村野瀬玲奈の秘書課広報室

　　

東京都調布市が、情報公開請求をした市民の個人情報を漏らした事件が発生しています。記事を読んでみると単なるミスというよりも、悪質で意図的である可能性があると思われましたので、このような行為を行なう行政機関への市民からの抗議と警告の気持ちを込めてメモします。

まず、事件の概要を伝える新聞報道。

●東京新聞 TOKYO Web
調布市個人情報漏えい、身内も驚くずさん運用　「ミス」ではなく「そもそも送る必要はない」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/142329
2021年11月12日 06時00分

（前略）
　「調布市はいったい、何のために請求書の写しを提供したのか」。今回の問題で住所や氏名など個人情報の流出被害に遭った同市の男性（７４）は首をかしげる。請求では、東京外郭環状自動車道（外環道）の建設事業について、市が外部から提供も含めて保有する情報一式の公開を求めていた。
　外環道は国土交通省と東日本高速道路、中日本高速道路が建設する。請求書を漏えいした市の街づくり事業課によると、これら３者から提供された情報を市独自で公開の可否を判断しかねるため、情報提供元に照会。漏えいは、その際の「ミス」で、今回発覚したケース以外はないという。
（後略）

（引用ここまで）

この市民は公共事業をめぐっての情報を公開するように請求したわけです。公共事業はいろいろ不透明なことが多く、公共事業をめぐる行政と業者の癒着や不正行為のニュースはよく聞くので、市民がその内容に関心を持つことは民主主義の具体的な実践であり、当然のことです。

情報を漏らされた被害者側である市民の言い分と加害側の調布市担当課の言い分が次のニュースにさらに詳しく出ていますので、双方の言い分の部分を記録。

●TBS系（JNN）） - Yahoo!ニュース
東京・調布市が個人情報漏洩 被害男性「ミスでなく確信犯」
https://news.yahoo.co.jp/articles/344e5965a22e71822f5dfb2d342a833d9a89c50f
2021/11/12(金) 19:04配信

（前略）
情報を漏洩された男性
　「（情報が）送られている三者のなかで、しっかりと情報共有がされている。どの住民がどうだとか。この構造がみえてきたということで、非常に恐ろしくなりますね」

　情報漏洩について調布市は「ミスが原因」としていますが、調布市側が送ったとされるメールには、さらに、こんな文面がありました。

メールの文面
　「前回同様、取り扱い厳重注意でお願いいたします」

情報を漏洩された男性
　「向こうがミスだという話ではないと思う。僕は確信犯、意図的にわかってやっていると（思う）」

　１２日、ＪＮＮの取材に対し調布市の担当課は、「メールの内容についてはメールがすでに削除されているので確認できない」としたうえで、「『情報提供する』や『取り扱い厳重注意』という言葉は市民の相談を事業者に伝える場合などに定型文として使っていた」と意図的な情報漏洩は否定しています。（12日17:28）

（引用ここまで）

調布市の担当職員の行動は、「前回同様、取り扱い厳重注意でお願いいたします」などの注意書きを添えて繰り返しなされた行為です。うっかりしたヒューマンエラーとは言えません。何らかの意図をもって行なわれた行為である可能性が高いと判断できます。

では、調布市のお詫びと言い訳を、いずれ消されるだろうと思うので、記録保全の意味も兼ねて同市のサイトから記録してみてみましょう。

●調布市
個人情報の漏えいに関するお詫びと御報告
https://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1636529131772/index_k.html
2021年11月10日 登録

都市整備部街づくり事業課におきまして、市民から請求のあった市政情報公開請求書の個人情報を漏えいする事案が発生いたしました。
関係者には、多大なる御迷惑と御心配をおかけし、深くお詫び申し上げます。

1　概要
請求者の請求内容に、市以外のものに関する情報が記録されていたことから、「調布市情報公開条例」に基づき、市以外のものの意見を聴く必要がありました。
このため、意見を聴く必要のある関係機関に対して連絡する際に、請求者の個人情報が含まれた情報公開請求書を本日までに計9枚送付しました。その際に個人情報にマスキングを施すことを怠り、個人情報が漏えいする事案が発生いたしました。
日々の業務を行うなかで、個人情報保護への職員の意識が希薄であったことによるミスが本事案を発生させた要因です。請求者に対しては謝罪申し上げるとともに、今後このような事案を発生させないよう、再発防止に取り組むことを御説明しました。
また、送付先である関係機関に対しては、市で確認を行い、「本資料は内容を確認後、適正に破棄した」との回答を得ています。

2　漏えいした情報
請求者の住所、氏名、電話番号、電子メールアドレス

3　今後の対応について
個人情報の取扱いは、法令等に基づき適正に管理することが求められており、二度と今回のような事案を発生させないよう、改めて個人情報保護に関わる手引の周知徹底や職員研修を実施し、再発防止に取り組んで参ります。

