Author:稲美弥彦(russki83mirovoi9)
ロシアやイラン、中国などの反欧米国家に関する情報等について説明して行きます。
国内、韓国、欧米メディアの批判や交通政策などについても語ります。
終戦まで現人神(あらひとがみ)だった天皇は畏怖の対象だったが、人間宣言の結果、いまでは天皇は身近な親しみやすい存在となった。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者・慶應大学教授の片山杜秀氏が、皇室と日本について語り合った。
* * *
片山:どんなに近づいても親しみを覚えても、日本人にとって天皇は神であることに変わらない。天皇をただの人間と捉えるのは、あまりにも原理主義的な考え方でしょう。神だったはずの存在が、人間のなりをして手を振ってくれるから、日本人はありがたがるわけです。
佐藤:だから、神がより身近になったわけですね。
片山:そう思います。ただの人間なら愛新覚羅溥儀のように1人の人民になればいい。でもそうはならなかった。そこに天皇制を廃して、共和制に移行しようという議論に進まない鍵があるような気がします。
佐藤:もしも60年代、70年代なら生前退位が問題になったとき、左派の論客や政治家は間違いなく共和制への移行の議論を行ったはずですからね。
片山:でも今回は誰も共和制に触れようともしなかった。それはご指摘のような天皇の存在感に変化が起こったからと言えますね。
佐藤:片山さんが『未完のファシズム』で明らかになさったように、戦前の日本のファシズムが未完で終わるのは、天皇の存在があったからです。日本で天皇を越えようとする権力を持とうとすると、必ず反発が起こる。だから国を1つに束ね切れなかった。
その構図はいまも生きていると思うんです。私はのちに平成、そしてポスト平成は「未完のファシズム」ならぬ「未完の新自由主義」の時代と評されるのではないかと考えているのです。
片山:平成に入り、小泉純一郎と竹中平蔵が構造改革を行って、新自由主義を推し進めようとしましたが、中途半端に終わってしまった。確かに日本で新自由主義は完成していない。
しかしその過程で、これまで社会の中心だった地域や組織などが崩壊し、その構成員だった一人一人の国民が個として独立するアトム的な社会が生まれてしまった。
佐藤:そこが現代社会を読み解く上で重要な点と思います。では、なぜ日本で徹底した競争が浸透しないのか。それは、アトム化した個々が中途半端に結びつこうとするからではないかと思うのです。
片山:なるほど。戦前は天皇のくびきで日本は束ね切れず、平成はそのくびきがアトム化した個々を結合させていると。
佐藤:そう感じます。学生を見ていてもアメリカや中国でグローバルスタンダードの切った、張ったの勝負に出ようとしないでしょう。留学する学生も減った。保守は保守でも、生活保守主義が蔓延している。
片山:生活保守主義とポスト平成という言葉で連想するのが、皇太子です。皇太子と言えば、多くの人が雅子妃に関する「人格否定発言」を思い出すのではないでしょうか。あの発言で家族を必死になって守るイメージが国民に定着した。
佐藤:おっしゃるように皇太子は、自分の家族だけを大切にする戦後の核家族のイメージに重なりますね。
片山:何よりも今上天皇は象徴として被災地や沖縄に足を運び続けたが、皇太子はどんな価値観や考えを持っているのか。それがまったく見えてこない。
佐藤:皇太子は菊のカーテンに守られています。一方、国民に身近さを感じさせる役割を弟の秋篠宮が担っている。ただ眞子内親王の婚約内定者の小室圭さんの登場で、宮内庁の危機管理能力の欠如が明らかになった。
片山:あれには心底驚きましたね(苦笑)。危機管理どころか、身体検査も行われていなかったとは……。
佐藤:冒頭の秋篠宮発言に話を戻せば、官邸と皇室の対立は今上天皇の譲位で終結するのではなく、次の代に継承されることが明らかになった。それがポスト平成にどう影響するのか。
片山:次の天皇が戦後民主主義を守ってきた今上天皇の立場を引き継ぐのかがポイントになりますね。
佐藤:新しい時代が訪れたとき、我々は2016年のおことばとあの秋篠宮発言が、日本のターニングポイントだったと思う日がくるのかもしれませんね。
◆さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。片山杜秀氏との本誌対談をまとめた『平成史』が発売中。
◆かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究者。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』。
