村野瀬玲奈の秘書課広報室

　　

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物価上昇のきざしと物価上昇の現実。そして、給与は上がらないだろうという見通し。そして、消費税値上げ。そして、雇用の非正規化と不安定化。多くの日本国民にとって、生活を楽にする政策や現実はほとんど無いか、非常に少ないです。そのうえ、経済成長をめざして行われるそれらの国民イジメ政策の後で仮に経済が「成長」したとして、その果実が国民に広く分配される約束が安倍政権のもとではなされたわけではありません。つまり、仮に果実が生み出されるとしても、安倍政権のもとではそれはすでに経済の恩恵を受けている層がさらに恩恵を受けるだけだと予想できます。

消費の一部に「好調」の分野があるとしても、それは富裕層に限られていたり、一時の期待による限定的なものであったり、長く続くものではないというのが現実的判断だと思います。

そんな現状を取材した報道記事をお持ち帰りで読みましょう。

●毎日ｊｐ(毎日新聞)
特集ワイド:続報真相　悪い物価上昇の足音が聞こえる…
http://mainichi.jp/feature/news/20130809dde012020002000c.html
http://mainichi.jp/feature/news/20130809dde012020002000c2.html
http://mainichi.jp/feature/news/20130809dde012020002000c3.html
http://mainichi.jp/feature/news/20130809dde012020002000c4.html
毎日新聞　2013年08月09日　東京夕刊

　物価がじわじわ上がっている。「２年間で２％」の上昇目標を掲げデフレ脱却を狙う安倍晋三政権・日本銀行の思惑通りだが、同時に所得も上がらなければ庶民にとっては迷惑なだけ。モノが売れなくなりデフレに舞い戻る「悪い物価上昇」に陥りかねない。いまが正念場というのだが−−。

　◇アベノミクスでも所得増は望み薄？

　東京都内の飲食店で働くアルバイトの男性（４０）の時給は９００円。今のところ上がる見込みはない。結婚している同僚たちは一つのアルバイトでは生活できす、睡眠時間を削って二つ三つ掛け持ちしている。「アベノミクスの恩恵なんて……僕らには全くありません」。老後の蓄えは、大病をしたら、と将来への不安が頭をよぎる毎日だ。

　彼らの悲鳴とは裏腹に、数字を見ると賃金は底打ち感を示している。

　厚生労働省の６月の毎月勤労統計調査によると、現金給付総額は前年同月比０・１％とわずかながらプラスに転じた（５月はマイナス０・１％）。ボーナスが伸びたためで、安倍政権の経済政策であるアベノミクス効果が出ていると言えなくもない。「輸出産業を中心に業績が改善しているのは確か。それらの企業はある程度、ボーナスで社員に還元しようという姿勢に転じており、賃金が下がり続ける状態は脱した」。日本総合研究所調査部長の山田久さんはそうみる。「ただし、ポイントはこの先です。多くの企業が基本給を含む所定内給与を上げるのか、さらに派遣社員やパートタイマーにまで波及するのか。基本給に触れると退職金などに跳ね返り、企業負担が重くなる。経営者はそこまでの自信は取り戻せていません」

　「所定内給与アップは当面、先送りされるだろう」と語るのは日鉄住金総研チーフエコノミストの北井義久さんだ。理由として北井さんは、長い賃下げ時代の影響の大きさを挙げる。

　「１９９０年代、日本企業の国際競争力を維持するため、自民党は人件費を含めたコストを下げやすい政策を打った。派遣労働を製造現場にも広げるなど規制緩和したのが一例です。その間、ＩＴバブルの崩壊、リーマン・ショック、そして東日本大震災が相次ぎ、もうかるようになってからも経営者の頭の中からは所定内給与を上げるという考えが消えてしまった」

　事実、米国やドイツの賃金は右肩上がりであるのに対して、日本は９０年代後半から下落傾向が続いている＝グラフ。６月の勤労統計調査で所定内給与はマイナス０・２％と１３カ月連続の減少。パートタイマーへの現金給付総額も依然マイナスだ。

