文化ブログ
阿部和璧(あべかへき)が世の中の良いもの、凄いものを紹介する。
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京都ボスキャラの集い~京都藝術オープニング「SANDWICH(名和晃平さんのスタジオ)×仔羊同好会イベント」に参加して~
以前から気になっていた名和さんの「SANDWICH」スタジオが開催場所ということで、ぜひ行きたいイベントとしてチェックしていたが、当日は京都国際マンガミュージアムで行われた村田蓮爾さんのイベント取材(後日掲載)のため、開始時間の19時から大幅に遅れた21時に会場到着。すでに主だったイベントは終わり、まったりとした空気が漂っていた会場だったが、そこから次々と登場してきたボスキャラ級の人々との出会いが始まった。
昼食以降、食事をする暇もなかっただけに、とりあえずテーブルに置かれた食べ物を食べ始めると、すぐ横に自分と同じようにして食べ物を口に運ぶ男性がいた。互いに話す相手もなかったために、「いまさっきやって来たんですけど、今日はどんなことをやってたんですが?」と話しかけると、その方は「実は自分もさっき来たばっかりで…」と困惑した笑顔を見せた。「ではどこでこのイベントをお知りになったんですか?」と再び尋ねてみると、その方は「仔羊同好会の方に紹介していただいて」とこのイベントの主催団体の一つの名前を挙げられた。
その時はその団体について詳しくは聞かなかったが、仔羊の料理があるということを教えてもらい、その「赤い煮込み料理」を食べながら話を続けた。どうやらその方は、それほどアート界隈に興味があるという訳でもないようだが、話すことや尋ねることが一々具体的かつ焦点が絞れていて面白い。ついつい夢中になって話していると、「じゃあ折角だから仔羊同好会の会長を紹介しますよ」ということになって一人の女性の前に連れていかれた。
外国パーティー風の紹介というものに気後れを感じながら紹介された「会長」は、まだ20代の神戸在住の女性で、後で名刺を確認してみると、幾つかの会社や団体を運営している人らしい。見た目は神戸のお嬢様学校に通っていそうな派手目な人であり、ノリはラテン系のようで、相手に対する距離感が異常に近い。個人的にはそういうノリも嫌いじゃないので話を始めると、この秋には「神戸芸術振興姉妹∞」というイベントを準備しているのだという。
「今日はそのために色々な方を紹介してもらったし、ぜひ神戸もアートで盛り上げたい」というその人の言葉で、大阪や神戸といった関西の視点でアートを盛り上げるという考えも必要なことに気づかされた。「京都の勢いを神戸でも広めていきたいし、仔羊同好会というのは宗教も関係なく誰もが食べられる羊というものを通して宗教とか国とかを越えた人々の交流を目指している。だからアートもそれと一緒」とそれまで意味の分からなかったなぜ「仔羊同好会」とアートなのかという説明を簡潔にして他の人々の輪の中へと去っていった。
一緒に話を聞いていた「会長」を紹介してくれた男性は、「じゃあ他の方も紹介しますよ」という感じで、次は「仔羊同好会」の監査や幹部といった人々や、カーボン素材の会社経営者の方などが集った輪の中に向かって行き、ならばこちらもついて行きましょうという感じで、これまで決して出会うことのなかった人々と共にアートのこれからについてや、今なぜこのような熱いエネルギーがアート界隈に満ちているかについてお互いの意見を交換することになった。
すでにイベント終了時刻の21時半を過ぎ、後片付けに入りだした室内に残って話を続けながら、たとえ2時間遅れてて来たとしても、今日この場所に来て、京都や関西のアートシーンを動かそうとしている人々と熱のこもった話ができたことは本当に良かったと思うことができた。人々が解散し、主催者側として2階のテラスに設置された喫煙所の後片付けをしていた緑川さんに「遅くなったけど、来て良かったですよ」と告げると、「でしょ。色んな人と話してたみたいだし良かったですね」との返答が帰ってきた。さらに「この流れを関西や日本に、そして世界につなげていきたいですね」と告げると、「もちろんでしょ」と振り向きながら笑顔を見せた。
本来、こういった文章はここでまとめに入って終わりにするのが定石なのだが、緑川さんと別れた後、1階の名和さんの作品など無造作に置かれた入口付近でラスボス(最後のボス)との出会いが待っていた。誰かが作ってきた仔羊のかぶりものをつけたその男性は、なんだかとても屈託なく、きっと育ちの良さからくるのであろう大らかな茶目っ気を周囲に振りまいている。知人のアーティストが話をしていたので良く分からないまま近寄っていくと、その男性がこの「SANDWICH」スタジオを運営している名和晃平さんだった。
作品についての知識はあっても、作者については全く知識がなく、年齢も会田誠さんぐらいだと思い込んでいただけに、こんな若い人だとは夢にも思わなかった。自分が教える学生に「存在自体がパフォーマンスだから」などとふざけている様子は肩の力も抜けてて、いかにもリラックスした感じ。それに作品自体にも表れたスタイリッシュさも感じられ、はっきり言ってちょっと住む世界が違うのかもと思ってしまった。
しかし折角の機会なので、スタイリッシュさも洗練もない露骨な感じで、「なぜ今アートシーンが熱いのか」と尋ねると、「ネットワークが作り易くなったことが大きい。これまではエネルギーがあっても個人で断絶してつながらなかった」と極めて簡略な答えが返ってきた。そこで「ではこの流れをどうしていかれたいですか」と突っ込むと、「何も考えてない。面白かったらいいかな。自分は自分の仕事のためにやってることで、それが若い世代の流れにつながればベターだが、自分の仕事があってというのがないと僕自身続かない。あとこうしたいと思うことを行動で示すこと、やっていくことが大事」と回答し、それ以上は十分といった感じで会話は終了した。
昨夜のその出来事から、この文章を書いている今まで、ボスキャラ級の人々との出会いについて思い返す中で、やはり一番印象に残っているのは、ラスボスである名和晃平さんとの出会いだった。ほぼ同世代と言ってよい年齢を重ねながら、こうも違った立ち位置にあって、自分にとっての居心地の良い世界を構築してきた名和さんを見ていると、自分がいかに非効率で不器用な一兵卒にすぎないのかということを思い知らされた。しかし、できることならこの8月、「京都の熱いアートシーン」の姿を一兵卒の視点から見通していく中で、何かの真実を、そして今という時代のリアリティーを見極めていきたいと思う。
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