村野瀬玲奈の秘書課広報室

　　

2021年東京都議会選の報道をいくつか見て気づいたこと。

それは、多くの新聞、通信社で、焦点が、「都民ファースト（以下、都ファ）が第一党となるか自公が第一党となるか」と一方的に決めつけられていることです。それが言いすぎなら、多くの新聞、通信社の多くの記事の関心が都ファと自公のどちらかが第一党となるかということであることです。

しかし、それはおかしいのではないでしょうか。現在のコロナ禍の中での東京五輪の強行という現在進行形の舞台背景の中で行なわれるこの都議選の「焦点」は都ファと自公の争いや議席分布、さらには公明が都ファから自民に鞍替えしたことではありません。真の焦点は今回の記事の最後でお見せすることにして、まずは実際に新聞、通信社の活字報道がどのようなものであるか、実例を見てみます。

次にリンクするいくつもの記事は「都議会選 焦点 自公 都民ファースト」というキーワードでグーグル検索して探したものです。（「新聞」というワードを加えたり、新聞名を加えたりもしました。）つまり、「都ファが第一党となるか自公が第一党となるかが焦点」という趣旨の文章が必ずと言っていいほど入っている記事のコレクションです。これほど多くの記事によって活字報道空間が「都ファが第一党となるか自公が第一党となるかが焦点」というメッセージで埋められているのです。本文に書かれているだけでなく、記事の見出しがこのニセの焦点をアピールしています。中には見出しにその趣旨の記述がない記事もありますが、記事本文にはほぼ必ず「都ファが第一党となるか自公が第一党となるかが焦点」という内容のことが含まれています。（これらの報道記事リンクは読み飛ばしていただいてもかまいません。本当に大事なことはこれらのリンクの次に書きますから。）

●東京新聞 TOKYO Web
東京都議選、6月25日に告示　焦点は…自公で過半数なるか？　最大会派・都民ファが勢力維持か？
https://www.tokyo-np.co.jp/article/106507
2021年6月7日 22時33分

●東京新聞 TOKYO Web
自民と都民ファが1人区の6選挙区で激突　誰が勝者に？　東京都議選
https://www.tokyo-np.co.jp/article/112777
2021年6月25日 18時29分

●産経ニュース
自公過半数焦点　小池氏過労の影響も　都議選２５日に告示
https://www.sankei.com/article/20210624-G6XYBCNSIRMA7LI72ABAUBSD2A/
2021/6/24 18:21

●時事ドットコム
都議選、４日投開票　自公の過半数焦点
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021070200749
2021年07月03日07時12分

●毎日新聞
自公、過半数獲得の勢い　都民ファースト伸び悩み　東京都議選調査
https://mainichi.jp/articles/20210627/k00/00m/010/169000c
毎日新聞 2021/6/27 20:16（最終更新 6/27 20:16）

●朝日新聞デジタル
都議選、立候補届け出始まる　問われるコロナ対応の評価
東京都議選2021
https://www.asahi.com/articles/ASP6T2QJMP6SUTIL065.html
2021年6月25日 8時30分

●朝日新聞デジタル
都議選スタート　コロナ対策・五輪是非、問う
https://www.asahi.com/articles/DA3S14951475.html
2021年6月25日 16時30分

●日本経済新聞
東京都議選が告示　コロナ対策や事業者支援など争点に
都議選2021
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC23A300T20C21A6000000/
2021年6月24日 16:00 (2021年6月25日 10:40更新)

●読売新聞オンライン
新型コロナ対策と五輪・パラ対応が争点…東京都議選告示
https://www.yomiuri.co.jp/election/local/togisen2021/20210625-OYT1T50148/
2021/06/25 13:27

どんな選挙においても、住民（都民、国民）にとっては、良い政治が行なわれるかどうかが焦点であるはずです。議席の分布の重要性は二次的、あるいは派生的なもののはずです。だから、2021年6月19日の「日本の選挙報道の決定的にダメなところ」という記事で、それぞれの選挙にあたっては各党派や各候補者がかかげている公約（あるいは口約束）ではなくて前回の選挙以来の各議員や党派の行動や実績を第三者的に検証しなければならないと言いました。そういう検証はこの都議選の中でも十分だっとは言えません。あるいは、あまりありませんでした。主観的には、ほとんど見かけませんでした。

