村野瀬玲奈の秘書課広報室

東京オリンピックを「アベノミクス第4の矢」と位置づけた安倍晋三。

アベノミクスが多国籍企業の様な国内外問わず巨大企業にこそ恩恵がある事を認めたようなものでしょう。

東京の福祉予算は悲惨なほど足りていません。日本全体を見回しても、小泉内閣が5年にわたり1.1兆円（毎年2200億円）の社会保障費の削減をやるなど、必要に応じてではなく、自然増分を抑制していく予算の範囲内で福祉政策を運用する政策が取られてきています。
生活保護費の削減や年金、国保料、介護保険料の大幅な負担増。そして、民主党内閣から引き継いでいる「社会保障と税一体改革」など、どれも国民の命を削る深刻な内容になっています。


安倍晋三は、参議院選挙でアベノミクスの成果ばかりを強調していました。国民のほとんどに景気回復の実感が無いにもかかわらず、多くは騙されてしまったと考えます。さらに、国際社会に対し嘘までついて招致したオリンピックを「アベノミクスの第4の矢」と位置づけるのはあまりにも詐欺的なのではないでしょうか？

莫大な財政出動は、一時的には景気にも影響を与えると思います。しかし、雇用問題でも社会保障費でも、国民の生活基盤が整わない限り、オリンピックにいくらつぎ込んでも砂上の楼閣でしかないと思います。アテネ五輪がそうであった様に…。


もちろん、安倍晋三自らによるオリンピックとアベノミクスの関連づけは『私物化』『政治利用』という意味でも許せない行為です。

五輪開催（都市・国）に経済効果が有るか無いかというのは、しょせんニセ問題だと思いますよ。
本来の五輪精神は、そんなものの有無を問題にしていなかったハズです。

だから、東京開催反対派や五輪批判者は、そんな問題を論拠にしてはならない。
五輪の「経済効果」などというものは、たとえそれが有ったとしても、本来副産物に過ぎず、五輪開催の目的ではありません。

ニセ問題に引き込まれると、愚劣なGDP成長至上主義者の土俵上だけで思考することになってしまいます。「戦争の経済効果」とか「選挙の経済効果」とか「定年制の経済効果」というような、外面的で本質逸らしの判断基準の採用に陥るのです。

「経済効果」問題が出たので一言。

マルクス派の経済観とは、GDP成長万能主義に帰結する貨幣物神崇拝的なものでも、経済成長を全否定する緑派のような経済学的ロマン主義でもない、経世済民思想の貫徹された厳密な使用価値論に依拠したものなのですね。
それは、投機や軍需・奢侈生産、所得介入分野などの不生産的経済活動の結果をも全て経済成長にカウントするような上っ面で無批判的なものではありませんし、どこまで先祖返りすれば良いのかさえ曖昧な緑派の「反経済成長」のようなスローガンに同調するものでもありません。

マルクス派の「経済」とは、現在の資本主義社会が人々に通念化させている「経済」や「経済成長」の有り様をラジカルに批判して、本当に人間のためになる経済の確立を展望・対置するものです。先人達による資本主義経済の「寄生性」「腐朽性」への批判とは、そういう意味をもつものなのです。資本主義経済がもたらす「経済成長」（旧ソ連・東欧、現中国・ベトナムなどのニセ社会主義での「経済成長」も含めて）は、けっして本物の、人間本位の「経済成長」では無いと考えるのです。
現在の社会が掲げている「経済成長」には、マルクスが「社会関係に欠陥や害悪があることにより存在している」とみなした不生産的で寄生的な貨幣獲得活動の結果が全て算入されている。
だから、そんなクソミソ一緒な全体のあり方を「経済」だとか「経済成長」と呼ぶのは、善意の誤認か迷信、または、死の商人や売春業界、原子力ムラのような悪徳ビジネス関係者によるデマ宣伝だということです。
そこをしっかり見抜き峻別しなければいけないと思いますよ。

観光業一般の発展は、思想的立場の左右に関わらず否定すべきものではないと思います。
人間が、より良く文化的に生きて行くための観光業務は、それがビジネスの素材にされる資本主義市場経済の評価の如何に関わらず必要です。どんな時代、どんな社会形態でも、観光業務一般は人間活動の正当な構成部分です。
五輪開催による過剰投資・過剰設備などは問題ですが、それでも五輪開催を契機に外国人観光客が増えること自体は悪いことではないと思います（税金投入は別問題です）。

もっとも、石原慎太郎が狂奔した東京カジノ構想のようなものは例外ですけれどね。バクチは観光の本義からは外れるものですから、東京五輪開催にかこつけて、こういうものを混入させようとする政治的陰謀は、本来の観光事業を発展させる立場からキッパリ反対しなければなりません。例えそれが民活路線であってもです。
「カジノの経済効果」とか「ギャンブル産業の経済効果」などというものも、不健康で寄生的なものでしかないニセ問題です。

