村野瀬玲奈の秘書課広報室

これでネトウヨが「ファンは朝鮮系！反日！」とか吹き上がるであろう様子が眼に浮かびます。

　李良枝（イ・ヤンジ　1955～1992）は，「エッセイ　わたしは朝鮮人」の中で次のように述べています。

　「帰化などしなくても在日朝鮮人の権利は当然保護されなければならないはずだ。それは近代の朝日の歴史，そして在日朝鮮人の形成史を見れば，どのような弁解をも許さないことは一目瞭然である」

　また，「エッセイ　私のとっての母国と日本」の中では次のように述べています。

　「高校を中退して一年ほど旅館で働いてから，その旅館の社長さんの口利きでもう一度高校へ通うようになりました。京都府立鴨沂高校三年への編入学が許されたのです。
　日本史の最初の授業時間に，片岡先生は次のようなことをおっしゃいました。『私は歴史を愛する日本史の教師として，この教科書を使って授業をしなければならないことを，たいへんに残念に思っている。なぜならば，日本史を論じることは朝鮮史を論じることでもあり，とりわけ日本の近代史は，朝鮮史との関係を抜きにしたら成立すらしないからだ』
　先生が言われたこのようなお話を聞いて，私はすごいショックを受けました。そのときまで『朝鮮人』という言葉の響きに自分から恐れをなし，ひたすら韓国人である事実は隠さねばならないこと，あるいは恥ずかしい致命的な欠陥としてしか考えたことのなかった私にとって，先生のその言葉はショックであるよりほかにありませんでした。
　このとき以来，同じ『朝鮮人』という言葉の意味と響きはがらりと変わってしまい，胸を張って口にすることができ，さらには、ちっとも恥ずかしがる必要のない言葉として認識できることを，教えられたのです」。

　李良枝は1975年に早稲田大学社会科学部に入学しました。ただし一学期限りで中途退学しましたが。彼女が早稲田大学を選んだのは，当時「韓文研」がもっとも活発なところだったからです。もちろん，5年前に大隈講堂の前で焼身自殺を遂げた山村（梁）政明（1945～1970）の存在が念頭にあったでしょう。山村政明は在日朝鮮人二世として生まれました。小学生のときに両親が帰化し，自動的に日本国籍を取得しました。しかし姉が就職差別を受け，韓国人として生きていきたいと考え，早稲田大学に入学し「韓文研」を訪問しました。そこで言われたのは「日本に帰化したお前は裏切り者だ。二度と来るな」との激しい拒絶の言葉でした。
　帰化しなくても日本人から差別される。帰化したら「裏切り者」と在日の人から言われて差別される。いったい自分は何なんだろうと絶望しました。

　李良枝が関わった丸正事件の李得賢（イ・トクヒョン）さんの救援運動の中で，「李さんが無実とわかっていても，地元の人間がそれを声に出して言うことはできなかったんじゃないだろうか。朝鮮人の味方をするようなものだからね。それに朝鮮人だったら殺人くらやりかねない，という偏見があるんだ」という声を彼女は聞いたそうです。結局，李得賢さんは無実のまま無期懲役を言い渡され，22年を経て仮釈放されました。正木ひろし弁護士及び鈴木忠五弁護士は被害者の実兄夫婦と実弟を真犯人と確信し，自主を勧めたものの聞き入れられず，検察庁へ再度の捜査申請を却下され，やむなく無実の二人（もう一人は鈴木一男さん）を救うために真犯人を告発し，世論に訴えました。両弁護士は名誉毀損で告訴され，弁護士資格も失いました。

　熊本地震でも「朝鮮人が毒を入れた」という悪質なデマが起こりました。
　関東大震災での朝鮮人大虐殺は今後絶対起きないとは言えないのではないでしょうか。そういった思いをかかえながら生活している在日朝鮮人の人々
のことを，いつも忘れないようにしなければいけないと思います。