村野瀬玲奈の秘書課広報室

　　

こんばんは。土曜の夜はサタデー・ソングブック。DJ村野瀬玲奈です。今晩の1曲目は、フランク・ザッパ Frank Zappa の1988年発売のアルバム「Guitar」から、「職場のセクシャル・ハラスメント Sexual harassment in the workplace」をお聞きください。



改めましてこんばんは、土曜の夜、いかがお過ごしですか。DJをつとめる村野瀬玲奈です。ただいまお送りした曲は、アメリカロック界の伝説的大物、フランク・ザッパのギター・インストゥルメンタル曲、「職場のセクハラ」でした。

フランク・ザッパという人はなんというか、伝説の大物であるだけでなくて一筋縄ではいかない人で、変態のようにも扱われていました。1960年代からたくさんのアルバムを作り、たくさんのツアーをしてたくさんのライブ作品を残した人なので、私ごときが語りつくせないのですが、そのキャリアの中で、けっこう政治にかかわっていることで知られるんですね。1980年代にアメリカのロックアルバムで性的な含みのある歌詞に保守派団体や保守政党関係者から文句がついて検閲のようなことが行なわれた時に、上院での公聴会に出席して、検閲に反対する主張を展開したことがありました。また、自分のアメリカ国内のコンサートツアーで、有権者に選挙で投票に行くように促すために有権者登録のためのブースを設けて客に有権者登録の手続きをさせることなんかやっていたんですね。共和党のスキャンダルをおちょくる曲を作る一方、下ネタ的な曲も多いし、軟派なのか硬派なのかよくわからない人です。強いて言えば雑派ですね。

...。失礼しました。そんなザッパさんの、どこが「職場のセクハラ」なのかわからないブルージーなジャズ・フュージョン風のかっこいいインストゥルメンタル曲を聴いていただきました。

今晩はですね、ちょうど国連人権理事会作業部会の方々が来日して、日本のさまざまな人権侵害事例について調査したんですが、ジャニーズ性暴力問題については被害者の元アイドルの方々にも直接話を聞くなどして調査してその記者会見が行われた直後でもありますので、ずばり、暴力、それも、特に性暴力についての曲を集めてお届けします。村野瀬玲奈のサタデー・ソングブック、最後までお楽しみください。あ、今回は、お楽しみくださいというのはちがいますね、被害者の長年の苦しみに思いをはせる時間にしていただければうれしいです。

さて、その国連人権理事会作業部会の来日のことなんですが、宮武嶺さんが「Everyone says I love you !」ブログで早速書いているんですよ。こちらですね。

●Everyone says I love you !
ジャニーズ喜多川氏の性加害問題で国連人権理事会作業部会が記者会見。「タレント数百人が性的搾取と虐待」「政府が透明な捜査を確保し、謝罪であれ金銭的な補償であれ、被害者の実効的救済を確保する必要がある」
https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/9f3c8af36b14e150b8170029aed4bf98
2023年08月05日

今問題になっている、芸能事務所界の大物、ジャニー喜多川が存命中、何十年にもわたって、自分の事務所の若い男性アイドルに性暴力を繰り返していて、日本の芸能界も報道業界もジャニーズ事務所関係の仕事を失いたくないのでほぼ黙っていたんですね。改めて考えてみるとひどい話です。自分たちのカネのためにアイドルを苦しめていたんですから。国連の人権理事会に介入してもらったりBBCに報道してもらったりしなければ自力で問題解決できない日本全体の問題ですね。被害者の訴えを聞く力があったのは岸田首相でもなくジャニーズタレントを取材して記事や番組にしてお金を得た報道業者でもなく、国連人権理事会だったというわけです。そのジャニー喜多川に性暴力を受けた男性タレントたちの結成した当事者の会の様子をテレビでちょっと見たんですが、いい年になった男性たちが手をとりあって泣いているんです、やっと自分たちの訴えが聞き入れられたって。どれだけ長い間苦しんできたのかって、私ももらい泣きしてしまいました。加害者だったジャニー喜多川はもうこの世にいませんが、彼の残した会社は徹底的にこの罪をあばいて、大勢の被害者の苦しみに報いるべきだと心から思いますね。

