傷病手当金_資格喪失後の継続給付(2)
以前、傷病手当金について、資格喪失後の継続給付を中心に注意点をまとめました(「傷病手当金_資格喪失後の継続給付」。しかし、この制度も、実務となると意外と難しい落とし穴があるのを見つけました。以前に書いた記事では詳しく触れられていないので、少し突っ込んで解説を試みます。
以前の記事では、「資格喪失後の継続給付を受けるための要件は次の通り」ということで、以下の4要件をあげています。
(1)退職日に健康保険の被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の被保険者期間は含みません)が継続して1年以上あること
(2)退職時に傷病手当金を受給しているか受給要件を満たしていること
(3)退職日以前及び退職日以後も継続して傷病により労務不能状態が継続していること
(4)退職時に傷病手当金の支給が開始されてから1年6箇月未満(註1)であること
問題は(2)の要件です。ここは、正確には、「資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日(退職日等)に傷病手当金の支給を受けているか、受けられる状態であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができる。」と規定されています。これは、一体何を言わんとしているのか。ここで、想起しておかなければならない「傷病手当金」の性質は、「支給開始日から最長1年6箇月に支払われるべき給付額を塊として見るではなく、1日ごとに見ていき、時効の2年についても、傷病手当金が発生した各日から2年経過するごとに1日分が消滅すると考えます。」というように、労務不能で休んだ日それぞれを1日単位で見ているということです。
そこで、(2)であげられている要件は、ずばり資格喪失日の前日(=通常は退職日)において労務不能で会社を休んでいなければならないということです。しかも、それだけでは足りず、この日に傷病手当金の支給を受けているか、受けられる状態になければなりません。つまり、遅くとも退職日の3日前までに労務不能で休み始めて3日間の待期期間を作っておかなければならないということです。閏年の今年2月末で退職する例を挙げますと、2月29日退職、3月1日資格喪失の場合、2月26日(日)(註2)、27日(月)、及び28日(火)を業務外の傷病による労務不能で休み、連続3日間の待期を完成させなければなりません。そして、2月29日(水)をきっちり労務不能で会社を休み、傷病手当金を「受けられる状態」にしておかなければならないのです。退職日は、義理を欠いてはいけないと無理をして挨拶のために顔を出したところ、事情を知らない総務担当者によって出勤記録上の出勤日にされてしまい、要件(2)を満たさないことになって、資格喪失後の継続給付は受給することができなくなるということがありうるので要注意です。
(註1)傷病手当金が支給される期間は、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して1年6箇月に変わりました。 ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合には、これまでどおり支給を開始した日から最長1年6箇月です。
(註2)連続する3日間を含み、4日以上労務に服せなかったことには、土日、祝日の公休日を待期期間中に算入してよいことになっています。
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以前の記事では、「資格喪失後の継続給付を受けるための要件は次の通り」ということで、以下の4要件をあげています。
(1)退職日に健康保険の被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の被保険者期間は含みません)が継続して1年以上あること
(2)退職時に傷病手当金を受給しているか受給要件を満たしていること
(3)退職日以前及び退職日以後も継続して傷病により労務不能状態が継続していること
(4)退職時に傷病手当金の支給が開始されてから1年6箇月未満(註1)であること
問題は(2)の要件です。ここは、正確には、「資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日(退職日等)に傷病手当金の支給を受けているか、受けられる状態であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができる。」と規定されています。これは、一体何を言わんとしているのか。ここで、想起しておかなければならない「傷病手当金」の性質は、「支給開始日から最長1年6箇月に支払われるべき給付額を塊として見るではなく、1日ごとに見ていき、時効の2年についても、傷病手当金が発生した各日から2年経過するごとに1日分が消滅すると考えます。」というように、労務不能で休んだ日それぞれを1日単位で見ているということです。
そこで、(2)であげられている要件は、ずばり資格喪失日の前日(=通常は退職日)において労務不能で会社を休んでいなければならないということです。しかも、それだけでは足りず、この日に傷病手当金の支給を受けているか、受けられる状態になければなりません。つまり、遅くとも退職日の3日前までに労務不能で休み始めて3日間の待期期間を作っておかなければならないということです。閏年の今年2月末で退職する例を挙げますと、2月29日退職、3月1日資格喪失の場合、2月26日(日)(註2)、27日(月)、及び28日(火)を業務外の傷病による労務不能で休み、連続3日間の待期を完成させなければなりません。そして、2月29日(水)をきっちり労務不能で会社を休み、傷病手当金を「受けられる状態」にしておかなければならないのです。退職日は、義理を欠いてはいけないと無理をして挨拶のために顔を出したところ、事情を知らない総務担当者によって出勤記録上の出勤日にされてしまい、要件(2)を満たさないことになって、資格喪失後の継続給付は受給することができなくなるということがありうるので要注意です。
(註1)傷病手当金が支給される期間は、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して1年6箇月に変わりました。 ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合には、これまでどおり支給を開始した日から最長1年6箇月です。
(註2)連続する3日間を含み、4日以上労務に服せなかったことには、土日、祝日の公休日を待期期間中に算入してよいことになっています。
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2012年02月29日 23:09 | 社会保険