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パワハラ防止義務が法制化

 職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を義務付ける関連法が29日、参院本会議で可決・成立しました。企業に相談窓口の設置や発生後の再発防止策を求め、悪質な場合は企業名を公表するという建付けになっています。

 労働施策総合推進法や女性活躍推進法など計5本の法律を改正し、パワハラを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」と定義します。その上で、社員がパワハラをした場合の処分内容を就業規則に盛り込むほか、相談者のプライバシー保護の徹底も求める内容です。パワハラが常態化しており勧告しても改善が見られない場合には企業名が公表される仕組みです。大企業は2020年、中小企業は22年にも対応を義務づけられる見通しとなっています。

 具体的にどのような行動がパワハラにあたるかの線引きは、厚生労働省が年内にも策定する指針で示されることになっています。厚労省は現在、「身体的な攻撃」、同僚の見ている中で叱責するなど「精神的な攻撃」、又は一人だけ別室に席を移すなど「人間関係からの切り離し」といった6類型をパワハラとみなしています。指針では、直接的な雇用関係がない就活生やフリーランスに対しても、ハラスメント行為を防ぐよう企業に求める方針で、社外の相手に対するセクハラやパワハラも禁じるよう、就業規則に盛り込むことなどを想定しています。


厚労省パワハラ6類型

(1)身体的な攻撃
 丸めたポスターで頭をたたくなども含む?

(2)脅迫、名誉棄損、侮辱、及びひどい暴言など精神的な攻撃
 同僚の目の前で叱責する。他の職員を含むメールで罵倒する。執拗に叱る。

(3)職場で隔離、仲間外し、及び無視
 一人だけ別室に移す。強制的に自宅待機を命じる。

(4)業務上明らかに不要なことなど過大な要求をすること

(5)仕事を与えないことなど過小な要求をすること
 運転手なのに営業所の草むしりだけをさせる。事務職なのに倉庫業務だけを命じる。

(6)私的領域に過度に立ち入ること
 交際相手について執拗に尋ねる。妻の悪口をいう。

職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕

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労働時間又は労働時間の状況の適正把握の問題

 新年度から段階的に施行されている「働き方改革」関連の法律、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)は、「働き方改革を推進する」という国の基本方針を立法化したものです。この法律の第4条では、国は、「各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することを促進するため、労働時間の短縮その他の労働条件の改善、多様な就業形態の普及及び雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇を確保に関する施策を充実すること。」と定めています。なかでも、労働条件の改善と密接に関係している時間外労働の上限規制の罰則付き法定化は特に重要ですが、そもそも労働時間の把握が適切にできていることが大前提になっているお話です。加えて、事業主の安全配慮義務の視点からも、「労働時間の状況」が把握されていることが前提になることは、いうまでもありません。ここでは、社労士TOKYO5月号記事から、労働時間の把握の考え方について、その要旨をまとめてみました。


1.労基法上の労働時間適正把握に関する通達及び指針

 2016年1月の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の内容は、次のように整理されます。

(1)原則
 使用者は労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを把握すること。適正な把握の方法として、現認又はタイムカードなど客観的な記録によること。
(2)例外
 自己申告による場合、以下の措置を講じること。
(イ)労働者に対して、適正申告を行うよう十分に説明を行うこと。
(ロ)自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
(ハ)労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で、時間外労働の上限を設定するなどの措置は講じないこと。

 一方、管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者については、労基法上、適法な導入・運用である限り、上記ガイドラインの適用除外とされています。


2.改正安衛法における「労働時間の状況」の把握義務

 改正安衛法では、長時間労働の医師面接指導に係る適用が拡大されました。その前提として、面接指導対象労働者の的確な把握が求められるようになりました。そこで、改正安衛法は、事業者に対して「労働時間の状況」を把握しなければならないこととしています。ここでいう「労働時間の状況」を把握の目的は、長時間労働の面接指導対象者の発見であり、労働者がどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握することとなります。つまり、安衛法の「労働時間の状況」は、労基法上の労働時間より、広い概念になるのです。施行規則によれば、「労働時間の状況」の把握の方法として、前述のガイドラインとほぼ同じようなことが記されておりますが、自己申告による方法は、あくまでも労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合、例えば事業場外みなしが適用されているときなどに限定的に認められるとしています。

 また、改正安衛法上の「労働時間の状況」の把握は、高度プロフェッショナル制適用対象者を除くすべての労働者が対象となるとされています。これには、管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者にも適正で客観的な「労働時間の状況」把握が適用されることを意味し、相当に厳しすぎる規定になってしまっています。

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行政手続きの簡素化

 年金を受給する手続きの際に、一般的には住民票及び戸籍謄本などが求められます。住民票はまだよいとして、戸籍謄本は本籍地が遠い場合、用意するのが面倒でしたが、改善される見込みです。また、行政手続きの電子化も益々推進されることになっており、マイナンバーカード作成が必須になってくるのでしょうか。日経紙の記事から拾ってみました。