　ならば、このままアベノミクスが“好調”を維持すればどうなるのか。「来年の春闘で本格的な賃上げを」と多くの労働者が期待するが、山田さんは「まだ難しい」とみる。「多くの企業はグローバル競争を続けていかなければならないし、少子化で人口が減るので国内売り上げの持続的な伸びは期待できない。この状況を変えるのは難しく、経営者は賃金を上げたくない思いの方が強いでしょう」

　賃上げを巡る労働組合側の動きも必ずしも活発とは言えないようだ。「一度上げた賃金は簡単には下げられず、景気が悪化するとリストラなどの雇用調整に発展するリスクが出てきます。『賃金は上がらなくても雇用を守ってくれればいい』というのが労組側の本音ではないでしょうか」

　安倍首相は最終決断をしていないものの、来年４月には消費税の８％への増税が控えており、賃金問題にも影を落としている。ニッセイ基礎研究所経済調査室長の斎藤太郎さんが言う。「消費税率が３％引き上げられると、家賃や授業料など非課税対象を除き、消費者物価は必然的に２％程度上がります。この部分は企業の売り上げ増には結びつきません。むしろ消費者の買い控えで売り上げが減るかもしれない。ある社長は早くも『消費増税が実施されれば賃金を下げるのが当然』と言っていましたよ」

　◇円安に原油高、個人消費冷やす

　一方の物価の動きを検証してみよう。

　春以降、生活に密着するものの値上げラッシュが止まらない。小麦粉、食パン、オリーブ・ゴマ油、削りぶし、ハンバーガー……いずれも理由は円安による原材料高だ。ハムやソーセージのように価格は据え置きつつ内容量を減らして実質的には値上げとなった品目も少なくない。

　味の素は今月、冷凍野菜１９品目を値上げ（出荷価格、以下同）し、２０日からはから揚げやハンバーグなど７品目も上げる。日本水産も来月、枝豆や鶏肉を使った冷凍食品を平均１０％値上げする。同社の金田進専務は「当社は年間約２億ドル分を輸入している。急激な円安で輸入コストが上がり、企業努力だけでは吸収しきれない。再値上げも検討している」と苦しい経営環境を吐露する。雪印メグミルクは１０月に牛乳や乳飲料などを１〜４％上げる。背景には輸入に頼る配合飼料の値上がりがある。

　一連の値上げの影響で６月の全国消費者物価指数は前年同月比０・４％上昇。原油や穀物の高騰で１・０％の上昇となった２００８年１１月以来４年７カ月ぶりの上昇率だ。小売り現場ではまだ多くの商品の店頭価格が据え置かれているとはいえ、消費者は値上げの大波を感じ始めている。日銀が５〜６月に実施した「生活意識に関するアンケート調査」によると、１年前に比べ物価が「上がった」と答えた人が半数を超えているのだ。

　そこに追い打ちを掛けるのが原油高だ。円安とともに中東情勢の不安定化による供給減の直撃を受け、国内のガソリン価格（レギュラーガソリンの全国平均）は１リットル１６０円を超えた。前出の斎藤さんが懸念するのは、円安は輸出企業の収益を改善するというメリットがあるが、原油高は石油製品の値上がりというマイナスしかないことだ。

　「足元の景気回復を支えているのは輸出産業ともう一つ、個人消費の拡大です。賃金こそ上がらないものの、アベノミクスへの期待で消費者心理が明るくなり、高額品が売れ外食などのサービス産業も恩恵を受けている。消費増税前の駆け込みが重なった住宅購入も好調です。しかし、一連の物価上昇が原油高でさらに加速すれば、個人消費を大きく冷やしかねないのです」。そして、こう警告する。「来春以降、消費増税に伴い必然的に上がる２％に円安などによる上昇分を加え、３％程度の物価上昇が予想されています。とすれば賃金も３％上げなければ可処分所得は下がってしまいますが、実際は消費増税で景気は悪くなると考えられているので３％の賃上げなど無理でしょう。家計を絶望的な状況が襲います」

