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阿部和璧(あべかへき)が世の中の良いもの、凄いものを紹介する。
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会田誠さんのジレンマ、そして未来の可能性
そして今回、始めて本人が話すのを見たのだが、「言葉で説明するよりも絵で感じて欲しい」と述べていたように決して話上手ではなく、かなりシャイな人だった。だから序盤のトークは快調とは言いがたかったが、話がアートの現状や問題点になると次第に盛り上がりを見せていった。
問題定義をしたのは、聞き手でもありミヅマギャラリーのディレクターである三潴末雄さん。日本画の「文化勲章」を背景とした国内のクローズドマーケットのランク付けや、芸術院会員になるためにお金が動き、運動が行われていることに話が及ぶと、以後は日本や世界のアートが抱える問題が話題となった。
中でも日本というドメスティックな場所の「暗部や恥部」をテーマとする会田さんにとって、世界を舞台に戦うことの難しさは切実なようだった。「インターナショナルになりたいがゆえに分かり易くはしたくないが、世界的な存在である方が嬉しい」という思いや、「変な言い方をすればニューヨーカーに生まれたかった」との言葉の中には、アートの辺境に生まれた者の苦しみが滲んでいた。
また美術界では「ある程度評価の定まった人間」となったがゆえに、「時代の周期」に翻弄されなければならない難しさや、「東からの風」が吹いてるにもかかわらず、プレーヤーとしては中国、韓国に遅れを取りつつある日本の現状への静かな苛立ちが語られていた。
それでも、新たな可能性への言及がなかった訳ではない。「たとえばやる気の無いヘタレ男の表現などは日本が先に進み過ぎているからの表現であって、それも進化といえば進化。必ずしも日本が駄目とは言い切れない」という言葉に、現在進行しているカオスラウンジの動きを重ねてみると納得がいく。
さらにはUstからの「若いコレクターに必要なものは?」との質問に対し、「日本は現代美術にも本物と偽者を見分けるというようなものがあるが、それよりはクソをクソと分かっていて何か未来を賭ける勇気がなきゃ次の時代は来ない」という回答にはセンセーショナルな作品を発表し続けるアーティストとしての一面が垣間見えた。
「僕の若い頃は現代美術は基本的にやっちゃいけないものであり、反抗の手段としてやっていた」という会田さんにとって「スマートなものとなり、どんどんやれという感じ」になっている現状には不満があるのかもしれない。しかしそれでも若く新しい可能性に希望を見出そうとする姿に、「美の病」に取りつかれた男のロマンを感じた。
Ustアーカイブ 会田誠+三潴末雄トークショー
ウィキペディア 会田誠
ミヅマアートギャラリー 会田誠展『絵バカ』のページ
アマゾン 『美術手帖 2008年 05月号 [雑誌]』
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コメント
作家・作品・人柄
コメント感謝です!
私は今回、初めて会田さんの話している姿を
見ましたが、作品の印象とは別の美術に対す
る実直な姿が非常に素敵だと思いました。
それとtwitterで検索した時、静かだけれども
深い共感を持っている会田さんを好きな人々
の姿にも良い印象を受けました。
会田さんのような方がこれからも活躍してい
ただいて、美術の裾野がより広がっていけば
素敵だなと思いました。
ではこれからも美術やアートの世界に注目し
ていきましょう!
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売れるからとか、賞を取るとか、世界的になるからとかいうのに拘らずに作品を作っていると言う事が伝わってきます。
ギャラリーやっている人は、作品が売れないと食べれないので必死なのだろうけど、作家は売れるとか食べれる、食べれないを気にして作品製作をしているわけではないのだということが分かります。
会田さんはアートという言葉を余り使わない作家さんだと思います。