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ガンプラと技術立国

 技術立国日本を底辺で支えている中小企業の精神を高らかに謳い揚げた「下町ロケット」(原作 池井戸潤)という作品があります。今秋、阿部寛氏が主演でテレビドラマ化され、圧倒的な支持をえているようです。浅草社労士も社労士仲間から薦められて第2話から見るようになったのですが、阿部寛演じる佃社長の言葉に不覚にも感動して涙腺が緩むことしばしばです。かつてのNHKは、泡沫経済崩壊後の不況で自信を失いつつあった日本の状況の中で「ProjectX」という日本人の精神を鼓舞する好番組を制作していましたが、そのProjectXの底流に流れていたものにつらなる精神を実話とフィクションの違いを超えて感じているのは、浅草社労士だけではないでしょう。

 そんな技術立国、日本の姿を伝えるニュースは、何もMRJの初飛行やH2Aの打ち上げ成功のような大事業ばかりではありません。浅草社労士はプラモデルが趣味ではないのですが、ガンプラくらい知っていますし、数点は作ったこともあります。そのガンプラ、売上高は2014年度で767億円でバンダイの親会社であるバンダイナムコホールディングスの連結売上高の約14%を占める計算になるそうです。しかも、今時100%国産。バンダイは、立派な大企業であり、中小企業とはいえませんが、ガンプラ35年の隆盛を支えているのは、その道一筋の熟練の技という点が「下町ロケット」にも通じるところであり、我が国の製造業が生き残っていくためのヒントが隠されているように思えました。

=== 日本経済新聞電子版 11月29日 ===

 22日、東京・秋葉原。ガンプラ作りの腕前を競う世界大会「ガンプラビルダーズワールドカップ」の日本大会の決勝が開かれた。応募総数は約1500点。その頂点に立った高奥誠也さん(50)は作品には登場しないモビルスーツを創作した。「ガンプラを自由に作り込むことで物語を補完したり、想像できたりするのが魅力」と語る。

 ガンプラ誕生直後から活躍し、「川口名人」としてガンダム制作に深く関わってきたホビー事業部の川口克己氏は「ガンプラは作るほど思い入れが深くなり、作り手の数だけ作品が生まれる。公式の物語も更新され、35年たった今も現役の商品になっている」という。

 静岡市の中心部と清水港を結ぶ静岡清水線の長沼駅。その目の前にバンダイの「バンダイホビーセンター」はある。ガンプラをはじめとするプラモデルの生産拠点だ。ガラス張りの外観からは想像もつかないが、中では樹脂の溶融と成型を繰り返している。バンダイのホビー事業部所属の約140人のうち、約90人がここで勤める。10月、ホビーセンターで新型の樹脂成型機が3台稼働した。黒と紫の塗装はガンダムに登場する敵役のモビルスーツ「ドム」を思わせる。成型時に金型を閉じる型締めの圧力は180トン。プラモデル部品がつながる成型品「ランナー」を1日に4千~5千枚製造でき、生産能力は2割増えた。

 成型機は東芝機械製の特注品で、素材も色も違う4種類の樹脂を金型へ流し、1枚の成型品を作る多色成型の専用機。「使いこなせるのは世界でバンダイだけ」とホビー事業部の志田健二氏は胸を張る。志田氏は1985年に入社し、ほぼ一貫してガンプラ生産に従事してきたベテラン。ガンプラ35年の歴史でも4人しか名乗れない「シニアマイスター」の1人だ。取り扱う樹脂はポリスチレンやABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂など5種類。新製品の金型ができあがると、志田氏ら現場の職人が金型の形状や樹脂に合わせて設定値を細かく調整する。粒状の原料樹脂を溶融する温度はセ氏190~240度で微調整し、どの樹脂をどの順番、タイミングで流し込むのかを決める。現在、樹脂を流し込んで固まるまでの時間はランナー1枚あたり約20秒。「目標は15秒」と志田氏は言う。

 頼りは積み重ねてきた勘や経験。コンピューターでは4つの樹脂の細かな動きや性質の変化を分析しきれないという。旭化成など樹脂会社との綿密な打ち合わせも重要になる。なじみの関連企業が集積するという静岡の立地も好都合。パッケージや説明書などの紙製品まで含めすべてを国内生産できる。アジアでのガンプラ人気の高まりで輸出比率は3割を超える。

