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技能実習制度の再考

 外国人技能実習生制度とは、発展途上国などからの主に若者を我が国に受け入れ、数年間実習生として労働が行われている現場でOJT研修を行い、職業に関する一定の技術・能力を身に着け、帰国して母国の発展のために生かしてもらうという趣旨だったかと思います。本年11月1日に施行される予定の外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の第3条は、同制度の基本理念について、次のように謳っております。

(基本理念)
第3条 技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。
2 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。

 という建前とは裏腹に、この制度は、「低賃金の」又は「3K労働者としての」外国人労働者受入れの抜け道としての役割を果たしてきたという側面がありました。近頃は技能実習の対象をコンビニの仕事にまで広げるという話まで聞こえてきます。新法の施行は、技能実習制度の適正化及び拡充を企図したものです。適正化の措置としては、団体管理型受入れでの管理団体を許可制の下に置く、受入れ企業など実習実施機関である実習実施者を届出制とし、実習実施者が作成する技能実習計画を認定制とするとしています。また、主務大臣を法務大臣と厚生労働大臣とし、制度運営に係る事務等を実施させるための外国人技能実習機構を認可法人として設置しています。

 一方、制度の拡充については、従来の在留資格「技能実習」第1号(1年目)と第2号(2~3年目)に加えて、1箇月以上の一時帰国という軽い条件をつけた上で、第3号(4~5年目)が設けられることになりました。各段階に進むためには、技能検定などの技能評価試験が必須とは言われていますが、技能実習生を労働力として組み込む仕組みが益々整備されたようにも見えます。

 外国人労働者の流入は、移民の流入につながり、これまで安易に外国人の労働力に依存してきた欧州諸国では、移民の増加が社会保障へのただ乗り、治安の悪化などの深刻な社会問題を引き起こしています。結局、(1)規制の緩い外国人労働者又は移民の受入れ、(2)自由で規制の少ない社会、(3)安全で治安の良好な社会、これらの3つは、決して鼎立することのない命題です。我が国が、これからも、自由で規制の少ない社会、安全で治安の良好な社会を維持していくためには、外国人労働者の流入を厳格に規制していくべきです。いくら少子高齢化の進行といい、人手不足といっても、安易に外国人労働者に依存することの愚は、欧州諸国の失敗を見れば明々白々であること、小学生でもわかるはずです。

 その点で、新法に救いがあるとすれば、作成が必須の技能実習計画の中に、技能実習の内容のほか、「報酬、労働時間、休日、休暇、宿泊施設、実習生が負担する食費及び居住費その他の技能実習生の待遇」が記載されることとなっており、技能実習計画の認定基準において、「報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」が求められていることです。この要件が厳格な上にも厳格に運用され、日本人労働者の代わりに賃金の低い外国人労働者を受入れるために同制度を利用しているような実習実施者には認定を与えず、また認定を取り消す等の措置が躊躇なく行われるよう切に求めてやみません。

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働き方改革推進法案の内容を復習

 厚生労働省の労働政策審議会は、9月15日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(働き方改革推進法案)」の要綱をおおむね妥当として答申しておりました。この法律案は、労働基準法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法、労働安全衛生法、雇用対策法など8本の改正および継続審議となっていた「労働基準法等の一部を改正する法律案」の内容も加えて一本化したものです。本法律案は、先月安倍総理が臨時国会の冒頭で衆議院の解散を決断したことで、国会審議がひとまず先送りされた形になっていました。10.22衆院選挙の結果が与党圧勝となったのをうけて、今後国会での審議が予想される働き方改革推進法案の柱となっている内容を復習しておきたいと思います。


1.高度プロフェッショナルと時間外労働

 労働基準法関連では、罰則付きの時間外労働の上限を定めることが盛り込まれるなど時間外労働の上限に関して、これまでよりも厳しい規制をかけることになっています。一方、「企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大」や「高度プロフェッショナル制度(いわゆる「ホワイトカラーエグゼンプション」)の創設」などの時間外労働の上限規制の例外として制度も加えられることになっています。ただし、両制度が時間外労働の上限規制をすり抜ける道具として使われることがないように次のような修正が付け加えられました。

(1)企画業務型裁量労働制
 対象は、企画、立案、調査および分析を主として行う業務等とし、営業職全般とはしないこと、少なくとも3年間の勤続を必要とする業務などを明示した。

