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虫に刺された男

台也文土 作

畑で作業をしていたら、虫に刺された。

手袋していたのだが、その上から刺したようだ。

ズキズキと痛み出した。

作業を止めて、手袋を取ると、赤く腫れている。

これは、まずいと、家に戻り薬を捜して、患部に塗った。

「ちょいと、アンタ何してんの」

妻が入って来た。

「ギャーーー」

俺の顔を見るなり、そのまま外へ飛び出していった。

何事かと、俺は鏡を見た。

な・・なんと、俺は巨大なアブになっていた。

「ひぇーー・・・」
アブになった pe
外から声が聞こえてきた。

「何だって、バケモンがいるんだって」

「目が光っていたってか」

妻が近所の衆を呼んだらしい。

【続く】

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虫に刺された男  2

台也文土  作

俺は、アブになっていた。

外が騒がしい。

カマとか。棍棒を持った人達が、家に押しかけてきているようだ。

「こらーー、化け物ーー出てこい」

なんだよ、参ったな、虫に刺されただけだよ。

窓から覗くと、弘とか武志もいる。

「おい、オレだよ・・・オレ」

あれ・・、声にならない、どうしたんだろう。

「おーー、いたぞ、あそこの部屋だ、逃がすなよ」

「ぶっ殺せーー」

「ありゃ~・・、人数が増えて来たな、隣の婆さんも来たな、

由吉爺さんもいる、オレだよー」

「バケモンだってか、どりゃどりゃ」

「まり、近づくな、あぶねえぞ」

このままだと、棒で叩かれるな、どうしよう。

そうか、オレは羽根を持ってんだ。もしかしたら飛べるのか。

オレは、窓から外へ飛び出した。

「ウハッ・・・、飛べた飛べた、、気持ちいいな」

「わーーっ、窓から逃げたぞーー」

「おーーでっけえ、何だありゃ・・・」

「アブだぁ、アブぅ・・・」

人間ほどの大きいアブが、空を飛んでいる。

異様である。皆は驚くと共に、空を見上げてポカンと口を開けている。

空を飛ぶ、オレは空中を飛行する面白さに酔いしれていた。

「ああ、何て素晴らしい。目は高角度で見ることができる。鼻はないのか

口はこれか、尖っているな、針みたいだ。あそうか、これで刺すんだ」

オレは、体をチェックした。

時速どの位かな、急降下、反転をしてみると、まあまあ、やれる。

「よし、あいつら、オレを殺そうとしたな、この針の口ばしで刺してやろうか

弘だな、あいつ一番の友達だと思ってたが、カマ持ってオレを殺そうとした、許せない」

オレは、弘に近づき急降下をして、露出している首筋を狙った。

弘は、大きなアブが飛んできたので、一目散に逃げ、転んだ。

オレは、隙を狙って刺そうと襲いかかった。

と、その時

ズッドーンと、音がした。

オレは、警察官のピストルに撃たれて倒れた。
休んでる男 ペ
「ちょいとアンタ、何やってんのよ、こんなトコで」

オレは、草刈り機を枕にして寝ていた。

美しい妻が、大きな声をだして、叫ぶのである。

「さっぱり、仕事はかどってないじゃん」

オレは、虫に刺された手をさすりながら起きあがり、

草刈り機のエンジンをかけて、作業を始めた。

【お終い】

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プロフィール

大坊峠のツッチー

Author:大坊峠のツッチー
岩手県は北緯40°に位置する岩手町から地域の情報を発信します。山里で農業を営み、昭和26年生まれの人生と、方言による創作小話・童話を綴ります。尚、作品は著作権とし、無断使用はお断りします。

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