=== 転載 終わり (下線は浅草社労士)===

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15年後の就業者数推計値

 人口減少が顕在化してきたことで、少子高齢化がいよいよ待ったなしの我が国が抱える深刻な問題であるといった論調を耳にしない日はありません。厚生労働省は今月24日、雇用政策研究会(座長・樋口美雄慶応大教授)を開き、2020年と30年時点の就業者数の推計を公表しました。ここで肝心なことは、就業者数、すなわち生産年齢人口から割り出された数字だと思われますが、この人口が総人口の減少よりも速いペースで減っていくことです。つまり、我が国は、長期的には、超人手不足となり、また、供給不足によるインフレとなる懸念が極めて必然的に高いということが言えるのです。

 これを契機にして、真っ当に国民経済を成長させ、国を繁栄させるために必要なことは、移民政策などではありません。政府が高水準のインフラ整備を進め、民間企業は設備投資を行うことです。人口減少を補って経済を成長させる原動力となるのは、生産性を飛躍的に高めていくことしかないからです。

=== NHK NEWS WEB 11月24日 ===

 将来の労働力について、厚生労働省が初めて都道府県別、産業別に推計を行い、経済成長率が低い場合は15年後の2030年に働く人が800万人近く減るという結果を公表しました。秋田県や青森県、高知県など8つの県では20%以上減少し、働き手が足りなくなる事態が心配される内容になっています。これは、厚生労働省の雇用政策研究会が将来の人口推計を基に経済成長率などを仮定して、労働力人口や就業者の数などを都道府県別、産業別に初めて推計したもので、24日公表されました。

 このうち、経済成長率がほぼゼロで高齢者や女性の労働参加が進まない場合は、すべての都道府県で人口の減少を上回るペースで働く人が減り、15年後の2030年には就業者数は5561万人と、去年の平均値の6351万人から790万人、率にして12%減少すると推計されています。

 都道府県別では、秋田がおよそ27%と減少率が最も高く、次いで青森の24%余り、高知がおよそ22%などとなっています。働く人が20%以上減る県は、このほか長崎や和歌山など合わせて8つの県に上り、働き手が足りなくなる事態が心配される内容となっています。産業別では、高齢化が進む影響で医療・福祉の就業者が全国で163万人増える一方、卸・小売業で253万人、製造業で130万人減ると推計されています。

 一方、経済成長率が2%程度で推移したうえで高齢者や女性の雇用を積極的に進めるなどの対策を取った場合、15年後の就業者数は182万人の減少にとどまり、東京や愛知、沖縄など5つの都県では増加するとされています。厚生労働省は今回の結果を報告書に取りまとめ、高齢者や女性の就労支援など今後の政策に生かしたいとしています。

 高齢者や女性の労働参加が鍵
 働く人の減少をどう食い止めるのか、厚生労働省の推計からは経済の安定した成長に加えて、高齢者や女性の労働参加が鍵を握っていることが分かります。就業者の減少が最小限にとどまるケースでは、60代後半の男性の就業率は2030年には今の50.5%から15ポイント以上も上がって65.7%に上るとされています。その結果、65歳以上の男性の就業者は88万人増えて502万人となります。また、このケースでは女性の就業者は13万人増加して2742万人になると推計されています。なかでも出産や育児のために今は就業率が68%にとどまっている30代前半の女性は2030年におよそ82%が働いているとされています。厚生労働省は、高齢者を雇用する企業への支援の充実や、保育所を整備して待機児童を解消するなど、高齢者や女性の就労支援を進めることにしています。

=== 引用終わり(太字及び下線は浅草社労士) ===

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改正労働者派遣法の盲点

 平成24年の改正法で平成27年、つまり本年10月1日に施行が決まっていた「労働契約申し込みみなし制度(3年を超えた違法派遣は、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し入れたのと同様だとみなされる)」が施行されるのに間に合わせるために、9月30日施行となった平成27年版改正労働者派遣法には、見過ごされている重大な盲点があることに氣が付きました。それは、後で述べることとして、まずは改正法の要旨を復習しておきましょう。

