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ジョブ型雇用とは

 月刊誌「社労士TOKYO6月号」に掲載された田島潤一郎弁護士による記事が、ジョブ型雇用について上手くまとまっていましたので、自分への覚書程度に以下に記しておくことにします。


1.ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用

 ジョブ型雇用といわれるものの一応の定義は、「特定の仕事・職務、役割・ポストに対して人材を割り当てて処遇する制度」ということになります。一方、従来の日本型雇用制度は、メンバーシップ型雇用とされ、「(1)新卒一括採用、(2)長期・終身雇用、(3)年功型賃金、(4)OJTを中心とした企業内人材育成」という特徴を有しています。

 ジョブ型雇用の導入が喧伝されてきたことには、メンバーシップ型雇用では、(1)身分の長期的保障により労働者の主体的なスキルアップの意欲が阻害されがちとなる、(2)年功型賃金の下、実際の職務能力と賃金が乖離する、(3)IT、デジタル技術の高度化に対応した専門性の高い人材へのニーズに十分に応えられない、といった一応の根拠づけがなされています。


2.本来のジョブ型雇用

 ジョブ型雇用では、具体的な職務内容を「職務記述書」によって特定しなければなりません。すなわち、ジョブ型雇用で雇用された労働者は、その職務内容が個別の労働契約により特定・限定されています。そのため、労働者の配置転換は須らく本人の同意を得なければならない、労働者の賃金等はその職務に応じてある程度自動的に決定され、その職務を適切に行っている限り待遇に変化はなく、評価・査定も本来想定されていないと考えられます。

 このように想定された純粋形態のジョブ型雇用は、就業規則による集団的労務管理にはなじまず、詳細に定められた個別の労働契約に依らざるを得ないことが推察されます。


3.ジョブ型雇用の留意点

 したがって、従来のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用の形態に近づけば近づくほど、集団的労務管理の利便性が失われてゆくこと、つまりは労働者との個別の合意が常に求められるということになります。

 例えば、事業主の配転命令権、労働条件の不利益変更を一定の要件を満たすことで可能にする労働契約法第10条なども、ジョブ型雇用の労働者には適用できないのではないかという論点が生じてきます。むしろ、ジョブ型雇用の労働者の場合、配転、労働条件の不利益変更の場合などは、常に労働者の同意を要すると考えておくべきではないかということです。一方、ジョブ型雇用の労働者は、職種限定合意をしている分、解雇も容易と考えられがちですが(変更解約告知)、我が国の労働法制ですでに確立している解雇権濫用法理(労働契約法第16条)がすべての労働者に適用されていることを無視することはできないのです。

 これらのことを踏まえると、従来のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行については、慎重に検討された上でなされるべきで、例えば一定以上の管理職からとか、IT・デジタル分野の高度専門的技術を有する人材からといったような限定的な導入にとどめるというのも一つの考え方と思われます。

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