村野瀬玲奈の秘書課広報室

　　

『文部科学省が先導する大学文系学科廃止運動について　（メモ） 』の記事の続きです。引用やリンクも多く、長くなってしまいましたが、日本の知性と学問がほかならぬ文部科学省によって縮小・破壊・廃止されようとしていることへの怒りであると理解していただいて最後までお付き合いいただければありがたいです。

それにしても、「人間にとって呼吸という行為はエネルギーの無駄であり、呼吸の回数をできるだけ減らすべきである」と主張している人間を前にして、「いや、人間には呼吸が必要である。なぜなら...」と必死に説明している気分です。自分だけ呼吸の回数を減らしたい人は自分だけでそうすればいいと思いますが、呼吸の回数を減らすことを社会全体で強制されるのはお断りです。

実際、文部科学省は、縮小すべき呼吸という行為、いえ、もとい、縮小すべき文系学部として法学部や経済学部まで対象にしているとも言われているようです。

法学部や経済学部まで対象になっているとは知らなかった。法律知識を持つ層の厚さは行政の一部機能を民間に頼る日本社会にとって、必須なのだが RT Reading:人文社会科学系学部がある国立大 8割が再編検討　NHKニュース http://t.co/OqIKUwoRxd

— N.Mizusawa （水澤信雄） (@wtp2005ap) July 19, 2015

元のNHKオンラインの報道がすでに削除されているので、転載されているところから復元しました。

●NHKオンライン
人文社会科学系学部がある国立大 8割が再編検討
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150719/k10010159301000.html
2015年7月19日

文学部や経済学部など人文社会科学系の学部や大学院がある国立大学のうち８割が、学部の再編や定員の削減などを検討していることがＮＨＫの調査で分かりました。
国立大学を巡っては文部科学省が先月、教員養成系や人文社会科学系の学部や大学院について、廃止や社会的要請が高い分野への転換に努めるなど、組織と業務全般を見直すよう通知を出しました。
この方針について、ＮＨＫは対象となる学部がある国立大学６４校にアンケートを行い、８９％に当たる５７校から回答を得ました。
人文社会科学系の見直しを求める通知については、関連の学部がある大学４２校のうち、
・２５校が「趣旨は理解できる」
・2校が「不本意だが受け入れざるをえない」
・残り２校が「全く受け入れられない」
という回答を得ました。

（転載ここまで）

ネット上に転載されていた上のNHKオンラインの記事には「法学部や経済学部まで対象になっている」という趣旨のことが明記されているわけではないので、その点についてはこれ以上の言及は避けます。しかし、文系の学問を役に立たないので縮小せよと考える思考からは、日本文化の先細りと知性の死という結果しか生まれないでしょう。NHKが自民党政府の意向をうけてこのような「調査」を行なって、何の批評的視点もなくその結果を麗々しく発表しているというのは、自民党政府と文部科学省が学問の縮小を図っていることに協力しているのでしょうか。

それにしても、大学側の回答の多くが文系学部の縮小の「趣旨は理解できる」っていったいなんなんでしょうか多くの大学ではすでに「呼吸」、いえ、学問や思考をやめてしまったのでしょうか。学問を破壊する文部科学省に対して全大学で無期限ストでもして抗議すべき事態になっていると思います。

ひぇー、国立大学に歴史学部を作らせず、和歌山大学のような観光学部を増やせ？歴史を教える人文系学部を縮小させるため予算を減らす？「人文社会科学系学部がある国立大 8割が再編検討」NHK http://t.co/aN5OxRunto pic.twitter.com/S4v4cjjKWg

— 服部順治(脱戦争/脱原発) (@JunjiHattori) July 19, 2015

前回の記事にいただいたコメントも、こちらに転載させていただきましょう。

http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-6523.html#cm

■
結果をすぐに見せられない、「即戦力」にならない学問は廃止せよということね。

つまり、日本国民には本質的にものごとを考える頭はいらない。
あっていいのは目先のカネモーケに繋がることを思いつく頭と、上の者の命令を理解する頭だけということだ。
2015/07/20(00:17) 黄色いカエル


■大学改革

企業が利益を得るため、企業が思い描く未来を実現するため、国策プロジェクトとして税金をつぎ込み、大学と地方を改革する･･･人間を改革する･･･

TPP、安保法制、労働規制緩和･･･その他諸々。

着々と進んでいて恐ろしいです。


既出かもしれませんがこんなのも↓

【内閣府】
SIP（戦略的イノベーション創造プログラム）
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/

SIP概要
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/sipgaiyou.pdf

研究開発計画10課題
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/sipkenkyukaihatu10kadai.pdf


