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働き方改革の実行計画まとまる

 働き方改革を進める政府は、総理大臣官邸で働き方改革実現会議を開き、長時間労働の是正及び非正規社員の待遇改善を目指した法改正の方向性などを盛り込んだ実行計画を取りまとめました。残っていた論点である時間外労働の上限規制について、適用しない業種に研究開発職を明記したほか、医師は2年後までをめどに規制の在り方を検討するとしています。一方、運輸及び建設は猶予期間を設け、将来的には例外としないことになりました。

 それにしても、主に中小企業の事業所などが占める全体の44.8%が36協定を締結していないという記事、事実ならば由々しき問題です。改正労基法では、これらが全て罰則の対象になってきます。

=== NHK NEWS WEB 平成29年3月28日 ===

 働き方改革 時間外労働や非正規処遇はどう変わる

 政府は、働き方改革実現会議で、長時間労働の是正などに向けた実行計画を取りまとめました。実行計画で、時間外労働や非正規労働者の処遇がどう変わるのか、見ていきます。

・時間外労働 上限規制の原則

 実行計画には、長時間労働の是正に向けて、労働基準法を改正し、罰則付きの時間外労働の上限を定めることが盛り込まれています。具体的には、現在は強制力のない厚生労働大臣告示で定められている、月45時間、年間360時間の上限を法律で定めたうえで、「36協定」を締結すれば時間外労働がここまで認められることを明確にします。このため月45時間、年間360時間の上限を超えれば罰則が科されるというのが原則となります。

 年間360時間の上限は、週休2日が確保されている場合、時間外労働は1日当たり1時間20分余りとなります。仮に1月から上限ぎりぎりの45時間、毎月、時間外労働を続けたと仮定すれば、9月以降は時間外労働が一切できなくなります。

・時間外労働 特別な場合の上限規制

 また、臨時的に特別な事情がある場合に「特別条項付き36協定」を結ぶことで、年間6か月まではさらなる時間外労働を認めることも法律で定めることにしています。ただ、「特別条項付き36協定」を締結する場合にも、年間720時間・月平均60時間を上限とすることを法律に明記します。年間720時間の上限は、週休2日が確保されている場合、時間外労働は1日当たり2時間40分余りとなり、仮に年間を通じて毎日3時間残業すると、上限を超えることになります。

 さらに繁忙期については、時間外労働と休日労働を合わせた時間に対する上限規制が導入されることになりました。具体的には、時間外労働が年間720時間を超えないことを前提に、休日労働を含めて、最大で月100時間未満、2か月から6か月のいずれの期間の平均も80時間を上限とすることを法律で定めます。この結果、仮に毎月上限ぎりぎりまで働くことを想定した場合、例えば1月に時間外労働と休日労働を合わせて100時間ぎりぎりまで働けば、2月は60時間まで、3月は80時間まで、4月は80時間までなどと制限されます。

 平成25年に厚生労働省が実施した調査によりますと、「36協定」だけを締結している事業所は全体の32.8%で、「特別条項付き36協定」を締結している事業所は全体の22.4%となっています。また、中小企業の事業所などが多くを占める、残る44.8%は労使協定を締結していないため、法的には時間外労働や休日労働をさせることができないことになっています。

・時間外労働 適用外の業務は

 自動車の運転業務、建設業などについては、業務の特殊性などが考慮され、現在は、厚生労働大臣告示で定められている、月45時間、年間360時間などといった時間外労働の上限規制が適用されていません。ただ政府は、自動車の運転業務や建設業についても、猶予期間を設けながら、例外とせずに上限規制を適用する方向で業界団体などとの調整を進めてきました。

 この結果、実行計画では、自動車の運転業務について、改正法の施行から5年後に、時間外労働の上限を年間960時間・月平均80時間とする規制を導入し、将来的にはほかの業種と同じ規制を適用することが盛り込まれました。また、建設業については、改正法の施行から5年後にほかの業種と同じ規制を適用するとしています。ただ、復旧や復興に関わる場合に限っては、休日労働を含めて最大で月100時間未満、2か月から6か月のいずれの期間の平均も80時間を上限とする規制は適用しないとしています。

