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カッパのカン太郎
カッパのカン太郎
昔は何処の川にも、河童はいたもんだ。
夏になると、村のワラスと一緒になって遊んでたもんだよ。
ある時、ワラスが泳いでると、
カッパのカン太郎が、サーッと追い越して行って、
邪魔ばっかりするもんだから、
ワラスが怒ってしまってな、
「やい、カン太郎。オラは泳ぐのは負けるけども、
土の上で走るのなら負けね」
って、言ったのさ。
そしたら、カン太郎も、
「へん、川の中だろうが、土の上だろうが、オメ何かにまけね」
って、競争することにしたんだとさ。
ヨーイ、ドンで走ったらワラスが勝ったどさ。
カン太郎は、悔しく泣きながら川の家に帰ったとさ。
親父が出てきて、怒ったどさ。
「人間のワラスに負けるとは情けねえ奴だ、河童の恥だ」
次の日から、カン太郎の特訓が始まったとさ。
そして、ワラスと勝負をさせたんだと。
だけども負けたんどさ。
川の中でカン太郎が泣いてる声を、河童の親分が聞いたどさ。
「河童の力を見せてやれ」
河童の若いのを集めて走らせたんだとさ。
「ワッセ!ワッセ!」
の大きな声が響いたんだとさ。
一番早い奴を選んで、ワラスと競争させたんだとさ。
やっぱり負けたどさ。
何せ、河童は走ると頭のサラが揺れて、
水がこぼれ落ちて、力が抜けてしまんだとさ。
水をぶっかけてもダメだったとさ。
どうしても、勝ちたいと考えたどさ。
「よし、リレーだ」
と、言ってワラスに持ちかけたどさ。
ワラス達は、負けるわけがないと言って、
村にいる者を集めてきたど。
河童の女衆も集まって、応援したどさ。
始まるとカッパのカン太郎たちは、
思いっきり走ってタッチしたど。
今度は、河童の大勝利だったとさ。
「ヤッター、ヤッター」
大喜びでな、その日は踊ったり飲んだりで、
一晩中歌声がしたんだとさ。
次の日は、皆嬉しそうに川に入り、帰って行ったど。
カッパのカン太郎は、時折ワラスを捕まえちゃ、
競争したもんだとさ。
今は、川の水がすっかり汚くなってな、
どこかへ引っ越して行ってしまったなや。