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青い目の人形メリーーちゃん

青い目の人形メリーちゃん
アタイの名はメリー
青い目の人形メリーって云うの
少しなまってるって
そりゃそうだよ、アタイは、ここさ来て
もう、80年以上になるんだもの
沼宮内小学校さ来たのは昭和2年頃だったかな
日米親善だということでね
沢山の人形がアメリカから渡って来たのよ
アタイの事は校長先生が講堂に、みんなを集めて
紹介してけだの
子供らは、みんなビックリしてね
だってさ、髪の毛は黄色いし
目は青いいんだもん
そしてね、抱かれると
「ママー、ママーッ」
て泣くのよ
みんなして、可愛がって
話しかけてけでね
だから、アタイはさ、オメさんがたの
しゃべるのがわかるんだよ
アタイの悲しかったのは
日本とアメリカが戦争した時だよ
敵の人形だから
「捨てろ、壊せ、燃やせ」
て、毎日言われてさ
おっかなかった
なんじょになるかと思ってらった
それでね誰かが隠してけだのさ
だども、そのまんま忘れてしまったの
一所懸命叫んでたのよ
「誰か、誰かアタイを見つけて」
昭和40年頃だったかな
元気のいい女の子が
奥の部屋に遊びにきたの
「あんりゃ、可愛い人形だこと」
って、手に取ってけだの
でも、元にかえされてね
そして平成になったある日にね
その女の子が大人になって
思いだしてけだの
「私、小学校で青い目の人形を見たよ」
それで、お婆さん達と一緒になって
捜してけだのよ
「あったー、いたよ。メリーちゃんだ」
「本当だ、メリーちゃんだよ」
「良かった、生きてんだね」
お婆さんは、アタイが小学校に来た時の
子供達だったのよ
嬉しかった、覚えてたよその声
でもね、私もお婆さんになって、もう
「ママーッ」
って、泣けないの
だって、50年も一人でいたんだもの
それからはさ、体を洗ったり新しい着物を
着せてくれたりしてけでさ
もう、大変
ありがとう、うれしい
毎日友達に会えるし話しかけてくれる
小学校はいいな
毎年新しい友達がきてくれる
ひな祭りには祝ってくれる
歌を歌い話しかけてくれる
ずっとずっとここにいたいよ
お婆さん達も来てね
だって、友達だもん