 一方、自動車の運転業務や建設業と同様に、現在、上限規制が適用されていない研究開発職については、医師による面接指導などの健康確保措置が義務化されるものの、引き続き規制を適用せず、例外として残すことになりました。さらに、現在はほかの業種と同じ上限規制が適用されている医師については、患者から診察などを求められた場合に正当な理由がないと拒むことができない「応召義務」があるという特殊性を考慮し、2年後までをめどに規制の在り方を検討し、改正法の施行から5年後をめどにその規制を適用するとしています。

・非正規労働者の処遇改善は

 政府は去年12月、非正規の労働者の処遇改善を図るためのガイドライン案を取りまとめました。ガイドライン案では、同じ企業や団体の中で、正社員と非正規労働者の間にある不合理な待遇差を是正することを目的としていて、基本給や手当、福利厚生などに分けて、基本的な考え方と具体例を示しています。

 このうち基本給について、同じ企業や団体で働く正社員と派遣労働者を除く非正規労働者の間では、職業経験や能力、業績や成果、勤続年数によって金額が変わることを容認しながらも、不合理な差を認めないとしています。そのうえで、非正規労働者にも原則として昇給を行い、賞与を支払うことを前提に、昇給のうち職業能力の向上に応じて支払われる部分や、賞与のうち会社の業績などへの貢献に応じて支払われる部分は不合理な差を認めないと明記しています。また、時間外や深夜・休日手当、通勤手当や出張旅費、単身赴任手当、慶弔休暇、病気休職などについては、原則として正社員と非正規の間で差を設けることを認めないと打ち出しています。

 派遣労働者については、派遣元と派遣先双方との関係をそれぞれ考慮する必要があることから、有期雇用やパートの非正規労働者とは区別されていて、派遣先の労働者と職務内容などが同じであれば、派遣元の事業者は、基本給などの賃金、それに福利厚生などの待遇を同じにする必要があるとしています。

・非正規労働者処遇改善 ガイドライン案の実効性担保

 今回の実行計画では、ガイドライン案の実効性を担保するため、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3法を改正し、ガイドライン案で基本的な考え方や具体例が示されていない場合でも、非正規労働者が正社員との間の不合理な待遇差の是正を求める場合、裁判に訴えられるようにするための規定を設けるとしています。

 ただ、非正規労働者が裁判に訴える場合、待遇の決定の在り方などについて情報がないと判断できないため、企業や団体に対し、非正規労働者と正社員との間に設けられた待遇差の理由などについて説明する義務を課すとしています。

 また、非正規労働者が実際に裁判に訴えるとなると経済的な負担もかかることから、政府が裁判を行わずにトラブルを解決に導く「ADR」=裁判外紛争解決手続きを整備し、無料で利用できるようにするとしています。加えて、派遣労働者については、派遣先の労働者が比較対象となることから、派遣先の企業や団体の賃金体系などの情報を派遣元に対して提供する義務を課すとしています。

 ただ、派遣労働者は派遣先の労働者に待遇を合わせる必要があることから、同一労働同一賃金を徹底すれば、派遣先が変わるたびに賃金水準が変動し、生活が不安定になる可能性もあります。このため、派遣労働者の賃金を同じ業種の正社員と同等以上にするなど要件を満たした場合に限って、派遣労働者が派遣元との間で労働協約を締結し、同一労働同一賃金の適用を除外できるようにしています。

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

トヨタ自動車今季もベースアップへ

 今朝の日本経済新聞電子などが伝えるところによれば、トヨタ自動車は「12日、2017年の春季労使交渉でベースアップ(ベア)に相当する1300円を含む2400円の賃金改善に応じる方針を固めた。」とのことです。生産年齢人口の急速な減少とその傾向がしばらく続くことが明らかなことから、労働市場における供給不足状況は今後常態化し、放っておかれれば賃金の上昇圧力がかかるのが我が国の現状です。トヨタのベースアップは必然的な帰結といえますが、昨季の水準を若干下回ったのは、国内経済のデフレ懸念がやや高まっていること、そして新興国経済の不振による先行き不透明感などが影響したものと思われます。ひとことで言うと、絶好調というにはほど遠いということでしょうか。ただ、我が国を代表する巨大企業のトヨタの方針決定は、今季の労使交渉に大きな影響を与えるといわれています。国内消費がしっかりと回復するためには、適正な賃上げが必要条件になっています。