たとえて言えば、会社で社員を中途採用する時に応募者が前職で何をしたかを検討せずに応募者の「入社したらがんばります」という一言の話しぶりだけで採否を判断するようなものです。そんな社員採用プロセスはありえないでしょう。しかし、日本の報道業者は選挙報道でそれと同じことをやっています。

では、良い政治とは何か。それは「命を守る政治」ではないでしょうか。コロナ禍という公衆衛生上の世界的危機の今、主催者側とスポンサー側と日本の政権側の利益のための商業イベントを優先させるのか、商業イベントはやめてコロナウィルス感染対策に集中するのか、がポイントです。そして、コロナ禍の中で東京五輪を強行する側はコロナウィルス対策を真面目に効果的に行なっているか、成果は出ているか、それがポイントであり焦点でしょう。それを有権者がどう評価するかは別にして、それがないまま「自公が勝つか都ファが勝つか」なんて政局記事を読まされても、選挙での判断を迫られている有権者には何の役にも立ちません。

しかし、今回のうちの記事では報道業者への無いものねだりはやめておきましょう。（別の記事で続けるかもしれませんよ。）

では、報道は何を焦点とすべきか。それは、コロナ禍という世界的な危機の中で、生命と生活を守ることよりも特定の政治勢力や経済クラスターの利益のための商業五輪を強行することの是非、あるいは承認か拒否か、ではないのでしょうか。

どんな選挙でも主権者である国民、住民、市民の生命や生活が争点の基本ですが、たしかに、平穏な平時にはそれが重大な争点になりにくいです。しかし、今現在は、「コロナ禍の中の東京五輪強行」という重大な焦点、争点になっていると誰の目にも明らかです。上にリンクしたいくつかの報道記事の中には、コロナ対策、事業者支援という言葉でそれらを争点として扱っているところもありますが、東京五輪を強行するのか中止するのかという視点は実はほとんど表現されていません。これは大きな問題、報道の欠陥でしょう。

そういう焦点設定で都議選報道を見ると、「自公」か「都ファ」かという焦点設定は的外れもいいところです。なぜなら、国政では自公与党はコロナ対策に失敗し、あるいは、お粗末なことばかり繰り返しており、都政での都ファもその点ではダメであり、何よりも、自公も都ファも五輪推進派に属しています。その両派の間での議席の増減がなぜ「焦点」なのでしょうか。考え方の基本がおかしいでしょう。

では、本当の焦点とは何か。それは、東京五輪中止を主張しコロナ禍対策に集中するようにはっきりと訴え、今までもそのように主張し行動してきた候補者や党派にどれだけの票が集まり、どれだけの議席を得るかということのはずです。コロナ対策がダメなまま東京五輪をやろうとしている都ファと自公の間での議席の増減など、重要性は五輪中止派の得票や議席の動向に比べたら本質的ではありません。

投票箱の蓋が閉まって、開票結果が報道される時には、五輪中止を訴えた候補や党派の議席数についても報道はもちろん言及するでしょう。しかし、その焦点は選挙期間中にこそ強く言及されなければなりません。選挙が終わってから報道機関がそれを言うのは後出しじゃんけんのようなものです。

もっと具体的に言えば、本当の焦点は、五輪中止を訴えた共産、立民、生活者ネットワーク、れいわがどれほどの得票と議席を得るかが焦点です。これらの候補者と会派が大して得票、当選者数を伸ばさないのであれば、コロナ禍の中での五輪中止の民意は弱いことになるし、コロナ対策も今程度のダメダメなもののままでよいというのが民意だとカウントされてしまうのです。

うちの一つ前の記事がこちらです。

東京五輪反対署名で集まった35万筆の署名を東京都が無視。都政を支える都ファ、自民、公明を許さない。五輪中止を訴える共産、生ネ、れいわ、立民の候補が #都議会選挙2021 で伸びないとコロナ禍の日本で命の危険がさらに高まる。 https://t.co/d4FR5Xqpg0 村野瀬玲奈