※SAPIO2019年1・2月号
◆〔特別情報1〕
「黒い貴族」の大番頭であるフランスのマクロン大統領は2018年11月11日、パリで開かれた第1次世界大戦終戦100周年の記念式典で、「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプ米大統領を「悪魔」と称して厳しく批判した。
フランスとドイツは、「資源争奪」をめぐり第1次、第2次世界大戦を勃発させた「帝国主義国家」だったのを忘れて、フランスを助けてくれた米国の恩を忘れてトランプ米大統領を批判しているけれど、これは、いつまでも米国に頼ろうとする甘えである。
マクロン大統領はトランプ大統領が、「NATOからの離脱」を宣言して「もういい加減独り立ちせよ」と迫っている主旨を理解していない。そればかりか、「ルノーと日産を経営統合」させて、事実上、日産を乗っ取ろうとしている。
トランプ大統領は、米CIA要員を動かして、「黄色いベスト」の「反マクロン派」デモ隊を煽って、帝国主義丸出しのマクロン大統領を辞任に追い込もうとしている。
天皇陛下のごく側にいる吉備太秦は、以下のように説明する。
年間13万3778件という過去最多の虐待件数をよそに、児童相談所の建設は反対された。東京・南青山、そして、大阪でも同様の反対も起こっていた…。
2017年11月、東京・南青山の一角にあった約1000坪の国有地を港区が約72憶円で購入した。さらに約32億円をかけて「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」を建設し2021年4月の開設を目指す、一大プロジェクトがあることを発表した。
施設には児童相談所のほか、子育て相談などができる「子ども家庭支援センター」や、養育が困難な母子家庭が入居する「母子生活支援施設」が併設予定である。
しかし、それから約1年後の2018年10月、施設建設のために港区が開いた説明会で、反対派の住民が区の担当者に猛然と噛みついたのだ。この様子がテレビなどのニュースで取りざたされた。
さらに2016年、大阪市北区にあるタワーマンション内に「北部こども相談センター」(児相)を開設する計画が持ち上がった。現場は梅田からほど近くて交通の便がよく、有名芸能人も居住する高級マンションである。
大阪市は政令指定都市のなかで虐待相談件数が最も多いにもかかわらず、市内に児相は2か所しかなかった。そこで3か所目として、計画が出されたのだ。東京でも、大阪でも、反対派住民の大きな反対理由は、児相設立による「治安の悪化」と「資産価値の低下」だ。
だが専門家は、いずれの要因も「現実に起こる可能性は少ない」と指摘する。元東京都児相相談員で心理司の山脇由貴子さんはこう語る。
「非行の子供について心配する人が多いのですが、一時保護された子供たちが児相で過ごすのは原則2か月のみで、その後は児童自立支援施設や児童養護施設などに送られます。 また、基本的に居住スペースには鍵がかけられているので、脱走は現実的に不可能です」
保護された子供の心情を考慮しても、治安悪化は考えにくいと山脇さんは続ける。
「非行で保護された子供たちは、早く家に帰って仲間に会うためには、施設でおとなしくすべきだと知っています。下手に脱走したり暴れたりしたら、家庭裁判所送りになることもわかっている。児相による一時保護には非行を抑止する絶大な効果があり、非行に走った子供や虐待された子供を放置する方が、よほど地域の治安が悪化するのです」
児相の一時保護所で過ごした経験を持つ漫画家の上野りゅうじんさん(38才)が、当事者としての意見を述べる。
「児相に保護されている家族は自分たちの問題解決に必死で、周辺住民に嫌がらせをしたり地域のイメージを汚したりすることまで考える余裕はありません。それに一時保護所は一般的に非公開で、簡単に出入りできる施設ではありません。地域に影響を与えることはめったにないように思います」
不動産コンサルタントの長嶋修さんは「地価下落説」を一笑に付す。
「確かに南青山は都内でも有数の一等地で、不動産価値は日本トップクラスです。ただし一般的に不動産の資産価値が落ちるのは、におい、騒音、振動やトラックの往来などがあって日常生活に支障をきたす迷惑施設が周辺にある場合。例えば工場や葬儀場、鉄道や幹線道路などが該当します。しかし、児相はそうした迷惑施設ではなく、これまで児相ができて不動産価格が下がった事例は1つもありません」
つまり、児相の建設に対する主立った反対理由は根拠を欠くものばかりだ。
※女性セブン2019年1月31日号