村野瀬玲奈の秘書課広報室

たしかに、インパクトのあるノーベル賞をもらってしまえば、改憲勢力への牽制になるだろうというアイディアは良いと思うんですが、「９条を保持している日本国民」に受賞させるというのは私も問題があると思います。（もっとも、元記事によれば、元々、この運動を思いつかれた方は「日本国民」にではなく「９条そのもの」に受賞させたいと思っていたそうですが、ノーベル委員会に問い合わせたところ、「個人か団体に授与するもので憲法のように抽象的なものは候補になれない」と断られてしまい、授賞対象を「9条を保持している日本国民」にすることを考え出されたそうです）

私も、やねごんさんの言われるように、日本国民はまだ「憲法９条を本当に実現してはいない」と思っていますので。そして、それが実現できない理由には、日米安保条約や沖縄の米軍基地との絡みがあるからだと思っています。たとえば、以下は、２００７年のマガジン９条の記事、ダグラス・ラミス氏へのインタヴューです。

マガジン９条　この人に聞きたい。Ｃ・ダグラスラミスさんに聞いた。その１
沖縄と９条と日米安保
http://www.magazine9.jp/interv/lummis/lummis1.php

＞「憲法９条は沖縄の敵である」そんなショッキングな言葉を、昨年沖縄の新聞で見つけました。
＞それは何を意味しているのでしょうか？
＞沖縄から発信を続けている政治学者のダグラス・ラミスさんにお聞きしました。

＞戦後６０年間、
＞ ９条の存在を保障してきたのは、
＞ 沖縄の軍事基地化

マガジン９条　この人に聞きたい。Ｃ・ダグラスラミスさんに聞いた。その２
「無関心」が許されない時代がくる
http://www.magazine9.jp/interv/lummis/lummis2.php

＞「平和を守ろう」と叫ぶ一方、
＞ 安保や基地の問題を「沖縄問題」として片付けているーー
＞ そんな「ヤマト」の矛盾を鋭く指摘するラミスさん。
＞沖縄の人々の現状や、政治への関心について、さらに詳しく伺いました。

ダグラス・ラミス氏も、もちろん護憲派の方ですが、さすがに元アメリカ軍人の政治学者で、そして今は沖縄の作家の知念ウシさんをパートナーに持たれているだけあって、多くの“護憲派”の日本人が見落としてしまいがちな、９条に関わる重大な問題を鋭く突かれていると思いました。特に「その２」の記事のタイトルになっている「『無関心』が許されない時代がくる」というのは、まさに今のことではないかと思います。米軍基地が近くにないのをいいことに、安保も基地問題も本気で考えずに暮らしてきた私のような国民も、いよいよそのことに向き合わなければならなくなっているのではないだろうか？そう感じる今日この頃です。

このような問題を乗り越えて行かない限り、日本国民が本当の意味で９条を実現してそれを誇れる日は来ないと思います。

前から、全印総連などが「憲法九条にノーベル賞を」って運動をしていると思った。

理解することもないし悪くいうこともなくて、「ああ、そうですか」って感想しかなかったけど。

悪くいえば、ノーベル平和賞に幻想のある人たちて多いね、やれやれ、ってこと。

まあ、さりとて大衆アピールできないで尖鋭な言論を言えばいいわけでもないとは思うけど。

TB送信しました。
御記事に触発されて、モヤモヤしていたところを考えてみました。
片付いたわけではありませんが、現時点での意見を書きましたので、お読み下さい。
http://metafiction.blog.fc2.com/blog-entry-106.html

　第九条　日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実希求し、国権の　　発動たる戦争と，武力による威嚇又は武力の行使は，国際紛争を解決する手　　段としては，永久にこれを放棄する。
　二　前項の目的を達するため，陸海空軍その他の戦力は，これを保持しない。　　国の交戦権は，これを認めない。

　憲法第九条第二項の「前項の目的を達するため」という箇所が，「国際平和の誠実な希求」を示すのか「国際紛争を解決する手段」を示すのか曖昧で，結局これは「国際紛争を解決する手段」と解釈したために，憲法上自衛のための戦力保持は許されるとなり，自衛隊が発足されるに至ったことは周知の事実です。

　ところで憲法改正が議論になっていた1946年9月の時点で,すでに他国が日本の再軍備について懸念または予言していたことは注目にあたいします。

（中国代表の譚紹華）「中国代表は第九条が衆議院によって修正されたことに注目しています。この修正によって第一項で定められた目的以外のためであれば，日本は陸・海・空軍を保持できる解釈が可能になります。ご存知のように，この条項によって日本は国際紛争解決の手段として，戦争をおこない，軍隊を用いて威嚇する特権を放棄しています。しかし，修正された現行の第九条によって，日本は同条第一項に列記している目的以外で，軍隊を保持するかもしれません。もちろん，どんな政府も警察力を持つ必要があります。しかし，普通，警察隊を軍隊とは呼びません。つまり，そこが危険なのです。もし日本がここに列記されている目的以外で武力を保持することが許されれば，例えば自衛という名目で軍隊を持つ可能性も出てくるのです。自衛とは法的な言葉で，国際法に基づいた法的意味があります。しかし，過去に，この自衛という言葉は何度となく悪用されてきました」

（中国国民政府の揚覚勇）「満州事変や日中戦争でも，いろいろなこじつけがあったわけ。自衛論でもって侵略するものはたくさんいるんですよ。自衛というものは，吉田首相も言っているように，それを理由にして侵略する場合だって多いわけ。結局またそうなるかもしれないから，そういう勝手に解釈できるようなことは，止めたほうがいいという結論になるのは当たり前ですよ。・・・これは再び軍人が力を持って，自分の意見を通すようなことはないように日本のためにも考えた。それに成功しないかぎり，まだ問題が残るのです。日本人のためにならない，それを主張しているわけです」

プリムソル（オーストリア代表）「私は日本国憲法に第九条そのものを入れることを強く求めませんでした。なぜなら，戦争放棄を定めた条項を，日本国民は将来，真剣に考えなくなるだろうと思っていたからです。占領軍が撤退しればすぐにでも，いや，ひょっとするとそれ以前に，日本国民は憲法を改正し，軍隊の保有を可能にすると考えたからです」

ラミシヴィル（ソ連代表）「日本政府あるいは一部の帝国主義的思想の持ち主が日本軍を復活させる可能性については，一番の危険は日本政府や帝国主義が連合軍や連合国最高司令官をだませるかということではないと思います。国連や連合国軍は慎重に見張っているでしょうから。問題は，この第九条によって，日本国民を欺く余地を与えてしまうことです。つまり，ある種の軍隊を創設しながら，これは完全に日本国憲法で合法的なのだと称して日本国民を欺くかもしれない，ということです。これは大きな脅威です」

　以上「９条誕生　平和国家はこうして生まれた」塩田純・岩波書店）から一部引用しました。

「「憲法９条」を保持する日本国民にノーベル平和賞を」という過去記事を書いた一人として、ずっとモヤモヤしている。記事を書いた責任上、ノーベル平和賞署名活動について、改めて私の考えを述べたい。 これも過去記事に書いたことだが、結局、その「日本人」とか「日本国民」とかいうのは、個々の「実体」と必ずしも合致しない「観念」的な存在でしかない。 積極的に９条を破棄したいと考えている「日本人」も少...