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GEISAI大学討論会での黒瀬陽平さんのヘタレ受けの見事さ
最終的には2200人の視聴者がその討論をネットで視聴した討論会。先週の濱野智史さんの講演を村上さんのツイットで知り、初めてユースト生放送を見てその面白さに興奮した一週間後の討論会は祭りのような盛り上がりを見せた。
しかしそれは講演内容が素晴らしかった結果というより、「ゼロ年代と呼ばれたこの十年、日本のアートは何も生み出さなかった」とカオスラウンジ宣言で宣言しながら、新たなアートの現場としてのカオスラウンジを定義づけていない黒瀬さんに対する盛り上がりだった。
椹木野衣さんをはじめとする多くの美術関係者が見守る中行われた講演は、ネット上で趣味の延長線的に生み出された表現の動向や、その動向が現実へつながった場合を補強する例えを紹介するのみで、そこに他者を説得できるだけの十分な論理はなかった。
その時点では600人程度だったユースト視聴者を含め、もう一つ納得のいかなかった講演が終了。その後ユースト配信のみで行われた放課後討論会で祭りは始まった。パネラーの一人が「今日の講演は正直、ぬるかった」という発言で口火を切ると、司会でもありこの企画の主催者でもある村上さんも同調。
日本の現代アートの現状や未来を批評面から論理づけて欲しいと、昨年来、東浩紀さんを中心とする若手批評家たちに接してきた一環として主催した講演。そこで現状紹介にとどまった黒瀬さんの講演は、好奇心旺盛な村上さんにとっても不満だったようだ。
その発言以降、論議の鈍った討論会の流れを変えるため村上さんが召喚したのが、黒瀬さんのボスキャラ的存在である東浩紀さん。政治から文化まで鋭い切れ味の批評で知られる東さんの登場で視聴者も一気にヒートアップ。画面横のチャットは読めないほどの流れになった。
不機嫌な表情で登場した東さんは、村上さんや高橋コレクションの支援を受けながら、恵まれた立場やその状況の危うさを理解せずにいる黒瀬さんを激しく非難。凍りついた会場の空気は画面上でもひしひしと伝わって来るほどで、テレビでは決して見れないライブ感覚がそこにあった。
それからは、壊れた場の空気を村上さんと東さんが修復しながら、「ライフゼロ」状態に近い黒瀬さんにカオスラウンジが持つ意味やコンセプトを尋ねていた。しかし周囲のパネリストらの身を張った援護や、ヘタレ受け状態となった黒瀬さんの「単語をください」などという珍言で論議は迷走。
さらに視聴者数が2000に近づくと、それ自体がネタとなっていった。予定だった25時を過ぎ、なぜか作戦タイムを取った黒瀬陣営は、場の空気も無視して萌え絵を描き出す人々まで出現。2200人を越えた視聴者がいつまで続くのかと思いだした26時前、黒瀬さんがマイクを手にした。
視聴者たちが固唾をのんで見守る中、発せられた言葉は、とりあえず5月の第2展示会で新カオスラウンジを立ち上げるので待ってくれというもの。じゃあ今回のキュレーションや、この長い討論は一体何だったのかという疑問と半笑いを残しながら討論会は終了。黒瀬さんのヘタレ受けが変化するのかしないのか、5月のユーストが楽しみだ。
アーカイブ化されたGEISAI大学の討論会
途中から切れていたGEISAI大学討論会のユースト続き
ウィキペディア 黒瀬陽平
ウィキペディア 村上隆
ウィキペディア 東浩紀
アマゾン 村上隆『芸術起業論』
アマゾン 東浩紀『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』
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