また、五輪観光客の大量消費に伴う大量廃棄なども、それがいくら雇用やGNPを増やそうとも否定されるべきです。こんな経済効果も百害あって一利無し。
そもそも、ゴミ処理経済のようなものは、資本主義市場経済システムが抱える害悪の象徴です。排出されるゴミが増えれば増えるほど、廃棄物処理業などが儲かるようなゴミ経済は、人が死ねば死ぬほど儲かる軍需産業と同様な性格をもつ。

なお、「神の見えざる手」に生産（量）の制御を依存する資本主義市場経済では、手前免許的見込み生産の結果としての過剰生産が宿命化されていますから、多くの一時的滞在者、来京者が予想される五輪開催でも厳重に監視する必要がある。
FAOなどによって食料廃棄の増加が警告されている「先進国」日本も、五輪開催をきっかけに、食料の浪費や食料生産過程での浪費が助長される可能性が強いので注視して行くべきでしょう。

総務省のHPに「経済波及効果を計算してみよう」ってのがあります（http://www.stat.go.jp/data/io/hakyu.htm）。

開いてみると、エクセルの左側の表に「新規需要を見込んだ部門にその需要額を入力」すると、右側に「波及効果」が表示される仕組み。
やってみると、左側のどの欄に数字を入れても、右側の波及効果の合計は左側の入力値よりも大きくなる。
なんと景気のいいことか・・・っていうか、よく考えたらこれって新規需要が既存需要に与える影響を全く考慮してないけど、こんなんで本当にいいの？

・・・いいんです！

だって、「経済（波及）効果」の“そもそもの定義”って「当人の生産活動において、当人が動けば、どの位『お金が動くのか』という目安」（http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%8A%B9%E6%9E%9C）であって、「どのくらい富が増えるのか」っていう意味じゃないんですから。

「３兆円の経済効果」は、決して「３兆円の富の創出」なんかじゃないんです。
つまり、もし相応の相乗効果がなければ、経済効果が大きいほど「市民生活の需要を食い取る悪影響がある」とすら言っていいくらいなんです。
このエントリーで村野瀬さんや山形氏が使っている「経済効果」と、一般ニュースで言われている「経済効果」とは、このように「全く意味が違う」ことに注意しなければなりません。


さて、たとえば当該Wikiにある「ハンカチ王子の経済効果」であれば、その多くは財布の紐が緩んでってことで他の需要への影響は少ないと言ってもいいかもしれないけれど、「オリンピック招致」なんていう巨額の、しかも「税金の使い道」なんていうものは、「予算の枠」というものがある以上、「それ以外の使い道」とはどうしたって「トレードオフ」になってしまいます。
だからこそどの候補地も、事前に予算を可能な限り確保して、その額の大きさを招致合戦でアピールしていたんです。
つまり「同じ予算で被災地支援をするよりも五輪招致を選んだ」というのは、どんなに誤魔化そうとしても決して否定できない事実なのです。

それでも両者は「トレードオフ」ではない、と主張する人はいます。
この主張が正しい可能性は以下の２つ。

１．五輪招致の経済効果で手持ちの富を当該予算よりも増やして、それを被災地支援に使う。

２．そもそも五輪招致が成功しても失敗しても、被災地支援に予算なんか殆ど使わない。

私個人は２．の意味で、確かに「トレードオフ」ではないと思いますが、誰かがもし１．の意味で主張するんであれば、・・・まあ、あの経済に詳しい山形氏が「経済効果はほとんどなし」って言っているんですけど、そういう人はきっと山形氏も知らない最新経済学をご存じなんだと思うので、是非教えて差しあげたらいいんじゃないかと思います・・・っていうかこれって、上手くすればノーベル経済学賞も夢じゃないのではないでしょうか。


その一方で都民の、それも多くはあまり裕福ではない層の健康は、これは間違いなく完全に「トレードオフ」にさせられました。
（→http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-4511.html）


この間、久しぶりに会った私の前の職場の友達が、その人はもう既に国民年金を滞納しているんだけど、こんどは保険料がキツいって愚痴ってて、私がこの話をしたら、酒が入っていたせいもあるけれど、悔し涙を流していました。
「東京オリンピックなんか絶対に見ない」って言って。
（まあ彼が無類の野球好きってのも、その理由の一つではあるけれど）


オリンピック招致反対の意見に対して、「幸せって悪なのか」とか「何でも反対のオレカッコイイ気取るなよ」とか・・・生活に余裕のある方が本当に羨ましい限りです。
きっとこんな人が東京の空の下にいることなんか、想像もできないくらいに幸せなんでしょうから。