニンにあり、実に印象的な人物造形となっている。

松平隠岐守定直は坂東亀蔵。怜悧で理に沿わぬ疑問については十太夫を鋭く問い詰めるが、理解も情もある殿様を爽やかに演じる。松緑との息もよく合っている。

松平家目付役、杉田五左衛門役の吉之丞は口跡も立派。厳格ながら道理を弁え部下への思いやりを持った上級武士としての懐深い貫禄を見せる。さすが吉右衛門の部屋子から鍛え上げた播磨屋という気がする。

大石主税は松緑の息子、左近。若干16歳で切腹の場に向かう内蔵助の息子役。切腹に向かう花道の回想シーンは、凛々しくも悲しい。

左近は正月の歌舞伎番組で「私事ながら今年で高校卒業、これからは勉学を気にせずに芸の習得に励めます」と語って、親父の松緑から「でもまだ卒業は決まってないよな」と釘を差されたのが面白かった。染五郎や團子など同世代の若い世代と切磋琢磨して歌舞伎を支える力になってほしいね。

小品ながら繰り返しの再演にも耐える良くできた演目。講談が語り継いで来た物語はあなどれない。これからも再演を続けてほしいものである。

35分の幕間には、玄関ロビーで、昔の火消し伝統を残す、江戸消防記念会による「木遣り始め」が披露され、三本締め。

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昼の部、切りは、「狐狸狐狸ばなし(こりこりばなし)」

喜劇仕立てで、毒婦と、間男されてもぼんやりしていたような旦那が見せる狐と狸の化かしあいのようなどんでん返し。

千住芸者上がりの奔放に生きる毒婦、おきわを尾上右近が達者に演じてなかなか印象的な活躍。最後は自分の三味線で「金毘羅船船」まで歌って見せる。

雇人又市を演じる染五郎も、なかなか達者な演技で新境地を開く役を立派に演じた。

幸四郎は、おきわと並ぶ主役である手拭い屋伊之助。元々なんでもやる芸域の広い人ではあるのだが、女房に間男されてもボンヤリしている「暖簾に腕押し」の部分はまだ良いにしても、後半のどんでん返し部分になると、この役の持っている奥底のあくどい所がちょっと持ちきれない感あり。

法印重善の錦之助も、色男ぶりは板についているが、やはり小悪党っぽい所になると、どうも役にはまらない。やはり本当は、凄みのある悪党も出来るが妙な愛嬌もあるようなアクの強い俳優たちが演じるべき役なのだろう。

結構客席は沸いたが、終わってみると演目に出てくるのは悪党ばかりで、若干後味は良くないか。まあどんでん返しの繰り返しで気楽に見れるといえばその通りだが。

歌舞伎座を出て、この日の夜は「新ばし しみづ」で本年初の寿司。

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