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雪ん子

雪んこ
雪ん子

北国のこの村は、冬になると
すっぽりと雪に覆われてな
あたり一面、真っ白になるんだよ。

元気のいいワラス達も外さ出て
遊ぶのに、たいそう難儀したもんだ。

ところが、雪が降ると、何すてか外さではって
喜ぶ雪子という女子ワラスがいたんだと。

「なして、このワラスは雪が積もってるの外さ出はるべ
黙ってコタツさ入ってろ」
て、言われも
「ふだって、雪は真っ白くて気持ちいいべ」
と言って、じっとしてなかったどさ。

ある朝起きたら、雪が一杯積もっていて、
ワラスの背丈を越えて、とても外には出ることは
出来ねなと、大人たちは窓から眺めていたど。

そんな時でも雪子は、窓からっするっと降りて外へ出て、
雪の中にズボッと入って行ったど。

モグラみてに歩いたど。
どこまでもどこまでも歩いたど。

雪子は、大きな声で歌を歌いながら、雪の中を歩くんだと。
真っ白な雪の中から女の子の声がするんだと。

不思議だなと、耳を澄ませていると、
家の前に雪子が顔を出して
「遊ぶんべ」
と、言ってその家の中に入ってきてワラスと一緒に
遊んだんだと。

そして、又雪の中を帰って行くんだと。

ある日、大雪が降って、何時ものように
喜んで雪の中さ入って出て行ったけども、
帰ってこなかったんだと。

捜したど
「雪子、ゆきこ~」
何日も捜したが見つからなかったど。

春になって雪が溶けて
村中の人で捜したけども、やっぱり
見つからなかったど。

「雪子は、雪と一緒に溶けてしまったなや」
と、言ってあきらめたど。

それから、冬が来て雪が積もると、
何処からか女子ワラスの歌声が聞こえて来るんだと。

「ああ、雪子が、雪の中を歩いてるな」
村の人たちは、耳を澄ませて聞くんだと。


Appendix

プロフィール

大坊峠のツッチー

Author:大坊峠のツッチー
岩手県は北緯40°に位置する岩手町から地域の情報を発信します。山里で農業を営み、昭和26年生まれの人生と、方言による創作小話・童話を綴ります。尚、作品は著作権とし、無断使用はお断りします。

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