=== 日本経済新聞電子版 平成29年3月13日 ===

 トヨタの労働組合は今春の交渉で、定期昇給に当たる賃金制度維持分として月7300円、改善分として月3000円を要求した。賃上げについて安倍晋三首相が「少なくとも前年並み」と要請する一方、トヨタ幹部は同社の賃金が既に高水準であることなどを理由に、「一律的な引き上げは困難」との見解を示していた。

 改善分のうちベア相当分は1300円にとどまり昨年の1500円を下回ることになる。ベア実施は4年連続。一方、1人平均1100円を上積みし、育児中の社員などを対象にした手当に充当する。トヨタは16年1月に配偶者向けの手当を廃止する一方、新たな家族手当を導入した。当初は段階的に新制度へ移行する予定だったが、完全実施の時期を早める。

 具体的には現在、新制度に基づき1人目の子供に月2万円、2人目以降は月1万3500円を支給している。2人目以降については当初、毎年1500~2000円増やして21年に月2万円に引き上げる予定だったが、改善分の一部を原資として使って即時実施する方針だ。

 年間一時金については6.3カ月分の要求に対して満額回答する。労働組合は業績悪化を受けて、前年よりも0.8カ月分低い要求としていた。一時金の満額回答は7年連続となる。

 今春は経営環境が厳しさを増すなか、固定費の増加を懸念する会社側と、個人消費の活性化をはじめとする社会的な意義を訴える労働組合の間で厳しい交渉が続いてきた。電機大手は月3000円のベア要求に対し、1000円で決着する見通し。前年の1500円を下回る。トヨタは実質的なベアが前年を下回る一方で育児支援の名目で上積みし、内外の要請に応える形となる。

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

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病院経営は危機的状況

 昨年12月、福島県双葉部広野町にある高野病院の院長が火事で亡くなるという痛ましい事故のことが主要な報道機関でもとり上げられました。高野病院は福島第一原発事故発生以来、地域で唯一の医療機関として地域のインフラとしての役割を担ってきたのです。その病院の院長が亡くなり、病院の存続が危機的な状況にあるとみられたため、大きな関心が寄せられたのです。しかし、原発事故という特殊な事情を抱えた高野病院に限らず、今日多くの地方都市の病院経営は、厳しい状況にあるようです。星槎大学客員教授の上昌広氏は、「加速する病院崩壊」(NHKラジオ)で次のように病院経営の問題を解説されておられます。

 まず、地方都市の病院ですが、全国の病院で医師は院長が一人で診ておられるような病院が全体の1割程度にのぼるとのことです。その原因は、主に2つ考えられ、ここ数年続いている診療報酬の引き下げと地方都市における人口減少に伴う患者数の減少です。こういった地方都市では、地域の重要なインフラの一つである医療機関を維持していくことが困難になってきているのです。

 しかし、人口が集積し、医者の数も十分な首都圏でも別な意味での病院経営の問題が生じているというのが上教授の指摘です。私立大学医学部付属の大学病院などの民間の病院で主に起こっている問題は、看護師などの人件費が高く、コスト高を全国一律の診療報酬でまかないきれず、赤字になる病院が増えているということです。また、消費税の引き上げは、消費税の支払いが持ち出しになる傾向が強い病院経営にとって痛手であり、そういった状況下で設備投資その他の経営判断を少し違えただけで、経営状況が厳しくなる病院が多いようです。経営に問題のある病院はコスト削減に走ることになりますが、首都圏では数の多い医師の人件費削減が行われるため、私大付属の大学病院で働く40台の勤務医の月給が手取りで30万円あるかないかといったところもあるそうです。首都圏では知らない者は皆無と思われる聖路加国際病院でさえ赤字に苦しんでいることにはまったく驚きました。

 こういった深刻な問題が病院経営で人知れず進行していたのですが、上教授が提示した解決策は、新技術の導入と海外からの看護師や医師の招聘によるコスト削減、及び医療費の負担増でした。海外からの人件費の安い看護師と医師を招聘することは今日どの先進国でも行われているといわれるのですが、このような発想にはまったく同意できません。途上国の医師や看護師を先進国が吸い取るということは、途上国の医療を後退させてその恩恵を吸い取るということを意味すると思うからです。もちろん、日本で働きたい、日本で技術を磨いて祖国の医療に貢献したいという途上国の人を受け入れるのは好いと思いますが、積極的に外国人労働者を安く使おうという発想で受け入れるのには断固反対です。日本は日本のやり方で、つまり、設備投資と技術開発によってコスト削減を実現し、経済成長することで医療費増加分を賄って行けるようにするのが目指すべき理想の姿というものです。

