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同一労働同一賃金に関する考え方のまとめ

 同一労働同一賃金のまとめ的な記事です。第一に、ここでいう同一労働同一賃金の意味は、正規と非正規の間の不合理な格差是正を主な目的としているため、改正パートタイム・有期雇用労働法が最も重要かつ中核となる法律ということができます。


1.改正パートタイム・有期雇用労働法

(1)目的:同一企業内における正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様で柔軟な働き方を選択できるようにすること。

(2)主要な改正点 その1 不合理な待遇差の禁止
 第8条 均衡待遇、 第9条 均等待遇

(3)主要な改正点 その2 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
 第14条 非正規労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができる。事業主は、非正規労働者から求めがあった場合は、説明をしなければならない。

(4)主要な改正点 その3 裁判外紛争解決手段(行政ADR)の整備
 第24条~26条 都道府県労働局において、無料かつ非公開の紛争解決手続きが行われる。「均衡待遇」、「待遇差の内容および理由」に関する説明についても裁判外紛争解決手段の対象となる。


2.不合理な格差か否かを判断するための枠組み

 第1段階:生活費の補填か、労働に対する報酬か
 生活費の補填であれば、職務内容に関係なく、同一の生活条件にあるかどうかで決まるべき手当等となります。
 
 第2段階:当該労働に対する報酬は、短期給与か長期給与か
 短期的な給与であれば、同一の労働内容であれば同一に決まるべき手当等となります。
(例)精皆勤手当、特殊勤務手当

 第3段階:当該長期的性格の給与は長期雇用型か短期雇用型か
 短期雇用型であれば、正社員人材確保論で同一でないことが許容される余地が出てくる。この際、正規雇用への登用制度があって、実際に機能しているかという点も重要な判断要素。
(例)賞与、退職金

(参 考) 職務評価とは


3.同一労働同一賃金に係る主な判例

 (1)~(5)までが最高裁判決で、旧労働契約法第20条に関して判断したものであるが、同条は改正パートタイム・有期雇用労働法第8条に引き継がれたとされています。

(1)ハマキョウレックス事件

(2)長澤運輸事件

(3)大阪医科薬科大学事件

(4)メトロコマース事件

(5)日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件

(6)名古屋自動車学校事件

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労災保険におけるメリット制

1.労災保険のメリット制

 労災保険の保険料率は、事業の種類ごとに決まっています。しかし、事業の種類が同じでも、作業工程、機械設備、作業環境、事業主の災害防止努力の違いにより、個々の事業場の災害率には差が生じます。そこで、労災保険制度では、労働災害防止努力の促進を目的として、その事業場の労働災害の多寡に応じて、一定の範囲内(基本:±40%、例外:±35%、±30%)で労災保険率または労災保険料額を増減させる制度(メリット制)を設けています。

 継続事業では、その業種に適用される労災保険率から、非業務災害率(全業種一律0.6/1000)を減じた率を±40%の範囲(一括有期事業の場合、規模に応じて±30%または±40%の範囲で増減率が適用されますが、立木の伐採の事業については、最大で±35%の範囲になります。)で増減させて、労災保険料率を決定します。これを「改定労災保険率」又は「メリット料率」といいます。ここでいう非業務災害率とは、それぞれの業種に設定されている労災保険率のうち、通勤災害、二次健康診断等および複数業務要因災害に係る給付ならびに複数事業労働者の業務災害に係る給付の一部に充てる分の保険料率のことで、業種を問わず1000 分の0.6 としています。

 要するに、メリット制とは、労災保険では事故率が低いほど保険料率が軽減されるというの仕組みのことです。また、通勤災害は、メリット制とは関係ありません。


2.メリット制の適用

 継続事業では、「事業の継続性」に関する要件と、「事業の規模」に関する要件を同時に満たしていることが、メリット制適用の要件となります。

(1) 事業の継続性
 メリット制が適用される保険年度の前々保険年度に属する3月31日(以下「基準日」という)の時点において、労災保険の保険関係が成立してから3年以上経過していること。

(2) 事業の規模
 基準日の属する保険年度の前々保険年度から遡って連続する3保険年度中(以下「収支率算定期間」という)の各年度において、使用した労働者数に関して、次の A または B のいずれかを満たしていること。
 A:100人以上の労働者を使用した事業であること。
 B:20人以上100人未満の労働者を使用した事業であって、災害度係数が 0.4 以上であること。

 災害度係数は、以下の計算式で算定します。
 災害度係数 = 労働者数 × (業種ごとの労災保険率-非業務災害率) ≧ 0.4

 メリット制が適用される時期は、連続する3保険年度の最後の年度(「基準日」の属する年度)の翌々保険年度になります。
 例えば、平成29年度~令和元年度が連続する3保険年度の場合には、最後の年度の令和元年度の翌々保険年度に当たる令和3年度にメリット制が適用されます。

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育児休業期間中の社会保険料の免除

1.産前産後休業および育児休業中の社会保険料の免除

 産前産後休業期間(産前42日または多胎妊娠の場合の98日、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)について、健康保険および厚生年金保険の保険料は、被保険者が産前産後休業期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者および事業主の両方の負担が免除されます。申出は、事業主が産前産後休業取得者申出書を日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出することにより行います。なお、この免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。

 また、育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業期間についても、健康保険および厚生年金保険の保険料は、被保険者が育児休業の期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者および事業主の両方の負担が免除されます。申出は、事業主が育児休業等取得者申出書を日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出することにより行い、この免除期間が、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。


2.出生時休業など短期の育児休業の場合の社会保険料の免除

 育児休業の期間が1箇月に満たない短期の育児休業を取得した場合の社会保険料免除の考え方はどうなるのでしょうか。

 まず、毎月支給される通常の給与の場合、社会保険が免除されるのは、「育児休業等の開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月まで」となるのが制度の原則です。この原則によれば、開始日の属する月と終了日の属する月が同一の場合は、終了日が同月の末日である場合を除き免除の対象となりませんでした。これに加えて、令和4年10月1日以降に開始した育児休業等については、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合にも免除となることになりました。

 そこで、短期間で取得する場合がほとんどと思われる出生時育児休業について、ごく短期間の月の末日1日だけ取得したとき、当該月の保険料が免除されるのか考察します。末日が所定労働日となる、例えば令和5年5月31日ですが、この日は水曜日で翌日6月1日が属する月の前月は5月ですから、5月が社会保険料の免除月になります。6月30日に1日だけ出生時育児休業を取得した場合はどうでしょう。この日は金曜日で、翌日7月1日は、週休二日制の会社では所定休日に当たることが多いと思われますが、そのこと自体は制度の運用に影響は及ぼさず、6月が社会保険料の免除の免除月となります。

 では、令和5年9月のような場合は、どのように考えるかです。9月30日は土曜日にあたり、翌10月1日は日曜日です。多くの週休二日制の会社では所定休日と法定休日が設定されている週末に当たります。この場合、そもそも所定労働日に取得すべき育児休業を所定休日限定で取得することはできないので、30日だけ育児休業を取得したと言いつのることはできません。この場合、29日より以前を開始日として30日を終了日とすることは可能です。したがって、少なくとも29日から休業を開始して30日を終了日とする必要があります。

 第二に、賞与に係る社会保険料の免除についてです。この場合、令和4年9月30日以前に開始した育児休業は、育児休業期間に月末が含まれる月に支給された賞与に係る保険料が免除の対象でした。しかし、令和4年10月1日以降に開始した育児休業については、当該賞与月の末日を含んだ連続した1箇月を超える育児休業等を取得した場合に限り、免除の対象となるとされました。

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