妊娠理由の降格 最高裁が初判断2
1.最高裁判決の考え方まとめ
昨年の10月、妊娠を理由にした降格は男女雇用機会均等法に違反するとして、広島市の女性が勤務先を訴えた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は、「妊娠や出産を理由に不利益な扱いをすることは、特段の事情がない限りは違法で無効」とする初判断を示しました。この判決は、今後のマタハラ事案に大きな影響を及ぼすものと考えられます。月刊社労士4月号の論稿(「マタニティハラスメントをめぐる最高裁判決と均等行政の動向」 北岡大介)から、判決の考え方の要点をまとめておきます。
北岡氏は、降格処分の違法無効が争われた本事案の判断方法は、概ね以下の2つが考えられると述べています。
1.降格処分について人事権濫用法理を適用し、その目的・態様において合理性・社会的相当性に欠ける点がなかったかの審査を行う方法。
2.行政法規である均等法9条3項に定める妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等の該当性を基に司法判断を行う方法。
そして、当該最高裁判決は、使用者が妊産婦からの職務軽減申請を「契機」に降格処分を行うことが、均等法9条3項違反等に当たるとするものです。本事案の特徴として、そもそも会社側の妊娠後の降格処分が、妊娠を理由とした軽易業務転換中の一時的な措置ではなく、復職後等も元の地位に復帰を予定していない措置であったとの事実認定がなされています。このような事実認定を前提とすれば、本件降格処分は人事権濫用法理を適用しても、その目的・態様が合理性・社会的相当性を欠くものといえ、十分にその濫用性が認められる事案であったと考えられます。
2.最高裁判決を受けた行政機関の対応
厚生労働省は、最高裁判決を受けて、平成27年1月23日付けで均等法及び育児介護休業法の解釈見直しに係る通達を発出しています。同通達は、妊娠・出産及び育児休業等を理由とした不利益取扱い禁止に係る解釈通達を見直すものでした。通達によれば、まず、妊娠・出産、育児休業等を契機として不利益取扱いが行われた場合、これは原則として均等法、育児休業法に違反するとしています。「契機として」の解釈は、「基本的に当該事由が発生している期間と時間的に近接して当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること」とされました。
一方、業務上の必要性から支障があるため、当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定する趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在するとき、最高裁判決と同様に違反が認められるとは解されない例外的な事案も存在するとしています。
また、「契機とした」事由又は当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、有利な影響の内容や程度が不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば、同意するような合理的な理由が客観的に存在するときにも違反には当たらないとされています。
まとめると、妊娠・出産、育児休業等を契機として不利益取扱いが行われた場合、これは均等法、育児休業法に違反するというのが、大原則と考えます。その上で、例外は、業務上の必要性から支障があるため、当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定する趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在するとき、などと非常に限定的な解釈がなされるということに十分な注意が必要です。
昨年の10月、妊娠を理由にした降格は男女雇用機会均等法に違反するとして、広島市の女性が勤務先を訴えた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は、「妊娠や出産を理由に不利益な扱いをすることは、特段の事情がない限りは違法で無効」とする初判断を示しました。この判決は、今後のマタハラ事案に大きな影響を及ぼすものと考えられます。月刊社労士4月号の論稿(「マタニティハラスメントをめぐる最高裁判決と均等行政の動向」 北岡大介)から、判決の考え方の要点をまとめておきます。
北岡氏は、降格処分の違法無効が争われた本事案の判断方法は、概ね以下の2つが考えられると述べています。
1.降格処分について人事権濫用法理を適用し、その目的・態様において合理性・社会的相当性に欠ける点がなかったかの審査を行う方法。
2.行政法規である均等法9条3項に定める妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等の該当性を基に司法判断を行う方法。
そして、当該最高裁判決は、使用者が妊産婦からの職務軽減申請を「契機」に降格処分を行うことが、均等法9条3項違反等に当たるとするものです。本事案の特徴として、そもそも会社側の妊娠後の降格処分が、妊娠を理由とした軽易業務転換中の一時的な措置ではなく、復職後等も元の地位に復帰を予定していない措置であったとの事実認定がなされています。このような事実認定を前提とすれば、本件降格処分は人事権濫用法理を適用しても、その目的・態様が合理性・社会的相当性を欠くものといえ、十分にその濫用性が認められる事案であったと考えられます。
2.最高裁判決を受けた行政機関の対応
厚生労働省は、最高裁判決を受けて、平成27年1月23日付けで均等法及び育児介護休業法の解釈見直しに係る通達を発出しています。同通達は、妊娠・出産及び育児休業等を理由とした不利益取扱い禁止に係る解釈通達を見直すものでした。通達によれば、まず、妊娠・出産、育児休業等を契機として不利益取扱いが行われた場合、これは原則として均等法、育児休業法に違反するとしています。「契機として」の解釈は、「基本的に当該事由が発生している期間と時間的に近接して当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること」とされました。
一方、業務上の必要性から支障があるため、当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定する趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在するとき、最高裁判決と同様に違反が認められるとは解されない例外的な事案も存在するとしています。
また、「契機とした」事由又は当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、有利な影響の内容や程度が不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば、同意するような合理的な理由が客観的に存在するときにも違反には当たらないとされています。
まとめると、妊娠・出産、育児休業等を契機として不利益取扱いが行われた場合、これは均等法、育児休業法に違反するというのが、大原則と考えます。その上で、例外は、業務上の必要性から支障があるため、当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定する趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在するとき、などと非常に限定的な解釈がなされるということに十分な注意が必要です。
2015年04月28日 20:00 | 人事労務