— Muranose Rena (@muranose_rena) July 2, 2021

この民意無視だって「都民ファースト」を騙る都政与党による「都民ラスト」の案件として重大なポイントになるはずです。どのくらい新聞やテレビで報道されるでしょうか。

ちょっと深読みをするなら、五輪中止を争点とはしたくない、五輪推進勢力を国政でも都政でも与党にしておきたいという意思が、五輪オフィシャルパートナーの新聞社であれそれ以外の新聞社であれ、何らかの形で報道業界全体の中にはたらいているのだと思います。東京新聞は五輪オフィシャルパートナーではありませんが、「自公か都ファか」というダメな焦点設定をしている以上、そういう批判を免れません。東京新聞は政権批判など言いたいことを比較的言うリベラルな新聞であるという評判がSNS政治言論でよくありますが、私はそうは考えません。みなさん、東京新聞を過大評価しすぎです。

今回の都議選報道で、東京新聞に限らず、報道業者全般について、報道の欠陥、問題点を強く感じました。選挙の本当の焦点、争点をぼかして自公政権や維新府政以外の党派に政権を渡さないようにしているという意思すら、今回のコロナ禍の中の都議選の選挙報道から感じました。コロナ禍と東京五輪という重大なトピックがあって争点も焦点もはっきりしている今だからこそ、それがよりはっきりと感じられました。

そういう意味では、上にリンクしたいくつかの報道記事のうち、いちばんまともな見出しは、その体質から私が評価していない読売新聞の「新型コロナ対策と五輪・パラ対応が争点」というものだったりします。

コロナ禍への対策を重視する東京都の有権者は、共産、立民、生活者ネットワーク、れいわの誰かを当選させる投票をしてほしいです。東京五輪がコロナ禍をさらに拡大し、あなたの生命と生活を押しつぶす可能性が高まります。



今回は報道批判がメインの記事ですが、都議会選そのものへの関心もよろしく。日本のすべての住民のためにも。人様の記事を一つ貼っておきます。

●Everyone says I love you !
■【７月４日東京都議選】東京五輪について公約で触れずに逃げた自民党・公明党はもちろん、無観客開催を主張する都民ファーストにも貴重な１票は入れるべきではない。
https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/30b6d723db59da264ca8d34a23eafc6b
2021年07月01日

■イソジン吉村府知事の大阪府はコロナ死者数がずっと最多のままで、わずか１年でミナミの地価下落率は全国１位の２６％減。命も経済も守れない維新は最低最悪の政党だ。
https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/dc016e2c29a4a37b1a1434f066998fdd
2021年07月02日


こちらも参考になります。

東京都議選の候補者が選挙公報に「五輪の中止か延期」「検査拡充」「ワクチン接種」を記載しているかどうかの一覧表。言及がある場合は「〇」言及なしか反対なら「×」で表記。
NHKの都議選アンケートの五輪の項目を反映した。
投票前には各選挙区の選挙公報を参照されたい。https://t.co/jj8d3qLFmd pic.twitter.com/6nSZ1TkFFW

— suna (@sunasaji) July 2, 2021

組み合わせごとの人数と割合。
五輪反対（中止か延期）は38%。
検査拡充に選挙公報で触れているのは26%。
ワクチンに選挙公報で触れているのは52%。 pic.twitter.com/R1IQwB2g67

— suna (@sunasaji) July 2, 2021

組み合わせごとの人数・政党別の、表と積み上げ横棒グラフ。立憲民主党がみな五輪反対だったのが明確になった。 pic.twitter.com/3r0TWdvVKJ

— suna (@sunasaji) July 2, 2021

NHKの都議選2021 候補者アンケートの回答一覧をまとめました。
投票にあたっては、選挙公報やNHKのサイトや候補者のサイトの確認をお願いします。
・NHK候補者アンケートhttps://t.co/5JpgSbcyDI
・選挙公報https://t.co/jj8d3qLFmd
・候補者一覧、サイト、音声データ：https://t.co/rmiPvsaz0k pic.twitter.com/TKFeSWQL3z

— suna (@sunasaji) July 2, 2021

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●国会議員への投書のための「議員一覧ポータルサイト」 (1)→国会議員いちらんリスト - 政治家（衆議院議員475名 & 参議院議員242名）に声を届けたい人のためのサイト ; (2)→http://publistella.jp/
●メディア一覧 - 私たちの声を国会へ→http://rpj-action.jimdo.com/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E4%B8%80%E8%A6%A7/
●他の社会系ブログに行くにはうちの「私的リンク集　（適宜更新）」経由で→http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-136.html

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