文化ブログ
阿部和璧(あべかへき)が世の中の良いもの、凄いものを紹介する。
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「孫正義にみる言葉の力」~ソフトバンクアカデミア開校式『孫の2乗の兵法』Ust(ユースト)を聴いて~
ワンフェスの文章を書き進めるためにパソコンを起動させ、とりあえずTwitterのフォロアーのつぶやきを確認している中で見つけた、「ソフトバンクアカデミア開校!USTREAMにて現在配信中!!」という文字。その横にあったアドレスをクリックすると、「天の時とはタイミング。情報ビッグバンが起きているこの時代に生まれたことがラッキーだった。この天の時を上手く活用して羽ばたかなければならない」と熱のこもった口調で語り掛ける孫さんの姿があった。
しかし、すでに開始から30分以上過ぎていたため、まあ音声だけ聞いてあとは文章の続きを書こうと、しばらくは作業をしながら聞いていた。でも、「今現在でも新規事業の立ち上げなどで情報を集めたりする機会があるかもしれないが、自分から提案する能力を持ってないと常に失格。自分からこれをやりましょうと言わなければ」という聴衆を煽動するような言葉が繰り返されだすと、もう何も手につかなくなり、孫さんの姿を見ながらの視聴に切り替えた。
その後に続いた「死ぬほど情報を集め、死ぬほど考えて、そこから99パーセントそぎ落として戦略を絞り込む」という戦略についての話。さらに「3割以上のリスクを犯さない。絶対に7割以上勝つというように理詰めで詰めて戦いに挑む。5分5分の時に戦いに挑むのは馬鹿がやることだから、そういうヤツはリーダーになっちゃいけない」といった孫子の兵法からでなく、孫さんが独自に生み出した経営指針には、実体験に基づいた迫力が備わっていた。
それはまるで、第2次世界大戦に挑んだどこかの国の失敗から得た教訓のようでもあり、戦後、明確なビジョンを描けず結局はバブル崩壊という「第2の敗戦」へと向かったどこかの国のありようを痛烈に批判した言葉のように思えてならなかった。孫さんが力を込めた「退却する勇気がないリーダーは国を滅ぼす、会社を滅ぼす」という言葉は、「敗戦後」の状況も理解できず、未だ攻めの姿勢を貫こうとするこの国への最も適したアドバイスのようにも思えた。
そのような孫さんの発言に静まり返った会場。そんな中、孫さんはさらに的確な比喩を用いて経営者にとって必要なことを説き続けた。「ブレーキの利かない車がどれほど危険か」、「川で泳ぐ時、流れにそって泳ぐのがどれほど楽か」、「重箱の隅をつつくようなことをしてては意味がない」といった言葉で、意地で戦いを続けてはいけないこと。時代の流れや王道を素早く読み、その流れをつかんでいくことの大切さを訴えた。
「一、流、攻、守、群」という具体的戦略をまとめた言葉の説明では、「その分野で圧倒的NO1にこだわること。2番は敗北だと思え」、「時代の流れを読んでその先で仕掛けて待つこと」、「すべてにおいて高い技能を持った攻め手であれ」、「正しき義があることをやっていれば守りは強い」、「天下りは人的賄賂以外のなにものでもない」といった具体例や他業種への痛烈な批判も含めながら自らの本心をさらけ出していった。
またそれだけでなく、人々の先頭に立つリーダーとして、「バランス良く知的能力を持っていくこと」、「信義と信念のある人間であること」、「人々の幸せのためにという事の本質を理解し事業に望むこと」、「闘う勇気、退却する勇気を持つこと」、「本当のリーダーになるためには時として鬼になれ。鬼になりきれない者はリーダーになれない」といった人格的にも優れた人間である必要性をも訴えた。
2時間16分にわたって続いた孫さんの『孫の二乗の兵法』Ustは、「僕自身また達成できてないリーダーが持つべき素養としての戦いに勝つための指針」として、ソフトバンクの次の後継者を育てるための「ソフトバンクアカデミア」の最も基本的な理念であり、Ustやニコニコ動画でのライブ配信を交えて20年、30年続けられていく計画の第1回目なのだという。
自らが信条としている「『志し高く』、頑張りましょう」という言葉で講義の最後を締めくくった孫さん。TwitterやUstといった新たなツールの登場が、これまでつながる機会のなかった人々を結び、これまで共有されることのなかった価値の高い情報を共有できる時代を到来させた。そんな「デジタル情報革命で人々を幸せにする」というソフトバンクの理念を社長自ら率先して行った結果が、アーカイブも含め8400人がこのUstを見ることになった大きな理由なのだと思う。
ソフトバンクアカデミア開校式『孫の2乗の兵法』ust
ソフトバンクアカデミアの特設サイト
ウィキペディア 孫正義
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