(追記)今朝の日経紙には、大手銀行による医療費抑制のこんな動きが掲載されておりました。
<三井住友銀行とみずほ銀行は地方自治体と組み、病気の予防事業などで抑制できた医療費の一部を配当として投資家に還元する取り組みを始める。公共的な課題に関心を持つ富裕層らの投資マネーを取り込み、社会保障関連の事業拡大につなげる。民間資金を公的サービスに回すソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)と呼ぶ仕組み。2010年に英国でスタートし欧米で普及している。>

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歩合給と時間外手当

 昨日2月28日の日本経済新聞電子版に「歩合給から残業代差し引く賃金規則は有効 最高裁判決」という記事が掲載されておりました。浅草社労士は、タクシー業界及び歩合給の仕組みに明るくはないので、記事を読んだだけではこの判決の意味するところが今一つといったところです。問題の背景にはタクシー業界独特の賃金制度があるようです。つい先般、東京ではタクシーの初乗りの仕組み変更で、初乗り運賃が引き下げられたところです。自動運転の実用化も近い将来に現実的なものになりそうな昨今の時代の流れは、業界にとって厳しさを増しそうです。タクシー業界は、新たな付加価値を生み出してゆかねばならない時期にさしかかっているのかもしれません。一方で、宅配便最大手のヤマト運輸がネット通販荷物の急増に対して、サーヴィスの一部廃止を決めるなど、過剰と思われるサーヴィスを整理する動きも出てきて注目されています(註)。

 基本給と歩合給の組み合わせで支払われている賃金について基本的な時間外手当算出の考え方は、次の(1)+(2)ようになります。

(1)基本給の時給換算 × 1.25 × 残業時間

(2)歩合給の時給換算 × 0.25 × 残業時間

 そこで、ある月に基本給10万円、歩合給15万円が支給されたが、総労働時間が200時間、うち時間外が40時間とすると、

(1)基本給部分の計算
 10万円 ÷ (200-40) = 625
 625 × 1.25 = 781.25

(2)歩合給部分の計算
 15万円 ÷ 200 = 750
 750 × 0.25 = 187.5

残業代は、 (781.25 + 187.5) × 20 = 19375円 ということになります。 

(註)ヤマト運輸は、時間帯指定サービスを見直す方針で、例えば、正午から午後2時の指定をやめて、ドライバーが昼休みをとれるようにしたり、現在、午後9時までとしている配達を早めに切り上げる事などを検討しています。

=== 日本経済新聞電子版 平成29年2月28日 ===

 タクシー会社の国際自動車(東京)の運転手ら14人が、歩合給から残業代を差し引く賃金規則は無効だとして未払い賃金の支払いを求めた訴訟の上告審判決が28日、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)であった。同小法廷は、賃金規則が無効とした二審・東京高裁判決を破棄し、規定は有効と判断した。そのうえで、労働基準法の基準を満たす残業代が支払われているかどうかを判断するため審理を東京高裁に差し戻した。

 同小法廷は判決理由で、国際自動車の賃金規則について「規則が労基法の趣旨に反して無効とはいえない」と判断した。一方、「規則にもとづく賃金が、労基法が定める残業代の支払いといえるかどうかは問題になり得る」とも指摘。差し戻し審で残業代が適法に支払われていないと判断されれば、未払い賃金が生じることになる。

 一、二審判決によると、この賃金規則は、時間外手当や深夜手当などが生じた場合、売り上げに応じて支払われる歩合給から同額を差し引いて支払うと定めていた。運転手側の代理人弁護士によると、同様の賃金規定はタクシー業界で広く用いられているとされる。

 一審・東京地裁判決は「労基法が定める残業代の支払いを免れる賃金規則であり無効」と判断し、未払い賃金計約1460万円の支払いを命じ、国際自動車が敗訴した。二審判決も一審の結論を維持した。

 国際自動車は「売り上げ増加のために過剰労働に陥りやすいタクシー運転手の健康や安全に配慮するのが目的だ」と主張。労働組合からの要望を踏まえた規則であり、有効だと訴えていた。

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

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