【産業競争力懇談会　略称：COCN（Council on Competitiveness-Nippon）】

会員・役員
http://cocn.jp/outline/member/index.html

第５期科学技術基本計画の策定に対する提言
http://cocn.jp/common/pdf/150309-2.pdf

2015/07/20(00:52) むう


■＞むう さん

補足ありがとうございます。企業と政治権力者の利益のために日本の市民の知識まで管理統制しようという発想でしょう。日本の政治権力者と経済権力者は日本国と日本人を私有財産のように考えているということが透けて見えると思うのです。本当に恐ろしいことです。そのことに気づく人が大学人だけではなくて一般人の中にも増えてほしいと思うのですが。

また、経営者を育てるためとして経営学と経済学と商法と簿記会計だけ勉強させれば一番効率的だという発想からは何の文化もアイデアも生まれないと思いますね。
2015/07/20(01:20) 村野瀬 玲奈


■No title

これに対する大学当局の反応が全くお粗末で情けない．
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150719/k10010159301000.html
公然と批判する姿勢を示したのは皆無のようで，まるでマークシートの選択よろしく，文科省の「アンケート」にナイーブ（英語ではほぼバカという意味）に答えている．
市民はこのような大学に対しても鋭く批判すべき．
2015/07/20(12:59) 豊島耕一


■そんな暇があるなら

　まず、文部科学省は今すぐ日本相撲協会を廃止すべきですね。
　八百長ばっかりやっているような連中のどこに公益性があるのかって突っ込んでおかねばなりません。その次にチェックアンドバランスの機能が全くないと露呈した理研を破産申請すべきですね。
　天下りなどには目ざといくせして必要な物を投げ捨てる段階でもうアウトでしょう。
2015/07/20(17:57) 倉野　明人


■大学文系学科廃止運動の本質

日本軍国主義者「安倍晋三」のお友達、下村博文が大臣の文部科学省です。
大学は「富国強兵」「殖産興業」に必要な人材を養成する機関である。
それに役立たない学部学科は廃止しろというのが大学文系学科廃止運動の本質でしょう。

自由と平和のための京大有志の会の「声明書」は、ズバリ正論です。
学問とはこうあるべきです。
こういった学問を教えるのが大学の本来の使命です。
2015/07/21(00:28) 閉口


■明治維新再びか

　これは明らかに文化の破壊です。
　明治維新の際の廃仏令は有名ですが、それ以外にも、日本の文化をむりやり欧米風の文化に置き換えて、破壊しています。（現政府はこれ以降を伝統的文化と思ってるようですが）
　生物に多様性が必要なように、学問にも多様性が必要だと思います。違う分野の学問があってこそ、そこからの発見、再発見が起こり得るはずです。
　多様な内容、少数の意見にも、真実があることは、歴史が証明しています。それでなければ、いつまでも天動説が続いていて然るべきですよね。当然それに続いての発展の道も閉ざされたままとなっています。

　全く、国民を檻に閉じ込めようと意図がありありと見え、人権・自由をも無くしたいとの思いからきているのを感じてしまいます。
2015/07/21(06:32) 月風狼


■戦争準備？

私この話を聞いた時に思ったのが、タイトルの言葉です。第二次大戦時、音楽・美術学校（音大生・美大生）が最前線に送られて、化学・医学部の学生が残された…と云う話を思い出します。
2015/07/21(08:26) リベラ・メ


■カネにはならない存在は不要？

「教養の特権化」
このキーワードしか思いつきませんでした。
そもそも、なぜ人類が発展したかというと、哲学倫理といった「カネにはならないが本質を求める学問」があったからです。マグナ・カルタ、フランス革命やアメリカ独立戦争といった今の民主主義の礎となっているのは紛れも無く、「カネにはならないが本質を求める学問」のおかげであることを忘れているように思えます。

全てがカネになるかどうかで分類してしまうと、実学系以外の学問など不要になりますし、そもそも企業の技術研究などは結果が直ぐに出ないことがほとんどなので不要という事になります。技術立国ってなんだっけという話ですね。恐ろしく学問バカにしていますよね。

また私のような発達障害当事者はカネになるどころかコストにしかならないので自民党信者の盲信する教育理念である親学で言えば「予防」されなければならない金食い虫と分類されてしまうのでしょう。
2015/07/21(11:16) カイ

（転載ここまで）

上に引いたコメントのうち、「市民はこのような大学に対しても鋭く批判すべき」とおっしゃる豊島耕一さんは大学の先生で、日本の民主化に長年尽力しており、私もその発言から多く学ばせていただいています。ということで、私も「そのような大学」に対する批判を書かせていただきました。もう一度繰り返します。

『多くの大学ではすでに「呼吸」、いえ、学問や思考をやめてしまったのでしょうか。学問を破壊する文部科学省に対して全大学で無期限ストでもして抗議すべき事態になっていると思います。』

