村野瀬玲奈の秘書課広報室

「タクシー運転手」を見たことはあります。村野瀬さんが紹介された軍部の兵士が知らないふりをして見逃したということですが，私が以前書き込んだように関東大震災の際に流言飛語がとびかい朝鮮人が虐殺される中，軍人である遠藤三郎が朝鮮人と中国人を保護し移送したことがありました。心ある人はいるものです。

　「金子文子と朴烈」の映画を見たときは，これは日本でのできごとなのになぜ韓国で作られ日本で作られなかったのかという疑問でした。
　「白バラの祈り」がドイツで作られたのであれば，冤罪事件である大逆事件を映画にする価値はあると思います。

　特攻隊や東条英機をテーマにした映画は作られますが，民主化や反戦をテーマにした映画は作られません。「行き行きて神軍」は兵士を殺害した上官の責任を暴力をもって問い詰める映画でしたが，あわせて天皇の戦争責任を問うものでした。今ではこのような映画を作ることは不可能と言われています。

　安倍晋三がテレビ局に報道内容の改変，注文など恫喝し，テレビ局は沈黙してしまいました。テレビ局は首相から恫喝されたことをテレビ番組で公表すればよいのです。国民が判断すればよいのです。

　2004年2月25日の朝日新聞は，民主党西村真吾議員が超党派の国会議員でつくる「教育基本法改正促進委員会」設立総会で，教育の究極の目的は国のために死ぬことをいとわない人間を作ることだと明言しました。
　大日本帝国の時代に戻って国家（天皇）のために死ぬべきであるという時代錯誤の妄言ですが，超党派というのがすごいところです。

　人間は国家や天皇のための手段であってはなりません。自由と平等が尊重され，基本的人権が譲り渡すことができないものであるのは，人間がなにかの手段ではなくて目的でなければならないからです。

　民主主義を800ｍ競争に例えるならば，日本は韓国に2周遅れくらいをやっと走っている状態かと思います。

日本人であることが恥ずかしいですね。
ああ、韓国人になりたいなあ。

「韓国民主化から北朝鮮民主化へ」（金永煥・新幹社）から一部引用します。


　八十年代初めのある日，ユネスコの総会に出席するためにフランスのパリに行った。当時の閔丙岐（ミン・ビョンギ）駐フランス大使と一緒にその会議に出席したのだが，会議初日に中国とソ連が韓国を猛非難して糾弾した。その少し前に起こった光州民主化運動に対する武力鎮圧を取り上げて出てきた発言だった。
　当時，その問題は海外で大きなスキャンダルとみなされていた。韓国代表の私たちとしては，本部の訓令に従って何か言い訳をする必要があったが，それは容易ではなかった。説明する論理が見当たらなかった。だからといって，聞いているばかりにもいかず，私たちは非常に困難な立場だった。
　「閔先輩，何か弁明する必要はありませんか?」
　同じ学校の卒業生なので，普段からも先輩と呼んでいた閔大使を数回促したが，彼は出ていくことを望まなかった。閔大使は性格が慎重で静かな人ではあったが，当時，光州問題は国際的に評判が非常に悪く，中途半端に弁明しようものなら，さらに大きな不信を招く恐れがあった。このため閔大使は，終始沈黙を守った。
　首席代表である彼が黙っている以上，私が前に出ることもできず，出たとしても明確に反論する言葉を持たないので，不満なまま会場に座っていた。事実よりもひどい非難も多かったが，黙々と耐えるしかなかった（朴銖吉（パク・スギル）元駐国連大使の回顧録『これまで私たちが知らかった韓国外交の話』）。

　・・・ある人たちは，光州で一緒にいられず申し訳ないと言い，別の誰かは，真実を知らせなければならないと血沸く思いを抱いた。また他の誰かは，真相を究明し責任者を処罰するために歯を食いしばって闘った。歴史的な宿題のように私たちに与えられたのが，五月であり，光州だった。