(2)高度プロフェッショナル制度
 対象労働者に対し、年104日以上かつ4週間を通じて4日以上の休日付与を義務付ける。
 対象労働者に講ずる選択的措置に次の2つを追加する。
 ①年1回以上継続した2週間の休日付与
 ②労働者の健康保持を考慮した健康診断の実施

 また、時間外労働の上限規制の適用除外になる労働者に関して、労働安全衛生法を改正して、時間外労働時間(高度プロフェッショナル制度の健康管理時間)が月100時間を超えた場合、医師の面接指導の実施を事業主に義務付けることになっています。


2.同一労働同一賃金

 同一労働同一賃金に関しては、パートタイム労働法の対象に有期雇用の労働者を加え、これまでは有期雇用労働者に適用されなかった均等待遇などすべての規定を適用することとしています。また、事業主に正社員との待遇差に関する説明義務を課すこととし、法律の名称を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に変更する予定です。一方で、労働契約法の第20条「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」は削除されます。

 派遣労働者に関しては、派遣先の労働者との均等・均衡待遇を基本としつつ、派遣元において平均以上の賃金水準や教育訓練の実施など一定水準を満たす労使協定を締結していれば、均等・均衡待遇の適用を除外する仕組みにするとなっています。労使協定を締結しない場合には、受入れ先の事業主に比較対象となる労働者の待遇等の情報を派遣先に提供する義務を課し、それを労働者派遣契約締結の要件とするなどの改正が予定されています。

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健康経営優良法人認定制度とは

 「健康経営」という用語と運動は、厚生労働省ではなく、経済産業省管轄の話のようです。経産省は「健康経営」という概念を世に広めるべく、「健康経営優良法人認定制度」なるものを推進しています。

 健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。健康経営優良法人認定制度は、中小規模の企業や医療法人を対象とした「中小規模法人部門」と、規模の大きい企業や医療法人を対象とした「大規模法人部門」の2つの部門に分け、それぞれの部門で「健康経営優良法人」を認定しています。

 「日本健康会議」は平成28年11月から申請受付を開始、平成29年2月に初回となる「健康経営優良法人2017」として、「大規模法人部門」に235法人、「中小規模法人部門」に95法人が認定されました。また、「中小規模法人部門」については、中小企業等における更なる健康経営の普及促進を図る観点から、平成29年8月に223法人の追加認定を行い、「健康経営優良法人2017(中小規模法人部門)」の認定は合わせて318法人となりました。

健康経営優良法人2018(中小規模法人部門)の認定基準
健康経営優良法人(中小規模法人部門) 認定基準解説書

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15分でわかるストレスケア(「心の耳」より)

 昨年頃からでしょうか、社労士業界でも「健康経営(註)」という標語が目につくようになってきました。今ではすっかり日本語になった感のある片仮名英語「メンタルヘルス」なる用語ですが、やはり、外来語はしっくりと腑に落ちない隔靴搔痒の感じは免れませんし(浅草社労士は、「ファシリテート」などとうそぶいているコンサルタントは全く信用しません)、経営の視点からはメンタルヘルス対策はコストがかかるという発想になりがちなのは否めないでしょう。そこで、従業員が健康で働ける職場環境を整備していけば、休職者の問題などが起こりにくくなり、結果的に収益性が向上して業績改善につながるといった発想がしやすい「健康経営」という言い方が出てきたものと思われます。
(註)「健康経営」とは、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標。研究会研究会によれば、健康経営とは、企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できるとの経営的視点に立って、従業員の健康管理を戦略的に実践することを意味しています。

 では、健康経営といいつつ、具体的に何をすればよいのか。厚労省が開いている「心の耳」というインターネット上のサイトに簡単な教材がありました。これなどをまず従業員にやってもらう、こんなことが先ずは第一歩になるのではないかと思います。最近は、無料で使用できるインターネット上の教材もなかなか洗練されてきており、これを利用しない手はありません。

 ちなみに、3.ストレスとつき合う方法で紹介されている「呼吸法」や「適度な運動」ですが、これらを行うコツは頭の中を勝手にぐるぐると廻っている心の動きを抑えて無心の状態に至ることです。瞑想、ヨガ、氣功など須くこのいわゆる無心の状態に至る方法論を含んでいるように思えます。

15分でわかるセルフケア(「心の耳」より)
5分できる職場のストレスセルフチェック(「心の耳」より)
「心の健康づくり助成金」の手引き