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超簡略!私的見解込み「孫正義 vs 佐々木俊尚 徹底討論 『光の道は必要か?』」
しばらくすると、その楽観性に各方面から反対意見が出たようで、中でも4月29日にCNET JAPANに掲載された佐々木俊尚さんの反論は反響も大きかったらしい。一応その文章に興味を覚え、さっと目を通したが、「光という高速道路の敷設より、生活に直結した使いやすいサービスを生み出すことを優先すべきでは」という主張には概ね共感できた。
個人的には孫さんが自らの過去と自身の「志」を熱く語った「孫正義 LIVE 2011」書き起こしを読んで以来、孫さんという人物に注目していただけに、もう一つゾクッするような主張であればなと思いながら、この話題はすっかり過去のものとなっていた。
だから昨夜、twitterで「孫正義 vs 佐々木俊尚 徹底討論『光の道は必要か?』」という番組がUst生放送されると知り、一体、どのような経緯で二人の対談が実現したのかも、また二人がその後、どのようなことを主張していたかも全く知らずに番組を見ることになった。
孫さんはこの討論を佐々木さんの名前から「巌流島対決」になぞらえていたようで、宮本武蔵よろしく、豊富な知識と綿密な下準備を整えて番組に臨まれていたようだ。超簡単に孫さんの主張をまとめると、「現在のメタル回線(旧来の電線などを使った電話回線)と光回線の併用はコストかかさみ過ぎ。特にメタル回線は技術的にも転換期を迎えており、NTTがこの二重構造を廃し『光の道』を全家庭の室内まで引き入れる計画を実行すれば、結果的に税金を1円も使わず、NTTの収益も上がり、さらに利用者もこれまでにない利便性が得られる」(超訳)というもの。
中盤までの佐々木さんは、その主張に対し、「『光の道』というインフラよりも、人々と技術を結ぶその中間にあるものこそが今は大事なのであって、国家予算もなく選択と集中が必要な現状では『光の道』よりも、その中間部分を活性化させることに全力を尽くすべき」(超訳)と採算をベースにした反論を展開。
しかし、孫さんの主張が国費を1円も使わないこと。さらに「その中間部分の大切さはもちろんのことであり、ただし光回線が全家庭化を覆っている状態(クラウド化)が前提としてあって、その先に医療カルテの電子化や過去のデータベースを活用した電子教科書といった全く新しいデジタル情報革命が起こせる」(超訳)という採算まで含めた斬新で、可能性に満ちたビジョンを提示すると、佐々木さんは孫さんの主張に共感を覚えていかれたようだ。
それでも佐々木さんは「そのビジョンは正しくとも、次の段階での検証、さらにはそれに着手していく実行ベースで軌道に乗せていくことが大切」(超訳)と実現化を見据え、障害を実務的に乗り越えていくことの必要性を強調。孫さんはそれに対し、我が意を得たりといった感じで共感。その後は討論と言うよりも、新たなビジョンのプレゼンとそれに対する問題点の洗い出しといった対話重視の展開で5時間近い番組は進行していった。
日付が変わり、いかにも高級そうなワインが登場した頃には、二人はお互いの意見の一致を喜び合い乾杯。この国に明るい未来を提示するためには『光の道』が日本全国に敷き詰められ、その土台を活用した様々な技術革新によってより豊かな国民生活が実現できるという認識を共有していた。
番組終了直前には、孫さんは収録現場にいる人々からの質問を受けた。最初の質問は「孫さんの国を熱く語る姿に共感するが、自分がやるとなると恥ずかしさを覚えるのですが」というもの。それに対し孫さんは「僕は本当に日本が好きで…自分が生まれた国を愛することが、なぜ恥ずかしいんだ。自分が愛するこの国のために、何か少しでも貢献したいことのどこにためらう必要があるんだ」と言葉を詰まらせながら自らの思いを述べた。
またこれからの目標として「医療、教育、エンターテインメントを通じて、豊かさ、楽しさ、生産性を伝えるデジタル情報革命を実現したい」と語り、「自分は決して幕末の坂本竜馬だと思っていませんが、竜馬に憧れることは許して欲しい。そして素晴らしい人が素晴らしいことをしたと語り合えるのが歴史の素晴らしさであり、人間の素晴らしさではないか」と時代を越えてた思いや志の大切さを訴えた。
深夜1時まで約5時間、Ustでは1万3000人、ニコニコ生放送では8万5000人以上の人々が視聴を続けたこの討論会。この放送自体がネットワークやtwitter、Ustなどの人間が生み出した様々な技術的、環境的土台の上に成立した一つの到達点なのだと思う。しかしそこで語り合われ、伝えられていくものは、極めて人間的でぬくもりのある志や思いということに人間の普遍性を感じた。
ウィキペディア 孫正義
ウィキペディア 佐々木俊尚
佐々木俊尚さんソフトバンクの「光の道」論に全面反論する(上)
孫正義、【志】を語る。「孫正義 LIVE 2011」書き起こし(その1)
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