このページのお問い合わせ先
都市整備部 街づくり事業課

電話番号：042-481-7587
ファクス番号：042-481-6800
メールアドレス：[email protected]

（転載ここまで）

一番最初にリンクした東京新聞の記事の中には、市役所内の人も含めてさまざまな立場の人の見解が紹介されています。「そもそも外部に送る必要はない」、「個人情報を隠したとしても、請求書を第三者に送ることは考えられない」、「照会先に具体的に資料を示し、開示範囲を擦り合わせれば足りる」、「照会手続きで請求書を第三者に渡すことはありえない。市は外環道について、国交省や東日本高速などとの境界線を見失って一体化しているのでは」という見解です。

それを踏まえて調布市のウェブサイトの「お詫びと御報告」を見ると、ひたすら「個人情報保護への職員の意識が希薄であったことによるミス」としています。

しかし、「請求書の写しを提供」することが行政手続き上決められているわけではないことは上の東京新聞の記事でわかります。ならば、通常の行政手続きを超えた個人情報漏洩行為を担当職員が行なったことはケアレスミスではなくて意図的なことであるとみなされてもやむをえないのです。そうすると、何の意図で行なったのかと問わなければなりませんが、考えられることとしては、東京外郭環状自動車道（外環道）の建設事業を推進する側から情報公開請求した市民に対して何らかのアクション、たとえばスラップ訴訟を起こすよう暗示したということでしょうか。断言はできませんが、市民の側からは行政にそのような暗示を行なう意思があったという可能性を想定することは無駄ではないはずです。

一方、個人情報保護への調布市職員の意識が希薄であったなら、それは職員教育を怠っていた調布市の責任ですし、職員の行ないを適切に管理できていなかった調布市の責任です。法令に基づいて適切に管理することを調布市は怠ったのですから、仮にそれを単なるミスとして片づけて担当職員やその上司の処分も行なわなかったのならば、調布市の個人情報保護への意識不足や法令順守意識不足が改められたと判断するわけにはいきません。担当職員や上司の処分を行なったのならそれをこの「お詫びと御報告」できちんと書くべきであり、一方、担当職員や上司の処分を行なっていないのならさらに大問題です。

上記の東京新聞の記事にあった、ＮＰＯ法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の「市は外環道について、国交省や東日本高速などとの境界線を見失って一体化しているのでは」という指摘に真実味を感じざるをえません。


さて、この調布市の事件をこうしてメモしたのは、これと似たような事例が他にもあるからです。次のツイートが指摘しています。

最悪だ。調布市の住民情報漏らし＞田中良杉並区政も同じ住民情報漏洩で、住民が事業者からスラップ訴訟をかけられた。高円寺小中一貫校建設反対、近隣の中心的住民を狙って建設妨害の訴訟を事業者に起こさせた事件＞東京・調布 住宅地の陥没抗議、住民の個人情報 市が漏えい｜https://t.co/6CyVjVPwOn

— みずのや (@mizunoyak) November 11, 2021

近隣住民が工事車両を監視するのに立っていただけでスラップ訴訟をかけられた。当人は心労で入院する事態に＞公的に声を上げた個人に対する権力側の嫌がらせ訴訟。カリフォルニア州では禁じる法律、反スラップ法もあるほど反社会的な行為。杉並区が事業者に個人情報を漏らさない限り成立しなかった訴訟

— みずのや (@mizunoyak) November 12, 2021

で、その東京都杉並区のスラップ訴訟（SLAPP訴訟、恫喝訴訟）の例についてグーグル検索してみて、杉並区議会議員の次の記事がありました。

●山田耕平の公式ブログ（日本共産党　杉並区議会議員）
スラップ訴訟を起こした高円寺小中一貫校建設業者 住民説明会で隠し撮り 重大な人権侵害
http://yamadakohei.jp/2017/06/post-706.html
山田耕平
(2017年6月 9日 23:44

http://yamadakohei.jp/news/%E9%80%B1%E5%88%8A%E5%B1%B1%E7%94%B0%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9272.pdf

東京都杉並区内で行なわれる小中一貫学校の大規模な建設計画に抗議する住民に対して、杉並区は計画を強行し、工事業者が住民に対してスラップ訴訟（SLAPP訴訟、恫喝訴訟）を行ないました。

現実に工事業者が住民に対して恫喝訴訟を起こす人権侵害の事例がある以上、最初にメモした調布市の事例も、そのように警戒して観察すべきであると思いました。

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●国会議員への投書のための「議員一覧ポータルサイト」 (1)→国会議員いちらんリスト - 政治家（衆議院議員475名 & 参議院議員242名）に声を届けたい人のためのサイト ; (2)→http://publistella.jp/
●メディア一覧 - 私たちの声を国会へ→http://rpj-action.jimdo.com/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E4%B8%80%E8%A6%A7/
●他の社会系ブログに行くにはうちの「私的リンク集　（適宜更新）」経由で→http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-136.html

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