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あもんこがくるぞ
★ あもんこがくるぞ
子供のころに、夜に兄弟喧嘩したり騒いでいたりすると、親から
「あもんこがくるぞ」と言われたものです。
不思議と、それを言われるとおとなしくなったものです。
あもんこという恐ろしい化け物が来て連れていかれるんではないかと
静まっていました。
今になって、その語源が、蒙古襲来にあるということが分かり
それを元に書いてみました。
この作品は、IBC(岩手放送)ラジオ番組放言詩の世界で放送されました。
子供のころに、夜に兄弟喧嘩したり騒いでいたりすると、親から
「あもんこがくるぞ」と言われたものです。
不思議と、それを言われるとおとなしくなったものです。
あもんこという恐ろしい化け物が来て連れていかれるんではないかと
静まっていました。
今になって、その語源が、蒙古襲来にあるということが分かり
それを元に書いてみました。
この作品は、IBC(岩手放送)ラジオ番組放言詩の世界で放送されました。
あもんこがくるぞ
★ あもんこがくるぞ
それは、それはずーっと昔の話だどもな、蒙古つう国がさ、
攻めてきたんだってさ。
日本の国中大騒ぎしてなや、騒動けしたのさ。
この辺の若い衆も集められて行ったもんだってよ。
何もかぬも、おっかなくてなや、人もいっぺい死んだそうだ。
二回も攻めて来たんだそうだが、神風が吹いてな、蒙古が逃げていったそうだ。
それでな、生け捕った蒙古の兵隊共を連れて来たんだとよ。
長い旅でな、ようやくたどり着いてな。
この先の宿場で休んでたのさ。
蒙古が来てるって聞いてな、男どもは見に行ったてよ。
神社の境内の端っこに、10人ばかりが鎖に繋がれいたどよ。
恐ろしい顔した大男にギョロっと睨まれたってな、
若い衆は、肝つぶして帰ってきたどさ。
「ありゃ、鬼よりおっかねじゃ」
って、村の皆さ教えたと。
その日の夜だよ。
「大変だ、大変だー」
て、叫んで来るのがいたのよ。
何すたべなって、外さではったらば、
蒙古が、逃げて山のほうへ行ったと息切らして言うわけよ。
さあさあ、村の衆はびっくりしてな、いつ山の方から襲って来るか分からねすな。
村の長が、皆を一か所さ集めたとさ。
女ごとか、ワラスを囲んで守るようにしたとさ。
「蒙古は、女ごとか、ワラスを食うらすじゃ」
って、誰かが言ったもんだから、
ワラス共は、たまげてすまってな、
「オラ、食われるのはイヤだーっ」
って、皆すて泣き叫んだとよ。
代官所で捜索隊をだして、一晩中探したんだとさ。
朝方になって、山の沢に隠れていたのをようやく捕まえたんだとさ。
それからだな、夜中にワラスが騒ぐと、
「蒙古が来るぞ」
て、言ったもんだってよ。
へっちょこ騒動
へっちょこ騒動
昔な、オラの村では、おドケだ男が多くてな、祭りがあると
喜んで遊びさ行って踊ってらったてよ。
この年も、盆が近づいてきて、踊る始めたどよ。
カカどぁは、
「この馬鹿こど、全くどうもならなえもんだなや」
って、ごしゃいでいたど。
盆踊りの太鼓の音がすると、若え男どもは、喜んで集まってきて
踊りだしたど。
この日は、天気が良くてな暑くて暑くてなや、
たまらなくなって、裸になってヘソだして踊ったんだと。
そしたら、雲の上にいた雷様が見てらったど。
「おーっ、ほっほー、面白え奴らがいるな」
って、ゴロゴロッゴロゴロッと、音たてて近づいてきたど。
踊りに夢中になってる男どもは、
「雷雲が来たか、一雨降ってくれればちょうどいいなや」
などと言って踊るのをや止めなかったてよ。
雷様は、真上まで来て、雨を降らせたとよ。
「いい雨だ、いい雨だ」
男どもは、濡れるのもかまわねで踊ってらったど。
雷様は、喜んで喜んで、
「わっはっはっ、わっはっはっ」
と、笑いながらゴロゴロと音を立てて雨を降らせ、ピカーッと
稲妻を光らせて、去って行ったど。
雨が上がり、男どもは一休みしたど。
「ああ、いい雨だった」
「ふんだ、ふだ」
て、言ったらったど。そしたら、
「ありゃ、オメ、ヘッチョがねえな、なんじょした」
って、言われて腹を見ると、ヘソが無くなっていたど。
背中の方を見ても、やっぱり無えかったど。
「オリャ、オメのヘッチョも無えじゃ、オメもだ」
裸になって踊っていた者は皆してヘソが無くなっていたど。
「こりゃ、困ったな」
「腹だか背中だかわからなくなったじゃ」
って、へたり込んだど。
そんな時、隣村から山を越えて踊りさカタる人が来たど。
「おーい、オラも、盆踊りさ入れてけろ」
