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方言小話:三の助

方言小話:三の助 その1

ある所に、貧しい百姓がいたんだな。

親に早く死なれてなや、嫁も貰い損ねてすまってな。

一人暮らしさ。
三の助 1
おんぼろの小さい家に、一寸した畑があってなや。

もうはぁ・・、欲もなく何となく生きてる毎日だったんだな。




【続く】

久しぶりの小話になります。
あんまり深く考えていないので、細切れになるかもしれませんが、
お気楽にお付き合いください。



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方言小話:三の助 その2

方言小話:三の助 その2

その男の名は、三の助でがんす。

三の助は、三番目の男の子でがんしてな、
学校を卒業して、都会に就職してたんだ。

ところがだよ、長男と二男が不慮の事故で無くなったんでがんすよ。

それで、家に呼び戻されたんだな。
都会の生活にも少し慣れたかなと思ってたたんだがな。
家の事じゃ、しょうがないと帰って来たんだ。

所がよ、父と母も相次いで病気で亡くなったのでがんす。
それでな、生きてる事がイヤになる毎日でがんしてなや。

村人との付き合いも無く、一人で暮らしてるのでがんすよ。

畑を耕す力も入らないものでなや。
この分じゃ、食うのも取れるかどうか心配なことでがんした。
三の助 2

「まあ、オレ一人分の食料があればいいよ、
腹も減らないし・・・」

などと、ブツブツいいながら、クワを振りあげていると、
畑の隅に何かが横たわっていたんだな。

「おい、何だお前はよ・・」

見ると山に住む獣のようでがんした。
三の助 3
三の助は、倒れている獣に近づき、触るとピクピクしているんだな。

「怪我でもしたか・・」

「しょうがねぇなー」

三の助は、このままだと、他の獣やカラスに狙われてしまうからと、
木の根元に運んでやったのでがんした。


【続く】


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方言小話:三の助 その3

方言小話:三の助 その3

畑の隅に倒れていた獣を、
三の助は、木の根元に運んでやったのでがんした。

「まあ・・しょうがないな、助かる助からないは、運だべな」

三の助は、その場を去ったのでがんす。

その頃、獣の親が探してたんだな。

「ありゃぁ、いたーいたー、こんなとこにいた」
「何したんだよ、全く~、おい大丈夫か」
三の助 4
獣の親達は、介抱して森の中へ連れていいたのでがんした。

三の助は、まあ相変わらずでがんしたな。

夢も希望ないってのかな、
ここを捨てて、もう一度都会へ出て行った方が良かんべか。
などとも思うけど。

この年で、いかほどの事が出来るものでもないだろうし。
ああ、つまらなえな・・。
三の助 5
電気もガスも無い生活でがんしたよ。

止められてるからな、電話もテレビも無いんだな。
家財道具も、小銭が必要な時に売っぱらってるから、
さっぱり、なくなってしまったな。

家に帰ると、寝ることしかないのでがんす。

ほんに、哀れな三の助でがんした。

ひと月ばかり経ったある日、玄関の外で声をかけて来るのがあったのでがんす。


【続く】









方言小話:三の助 その4

方言小話:三の助 その4

誰かが外で戸を叩いていたのでがんすよ。

「もーし、もし、三の助さん、居るでがんすかー」
三の助 6
それは、あの助けたと言うか、倒れていたのを木陰まで運んだ、
獣の親子だったのでがんすたな。

昼寝をしていた三の助は、目を覚ました。

「どなたか知れないが、開いてるでがんすよー、入ってくなんせ」

「そりゃ~・・どうも失礼いたしやんす」

獣の親子は、家の中へ入ったのがんした。
三の助 7
「私は、近くの山に住む、タヌ吉でがんす、
この度は、息子を助けて頂いて、ありがとうございやんすた」

「えー・・、この俺が助けた・・、はて・・、そんな事があったかなや」

「ほら、あの・・、ひと月ほど前に、畑で倒れてたのを介抱して貰ってもんでがんすよ」

「あー・・そいえば、そんな事があったなや、ふでもオラは運んでやっただけだ」

「それで・・、何かお礼をと思ってやってきたのでがんす」

「礼 ! 礼などいらんよ・・、別に欲しい物もないし・・」

「まあ、大した事はできないけど」

タヌ吉親子は、何かお礼をしたいと、云うのでがんしたな。

【続く】

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方言小話:三の助 その5

方言小話:三の助 その5

タヌ吉は、助けられたお礼をしたいと言うのでがんす。

三の助は、特に欲しいものは無いから礼など何もいらないと言うしな。
三の助 8
まあ、なかなか話がまとまらないのでがんした。

「それじゃ、オラ達も畑の仕事を手伝うってのはどうでがんすか」

「畑の仕事をするって・・」

「そうでがんす、オラ達親子が手伝うでがんすよ」

「畑の仕事は、大変だしつまらねぇよ」

「いやいや、任せてくださいよ」

「うーん、まあいいか、好きなように」

てな事で、タヌ吉親子は、三の助の畑の仕事を手伝う事になったのでがんす。

タヌ吉親子は、早速次の日からやってきたんだな。
三の助 9
「ふんじゃ、オラ達も同じようにやりますんでな、何でも言いつけてくだせー」

三の助は、獣の親子が本当にやってきたので驚いたのでがんすよ。

「そうか、じゃ怪我をしないようにな」

タヌ吉親子は、母ちゃんがタヌ子で、息子はタンタンでがんした。

「ほれ、タンタン、オメもこっちさ来い」

「うん、分かった父ちゃん」

タヌ吉親子は、三の助の側で畑の仕事をするのであった。

【続く】

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プロフィール

大坊峠のツッチー

Author:大坊峠のツッチー
岩手県は北緯40°に位置する岩手町から地域の情報を発信します。山里で農業を営み、昭和26年生まれの人生と、方言による創作小話・童話を綴ります。尚、作品は著作権とし、無断使用はお断りします。

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