(1)派遣事業の「許可制」一本化
 派遣元企業が常時雇用する労働者のみを派遣する常用型派遣だけを行う「特定労働者派遣事業」に許容されていた「届出制」を廃止し、派遣事業は全て「許可制」とします。これまで届出のみを行っていた「特定労働者派遣事業」者は、3年程度の移行期間中に許可を得ることが必須になります。

(2)派遣労働者の雇用安定及びキャリアアップ
 派遣元は、派遣労働者の雇用継続推進、キャリアアップのために以下の措置を講じることとします。
 ① 派遣労働者に対する計画的な教育訓練、希望者へのキャリア・コンサルティングを行う義務
 ② 派遣期間終了時における派遣労働者への雇用安定措置を行う義務(3年経過して戻った場合は義務)
  A 派遣先に直接雇用を申し入れる
  B 新たな派遣先を提供する
  C 派遣会社で無期雇用に転換する

(3)派遣期間無制限26業務廃止
 まず派遣期間に上限のないソフトウエア開発、通訳、秘書又はファイリングなど「26業務」の区分をなくします。区分の廃止により何が26業務にあたるのか分かりづらかった問題を解決し、派遣労働者に仕事を任せやすくするのが目的としています。

(4)派遣期間の無制限化
 その上で、派遣期間の上限は「業務」ごとではなく「人」ごとに変えるとしています。現行法では、専門26業務以外で3年とする上限は、企業が仕事を派遣労働者に任せてよい期間で、1人の派遣労働者が同じ職場で働ける上限ではありません。上限を「人」に改めることで、人を交代すれば、企業は同じ職場で派遣労働者の受け入れを続けられる期間に制限がなくなるというわけです。しかし、こうなると派遣労働者を守ると同時に正規労働が派遣に置き換えられてしまうことから正規労働者を保護するという建前が崩れます。この点は、派遣労働が正規労働を代替しないように、労働者を交代する時に、過半数労働組合等から意見を聴取するよう企業に求めるとしていますが、どこまで実効性が働くのか連合などから疑問の声が上がっているようです。

 そこで、何が問題となるかというと、(4)の「人」による規制は、あくまでも有期雇用派遣が前提になっているということで、無期雇用派遣(これまでの常用派遣のこと)には、全く適用されないということです。つまり、派遣元企業が常時雇用する労働者を派遣する場合、この派遣労働者を同じ職場で期間を氣にすることなく、使い続けることができるわけです。もちろん、ここでいう無期雇用というのは派遣元での話で、派遣先との契約では派遣期間の定めがあるわけですから、当該派遣労働者を使い続けたくないと思えば、派遣期間終了とともに更新しない選択を採ることができます。こうなってくると、派遣先の企業としては、3年ごとの派遣労働者の入れ替えに注意を払わなければならない有期雇用派遣よりも無期雇用派遣を選好するのは、ごく自然な流れになります。

 しかし、無期雇用(常用型)派遣は、当該派遣労働者が派遣契約が終了して戻ってきたときに、派遣元にとっては最低でも休業手当支給(その他社会保険料、労働保険慮)の費用増加をもたらします。現状2対8といわれる無期雇用(常用型)派遣労働者と有期雇用(登録型)派遣労働者の割合 は、そのような事情を反映したものでした。

 労働者派遣法は、施行3年後の見直しの検討を行うことに加え、正社員と派遣労働者の数の動向等を踏まえ、能力の有効発揮と雇用の安定に資する雇用慣行が損なわれる惧れがある場合には速やかに検討を行う、均等・近郊待遇の確保の在り方を検討するための調査研究を行うなどの検討規定が付されて施行されることとなりました。

 さて、話は少々それますが、少子化が進む日本、もはや人口減少も必至の状況です。しかし、結婚した女性一人当たりが生む子供の数(有配偶出生率)は、バブル絶頂期辺りを底に増えてきているそうです。ではなぜ、少子化が進むのかといえば、有配偶率自体が減っているからです。この傾向は、非正規労働者において著しいそうです。ということは、何を意味するのか、「少子化対策の鍵は雇用対策に在り」経済評論家の三橋貴明氏が解説しています。

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