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タイムリーヒット
タイムリーヒット
「土谷、ピンチヒッターや、行け!」
監督がオレを指差した。
オラは、高校球児だ。3年間野球をやってきた。
レギュラーニなれなかったがが、黙々と練習をやってきた。
3年生のオラは、最後の県大会だ。
一回戦の相手は、甲子園に出場の経験もある強豪チームだ。
1対3で負けている。9回裏2アウト、ランナー2塁だ。
補欠でベンチ入りしているオラの背番号は10番。
チームの勝利を期して懸命に声を出して応援をしていた。
「えっ、ピンチヒッター オレが」
監督の目を見る。
「思い切って振って来い」
と云われ尻をポンと叩かれた。
「バッター、太田君に代わりまして土谷君」
アナンスが流れた。
ベンチの皆がオレを見る。
オラは、バットを握り素振りをする。
一礼をしバッターボックスに入った。
「あと、一人、あと、一人」
相手スタンドからのコールが響く。
「カットバセー、カットバセー」
我が応援団も負けジと大きなコール。
無我夢中だ、足がすくむ。
相手のピッチャーが、オラを見おろしてゆっくりしたモーションで投げた。
ビッシッ
「ストーーライク」
アンパイヤの大きな声。
「早えー、何だこれは」
オラは、手が出ない。
続いて一球、何としても食らいいてバットを振ろうとしたら
球がグット落ちた。
「わぁ、何だこの球は、見えね」
「ボーール」
アンパイアの声。
「よく見た、よく見た」
と、ベンチからの声。
「もしかして、今のはフォーク・・・」
オラは、もう頭が真っ白になった。
続いて3球目、速い球ストーレート。空振り。
内野スタンドから、大きなため息が伝わる。
バッターボックスを外して、手の汗を拭いて入りなおす。
ピッチャーが投げた、食らいつく。
ガシュ
かすって、ファウル。
「当たったぞ、振り遅れているぞ」
ベンチからの声。
「あと、一球、あと、一球」
相手スタンドの声はさらに高くなる。
ピッチャーは、代打のオラに直球で三振を取りに来る。
オラは、バットを短めに握りなおし構えた。
思いっきり振った。
カキーン
球は、内野を超えてセンターの右横へ飛んでいく。
「打ったぞー、打ったぞー」
ランナーが帰り、オラはセカンドまで進んだ。
我が高の応援席からの大歓声。
1点差だ、一打逆転だ。
「いいぞ、いいぞ、土谷」「サンキューー、サンキュー土谷」
オラは照れた。慣れない手を上げてガッツポーズをした。
次の打者は、内野ゴロでアウトになり
ゲームセット。
試合には負けたけど、オラはこの試合を生涯忘れない。
仕事とか、人生で、難しい局面に立たされても、
目をつむるとよみがえるんだ。
バッターボックスにいるオレが。
タイムリーヒットを打ち、大歓声がオラを包む。
オラは、タイムリーヒットを打てるんだ。
だから頑張れるんだ。