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労働基準法改正案今国会での成立見送り

 今朝のNHKラジオなどが伝えたところによれば、今の国会(第189回通常国会 1月26日から9月27日)が会期末まで残り1箇月となるなか、自民及び公明の与党は安全保障関連法案の成立を最優先として、まだ、衆議院で審議入りしていない労働基準法の改正案及び民法の改正案などは今の国会での成立を見送る方針を固めた模様です。

 労働基準法改正案とは、働いた時間ではなく、成果で報酬を決める新たな労働時間制度の導入など重要な論点を含む改正案であり、民法の債権や契約の分野の改正案などと並んで重要法案とされていましたが、今も衆議院で審議入りしていません。そして、会期末まで残り1箇月を残すのみとなって、自民及び公明の与党は今国会の最大の焦点となっている安全保障関連法案を確実に成立させるために、参議院の特別委員会の審議を最優先にすることにしています。このため、野党側が反対している労働基準法の改正案(いわゆる「残業代ゼロ制度」、もう一つの視点)や大規模な改正となる民法の改正案などは十分な審議時間を確保できないとして、今国会での成立を見送る方針を固めました。これらの法案は継続審議とされた上で、次回以降の国会での成立を目指すことになります。

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経営理念を明文化すべきか

 CHUKIDAN101号に目を通していたところ、面白い記事が目に留まりました。CHUKIDANというのは、中小企業福祉事業団が発行している雑誌で幹事社労士に登録すると隔月で送られてくるものです。「経営のヒントとなる言葉」という著名経営者などの発言を採り上げて解説する連載記事があり、この号では森川亮氏の言葉「いや、わかりやすいビジョンは特にありません」(2015年6月時点)でした。森川亮氏とは、いまやIT業界の雄となったLINEを立ち上げ、育て上げた立役者であり、同社の元社長です。この言葉の明確な解説は、同記事から必ずしも読み取ることができなかったのですが、注目した点は、あるとき森川氏が経営コンサルタントから「経営理念を明文化すべきだ」という趣旨の助言を受けたとき、よくよく考えた末、その助言に敢えて従わなかったことです。その理由というのは、変化の速い時代に経営理念を明文化しても、時代にそぐわなくなってしまうと考えたからなのだそうです。

 経営理念を明文化して、経営者の基本的な考え方を会社の隅々にまで浸透させること、経営理念を社員の行動規範に落とし込んで経営者と従業員が少なくとも同じ方向に向かって業務を推進してゆくこと、こういったことは、今日多くの会社で正しいこととして受け入れられていることです。創業期そして成長期のLINEは、明文化した経営理念などなくても経営者の基本的な考え方が社員に共有され、全社一丸となって突き進むことができたからこそ、今日の隆盛があるのだと思いますが、明文化した経営理念は永久に必要ないかどうかは、浅草社労士にもよく分かりません。

 ところで、「明文化した経営理念を持たない」という言葉で、浅草社労士が連想したのは英国憲法です。議会政治の母国英国は、明文化した憲法を持っていないことでもつとに知られております。同国がこれまでの歴史の中で積重ねてきた慣習、判例及び歴史的な文書などの集合体が英国憲法そのものなのです。1215年の大憲章、1628年の権利の請願、1689年の権利の章典などがよく挙げられますが、このほか重要なのが「憲法習律」と呼ばれるものです。「帝国憲法物語」倉山満著によれば、憲法習律とは、慣習として蓄積された不文法のことで、英国憲法では、「法体系に組み込まれた慣例」と説明されます。英国憲法はこの憲法習律により運用されていますが、では、誰がどのように、何が憲法習律で、いつどのように成立したのかを判断するのか。それは誰にも分からないのです。倉山氏によれば、このとっつきにくい英国憲法の神髄の理解こそが憲法論の奥義なのだそうです。

 ちなみに、憲法は英語のConstitutionの訳語ですが、Constitutionとは国家体制をも意味します。つまり、憲法とは一国の歴史、伝統及び文化に裏打ちされた国家体制そのもののことなのです。そして、普段私達が使っている憲法という言葉は、文字に表わされた「憲法典」のことです。憲法典は、国家体制という意味での憲法の中で特に重要なこと、確認しておくべきことを文書化したものに過ぎないので、日本国民にとってあまりに当たり前すぎることなどは書かないのでよいのです。

 今日、憲法と憲法典の認識があまりになおざりになっており、憲法典が黄門様の印籠か何かのようになってしまっています。しかしながら、民法典の条文解釈、労働基準法の解釈などと同次元で憲法典の解釈をして合憲だ違憲だと騒いでいるのは、森川亮氏の足下にも及ばない所業ということになるのかもしれません。本当の憲法論議とは、人知を超えて歴史と伝統の積み重ねの中で残ってきた慣習を探求し、将来の世代に引き継いでゆくべきものを発見する作業のように思えるのです。

    

年金特別会計2014年度は大幅黒字

 先週7日(金)の報道によれば、2014年度の年金特別会計は、厚生年金が13兆390億円の黒字(前年度7兆9183億円の黒字)、自営業者らが加入する国民年金は8046億円の黒字(同5633億円の黒字)と、いずれも黒字額が過去最高を記録したと伝えておりました。やはり、運用比率を大幅に株式に移す見直しが効いていると思われます。ハイリスク・ハイリターンというもので、株式市場が右肩上がりのときはこのように好結果をもたらしますが、逆に行ったときの痛手も大きくなります。政府の経済政策の巧拙が、国民の年金に大きく影響を及ぼすようになったことが図らずも明らかになるニュースです。