「ああ、いいけども」
「ところでさ、山の上でな、珍すもの拾ったじゃ、これ何だべ」
って、トラの模様のした袋を出したど。
何だろうと袋を開けると、丸こいのが一杯入っていたど。
中から取り出して見たど。そしたらな、
「アリャ、これはオラのヘッチョだ」
って、取って腹さくっつけたど。
それを見て、皆してヘソを捜したど。
「あったー、これはオレのヘッチョだ」
とか、
「このヘッチョはデベソだからオラのじゃねえ」
などと、言いながらくっつけたど。
腹のヘソが元に収まったので、安心して家に帰ったど。
それからは、暑くてもヘソを出して踊ることは無くなったど。
家でへっちょこだんごを作ると、
「ごっちょになるでがんす」
と、手を合わせて食ったもんだってな。
カッパのカン太郎
カッパのカン太郎
昔は何処の川にも、河童はいたもんだ。
夏になると、村のワラスと一緒になって遊んでたもんだよ。
ある時、ワラスが泳いでると、
カッパのカン太郎が、サーッと追い越して行って、
邪魔ばっかりするもんだから、
ワラスが怒ってしまってな、
「やい、カン太郎。オラは泳ぐのは負けるけども、
土の上で走るのなら負けね」
って、言ったのさ。
そしたら、カン太郎も、
「へん、川の中だろうが、土の上だろうが、オメ何かにまけね」
って、競争することにしたんだとさ。
ヨーイ、ドンで走ったらワラスが勝ったどさ。
カン太郎は、悔しく泣きながら川の家に帰ったとさ。
親父が出てきて、怒ったどさ。
「人間のワラスに負けるとは情けねえ奴だ、河童の恥だ」
次の日から、カン太郎の特訓が始まったとさ。
そして、ワラスと勝負をさせたんだと。
だけども負けたんどさ。
川の中でカン太郎が泣いてる声を、河童の親分が聞いたどさ。
「河童の力を見せてやれ」
河童の若いのを集めて走らせたんだとさ。
「ワッセ!ワッセ!」
の大きな声が響いたんだとさ。
一番早い奴を選んで、ワラスと競争させたんだとさ。
やっぱり負けたどさ。
何せ、河童は走ると頭のサラが揺れて、
水がこぼれ落ちて、力が抜けてしまんだとさ。
水をぶっかけてもダメだったとさ。
どうしても、勝ちたいと考えたどさ。
「よし、リレーだ」
と、言ってワラスに持ちかけたどさ。
ワラス達は、負けるわけがないと言って、
村にいる者を集めてきたど。
河童の女衆も集まって、応援したどさ。
始まるとカッパのカン太郎たちは、
思いっきり走ってタッチしたど。
今度は、河童の大勝利だったとさ。
「ヤッター、ヤッター」
大喜びでな、その日は踊ったり飲んだりで、
一晩中歌声がしたんだとさ。
次の日は、皆嬉しそうに川に入り、帰って行ったど。
カッパのカン太郎は、時折ワラスを捕まえちゃ、
競争したもんだとさ。
今は、川の水がすっかり汚くなってな、
どこかへ引っ越して行ってしまったなや。
雪ん子
雪ん子
北国のこの村は、冬になると
すっぽりと雪に覆われてな
あたり一面、真っ白になるんだよ。
元気のいいワラス達も外さ出て
遊ぶのに、たいそう難儀したもんだ。
ところが、雪が降ると、何すてか外さではって
喜ぶ雪子という女子ワラスがいたんだと。
「なして、このワラスは雪が積もってるの外さ出はるべ
黙ってコタツさ入ってろ」
て、言われも
「ふだって、雪は真っ白くて気持ちいいべ」
と言って、じっとしてなかったどさ。
ある朝起きたら、雪が一杯積もっていて、
ワラスの背丈を越えて、とても外には出ることは
出来ねなと、大人たちは窓から眺めていたど。
そんな時でも雪子は、窓からっするっと降りて外へ出て、
雪の中にズボッと入って行ったど。
モグラみてに歩いたど。
どこまでもどこまでも歩いたど。
雪子は、大きな声で歌を歌いながら、雪の中を歩くんだと。
真っ白な雪の中から女の子の声がするんだと。
不思議だなと、耳を澄ませていると、
家の前に雪子が顔を出して
「遊ぶんべ」
と、言ってその家の中に入ってきてワラスと一緒に
遊んだんだと。
そして、又雪の中を帰って行くんだと。
ある日、大雪が降って、何時ものように
喜んで雪の中さ入って出て行ったけども、
帰ってこなかったんだと。
捜したど
「雪子、ゆきこ~」
何日も捜したが見つからなかったど。
春になって雪が溶けて
村中の人で捜したけども、やっぱり
見つからなかったど。
「雪子は、雪と一緒に溶けてしまったなや」
と、言ってあきらめたど。
それから、冬が来て雪が積もると、
何処からか女子ワラスの歌声が聞こえて来るんだと。
「ああ、雪子が、雪の中を歩いてるな」
村の人たちは、耳を澄ませて聞くんだと。