さて、「なぜ人間は呼吸をしなければならないのか」ということがわからない人に対して何を説明すべきか考えなければならないような気分だと先ほども書きましたが、そのような不毛な実情を文部科学省から仕掛けられている中、毎日新聞のいち記者は自民党政府文部科学省に真っ向から異議を唱えていますのでリンクをメモ。

文科省は国立大に文系学部の廃止や削減など組織改革を進めるよう通知しました。それに真っ向から反論する記者の目です。強く同意します。文科省の亡国の政策。この罪の重さは新国立競技場どころではないと私は思います。 毎日ジャーナリズム: http://t.co/kmyQtLkumd

— 小川一 (@pinpinkiri) July 22, 2015

また、学術会議も批判声明を出しました。メモ。

“文系見直し”通知に学術会議が批判声明 http://t.co/diFnfMV9Kl #nhk_news

— NHKニュース (@nhk_news) July 23, 2015

憲法学者の軽視もそうだが、それに限らず、日本政府の学問の軽視・無理解に研究者界隈は我慢の限界に達しつつあると言えよう。|Reading:“文系見直し”通知に学術会議が批判声明　NHKニュース http://t.co/YBQWp99vbY

— F Hiroyuki (@fjhiro3) July 23, 2015

さらにもっともな指摘。

「文部省の地方事業所」から「文科省の100%子会社」への変化で従属性が強まってしまったのですね。もし法人化政策が、他の資本も入れろ、というものだったら、文科省への従属性は弱まっていたでしょう。もちろん他の出資者の影響が強くなったでしょう。@moriokahiguma

— MASUDA Kooiti (@masuda_ko_1) July 19, 2015

 

この声明に対し，文科省は「人材育成の面などで課題を抱えていると考えて」いるらしいが，その課題が具体的に示された覚えはない．どうするかも各大学に丸投げなわけだが，結局文科省自体は，何が問題かもどうすればよいかも，何もわかってないんだよ． http://t.co/UcxjPbU0wV

— Ryuhei Tsuji (@ryuhei_tsuji) July 23, 2015

「結局文科省自体は，何が問題かもどうすればよいかも，何もわかってない」という指摘に深くうなずきながら、前回の記事、『文部科学省が先導する大学文系学科廃止運動について　（メモ）』に書いたことをもう一度引用せざるをえません。

学問の発展は研究者や人々にまかせるべきです。学問に何の貢献もしていない、それどころか歴史修正主義、大日本帝国史美化行為の事務局として教科書から日本の戦争加害の歴史を消している有害な機関、文部科学省が予算配分の権限をちらつかせて学問のあり方について大学に対してあれこれ介入することは日本の知性を破壊することに等しいということです。

（引用ここまで）

最後に、たいへんにうまい指摘を。

国立大学で人文科学廃止なら世界中の大学で日本学を廃止しても文句は言えまい。源氏物語や日本史なんか学んでも就職にはすこしも役立たないんだから。

— spark (@Yonge_Finch) July 23, 2015

＞国立大学で人文科学廃止なら世界中の大学で日本学を廃止しても文句は言えまい。源氏物語や日本史なんか学んでも就職にはすこしも役立たないんだから。

＞国立大学で人文科学廃止なら世界中の大学で日本学を廃止しても文句は言えまい。源氏物語や日本史なんか学んでも就職にはすこしも役立たないんだから。

＞国立大学で人文科学廃止なら世界中の大学で日本学を廃止しても文句は言えまい。源氏物語や日本史なんか学んでも就職にはすこしも役立たないんだから。

そうです。日本が文科系の学問を縮小するなら、たとえば日本の文学や芸術について日本国内での研究が先細りし、外国の研究者だけが日本の文学や芸術についての研究をしている、という事態になるかもしれません。あるいは、日本国内で本を読む人が減り、日本文学を読むのは外国の読者だけ（翻訳を通じて）、ということになるかもしれません。いえ、外国も日本への文化的関心を持つことをやめるべきなのかもしれません。何しろ、日本自身が文系の学問を捨てようとしているのですから。

●自由と平和のための京大有志の会
■声明書
http://www.kyotounivfreedom.com/manifesto/

（前略）

学問は、戦争の武器ではない。
学問は、商売の道具ではない。
学問は、権力の下僕ではない。

生きる場所と考える自由を守り、創るために、
私たちはまず、思い上がった権力にくさびを打ちこまなくてはならない。

（引用ここまで）

---

●国会議員への投書のための「議員一覧ポータルサイト」 (1)→http://taro-yamamoto.jp/お知らせ/【反tpp・反秘密保護法！】全国街宣キャラバンス/ ; (2)→http://publistella.jp/
●マスメディアへの投書のための「News for the people in Japan」マスメディア問い合わせ用リンク集→http://www.news-pj.net/link/media.html
●他の社会系ブログに行くにはうちの「私的リンク集　（適宜更新）」経由で→http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-136.html

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