文化ブログ
阿部和璧(あべかへき)が世の中の良いもの、凄いものを紹介する。
凄い美術展1 閉じ込めた時間が作る詩的世界・日下部直起『刻の言葉』
時間の中でさび付いたものや所々剥がれ落ち変色した建物の壁。何の期待もせず見ていたはずなのに、鍵や塔を描いた作品の中に感じられる不思議な広がりに引き込まれていった。そんな作品の作者は1959年生まれで京都にアトリエを持つ日下部直起(くさかべなおき)さん。個展初日とあってギャラリーにいらした日下部さんに作品について尋ねてみた。
5年前、イタリアへ留学をする前は海辺の漂着物や魚の骨などを描いていた日下部さん。しかし昔からのテーマとしてきた「時間を経たもの、風化したものを絵の中で甦らせたい」という思いは変わらないと言う。実際、鍵や塔、古い建物の壁面を描いた作品には、構図や色合いの美しさだけではなく、モチーフ自体が語りかけてくる深みがある。
なぜそのようなものたちを描くのかという問いには「表面的な美しさよりも、もっと深いその奥にあるものに興味があるから」と語られる。そこには「無駄だと思っているものたちにこそ真実がある。捨てられるものにこそ大切なものがある」という考えがあり、それに基づいて描かれたものたちが作品世界を構成する。
作品世界で甦ったものたちは、これまで経てきた時間という存在によって見る者に語りかける。個展のタイトル「刻の言葉」とはそういう意味で名づけられたものなのだろう。枯れた花や鍵、異国の壁面が語りかける言葉は、ささやかでありながら詩的なふくらみを持って見る者を不思議な世界へいざなう。
そんな世界を生み出す秘訣を「全部実際にあるもの、自分の目で見たものを描いているから。実物の持つ力は想像力を越えている」と教えてくれた日下部さん。これからの作品作りの方向性を「若い時に比べ基調になる色を決めて色彩も削ぎ落とし、1個の作品に対する密度を高めてきた。ヨーロッパに行って光と空間を意識するようになって、まだしばらくはそこで吸収したもので作品を描いていくと思う」と柔和な表情で語ってくれた。
(日下部直起展『刻の言葉』は09年11月8日までギャラリーヒルゲートで開催中)
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最初は乗る気ではなかった彼女も、単調な闘病生活を紛らわすために絵てがみを描きはじめる。日常のちょっとした出来事や、大好きなサンリオのキャラクター「シナモンロール」のことなど、どこにでもいる普通の少女の日記のような絵てがみが描かれていく。
しかし、彼女は決して普通の少女と同じという訳にはいかなかった。抗がん剤の副作用による激しい吐き気と抜けていく髪の毛。腫瘍を取り除くための手術や入院生活。病という現実はいつも彼女に暗い影を落とすが、彼女は明るさを失わずそんな現実をも絵てがみに残してゆく。
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アマゾン 絵てがみと彼女の母・典子さんの手記がまとめられた『みぽりんのえくぼ』
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