村野瀬玲奈の秘書課広報室

　　


「2000年シドニーオリンピック閉会式の意味を2021年東京五輪の今振り返る」の記事で、2020年シドニー五輪閉会式でオーストラリアの国民的ロックバンド、ミッドナイト・オイル Midnight Oil とアボリジナル・オーストラリアンのロックポップバンド、ヨスー・インディ Yothu Yindi がたいへんに印象的なパフォーマンス、あえて言うなら（言葉の良い意味で）たいへんに効果的で前向きな政治的パフォーマンスを成功させた話をしました。

今回は、そんなミッドナイト・オイルの曲の中から、不定期連載「世界の反戦歌・反戦詩から」の記事の一つとして、二つの反戦歌あるいは反核歌を取り上げようと思います。見ていただければわかりますが、8月9日でなく8月6日に出すべき記事だったとも言えますけど。

▼Short momory
　　長続きしない記憶

　　　　1982年
　　　　歌・演奏： Midnight Oil　ミッドナイト・オイル
　　　　作詞・作曲： Peter Garrett, Rob Hirst, Jim Moginie
　　　　曲はたとえばこちらから　https://www.youtube.com/watch?v=ufqlbaurJPw

メキシコを征服したスペイン人
ズールー族とナバホ族
コンゴのベルギー人
バージニア州のプランテーション
英国のインド支配
南アフリカの期限
長続きしない記憶力

エルサルバドルの物語
広島の静寂
カンボジアの破壊

短い記憶力　私たちの記憶はきっと長続きしないのだ

ナイル川沿いのホテルからの景色
ヒルトンスタイルと指定され
特別購入の流水もある

一人のこじんまりした男、アフガニスタン
怖がりの土地に番犬が一匹
彼らは手を貸すためだけにそこにいる
友達のような五人、ほこりっぽい微笑み
真夜中に汗びっしょりで目を覚ます
テントの中には新しいライフルがある　おい、記憶とははかないものだよ

歴史書を読めばわかる、同じことが何度も何度も繰り返されている
繰り返し、繰り返し、短い記憶力　彼らみんなにあるのは短い記憶力
私たちが再びそれをして遊ぶのはいつだろう
短い、短い、短い、短い
短い記憶力　私たちの記憶はきっと長続きしないのだ
短い記憶力、彼らにあるのはそれだけ

（歌詞翻訳ここまで）

1982年の第4作アルバム、「10, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1」に収録されたミディアムスローのナンバー。テーマは、帝国主義や植民地主義の西欧諸国が歴史の中で繰り返してきた侵略や搾取や蛮行の告発。

16世紀に中南米を侵略したスペイン、英国による南アフリカでのズールー戦争、白人による北米先住民であるナバホ族の搾取、ベルギーによる中部アフリカコンゴの植民地化、アメリカ白人による黒人奴隷搾取、英国によるインド支配、広島への原爆投下、ロシア（当時はソビエト連邦）によるアフガニスタン侵略などを列挙しながら、これらの蛮行を忘れてはならないと訴えます。「忘却との闘い」の宣言です。

蛮行といえば大日本帝国によるアジア侵略も蛮行ですが、この曲で取り上げられているのは西欧による中南米、アジア、アフリカ、北米先住民や黒人などへの蛮行や搾取だけです。私個人は日本のアジア侵略もこの歌詞に入れてもよかったのではないかと思っていますが...。この曲ではそれよりも核兵器の被害の大きさを強調したかったのだと受け止めます。

関連記事
http://newanthems.blogspot.com/2012/02/short-memory-midnight-oil.html

この曲を聴くなら、このライブバージョンがなかなか良いのではないかと思いました。




そして、もう一つ、広島が出てくる彼らの曲があります。次の「ハーキュリーズ」です。

▼Hercules
　　ハーキュリーズ

　　　　1985年
　　　　歌・演奏： Midnight Oil　ミッドナイト・オイル
　　　　作詞・作曲： Jim Moginie, Peter Garrett, Rob Hirst
　　　　曲はたとえばこちらから　https://www.youtube.com/watch?v=hih--64WkK0

私の命は貴重品
私はこのままでいたい
私は泣かない

私の命はこれほど貴重品
徐々に消えていかないものがある
私は気にしない
私たちはベストを尽くす
私たちは忘れない　私たちは許すことができない
放射性物質無しのままでいさせてほしい

広島平和記念公園の鐘を打ち鳴らせ
暗闇の中では見えないとわかっているだろうけど
ベストを尽くす　尽くす　尽くす

皆できみを敗走させた時
誰が飛行機の飛来を待っているというのか
南太平洋よ、めげずに続けよ

私たちが言い続けていることを
誰も話そうとしていないように思える
疑問を持つ時間はない

私はベストを尽くす
人間のジャングル、世界規模の動物園
なんとか道を見つけようと思う　ここはとても特別な世界

皆で私たちを敗走させた時
なぜ飛行機の飛来を待つのか
南太平洋よ、めげずに続けよ

ハーキュリーズが来る
潜水艦が来る
南太平洋の夢が沈んでゆく

（歌詞翻訳ここまで）

放射性物質による環境汚染を拒む意思がまず感じられます。あとは、オーストラリアを含む南太平洋地域での反核運動への激励でしょうか。いろいろ調べましたが、それぞれのフレーズの意味、この曲の全体の意味をすっきりと解説している情報ソースが見当たりませんでした。それでも、反核の呼びかけとして、広島平和記念公園の鐘を鳴らせというフレーズは印象的だと思います。

実は、ミッドナイト・オイルは1984年に発表したアルバム、「Red Sails in the Sunset」を日本の東京でレコーディングしていて、日本滞在中に広島を訪問しているということです。1985年発表のこの曲は広島訪問からのインスピレーションを受けた歌詞だと想像できます。ユーチューブ上にはライブバージョンがいろいろとアップロードされていて、バンドのクラシックソングとなっているようです。実際、パンキッシュなノイジーさと洗練が共存するようなロックンロール曲だと思います。

こちらのライブバージョンはいかがでしょうか。




と、今回はオーストラリアから広島へのメッセージを二つお届けしました。

不定期連載「世界の反戦歌・反戦詩から」の記事はリンク先からご覧ください。前回の記事は

■「ガザ Gaza」　マリリオン Marillion　（不定期連載「世界の反戦歌・反戦詩から」）
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-7924.html
2021/05/15 23:00


最後に。オーストラリアからのお客さんを広島に案内した時の思い出を語るこんなツイッターコメントがありましたので、こちらにも載せておきます。

憶えてる人も多いのでは、ミッドナイト・オイル。
2013年、デヴィッド・アレンさん(オーストラリア人)を広島原爆資料館に案内した後、彼が語ってくれたのはアボリジニの事でした。オーストラリアでも移住した白人が原住民アボリジニに酷いことをしたんだ、と。 https://t.co/oyGItWhuBg

— 本座村 (@honzamura) August 7, 2021

アボリジナル・オーストラリアンの歴史への理解なしにはオーストラリアへの理解も無い、ということだと心に留めたいと思います。

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