1.戸籍関係

 戸籍データを法務省のシステムでつなぐ改正戸籍法が24日午前の参院本会議で可決、成立しました。法務省は2024年をめどに新システムの運用を始める予定としており、これにより、戸籍謄本や抄本が本籍地以外の市区町村でも取得できるようになります。

 現在、戸籍の原本は市区町村がそれぞれ管理し、法務省のシステムで副本が管理されています。個人情報を含むため、自治体間や年金事務所などとの間で戸籍情報の共有ができない状態ですが、法改正を受けて法務省の管理システムをネットワークでつなぐことによって、本籍地以外の自治体でも戸籍データが見られるようになります。戸籍データは、マイナンバーとも連携され、年金受給など社会保障関係の手続きでも、戸籍データの添付を省略できるようになる予定です。


2.デジタルファースト

 行政手続きを原則、電子申請に統一するデジタルファースト法が24日、参院本会議で可決、成立しました。同法は、2019年度から順次実施され、引っ越しや相続などの手続きがインターネット上で完結できるようになるとのことです。

 マイナンバー法と公的個人認証法、住民基本台帳法などが一括改正されます。(1)手続きをIT(情報技術)で処理する「デジタルファースト」、(2)同一の情報提供は求めない「ワンスオンリー」、(3)手続きを一度に済ます「ワンストップ」――の3つの原則が柱。

 19年度から実施されるのは、引っ越しをする際、ネットで住民票の移転手続きの準備をすると、その情報を基に電気やガス、水道の契約変更もできるようなること、相続や死亡の申請もネットで完結されるようになることです。

 20年度からは実施されるのは、法人設立関係で、法務局に出向いて登記事項証明書を取得し、書類を複数の窓口に示す手間を省き、ネットで申請できるようにします。

 マイナンバーの個人番号を知らせる紙製の「通知カード」は廃止されます。行政手続きの電子化にはマイナンバーカードの活用が必要ですが、普及率はわずか1割にとどまるため、法改正でICチップの付いたマイナンバーカードの普及を促進する目論見のようです。

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高年齢者雇用安定法改正案の骨子

 昨日15日は、政府により希望する高齢者が70歳まで働けるようにするための高年齢者雇用安定法改正案の骨格が発表されたことが話題になっておりました。改正案の骨格は15日の未来投資会議に提示され、改正案は来年の通常国会に提出される予定です。日経紙の記事によれば、「内閣府の試算によると、65~69歳の就業率が60~64歳と同水準になれば、就業者数は217万人増える。勤労所得は8.2兆円増加し、消費支出には4.1兆円のプラスだ。政府の調査では65~69歳の高齢者の65%は「仕事をしたい」と感じている。一方で実際にこの年齢層で就業している人の割合は46.6%にとどまる。」ということですから、生産年齢人口が急速に減少している(註)ことで人手不足が顕著な昨今の状況に対応した一つの答えになっています。

 希望する高齢者が70歳まで働けるようにするため企業がとる施策として提示されたのは、(1)定年延長(2)定年廃止(3)契約社員や嘱託などによる再雇用、これらは、65歳までの雇用を義務化した現行法で採られている方式です。これらに加え、(4)他企業への再就職支援(5)フリーランスで働くための資金提供(6)起業支援(7)NPO活動などへの資金提供、といった社外での就労機会を得られるように支援する方法も認められています。

 とはいえ、先日トヨタ自動車社長がもはや終身雇用制度を維持していくことは困難ととれる発言を行うなど、企業の人件費抑制の姿勢は、この人手不足の状況下でも顕著に変わってきたとは言えません。今回の施策も、政府が企業にお願いする形で実現した場合、高齢者の賃金は低い水準に抑えられ、さらに現役世代についても生涯賃金を急増させない水準が意識されて賃金制度が改められる事態を呼び込む恐れもあります。政府が、65歳~70歳の雇用については、当初努力義務での運用を始めるとしているのもうなづけます。

(註)2018年の15~64歳の「生産年齢人口」は前年比51万2千人減の7545万1千人。総人口に占める割合は59.7%で、1950年以来最低となりました。

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浅草行政なんでも相談所

 総務省が開設している行政相談所は、浅草でも毎週金曜日に開催されています。場所は、生涯学習センター1階のアトリウムです。毎週、社労士、弁護士、司法書士などの士業に携わる専門家が、総務省の職員と一緒に担当しています。社労士は、毎月第4金曜日で、昨年4月から浅草社労士が担当しています。

 なんでも相談といっても、各士業の専門分野ということで、第4金曜日は、主に人事労務と年金などに係る相談が中心になります。行政に関する一般的な相談、苦情なども受け付けています。令和の御代になって最初の相談所開設は、24日となります。生涯学習センターのアトリウムで見かけられたら、是非お氣軽にお立ち寄りください!!!

 浅草行政何でも相談所 人事労務・年金相談
開 催: 毎月 第4金曜日 次回 5月24日
場 所: 台東区生涯学習センター1階
時 間: 13:00 ~ 16:00

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