　今の大学生には想像もできないことだろうが，当時は警察が大学に駐在していた。・・「キャンパスポリス」の名札をつけ，学内の治安を担当する鎮圧部隊が常駐していた。いつ，どこで学生がデモをするかわからないので，デモが始まったらすぐに逮捕しようと真っ黒な鎮圧服とヘルメット，盾，鎮圧棒で武装した数個中隊が学内に陣取っていたのだ。・・・同じ年代の戦闘警官（機動隊）は，前を通り過ぎる女子学生に向け卑猥な冗談を投げかけて嫌がらせをしたし，キャンパスのあちこちに寝転がったり，サッカーをしたりしていた。大学構内で食事をしてゴミを投げ捨て，運動場でデモ鎮圧訓練まで行った。それが私たちの大学時代だった。情報・公安系の刑事たちは，大学構内も事務室や講義室に自分の居間のごとく出入りして，学生の動向を掌握しようとした。

　
　以上で引用を終わります。
　中国とソ連が韓国を猛非難したというのは今の感覚ではちょっと想像できません。「お前が言うな」と思います。

なお光州事件以降も次のようなことが起こっています。

1985年5月　光州事件5周年　「軍事統治決死反対」集会に29大学から１万人
　　　　　が参加。

同５月　　　学生約75人が米国に光州事件に対する謝罪と全斗煥（チョン・
　　　　　ドゥファン）政権支持を止めるよう求めてソウルの米文化院に籠
　　　　　城。

1986年4月　ソウル大生の金世鎮（キム・セジン）が，「米国の傭兵として
　　　　　の軍入営訓練決死反対」を叫んで焼身自殺。

1987年1月　警察が「民推委」の幹部を追跡中，ソウル大生の朴鍾哲（パ
　　　　　ク・チョンチョル）が取り調べ中に水拷問で死亡。

同6月　　　延世大の李韓国烈がデモ中に催涙弾に当たり意識不明の重体に
　　　　　（７月に死亡）。
　　　　　　29日に全斗煥の後継者の廬泰愚（ノ・テウ）大統領候補が民主
　　　　　化を宣言。


　韓国の民主化はこのような言語に絶する苦しみを通じて達成されました。日本でも警察が大学構内を自由に出入りしたり，監視するようなことがあってはなりません。

　1948年4月3日に南北分断に反対した左翼勢力が済州（チェジュ）島で武装蜂起をすると，警察や軍はこれを徹底的に弾圧し，約３万人の済州島民が殺害されました。犠牲者の多くは反乱の嫌疑をかけられた民間人でしたが，歴代政権は「共産暴匪」と決めつけ，国家による虐殺の責任を認めようとはしませんでした。1998年に大統領に就任した金大中（キム・デジュン）は特別法を制定し，済州４・３事件の真相解明を目的とする委員会を設置しました。2003年廬武鉉（ノ・ムヒョン）は委員会報告書の勧告に基づき過去の国家権力の過ちを認め，犠牲者遺族と済州島民に公式に謝罪しました。

　同じ国家暴力被害事件である「済州４・３」や「光州５・１８」は特別法が制定されながら，麗水（ヨス）・順天（スンチョン）事件の特別法制定は政界に先送りされています。
　民衆蜂起の鎮圧命令を受け麗水で待機中だった軍第14連隊の下士官がこれに従わず10月19日に独自に反乱を起こしました。軍内部での蜂起が麗水・順天地域で広範囲な民衆蜂起と変わっていきました。従来の公式見解では「北朝鮮共産主義者と結びついた軍内部の共産主義者による計画的な政府転覆陰謀」とされていましたが，民衆蜂起を促した民主化運動の一つであるという見方が出てきました。もちろん，鎮圧軍が民間人に対して行った大量虐殺とは規模の面で大きく劣るものの，蜂起軍による虐殺もありました。

　韓国の過去清算はいまだに進行中です。それに対して日本は過去清算をまったくといって言いほど行っていません。これは自民党だけの問題ではありません。野田が首相になったときも韓国政府とは誠実な交渉を行いませんでした。政治家のみならず外務官僚すべてを含めた日本全体にわたることです。