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極めて葬送的な『ハートキャッチ!かおすら!』ユーストを見て

 今、『ハートキャッチ!かおすら!』を含む『アートバトルロワイアル―オルタナティブなアートの地平を求めて―』の後半戦オープニングのユースト(Ust)を見ながらこの文章を書いています。まさか自分がこんなリアルタイムに文章を書く人間になるとは思わなかったのですが、最近忙しいこともあるので、短くまとめた感想を書きます。アートバトルロワイアル

4月、5月の東京での4つの展示、6月の関西での2つの展示や中野ブロードウェイギャラリーでの個別展が始まり確実に知名度を上げているカオスラウンジが、東京でキュレーションをするのは約1ヶ月ぶり。トーキョーワンダーサイト本郷という東京都が新しい芸術文化を創造・発信するアートセンターとして設けた会場で行われた展示は、幾つかの若手アーティスト集団が集った催しのようだった。

なぜようだったと書くのかといえば、ユーストを使った配信では、カオスラウンジと遠藤一郎さんのグループが行うパフォーマンス以外にはほとんど何も見れなかったからだ。会場は黒瀬さんのチャットを引用すると「今日は全グループ入り乱れての祭りになってしまったので、流れとかはない感じです。。」と言うことなのだが、完全に上記2つのグループがカオス状態を作り出していた。ハートキャッチ!かおすら!

ツイッター(twitter)から移動して最初に聞こえてきたのは規則的な木魚の音と誰かが読むお経の声。壁にはお馴染みのアニメ雑誌の切り抜きだけでなく、今回は黒瀬さんをはじめとする人々の顔が遺影としてプリントされた紙がいたるところに貼り付けられていた。映像の中には黒い喪服のようなものを着た人や遺影の紙に手を合わせる人がいたりと完全に葬送状態。

さらにユーストの中盤からは緑のTシャツを着た若者が「髪の毛を剃ってますんで、他に剃りたい人いませんか?」と言いながら頭を丸めるパフォーマンスを行うなど、異常な空間が展開していた。遠藤さんの集団は墓石のようなものを掘り込むパフォーマンスを行っており、その音と木魚やお経が入り乱れた空間では極めて葬送的パフォーマンスが繰り広げられていた。

それらは思わず笑ってしまうような悪ふざけのはずなのだけれど、しかしこの『葬送』的状況を読み解いていくと、やはり彼らがこれまでに無い何か新しいものを求めているのだということは理解できる。自らの写真を敢えて遺影化したものは、もし前回私が書いた『「死なないための葬送」としての「はめつら!」』の中で指摘した「古い価値観を押し付けられた彼ら」というのが正しいのであれば、今回の展示をそんな価値観に縛られた自分自身を葬送するための儀式と捉えることはできないか。ハートキャッチ!かおすら!1

さらにまるでオノ・ヨーコの『カット・ピース』を思わせる若者の頭を丸めるパフォーマンスは、歴史的に見れば頭を丸めるという行為に含まれる仏教的な、現世を離れ出家するという意味に読み取れば、新たな信仰や来世といったものを求める姿と受け取れるだろう。半分は彼らの悪ふざけに便乗したこじつけと取ってもらって構わないが、もしかすると彼らの葬送の後には、何かしらこれまでには無い価値観というか『新たなリアル』というものが生まれるのかもしれない。

あくまで予測でしかないが、それは9.11以降の世界情勢や、サブプライムローン問題に端を発した世界金融危機という問題の上に立ち、下流化や貧困といった問題も孕みながら、しかしそれでもその苦境を乗り越え、多くの人が本当の意味での豊かさに辿り着くための小さな糸口を見出すことなのだと思う。セロ年代という不毛の10年を経てきたこの国だからこそ提示できる、ポストゼロ年代の『新たなリアル』が生まれる可能性を秘めたこの展示は、多くの人の心をつかむ『ハートキャッチ!かおすら!』になり得るかもしれない。

『ハートキャッチ!かおすら!』が見れるイベント アートバトルロワイアル―オルタナティブなアートの地平を求めて―のサイト
ウィキペディア オノ・ヨーコ
(会場の写真は黒瀬陽平さんから勝手にお借りしました。この場を借りてお礼申し上げます)

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現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
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