　そうなれば、政府・日銀が描く「物価上昇＋賃金上昇→需要増→企業の売り上げ増」の好循環となる「良い物価上昇」は夢のまた夢。逆に値上げだけが先行して家計の実質所得が低下、消費が冷え込む「悪い物価上昇」が現実味を帯びる。すると一時的には物価が上昇したとしてもデフレに逆戻りしてしまう。

　その「足音」が聞こえる。

　「食料品に加え、電気代などが上がり金のやりくりは厳しいですね。公営住宅の家賃が安いから何とかやっていけていますが」。妻と子供を抱え、量販店や飲食店などで三つのアルバイトをこなす男性（３７）がぼやく。家計を助けるために妻が一時、介護施設で働いたが、夜勤と子育ての両立が難しく退職。男性が１日１０〜１２時間働く。先月の参院選は棄権した。「投票時間中にも仕事を入れたので。稼がないと生活ができない。政治に期待？　何も……」

　ここに紹介したアルバイトの男性２人を取材した労働経済ジャーナリストの小林美希さんは「失業率は改善していますが、ワーキングプアの非正規労働者が増えただけ」と言う。ボーナスの上がり下がりすら無縁の世界がある。

　今はデフレ脱却のための一時的な苦しみなのか。日本は消費増税の判断とともに重大な局面を迎えている。「再びデフレ経済に舞い戻ったら、もう抜け出せないかもしれない」。山田さんの言葉が現実にならないことを祈りたいのだが……。【内野雅一】

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　◇「特集ワイド」へご意見、ご感想を

[email protected]

ファクス０３・３２１２・０２７９

（転載ここまで）

この記事は悪くないとは思いますが、不満もあります。たとえば、次のところ。

厚生労働省の６月の毎月勤労統計調査によると、現金給付総額は前年同月比０・１％とわずかながらプラスに転じた（５月はマイナス０・１％）。ボーナスが伸びたためで、安倍政権の経済政策であるアベノミクス効果が出ていると言えなくもない。

（引用ここまで）

たった0.1%の増加。これをアベノミクスの成果とは、ずいぶん針小棒大な話です。さすがにこの報道記事では「...
と言えなくもない」と控えめに表現しています。具体的には、0.1%って、たとえば月30万円もらっている人にとっては300円です。平均値でこれですから、増えた人もいるでしょうけど、増えなかった人もいるでしょうし、減った人だっているはずです。ボーナスが伸びたというなら、業種別、所得層別、雇用形態別に、伸びた額や割合を記事の中に示すべきです。あるいは、厚生労働省はもっと詳しく調べるべきです。全労働者の何%がボーナス増額の恩恵にあずかったのか、このような記事ではそういう情報も必要です。

一方、この記事の良いところは、『事実、米国やドイツの賃金は右肩上がりであるのに対して、日本は９０年代後半から下落傾向が続いている＝グラフ。６月の勤労統計調査で所定内給与はマイナス０・２％と１３カ月連続の減少。パートタイマーへの現金給付総額も依然マイナスだ。』という記述。そういう事実をこそ、毎日新聞はもっと続けて力を入れて報道して、読者や国民に知らせるべきです。そして、労働者側や国民側はその事実を政権や経営者に突き付けて、賃上げがないと国民の生活水準は向上しないと言って賃上げの要求の根拠とする必要があります。

恩恵を受けた人がいる一方で、恩恵を全く受けない人もいるという、この経済の流れのまだら模様から、アベノミクスとは経済の恩恵を恵まれた層に回したうえで恵まれない層には経済の犠牲をしわ寄せすることであると私はますます強く思いました。


さらに一般的なことを言うと、一部の明るい業界や高額所得層だけを取り上げてアベノミクスの効果と政権自身やマスコミが持ち上げるのもやめるべきです。どのような所得層や業種が恩恵を受け、どのような所得層や業種が苦境にあるかをきめ細かく調べたうえで、苦境にある所得層や業種に特に焦点を当てて報道すべきです。苦しいところをまず支えるのが物事の順序というものですから、明るい所得層や業種だけにスポットを当てて「経済回復のきざし」などと言っても何も意味はありません。

そして、政府は、経済の恩恵が偏らないようにして、犠牲のしわ寄せを少なくする政策を実施すべきです。そうでなければ、政府の存在意義はありません。

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