では、次の曲にまいりましょう。次は、アメリカの酒池肉林ヘヴィメタルバンド、モトリー・クルー Mötley Crüe です。幼少の頃に性暴力を受けた女性が成人した後で加害者に怒りをぶちまける内容の曲、「アンクル・ジャック Uncle Jack」をどうぞ。



軟派なイメージとは正反対の性暴力への怒りの歌ですね。たとえば、代表曲「Girls, girls, girls」のミュージックビデオがバイクと女だらけなのを見ればわかるように、このバンドのイメージはワタシ的には最悪（爆）なんですけど、この硬派なミドルテンポのヘヴィロックに限ってはいいですね。怒りをぶちまけるために選んだ題材なんでしょうか。この軟派バンドがどのくらい真面目に被害を訴えているのかははっきりしませんが、被害者の怒りを曲にするとこんな感じなんだと納得はできます。

実際の性加害を受けた被害者は、男女問わず、長い間被害を表に出せない人が多いんですよね。肉体的にも精神的にも未熟な未成年の頃に性被害を受けた人はなおさら苦しみます。そのことを社会全体が理解しなければ、社会全体が被害者のことを心配しなければ、社会全体が被害者をサポートしなければ、被害者は苦しみ続けるばかりです。性加害とは何なのか、学校教育の中で発達段階に応じて教えることは、加害に及ぶ者を出さないようにするための大人の義務ではないでしょうか。

上にリンクした宮武嶺さんの「Everyone says I love you !」ブログでのまとめでは、国連人権理事会の今回の調査について、ジャニーズ事務所の特別チームによる調査について国連人権理事会作業部会が正当性と透明性に疑問を呈したのに加えて、「あらゆるメディア・エンターテインメント企業が救済へのアクセスに便宜を図り、正当かつ透明な苦情処理メカニズムを確保するとともに、調査について明快かつ予測可能な時間軸を設けなければならない」と、メディアとエンタメ業界の広範囲の関係者の取り組みが必要であるとしています。それが若者をアイドルとして芸能界に送り出す大人の義務です。

では、次の曲にまいります。英国のロックバンド、モーターヘッド MOTÖRHEAD の「お父さんが私にキスしないようにして Don't Let Daddy Kiss Me」です。



母親が出て行った家でDV父にレイプされる娘の渾身の叫びともいえる歌です。被害を訴えたいけど、父親が有罪になって刑務所行きになったら独りになって帰る家を失うのが怖くて言い出せないという状況も歌われます。モーターヘッドは本来はヘヴィメタルバンドなのですが、アコースティックギターの弾き語りで始まり、後半はエレクトリックギターやドラムスも加わるロックバラードです。いかつい男たちのバンドですが、悲しみがあふれるようです。

メタルバンドが性被害を歌にしているというのは意外だと思われるかもしれませんが、それだけ西欧ではこれが深刻な問題として考えられていることのあらわれでもあるでしょう。

ジャニーズ事務所でアイドルとして活躍する大人だって、ジャニー喜多川社長の性暴力を告発したら自分の居場所がなくなると考えて言い出せなかったのです。そう考えれば、被害者が女性でなくて男性であっても、加害者との力関係は被害者に重くのしかかるものだということがわかります。

では、次の曲にまいりましょう。アメリカのプログレッシブ・ヘヴィメタルバンド、ドリーム・シアター Dream Theater の「アナ・リー Anna Lee」です。子どもの時に近親者から受けた性暴力の被害者に語りかけるバラードナンバーです。



アメリカのメタルグループ、夢劇場ことドリーム・シアターのバラード曲、「アナ・リー」でした。これは被害者に向かって傷をいやそうと語りかけるという立場の歌ですから、ただ怒りをぶちまけるのではなく、より成熟した感性が歌唱と演奏に必要とされる曲です。

被害者が本当に癒されるのには長いプロセスが必要です。ですが、被害者が癒されるとすれば、それはたとえば、自分たちの心の傷や被害の訴えが社会に聞き入れられ、二度とこのようなことが起こらない社会になると感じられたときでしょう。私たちは、そのような社会を目指さなければなりません。当の芸能事務所（ジャニーズ事務所）、マスメディア、エンターテインメント業界、そして一般のファンがそれぞれの責任を果たして被害者の傷をいやし、このような世界でも最悪の性暴力事件のいきさつを解明し、性暴力を許さないという意思を社会全体で、国全体で、国民全体で共有しなければ、被害者はさらに苦しみます。