=== Reuter電子版 ===

 厚生年金の黒字は4年連続、国民年金の黒字は6年連続。株価の上昇などを背景に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による積立金の運用が引き続き好調だったことが収入増に寄与した。これまでの黒字額の最高は12年度収支決算で、厚生年金が10兆2692億円、国民年金が7226億円。14年度末の積立金残高は、厚生年金と国民年金の合計で145兆9322億円。前年度末から13兆8692億円積み増した。残高の積み増しは3年連続で、増加額は01年度の自主運用の開始以来、最高となった。GPIFの運用による収入額は厚生年金が14兆2754億円、国民年金が9864億円。厚生年金は10年ぶり、国民年金は4年ぶりに、年金給付のための積立金の取り崩しを行わなかった。

=== 転載 終わり (下線は浅草社労士) ===

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記事検索-2015年上半期

人事労務


有期雇用労働者特別措置法(無期転換申込権の例外措置)_1月3日
新労働時間制素案提示_1月18日
フレックス制の拡大案_2月4日
セクハラ厳重処分は適法の最高裁判決_海遊館事件_2月26日
多様化する雇用形態と雇用管理__3月6日
不当解雇は金で解決__3月26日
裁量労働制対象拡大_労働基準法改正案_4月2日
妊娠理由の降格 最高裁が初判断2_4月28日
パートタイム労働法改正の要点_5月4日
労働者派遣法改正問題_5月13日
ブラック企業監視に本腰_5月15日

 


就業規則


 


安全・衛生(メンタルヘルス)


パワハラと業務上の叱責_前田道路事件(松山地裁判決)_6月3日

 


労働保険


 


社会保険


「マクロ経済スライド」発動_1月30日
厚生年金逃れの実態_2月23日
マクロ経済スライド適用見直し案_2月25日
厚年基金 解散決定相次ぐ_3月1日
米国の企業年金とERISA法_5月24日
日本年金機構職員端末にサイバー攻撃_6月1日
日本年金機構職員端末にサイバー攻撃_6月1日

 


助成金


 


経 営


毎月勤労統計調査(速報値)_2月5日
毎月勤労統計調査(確定値) 実質賃金減少_2月18日

 


その他


新年のお慶びを申し上げます_1月1日
握手券と付加価値_3月31日
子の行為と親の賠償責任_4月11日
個人情報流出問題と共通番号制度再考_6月13日

 


月刊社労士


1月号「業務委託契約締結時の留意点」、「年金相談センター相談事例」、「社会保険審査会裁決事例 障害等級の認定基準」、「e‐Gov電子申請早わかり~様式記入方式編2」(65頁)、「離婚分割 年金分割合意書」、
2月号「社労士が依頼に応じる義務について」、「ストレスチェックの内容」、「e‐Gov電子申請早わかり~様式記入方式編3」(58頁)
3月号「社会保障・税共通番号制度説明会」、「年金相談センター相談事例」(56頁)、「社会保険審査会裁決事例 東日本大震災で被災した被保険者の免除」(60頁)、「e‐Gov電子申請早わかり~連記式・CSV添付方式」
4月号「社労士・行政書士の業際問題 社労士の独占業務」、「マタニティハラスメントをめぐる最高裁判決と均等行政の動向」(44頁)、「社会保険審査会裁決事例 シルバー人材の負傷と労働者性」(46頁)、「労働者派遣法改正案再提出と労働契約申込みみなし制度導入」
5月号「社会保障・税共通番号制度 返戻物に記載の要なし」、「予防的契約書作成の要点」(30頁)、「ストレスチェックと個人情報保護」(65頁)
6月号「連合会会長選挙 大西対金田」、「補佐人制度」(14頁)、「社会保険審査会裁決事例 精神障害が業務上の事由を棄却した事例」(40頁)

東京会会報


1月号「座談会‐共通番号制度導入の影響」、「顧問5人の連盟による会館移転見直しを求める声明文問題」(17頁)、「平均賃金・給付基礎日額の算定」、「学校教育‐台東支部報告」(37頁)、「私生活上の非違行為に対する退職金不支給」、
2月号「平均賃金・給付基礎日額の算定 継続雇用の場合など」、「会社法解説」
3月号「育児休業後の地位確認請求事件 最高裁判決と企業対応」、「会長選挙結果 現職敗れる」(12頁)、「1箇月単位の変形労働時間制」、「労働判例 派遣先は労組法上の使用者になりうるか」(36頁)
4月号「障害者給付金制度の実務」(2頁)、「1年単位の変形労働時間制」、「会社法 合併と分割」
5月号「旧会館を一般入札で売却」(4頁)、「フレックスタイム制」(30頁)、「組合旗設置行為の不法行為性と損害賠償請求・懲戒処分の当否」(34頁)
6月号「加給年金と振替加算の実務」、「36協定締結の実務」、「ストレスチェック制度の省令、告示、指針」(36頁)