このような性暴力容認の社会について反省し、社会全体を作り替えるという困難な挑戦に進みましょう。

では、次の曲です。アメリカのメタルバンド、メタリカ METALLICA の「Fixxxer」です。この曲は、子どもの時に被害にあって成人した人が、自分の子どもには自分の苦痛の体験をさせまいと、憎しみの連鎖を断ち切って人生を取り戻そうとする歌です。



「ぼくのお父さんを癒やしてくれますか / それとも、この傷を治してくれますか / 壊れた心の中を癒やしてくれますか /　人生をまた始められるようにこの苦しみを消すことができますか」

暴力がもたらす心の傷はそれほど大きいのです。暴力に無関心であることは、暴力への加担だと知りましょう。

では、今日最後の曲です。歌手として30年選手のフランスのザジ Zazie が歌います。性暴力についての歌ではありませんが、暴力を目撃したのに、あるいは世界の多くの問題を目撃しているのに、それらをメディアの中で消費するだけの現代社会を自己批判的に歌っています。

「6歳のとき、ボーイフレンドとお医者さんごっこをしていたの / 子どもの他愛のないお医者さんごっこ / 彼の身体の傷、傷跡、あざを見てしまって、自分の目が信じられなかった /　彼は俺はハードガイだから大丈夫、痛みも感じないからと言った / 私はそこにいたけど、何も言わなかった / 何も言わずに家に帰って、もう彼の家に遊びに行かなくなった / (...) / 私はそこにいた、だけど何もしなかった / 私はそこに確かにいた、だけど何もしなかった」

では、お聞きください。ザジの「私はそこにいた J'étais là」です。暴力を、性暴力を許さない社会を一緒に作りましょう。享楽的消費社会の中で、私たちの心の弱さと戦いましょう。音楽家も社会に責任を持つべき一員です。では、次回まで、さようなら。お相手は村野瀬玲奈でした。おやすみなさい。あなたが悪夢から解放されますように。






関連記事。
■ジャニー喜多川の長年の多数の常習的性加害をめぐっての山下達郎の発言があまりにも残念。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-9230.html
2023/07/11 09:00



記事公開後の追記。一般の方で山下達郎ファンの50代の女性という方の個人ブログですが、事実が整理され、意見が整然と述べられています。これはすごい記事です。松尾潔さんの紹介ツイートとともに、必読。

山下達郎ファン歴40年以上にして、先月の時点で「松尾潔って誰？」だった50代主婦の方のブログ。知人に教えられて読みました。エビデンスファーストが貫かれた、時宜を得た労作だと思います。…

— 松尾潔 (@kiyoshimatsuo) August 25, 2023

●とある主婦K子のブログ _ 老後を豊かに暮らすために‥.
”山下達郎”が炎上している裏側にはジャニーズ事務所との深い関わりがありました|これから望むこと
https://toaru-keiko.com/thoughts-on-taturo-yamasita/
2023/08/26
2023年8月24日 2023年8月26日

一日たらずの間に80万を超えるインプレッションがありました。感謝。

K子さんのメッセージの本質は、特定の誰かを貶めることでも持ち上げることでもなく、私欲やビジネスよりもずばり「子どもの人権」を最優先しようというもの。
ぼくが共感を覚えるのもまさにそこです。#ジャニーズ性加害問題 https://t.co/5xR2GhTMt8

— 松尾潔 (@kiyoshimatsuo) August 26, 2023

さらに記事公開後の追記。

外国じゃエアロスミスやニルヴァーナをはじめとして、レイプへの強い怒りを曲で表明する男のロックバンドが多くいるのに、日本の男バンドはレイプを軽々しく扱いつつ露悪的に「俺はこんなに加害欲求を表明できちゃうんだぜ」とイキることがロックだと思っている。倫理と共に文化レベルの差を感じる https://t.co/NRbgy4JYfM

— ひまわりの花の下で (@SunflowerFlash) November 23, 2024

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●他の社会系ブログに行くにはうちの「私的リンク集　（適宜更新）」経由で→http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-136.html

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